2011年1月24日月曜日

No.384 椎名誠「チベットのラッパ犬」→ 3.5点

椎名 誠「チベットのラッパ犬」→ 3.5点

発行元 :株式会社文藝春秋 初版発行:2010/8/30
椎名 誠(シイナ マコト)

あらすじ

最終戦争後の混沌とした世界。
工作員としてチベットに潜入したおれは幸運もあって首尾よく目当ての
品を手に入れることができた。
・・と思ったのもつかの間、ブツは生体偽装した誰かにブツをかっさら
われてしまった。
このままでは帰れないおれは、奴を探して追跡を始めることにしたのだった。

コメント

「最終戦争後」の近未来を描くシーナワールド最新作。
『武装島田倉庫」から始まった本シリーズも、気がつけば結構な冊数になった
よなあ。
一見荒唐無稽なようでよくよく考えると妙にリアリティのある世界観と、全編
に漂う「もうどうだっていいやあ。」という渺漠とした哀しみのようなものは
本編でもしっかりと健在で実によかった。

読むというよりはひとつの世界を旅するという方が相応しい一冊。
滔々と、終わることなく流れる長い長い川をゆっくりと下っていくような魅力
と安心感があった。
読み手によると思うが、個人的にはシーナ氏の描くこの世界はかなり好きだ。


チベットのラッパ犬

了。



0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

無駄な競争心のために、

どれだけの大切なことが

失われてきたのだろうか。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。1坪の奇跡

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆ビジネス、営業系


1坪の奇跡─40年以上行列がとぎれない 吉祥寺「小ざさ」味と
仕事  稲垣 篤子
¥ 1,500  ダイヤモンド社 (2010/12/3)


吉祥寺にある和菓子屋「小ざさ」。たった1坪の敷地に建つこの
店には、二種類の菓子しか売られていない。一本580円の羊羹と、
一個54円のもなかがそれだ。

特に羊羹は人気だ。一日150本しか作られないその羊羹を求めて、
日の出前から行列ができる。買える本数は一人5本まで。先の一
人が買い占めてしまうと、不公平が生じるからだ。

だが量産はしない。羊羹の小豆は小さな銅釜で炊かれる。一度で
羊羹50本分。一日三度が限界なのだ。

ぐらぐら煮える小豆を、大きなヘラでかき回す。最初は軽いが、
次第に水分が飛んでヘラは重くなる。コツがいる。釜の底より半
紙一枚分のところ。小ざさの小豆は職人の技で練り上げられてい
る。

小豆が紫色に輝く一瞬があるのだそうだ。その一瞬を得るために、
社長の稲垣篤子さんは三十年の年月を要した。先代である父とと
もに、命がけで作り上げてきた味だった。

稲垣さんは戦前の生まれ。戦時中は疎開するなど、苦しい経験を
した。

和菓子屋を始めたのは父親の照男さんだ。戦争ですべて失ったが、
戦後再び菓子を売る商売を始めた。

その頃菓子は自宅で作られていた。稲垣さんがそれを屋台で販売
する。屋台と言えど、店なのだからと、一枚しかない紺のスーツ
を着て店に立った。

狭い場所で立っているのは辛かった。だが父は稲垣さんに厳しく
申し渡す。「品物がなくなったからと店を閉めるのは屋台の商売
のやり方だ。ここは店なのだから、決まった時間はちゃんと商売
をしなさい」 厳しい父だった。

稲垣さんはカメラマンを志したこともある。だが、父の姿を見て
育った彼女は、いつか店を継ぐ決意をした。結婚もしていた。夫
には、自分の食事は自分でしてちょうだいねと宣言し、主婦業よ
りも仕事に打ち込んで過ごしてきた。

毎朝父と儀式をする。居間に座り、よい緑茶を用意して、昨日
練った小豆を食べる。父が納得する味ができるまで、三十年間毎
日小豆と格闘した。

お父様は糖尿病だったそうだ。医者には叱られたが、この儀式だ
けはやめようとしなかった。一番いいものを作る。この信念が、
親子を支え続けていた。

父は一族と従業員の生活を背負っていた。その責任感の強さが、
稲垣さんにも影響を与えていた。父が亡くなったとき、稲垣さん
はただ「ご苦労様、そしてありがとう」という言葉しか思いつか
なかった。苦労し通しの人生だったと思う。

今は稲垣さんが、従業員の暮らしを背負って立っている。皆が助
けあう職場にしたいと考えている。会社は家族のようなものだ。

障害者も積極的に採用している。だが、助成金をもらうことはな
い。助成金をもらってしまえば、それだけの付き合いだと思って
しまう。そうではなく、一人の人として向き合うのが当たり前と
思う。


小ざさの羊羹は人気で、午前一時から並んで待つ人もいるのだと
いう。地方から、わざわざホテルに宿泊して買いに来る人もいる。

平等に買ってもらいたいと考えるから、稲垣さんは家族、親族に
も特別扱いはしない。稲垣さんのご主人も、その行列に並んだこ
とがあるのだそうだ。徹底している。

いいものを誠実に作りたいという、職人さんの熱意が伝わってく
る一冊。稲垣さんは御年78歳だが、今でも元気に自転車で通勤し
ている。

読んで必ず元気になれる本。それから、甘いものが食べたくなる。


1坪の奇跡―40年以上行列がとぎれない 吉祥寺「小ざさ」味と仕事

第347冊 綱淵謙錠「聞いて極楽」

乱読! ドクショ突撃隊♪    第 347 冊

【1】読書感想 (第347冊)
  
綱淵謙錠  「聞いて極楽」  文春文庫

実は本書を読んだのは二度目。
私は滅多に本を二度読まないのだが、この本は数年前に読み、その感想を
書こうと思っているうちに忘れ、いざ書こうと思ってたら内容も忘れた。
パラパラと読めば思い出すだろうと読み返してみると、ほんとに忘れてい
る。
しかし面白い。結局全部読み直した。

見開き2ページに一話が載っており、それが全百話で二百ページ余。
戦国期から明治初期までの埋もれたエピソードが掘り出されており、時間
の合間合間に読むには打ってつけの面白さ。

大きな書店の片隅に、文庫目録と並んで「新刊のお知らせ」という小冊子
を見た事ない?
そこに一ヶ月一話のペースで百ヶ月、実に8年4ヶ月に亘って連載されて
いたものを、時代順に再構成して纏められたのが本書だそうだ。
「聞いて極楽」というのは、いろは歌(関東)の「き」=「聞いて極楽、
見て地獄」から採ったもので、表と裏では随分違うことを指す。
史実の表舞台と、その裏とではこうも違うのかと気付かせる名掌編が多い。

綱淵謙錠の文春文庫は十冊前後出ているが、古本屋でも見かけることが
少ない。
見つけたら迷わず買うが、ベストセラーになった訳でもないだけに、
出回っている量も多くない。
こういった「いい仕事」をした本が、もっと浮かばれるべきだと思う。



聞いて極楽―史談百話

2011年1月23日日曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

人は変えられない。

自分なら変えられる。

自分が変われば人だけでなく、

景色も変わる。

夢も変わる。

今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第430号『シティ・マラソンズ』

週刊 お奨め本
2011年1月23日発行 第430号

『シティ・マラソンズ』 三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵
¥1,200+税 文藝春秋 2010/10/30発行


「純白のライン」       三浦しをん
「フィニッシュ・ゲートから」 あさのあつこ
「金色の風」         近藤史恵

アシックスが2008〜10年に期間限定で実施した「マラソン三都物語 
〜42.195Km先の私に会いに行く〜」キャンペーンの一環として、書き
下ろされた作品とのこと。この三作を収録した書籍も部数限定で配布
されたらしい。

ニューヨークシティマラソン、東京マラソン、パリマラソン。
それぞれの街を舞台に、走ることを通して自分を取り戻す物語。


不動産会社に勤める安部広和は、社長にとつぜん翌日のニューヨーク行きのチケ
ットを手渡された。ニューヨークシティマラソンに出場しろ。
なんという無謀。広和は不覚にも少し涙ぐんだ。なんで俺、こんな社長のために
身を粉にして尽くしてるんだろう。
社長の娘の監視役を仰せつかってニューヨークに赴いた広和は、真結のペースで
ゆっくりと走りながら、過去を振り返る…。
                             「純白のライン」

スポーツメーカーのシューズオーダーメイド部門で働く南野悠斗。ある日、昔の
友人から電話を受ける。東京マラソンで走る、と。悠斗は「俺のシューズで走っ
てくれ」と頼んだ。
才能があると思っていた。オリンピックも夢じゃないと思っていた。限界を知っ
て、がむしゃらにトレーニングをしすぎて、疲労骨折した高校時代。それからす
べてに中途半端だった自分…。
                       「フィニッシュ・ゲートから」

バレエ一筋だった香坂夕。凡庸な才能しかない自分に比べ、妹は天賦の才に恵ま
れていた。バレエをやめて、夕はパリに留学した。
金髪の女性がゴールデン・レトリバーと共に走っていく。借りている部屋の前が、
彼女たちのランニングコースになっているらしい。金色の風が駆けて行く。彼女
たちに誘われるように、夕も走り始める。
親しくなったアンナが言う。「あなたもバレエという芸術の一部なのよ」。…
                               「金色の風」

三篇とも、短すぎてちょっと物足りないなー。
「純白のライン」はニューヨークシティマラソンガイドとしてもおもしろい。
スタートと同時に参加者が脱ぎ捨てる防寒着はボランティアが拾い集めて寄付に
まわすとか、ランナーも心得ていて寄付用に新品を着てくるとか、流しそうめん
型男性用トイレとか。きっと取材に行ったんだな。

東京マラソンはさすがに街のガイドは必要なかったようだ。

パリマラソンの「金色の風」は、マラソンコースとしてではなくパリの街のガイ
ドになっている。『タルト・タタンの夢』『ヴァン・ショーをあなたに』でフラ
ンス通らしさを披露している近藤史恵。うー、街角のパン屋さんでバゲット買っ
て食べたい。

こういうのを読むと、無性に走りたくなってしまう。
実際には、走るどころかウォーキングですら10キロも自信ないのだけど。
自信はないけど…走ってみようかな。
もしかしたら、新しい自分に出会えるかも。





えー、先週に引き続き、もう一冊紹介しちゃいます。
個人的には『シティ・マラソンズ』よりも面白かったんですけどね、いくら発行
人の趣味と偏見で選んで紹介するメルマガといっても、あまりに偏りすぎかなー
と遠慮してみました。しかしもしかしたら発行人と趣味の近い読者さんが意外に
多いかもしれないしーと、ここにちらりと紹介してみます。

『戦場のハローワーク』 加藤健二郎
¥695+税 講談社(講談社文庫) 2009/12/15発行
ISBN978-4-06-276524-4

軍事ジャーナリストの加藤健二郎氏が、戦争をメシの種にする方法を紹介。
つまんないネタでもそれが戦場である限り、売れるのだ! 戦場はネタの宝庫だ!
食いっぱぐれはない! と陽気に言ってのけます。
女の子をナンパしても記事になる、酒を飲んでも記事になる、人質になったら本だ
って出せる、と経験談を交えて気楽に面白おかしく書いてるのが、すごく痛快!
素人が軽い気持ちで行くもんじゃないと大御所がしかめ面をするのは既得権益を
守りたいだけだ、と一刀両断。
好きだー、こういうキャラ、好きだー(爆)!



シティ・マラソンズ』 三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵

戦場のハローワーク』 加藤健二郎

2011年1月22日土曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

もし、強靭な精神を手に入れることができたら、

きっと、「したたかさ」も「かけひき」も

いらなくなると思う。

今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月21日金曜日

本のご紹介です。月と蟹

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆話題の小説系


月と蟹  道尾 秀介
¥ 1,470  文藝春秋 (2010/9/14)


第144回直木賞受賞作。

主人公は小学生、慎一。父親をガンで失った彼は、母と二人、鎌
倉の祖父のもとへ身を寄せていた。貧しい暮らしだ。

祖父の片足は義足である。漁師だった昔、船の事故に巻き込まれ
たのだ。同じ事故で、慎一の同級生も母親を亡くしていた。

鳴海という。お金持ちで、人気のある女子児童だ。彼女のことが
あるせいか、慎一はクラスに溶け込めないでいた。慎一の友人は
ただ一人、春也という、大阪から転校してきた子供だけだ。

学校が終わると、春也と連れ立って海へ遊びに出かける。彼らの
楽しみは、ヤドカリを捕まえてあぶりだすことであった。ライ
ターの火を近づけて、熱くなったヤドカリが殻から出てくるのを
見て楽しむ。

あるとき二人は、岩の上にくぼみがあるのを見つける。ここでヤ
ドカリを飼うことにした。そこは不思議な場所だった。風が吹く
と岩がうなる。

ヤドカリをあぶって遊ぶ。残酷な楽しみがあった。金がほしいと、
何気なしに言いながらヤドカリをあぶると、ヤドカリは死んでし
まった。その日、二人は五百円玉を拾った。

ヤドカリを殺せば、願いがかなうのかもしれない。慎一はいつか、
ヤドカミさまという妙な名前でヤドカリを呼ぶようになっていた。

その頃、慎一は二つの悩みを抱えていた。親友の春也が、どうや
ら虐待を受けているらしいこと。もう一つは母が、鳴海の父と恋
愛関係にあるらしいということだ。

鳴海も気づいていたようだ。慎一に近づいてくる。やがて鳴海は、
慎一と春也と、三人で岩のくぼみに行くようになった。

鳴海が慎一の家を訪ねる。祖父も母も、普段と違う様子を見せて
いた。祖父は明らかに酒量が増えていた。祖父はあの事故のこと
を語り始める。

祖父は子供の頃、怪我をした友人を捨てて逃げたことがあった。
足をなくしたのはその報いかも知れぬ。

鳴海は逃げた。では母も、悪行の報いで死に至ったのか。祖父は
追い、転倒して頭に傷を負う。

また、鳴海が介在したことで、慎一と春也の仲にも微妙な隙間が
生まれていた。対抗心と独占欲。よどむ感情を抱えながら、二人
はヤドカリをあぶり続ける。その儀式だけが互いを結ぶもので
あった。

慎一は母を尾行する。決定的な瞬間を見た。春也は腕を骨折し、
虐待がのっぴきならぬ状態にまで進んでいた。ヤドカリを殺し、
ヤドカミさまに願いをこめる。

慎一は鳴海の父の死を願った。このとき、慎一は錯乱状態にあっ
た。春也が慎一のため、鳴海の父を殺すのではないかと錯覚する。
救うため、慎一は父が乗った車の前に飛び出した。ヤドカミと
なった春也が、父の車に潜んでいる想像をしたからだ。

慎一は一命をとりとめる。母と二人、鎌倉を去る。


まあくどい。長かった。100ページの短編くらいにしてくれたら
よかったのに、というのが正直な感想。疲れたわ。

ちなみに、表題の蟹というのは、父を奪ったガン(キャンサー)
と、ヤドカリの意味であるようだ。

月と蟹  道尾 秀介

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊


夢を持つことで

日々のなにげない出来事に
彩りを感じるようになる。


今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月20日木曜日

本のご紹介です。島さんぽ

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆生活、ほっこり系


島さんぽ  上大岡 トメ
¥ 1,365  角川書店(2010/3/27)


「キッパリ!」の上大岡トメさんが、日本の島をめぐる。イラス
ト入りエッセイ。向かう島は屋久島、沖縄、淡路島、八丈島。

この中で、私が最も訪れてみたい屋久島を、ここでご紹介してみ
ようと思う。

屋久島までは、鹿児島から船か飛行機で行ける。トメさんは着い
てすぐに、レンタカーで島を一周されたのだそうだ。半日ほどで
まわれるようだな。

翌日、縄文杉を見に行く。タオルを首に巻き、シャツは二枚重ね、
ステッキを持って本格的な登山スタイルで。

それもそのはず、縄文杉を見るには、合計往復10時間もの登山が
必要であるらしい。けっこうハードなんだな。

トロッコ線路に伝って歩き、線路が終わると山道になる。急な斜
面であるが、珍しい杉がたくさんあって飽きることがない。

中でも「ウィルソン株」という、樹齢300年の切り株がトメさんの
印象に残っている。中が空洞で、立ったままは入ることができる。
ほかにも二つの木が絡み合うように生えているものもあり、自然
のすごさを感じさせられる道だった。

水は流れているものを好きなだけ飲める。緑がむせ返り、山の精
がいるような気になった。

樹齢1000年を超えるものが、総じて屋久杉と呼ばれるそうだね。
中で縄文杉と呼ばれているものは、樹齢なんと、7200年を数える
と推定されている。

森の中にいると、人間以外の何かがいても、おかしくないと思え
る。

トメさんはそう言う。普段はスピリチュアルなものなどに、そう
興味はないほうだが、屋久島に来て少しだけ考えが変わった。

目に見えない大切なものはいっぱいある。屋久島は、そんなこと
が自然に思えるような場所だ。

行ってみたいなあ。山の中、川のそばにいると、なんだか無性に
うおーってなるときあるよね。(え、ない?)

トメさんは、大昔、人間が森の中で暮らしていた頃の遺伝子が呼
び起こされるような気がする、とおっしゃっていた。わかるわ。

あとは観光案内なんかもある。

この本には、宿の名前とか、レジャースポットの名前とかがたく
さん記されていた。その意味で、旅行記というよりは観光ガイド
みたいな印象が強い本だった。

そこは少し残念。もっとがっつり、著者の考えや目で見たものを
書いてほしかったという思いは残る。

しかし、島巡りってのは面白そうだね。幼い頃から淡路島を見て
育ってきて、海の向こうへの憧れは私のうちにずっとある。向こ
うへ渡って行きたいという原始的な欲求がある。

日本は島がたくさんあるもんね、と、締めようと思っていたけれ
ど、よくよく考えれば本州だって島なんだよね。

島国ニッポン。島の魅力を語る本、以後続刊希望だな。

島さんぽ  上大岡 トメ

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊


イライラしてはいけないと強く思っている人ほど
なぜかイライラが増えていくという現象。

まずは
イライラしている自分を受け入れることから。


今日も一日味わいつくしましょう。

こんな発想があったとは…本を折り紙にしてしまった斬新なアート

本アート00

以前、本を削った彫刻をご紹介したことがありますが、今回ご紹介するものはページを折り込むことで文字や図形を浮かび上がらせた、本の折り紙とも言うべき作品。



その他、アーティストのIsaac Salazar氏による、文字通りクリエイティブなアートをご覧ください。


続きを読む

2011年1月19日水曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

何を選んだか。

よりも、

どういう思いで選んだか。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。台湾人生

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆社会派、ドキュメンタリー系

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台湾人生  酒井 充子
¥ 1,650  文藝春秋 (2010/04)

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旅行記ではなかった。読み始めてすぐに「ありゃりゃ」と思っ
たけれど、本を閉じようとは思わなかった。

台湾はかつて日本の統治下にあった。50年という長い年月だ。
その時代を生きた人に会い、聞いた話をまとめたもの。ドキュ
メンタリー映画にもなっている。

統治時代をめったやたらに賛美するものではない。差別はあっ
た。軍国教育を受けて徴兵に応じ、死んでいった台湾人もいる。

だが50年だ。生まれたときには日本人で、そのまま成人した人
が台湾にはたくさんいる。本書に出てくる人たちは、そのよう
な時代を生きた人だった。

少年工として、日本の兵器工場で働いた男性がいる。工場の
あった町を今でも懐かしく思い、第二のふるさとであると考え
ている。当時働いていた日本人とは、今でも交流がある。

彼は貧しい育ちだった。就学を断念しかけたが、日本人の先生
が金を出してくれたおかげで学校に通えた。「先生がなかりし
かば」と、彼は口癖のように言う。今の私の人生はなかった。

恩師が病に伏せたとき、彼は日本まで来て看病をした。先生の
最期の言葉は「もういいよ」だったそうだ。

ビルマで戦った元日本兵がいる。軍国少年だったから、軍隊に
は自ら志願した。軍での差別、戦友の死を見て、やはり戦争は
いけないと思う。

なんとか帰国することができた。帰国後の暮らしは厳しいもの
だった。

台湾は中国に占拠されていた。同胞が来たと、喜ぶ声も確かに
あった。だが中国人の統治は横暴で、次第に日本のほうがまし
だと考えるようになった。

暴動が起きた。このことがきっかけで、多くの知識人が逮捕さ
れ、殺された。彼も拷問を受けた。危うく助かったが、弟が銃
殺されるという悲劇を経験した。

今彼は、観光ガイドのボランティアとして活動し、若者に本当
の歴史を伝えようと務めている。日本人が来ると、教育勅語を
印刷した紙を手渡すのだそうだ。

日本人には親しみがある。だが日本政府には納得がいかない。
戦後台湾を見捨てた。今も中国の顔色ばかり見て、台湾の国連
加盟を後押ししてくれない。


彼らの日本に対する感情は、陳腐だけれど、愛憎半ばというこ
となのだろうかと考える。

茶道も生け花も、日本人の若者よりも知っているという自負が
ある。好きな歌は日本の歌。勇ましい軍歌が好きで、日本語の
歌詞ですらすらと歌う。

しかし日本は彼らに報いなかった。捨てられた、なぜ捨てたの
だと責める気持ちが消えない。

アメリカよりも、中国よりも仲良くすべきは日本だと思うのに、
台湾人も日本人も、かつて同国であったことを忘れ去ってし
まっている。歯噛みするような思いがある。


押し付けがましい思想はないので安心して読める。知らないこ
とがたくさんあって、とても勉強になった。

台湾人生  酒井 充子

2011年1月18日火曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

人生は、

世間に対する自分の

プレゼンテーションの連続だ。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。禅的シンプル仕事術

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆自己啓発系


禅的シンプル仕事術  枡野 俊明
¥ 1,260  実業之日本社 (2010/5/8)

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昨年読んだビジネス書で、「減らす技術」というのがとてもよ
かったので、類似の本かと思って読んでみた。

ところがちょっと違っていて、どちらかというと、小池龍之介さ
んの著作に似ていると思った。小池さんも、この本の著者もお坊
さんである。

キーワード一つに対して解説あり。とても読みやすい。煮詰まっ
ているときにふっと開いて、気分転換ができそうな本だった。

・ていねいに呼吸する。

禅において呼吸は、最も大切な修行のうちのひとつである。丹田
(おへその下の辺り)に意識を集中させて、ゆっくり、長く細く
息を吐く。

吐ききったら自然に吸いたくなる。呼吸という言葉は、吸うより
も吐(呼)くという字が先に来ている。どっしりとした呼吸をく
り返していると、気持ちが落ち着いてくる。

・ためない

「一日なさざれば、一日食らわず」という言葉がある。働かざる
者食うべからず、という意味ではない。

一日を一生懸命働いて、その日の分の食事をする。二日分働くこ
とはせず、二日分食うこともしない。それが人間にとって、一番
健康なことだ。

・一日10分、ぼーっとする。

一度やってみてほしい。案外難しいことに気づくだろう。

何も考えない状態。禅では「無の境地」といい、この状態を得る
ために、僧侶は厳しい修行に取り組む。

私たちにその必要はないかもしれないが、頭を休めることは大切
なこと。座禅を組むのもいい。

・ことなる意見に耳を傾ける。

境内に僧侶が二人。幡(吹流し)を見ながら言い争っていた。

「幡が動いているのではない。風が動いている」
「いや、幡そのものが動いており、風は動いていない」

そこに現れた師が言った。「動いているのは風でも幡でもない。
お前たちの心だ」

世の中にはこれが正しいと、言い切れることはない。物の見方は
さまざま。すべてを一度受け入れ、自らの心に問い直してみよう。


レオ・バボータさんの「減らす技術」は、仕事をいかにシンプル
にするかという、ビジネス書寄りの本だった。その意味で「禅」
が本当に理解されているのか、疑問だったのは確か。

とにかくその作業に集中すること。無駄なものを削ること。

このことを荒削りに「ゼンっつったらゼンなんだからね!」と、
言い切ってしまっていたかもしれない、と今になってはわずかに
思う。

それに比べて今度は本当に「禅」だった。心構えを書いたもの。

字、大きめ、レイアウトがきれい。読みやすい。カバーデザイン
もシンプルで、ちょっと固めの手触りもよろしい。(本屋さんで
見つけたら、ぜひなでなでしてやってね)

忙しい毎日を送っている方に。

禅的シンプル仕事術

2011年1月17日月曜日

本のご紹介です。チュートリアル福田充徳の家呑みレシピ

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆生活、ほっこり系


チュートリアル福田充徳の家呑みレシピ  福田 充徳
¥ 1,365  ワニブックス (2010/2/27)


福田さん、早く良くなってね!

というわけで、本日は話題性もたっぷりのこの一冊。漫才コンビ、
チュートリアル福田充徳さんの、自慢のレシピを集めたもの。

実はこの福田さん、お酒がものすごく好きなのだそうだ。ほぼ毎
日飲んでいる。家で飲むのも好きで、あわせるお料理もご自身で
作っている。

簡単にできるものが多い。凝っているわけではないが、手抜きで
はない。家庭でマネできるものばかりだった。

・豚キムチフライ
豚の薄切り肉にチーズとキムチを巻いて、パン粉をつけて揚げる。

・ちくわのバジルツナマヨ
ビニール袋に水気を切ったツナ、バジルペースト、マヨネーズを
入れる。

袋のはしを切って、中のバジルツナをしぼり出すようにしてちく
わの中に入れる。ちくわを斜めに切って皿に盛る。

・イカ刺身の大根おろしマヨネーズ和え
大根おろしは水気を切る。大根おろし、マヨネーズ、イカの刺身
をボウルで和える。醤油で味を調えて。唐辛子をふるとよい。

・レタスの丸ごとしゃぶしゃぶ
レタスは芯をくり抜く。お湯をわかし、塩と酒を入れる。レタス
を丸ごと入れてさっとゆでる。ゆですぎないように。

たれは醤油、バルサミコ酢、みりん、酒、水を混ぜて熱したもの。
片栗粉でとろみをつけて。

・トマトと卵のザーサイ炒め
トマトは乱切り、種をとる。ザーサイは粗みじん。溶き卵に塩、
コショウをふっておく。

フライパンにごま油、トマト、ザーサイを炒め、醤油、紹興酒、
コショウで味を調える。卵でとじてできあがり。

福田さんいわく「ちょっと良さげな店ではイイ値段とるんですよ」
というメニューなのだそうだ。

・うなぎのピカタ
うなぎは小麦粉をふって、溶き卵にくぐらせる。フライパンで焼
いて、うなぎのたれをかけて食べる。少ないうなぎでも満足感が
得られる一品。

男性が作る料理はがっつり、ジャンクなものが多くなりがち。福
田さんは、鍋物やスープで栄養バランスを整えています。

・いろいろきのこ汁
だし汁に薄口醤油とみりん。お好みのきのこに鶏肉を入れて。

ほか、サムゲタンも作る。トマトスープも好き。豚汁にはコチュ
ジャンを入れて辛味をくわえるとおいしい。


福田さんの料理のルーツはあの「美味しんぼ」。小学校高学年の
頃にはまり、一時は料理人を夢見たこともあったとか。

スーパーが好きで、住居を決めるときは必ず近くのスーパーを確
認する。遅い時間に行って、食材がお値打ちになる時間帯がとて
も好きなのだそうだ。ツナ缶、納豆、さけるチーズなどを家に常
備している。

一人で飲むことは寂しいことだとは思わない。好きなものを食べ
て、好きなように飲める。いいことだと思う。グルメ番組をぼん
やり見ているのが好きだ。

ご家庭で、おつまみを作ることが多い人には便利な一冊かもしれ
ないな。

しかし、飲み過ぎにはご注意。元気な福田さんの笑顔を、早く見
られますように!

本日ご紹介の本はこちらから↓
チュートリアル福田充徳の家呑みレシピ

No.383 吉田修一「女たちは二度遊ぶ」→ 3.5点

吉田 修一「女たちは二度遊ぶ」→ 3.5点

発行元 :株式会社角川書店
初版発行:2006/3/31
吉田 修一(ヨシダ シュウイチ)

あらすじ

女たちはいつでもちょっと不思議で、そしてそれぞれに魅力的だ。
どしゃぶりの雨の一日から始まって、ひたすら僕の家でじっとしていた女。
中学生の時に初めてデートした女の子。
公衆電話でのちょっとしたすれ違いから僕と寝るはめになった女。。
とりたてて変化のある訳でもない僕の人生を彩ってくれた様々な女たちの
エピソード11編。

コメント

これ、確かドラマにもなってたよな。
と思い手に取った一冊。意味はよく分からんが、何となく肌触りがよくて
魅力的なタイトルだと思う。

ほほう、ふふん。なるほど。なぬ!?・・と言う感じで、11篇の短編を
あっという間(1.5時間)で平らげてしまいました。

男にとって全ての女性は永遠に謎を秘めた存在なのだけれど、それを実に
さらりと手際よく料理したよなあという感じの一冊。
読みやすさ満点なので、秋の夜長にウイスキーでもちびちび飲みながら読
むと良いですよ。

昔のことをちょっと思い出すかもしれません。。



女たちは二度遊ぶ

了。



0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

自分が好きとか嫌いとかじゃない。

すべてなんだ。

今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月16日日曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

高いところには行けなくとも、

上向きにはなれる。


誰でも、どんな状況においても。

今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第429号『折れた竜骨』

週刊 お奨め本
2011年1月16日発行 第429号


『折れた竜骨』 米澤穂信
¥1,800+税 東京創元社(ミステリ・フロンティア) 2010/11/30発行
ISBN978-4-488-01765-1


米澤穂信のミステリです。
今まで現代日本を舞台にした作品ばかりだった米澤穂信が、十二世紀末のヨーロ
ッパを舞台にしているという、それだけで仰天。しかも、ページを開いてみれば、
そこは魔術や呪いが存在する世界。いったいどんな物語が始まるのか! わくわ
くして読みました。
そんなわくわくを裏切りません。


イングランドの王位争いがリチャード王の王位就任によって決着したのも束の間、
リチャード王は十字軍に遠征に出、イングランドに国王不在が続く不安定な時代。

ロンドンから海路三日はかかるソロン諸島。
小ソロン島とソロン島からなるこの地の、領主はローレント・エイルウィン。小
ソロンに居を構える。小ソロンとソロン島の間の海は浅瀬が多く、島でただひと
りの渡し守でなければ渡れない。その渡し守も日が落ちてからは舟を出さない。
夜の間は誰も入り込むことはできないはずの小ソロン。

ある日、騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士ニコラ・バゴが領主を訪ね
てくる。
暗殺騎士が領主を狙っている。その暗殺騎士を我々は追っているのだと。
その晩、領主は小ソロンの館の一室で健で胸を突かれて殺される。…

領主の娘、アミーナは、ファルクとニコラとともに、犯人を追う。

この物語の世界には、魔術がある。呪いがある。

呪われたデーン人。切っても突いても血さえ流さず、食物も飲み物も不要、老い
ることはなく、爪も髪も伸びない。デーン人がソロンを狙っている。

暗殺騎士は、魔術によって人を操り人形《走狗(ミニオン)》にして、殺人を犯
させる。《走狗》は自分が魔術にかかったことに気づかず、人を殺した記憶もな
い。


もちろん、魔術がある世界だからといって、魔術のひと言ですべてが説明できて
しまうような非論理的なことはありえない。
なんといっても米澤穂信だし。
むしろ、こういう特別な設定の特殊世界だからこそ、ルールがはっきりして、論
理性が際立つともいえる。


> 「何も見落とさなければ真実は見出せる。理性と論理は魔術をも打ち破る。必
> ず。そう信じることだ」(100頁)


設定こそ魔術が跋扈する中世ヨーロッパだけれど、実は正統派本格推理。
実際、終盤には名探偵物のお約束、「名探偵 皆を集めてさてと言い」シーンも
あるし(笑)。

こういう特殊設定ミステリというと、私は条件反射で西澤保彦を思い出します。
『七回死んだ男』『人格転移の殺人』『瞬間移動死体』etc…
大好きなんですよ!
本書のあとがきでも、米澤自身、西澤保彦に触れています。ちょっと嬉しい。


ファンタジー風味の本格ロジック。
おいしいとこどり。


ところで、今週のメルマガは、どっちを紹介しようかとかなり迷ったのです。
この本と、木内一裕の『キッド』と。
『キッド』は、二十歳のあんちゃんがついつい首を突っ込んでしまった事件に
振り回されるジェットコースターノベル。すっごくテンポがよくて、面白くっ
て、軽快で、とにかく爽快! すかっとしたぁ! 
よろしかったらこちらも是非!


『折れた竜骨』 米澤穂信

第345冊 南條範夫「日本史の謎と真説」

  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 345 冊
              
                       2011.1.15
              
          
          
【1】読書感想 (第345冊)
  
南條範夫  「日本史の謎と真説」  銀河出版

お正月のような長期休暇は、少し分厚い本を読む事にしている。
電車の中で単行本を片手にして読むのは手が疲れ、薄めの文庫本がありが
たい。
しかし長期休暇は家でゆっくり読め、特に長風呂の大好きな私は本や簡単
な料理を持ち込んで一時間以上風呂に浸かるのが楽しい。

大好きな南條範夫を半年以上御無沙汰にしていたのに気付き、単行本と新
書判の中間くらいのサイズの本書を手に取った。
南條氏が日本史の数々の謎を採り上げ、更に真説を披露する。
考えただけでもワクワクする構成の題名。
大和朝廷から明治維新まで全39章と、書名に偽りはなかったが、期待した
ほどの真説は無かった。

そう、真説。
新説では無いのだ。
日本史の数々の謎を提示した本は多い。
そして俗説や一般に流布された話をした後、実際はこうだったと説明が入
る。
しかしあくまでそれは「真実の」説=真説であり、「新しい」説=新説で
はないのだ。
歴史初心者や中級者には勉強になろうが、歴史本を何十年と愛読してきた
人にとっては、謎も知ってりゃ真説も大体聴いた事がある。
ときどき南條氏ならではの視点と考察が面白いが、大体はフンフンなるほ
どと読む内容が多かった。

そうは言っても敬愛する作家南條範夫。
彼がこれまで書いてきた得意分野では滅法筆が走ってるのが判った。
源鎮西八郎為朝、真田幸村、没落した武将のその後、西郷隆盛と伊藤博文。
上記については特に著者独自の知り抜いた情報が開陳され、内容も深かっ
た。
少しディープな人物として、光厳帝のその後を追った内容は初めて読んだ。
福山城の「淀殿の湯殿」事件も私にとっては初ネタで面白かった。
他にも宮本武蔵・二刀流の真相や、坂本竜馬暗殺犯の考察など、他の作家
とはちょっと違う内容も多々あった。
もっとも意気込んで展開した真説は、西郷隆盛についてだろう。
これはなかなかの真説だと思った。



南條範夫  「日本史の謎と真説」

2011年1月15日土曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

願いが叶うまでのプロセスを楽しめないなら、

願いなんて持たない方がいいと思う。

2011年1月14日金曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

根拠のない不安の後に、

根拠のない自信がくる。


今日もただ、根拠をつくっていくだけだ。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。ミステリーの書き方

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆話題の小説系



ミステリーの書き方  日本推理作家協会
¥ 1,890  幻冬舎 (2010/12)



なぜこんな本を読んだのか、自分でもわからないんです。だって
あたし、普段からミステリーなんて、そう読まないんですもの。

もちろん書く予定なんかもぜんぜんないわ。刑事さん、私の中の
虫が騒いだんです。たるんだ腹の中にいる、活字中毒の、虫。

手にとって、面白かったから読んでしまった。まるで光におびき
寄せられる虫のように。ハッ、わかったわ。私、虫なのね、虫並
みの脳みそしかないということなのねサヨウナラ刑事さん…。

と、まあ、崖から身投げしてもいいくらい、不思議なチョイスだ
と自分でも思う。でも面白かった。だからいい。

現代日本を代表するミステリー作家137人が、創作に対する思い
を語っている。

テーマはそれぞれにある。プロットの立て方だとか、キャラク
ターの描き方だとか。文体についての意見もある。しかし私の印
象としては「好き勝手しゃべってるなあ」という思いが強い。

皆書くことが好きで、こだわりを持っていらっしゃる。そのこだ
わりを、余すところなく語りつくしたのが本書と言っても過言で
はないだろう。二段組、480ページ。圧巻。

例のごとく独断と偏見で、コメントを取り上げてみる。

・冒険小説の取材の仕方 船戸与一

ストーリィもプロットも決めずに現場へ行く。写真も撮らない。
メモも不要。書くときも、完全に物語を決めて書き始めるわけで
はない。

取材の旅で出会った人たちをデフォルメした登場人物が、こうし
てくれと語りかけてくる。

・ブスの視点と気持ちから 岩井志麻子

世の中には四種類の人間がいる。1、人から好意を向けられてい
て、気づく人。2、気づかない人。3、人から好意を向けられて
いないことを、気づく人。4、気づかない人。

小説家に向いているのは3のタイプの人ではないか。

・書き出しで読者をつかめ 伊坂幸太郎

アマチュア時代に書いた文を例として。冒頭で読者を驚かせるこ
とに腐心した。本屋にずらりと並ぶ本の中で、自分の本を手に
とってもらえる工夫がしたかった。誰かに届けたいという思いが
ある。

・手がかりの埋め方 赤川次郎

ミステリーを書いて一番苦労するのは、トリックや、どんでん返
しを考えることではなく、手がかりをいかにして、読者の目につ
かないように、かつ記憶の隅にとどまっているように書き入れる
のか、ということ。


本当に、どの作家さんもプロットにも、トリックにも、文章にも
思い入れを持っていらっしゃる。「!」や「?」、「…」の使い
方にも、それぞれの個性があった。ミステリーファンなら読んで
損なし、の一冊。

トリックについての解説、綾辻行人さんのは、私にはよくわから
んかったけど、マニアックで面白い雰囲気はビシバシ伝わってき
たよ。

では最後に、帯に書かれている、東野圭吾さんの名言を。

「どうやって作品を生み出しているのか。一言で言えば、苦労し
て、です」

だよなあ! みなさま、楽しい作品をありがとうございます!

ミステリーの書き方

2011年1月13日木曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

最初だけは偽善でもよいと思う。

ひたむきに続ければ本当の善になる。

続けなければ。

今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。日本映画空振り大三振

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆世間話、時事ネタ系

日本映画空振り大三振  柳下 毅一郎 江戸木純 クマちゃん
¥ 1,575  洋泉社 (2010/6/2)

毒舌映画評論。昨年末に公開された「ゴースト」が入っていない
のが惜しい。(同年6月の発行だから、仕方ないんだけど)

柳下氏、江戸木氏はともに映画評論家。クマちゃんとは、謎の着
ぐるみ人物(?)なのだそうだけど、映画をよくご存知の方のよ
うだ。

お三方とも知識豊富な語りなので、面白いだけでなく、勉強にな
ることも多かった。

・釣りキチ三平

田舎で釣りばかりしている三平くんを、香椎由宇演じる姉が連れ
戻しにやってくる。しかし姉は釣りの面白さに目覚め……。

と、言ってみれば「釣りキチ由宇」というべき映画だった。自然
の光景も魚もすべてCG。原作の生き生きとした様子が伝わって
こない。

魚紳さんはトラウマを抱えた変態みたいだし、三平くんはやたら
と「キャッチ&リリース」を強調するし、エコやら何やら小細工
が多かった。

釣りの楽しみを描ききった原作の楽しさを、素直に表現するだけ
ではいけなかったのか?

・アマルフィ 女神の報酬

日本人の少女が誘拐されるサスペンス映画、のはず。

だが基本的には観光地ばかりをめぐる旅になっている。誘拐犯が
なぜか、なぜなのか、取引場所に観光地を指定してくるせいだ。

世界遺産の土地もあるので、当然アクションシーンは撮れず。
アマルフィの土地自体も、最後に空撮でちょろっと流されるだけ。

誘拐犯の目的もよくわからなくて、主演の織田裕二さんに諭され
てあっさりと犯行を中止してしまう。七年かけた計画なのに、
「殺して何になる?」と言われて「わかったよ」と納得。そんな
素直な犯罪者、いるか!

しかしよくわからんな。原作を読んだけれど、それなりに面白い
話だったと思う。原作者が脚本も書いたはずだったけど……。

と、思っているとこんなことが書かれていた。

「この映画には脚本家のクレジットがない。原作者が脚本も書い
たのだが、現地の撮影状況から原作どおりにいかなかったことも
あり、原作者が(名前を載せるのを)辞退した」

ぐだぐだですやん。

・剣岳 点の記

明治のお話だ。陸軍測量部と、山岳会の人間が競い合いながら剣
岳初登頂を目指すという物語。

映像がすごい。「CGを使わない」というのが監督の信念であっ
たので、雪山の迫力ある映像が楽しめる。また、物語も実に真面
目で、人が死んだり、滑落があったり、わざとらしい見せ場は作
られていない。

しかしそれがもったいないとも言える。映像ありき、物語の筋が
弱く感じられてしまう。

実はこの映画、高山が撮影現場であったため、誰も脚本を持って
来ていなかったのだそうだ。荷物を極限まで軽く。役者さんも、
監督さんも、誰一人脚本を見ずに撮影が進んだ。ドキュメンタ
リーと言うのがいっそ正しいかもしれない。

ただクライマックスの、登頂の場面がなかったのが残念。寒すぎ
て機材も凍ったか?


槍玉に上がる映画は全部で46本。GOEMON、ルーキーズ、蟹工船、
真夏のオリオン、いろいろ、たくさん。

昴。超酷評だったけど、かえって観たくなった映画だ。バレエ映
画であるらしいんだけど、それがストリップ・バレエという珍妙
なものなんだそうだ。

主人公が目隠しをして町を歩き、踊りの練習とする場面もある。
一昔前の少年漫画みたいな特訓が行われるとのことだ。すごいな
あ。いい大人が真面目にそんな映像を撮っているなんて。

本も映画も、ご興味のある方はぜひ。

日本映画空振り大三振 ~くたばれ!ROOKIES (映画秘宝COLLECTION 41)

2011年1月12日水曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

言うは易し。

行うは難し。

認められるは更に難し。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。みんなでニホンGO!

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆世間話、時事ネタ系



正しい日本語は本当に"正しい"の? みんなでニホンGO!
オフィシャルブック
¥ 1,365   祥伝社 (2010/7/27)
NHK「みんなでニホンGO!」制作班著



NHKのテレビ番組をそのまま本にしたものらしい。アマゾンのレ
ビューでは、そのことに関しての苦言が呈されているが、見てい
ない私にとってはとても面白い内容のものだった。

取り上げられていた言葉遣いが、私自身、気になっていたものば
かりだったからだ。

別に目くじら立ててどうのこうのと言うつもりはないが、なんと
なく違和感を感じる言葉遣い。そんなものが多かったので、例の
ごとくへえへえふうんとうなずきながら読み進めることができた。

言葉遣いの変化=悪という考え方はされていない。言葉は移り変
わるものという前提で、その経緯を理解し、新しいものも受け入
れましょうというスタンスだった。好感触。

面白いネタがたくさんあった。

「人」は実は、人間が横を向いた姿をかたどった象形文字である。
支え合って人というのは間違いだった。〜っしょ、というのは北
海道弁。うざったいとはもともと八王子近辺の方言であったのだ
が、大学が郊外に移転するに従って、若者に話されるようになっ
た、などなど。

では、私が選ぶ「気になる大賞」を、本書解説の中から選んでご
紹介してみたいと思います。ちなみに「大賞」は二つあるのです
が、その辺は曖昧に笑ってごまかすつもりです。ご理解ください。

・させていただく。

最近では「やらさせていただく」「名乗らさせていただく」など、
余分なところに「さ」を入れて話す人が増えた。
(本来は「やらせていただく」「名乗らせていただく」)

過剰矯正と言われるものだ。緊張のあまり、丁寧に喋ろうと力む
あまりに、文法を超えた表現になっている。

しかしこの言葉を使う政治家が増えている。国会会議録検索シス
テムという、国会議員の発言を記録したデータベースで調べると、
90年以降この「さ入れ」言葉が急増しているとわかる。

政治家の言葉は社会の変化を表す鏡。今後はこの「さ入れ」言葉
が常識になると考えられる。

ちなみにこの「させていただく」は、近江商人が使い始めた言葉
だ。他人に感謝し、おかげさまの精神を表す商人言葉だった。

・ヤバイ

江戸時代にできた「ヤバ」という言葉が語源になっている。牢屋
のこと。危ないという意味で、使う人はごく少数だった。

しかし近年、ヤバイはプラスの意味で使われている。このラーメ
ン、ヤバイ、と言えば、若者はそれがおいしい、うまいと受け取
るはずだ。

マイナスからプラスへ。「ヤバイ」は進化、成長する語である。

似たような例は各国に見られる。スペイン、モンストロとは化物
の意味であった。だが最近ではフラメンコがうまい人、ギターを
弾くのが上手な人がこう称される。

韓国ではチョギンダ。もともとは殺すという意味だったが、殺人
的においしい、楽しい、という意味に。

古くは英語のナイスもそうで、ナイスの語源はラテン語のネスキ
ウスだった。愚かという意味である。それが変化し、今ではよい
意味合いでしか使われることがない。

こう見ていくと、人の考えなんて似たり寄ったりで、面白いと思
うな。


テレビの内容を、本当にそのまま本にしたものらしい。出演者の
船越栄一郎さん、山崎弘也さん、松本あゆ美さんらのトークが楽
しく文字に起こされている。気楽に読めることうけあい。

以前読んだ「日本人の知らない日本語」でも、言葉は変化するも
のだと書かれていた。

「前向きに」理解して、受け入れていきたいな。

正しい日本語は本当に“正しい”の? みんなでニホンGO!オフィシャルブック

2011年1月11日火曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

力を抜いて手を抜かない。

その意味とコツがだんだんつかめてきた。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。クスリごはん─おいしく食べて体に効く!

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆生活、ほっこり系

クスリごはん─おいしく食べて体に効く!  ¥ 1,155
ヘルシーライフファミリー   リベラル社 (2010/08)

漫画、イラストで紹介する体によい食べ物、レシピ。おばあちゃ
んの知恵という感じ。病院に行くことももちろん、とても大切だ
けれど、こういう日々の心がけも大切にしたい。

登場人物は主婦のケロミさん、夫のヒロさん、元気なお姑さん、
小さな女の子ブーリンと、その弟ダイちゃん。にゃんこ先生とい
う猫もいて、人間の食べ物を虎視眈々と狙っています。

ごく一般的な家族が経験する体のトラブルと、その解決法を漫画
で紹介するというやり方。絵がかわいいので楽しく読める。

・ブーリンが風邪をひいた。

おばあちゃんが冷蔵庫を探す。出てきたのは大根と蜂蜜。大根を
1センチ角に切り、蜂蜜につけて咳止めシロップの代わりに。一
晩つけるとさらに効果的です。

かるい鼻づまりにはごま油を。綿棒につけて鼻腔につけてやると
よい。ねぎと豚肉の炒め物、玉ねぎ入りのスクランブルエッグな
どもいいよ。

・ヒロさん激務で疲労困憊。

肩こりにはグレープフルーツ。クエン酸がよい。その意味では梅
もとりたい食品だ。山芋にあえたり、豚肉のソテーの味付けにす
ると食べやすい。

豚肉のソテーは、フライパンで焼いた豚肉にみりんを混ぜた梅肉
を乗せ、オーブントースターで軽くあぶって作る。

ストレスにはくるみトースト。食パンの上にスライスチーズと刻
んだくるみを乗せて焼く。

不眠にはホット豆乳ミルクを。温めた豆乳に蜂蜜を混ぜるのがコ
ツ。チーズも効果的なので、茹でた人参にたらこ、チーズ、ごま
をまぜたものをあえるのもおいしい。

・ご馳走を食べて胃がもたれた。

カブおろしが口にやさしい。大根おろしとは違って辛味がないか
ら子供でも食べられる。レモンをしぼって、うどんに乗せても
さっぱりといただける。しらすを混ぜるのもあり。

お通じが悪くなったときは、小豆やごぼうをたくさん取ろう。ご
ぼうと人参の煮物、さつまいもと小豆の煮物など。

バナナラッシーはおいしく飲める。バナナ、ヨーグルト、牛乳、
蜂蜜をミキサーでかき混ぜる。おやつにもいいかも。

口内炎にはナスとトマトのラタトゥイユ、腰痛にはニラ玉、メタ
ボが気になるなら小豆ご飯、痔にはほうれん草炒め、食中毒には
シソジュース、下痢には蜂蜜緑茶、貧血には梅こぶ茶。


実家では、冬になるとオカンが必ず大根の蜂蜜漬けを作っていた。
咳をすると、汁をお湯で割ったものを飲まされていた。

これで完治というものではもちろんないよね。それはわかってる。
だけど知っていたら、気をつけて取りたいなと思うものが多かっ
た。

民間療法、先にも書いたけどおばあちゃんの知恵みたいなものな
んだよね。高価で難しい本だったら遠慮したいけど、親しみやす
く、お値段も手ごろ。これなら手元に一冊備えておいてもいいか
なあ、と思える本だった。

症状ごとに分類がされていてわかりやすい、探しやすい。凝った
レシピではないので、体が弱っているときでも作るのが楽。あり
がたい。

お正月のご馳走疲れの体には、大変優しく、役に立つ一冊。

クスリごはん─おいしく食べて体に効く!

2011年1月10日月曜日

第344冊 下田治美「愛を乞うひと」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 344 冊
              
                       2011.1.10
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【1】読書感想 (第344冊)
  
下田治美  「愛を乞うひと」  角川文庫

幼児期、主人公が母から凄惨な折檻を何度も受ける描写が激しすぎて、
衝撃を持って受け留められた作品。

この作品を読んで考えるに、二つの見方がある。
著者自身の実体験を赤裸々に描いたものなのか、純粋に創作なのかだ。
相当リアルな描写が理不尽なほど続き、その細かい描写は想像力を超え
た迫真性がある。

現実にあった話って意外と「?」となる行動や展開が多く、もっと感動
作品に仕上げる事も出来ただろうに、敢えて突き放したような動きに
なっているのはこのためじゃないだろうか。
本作での結末はどちらにも受け留められるような、母と娘の関係がどう
なったか、否、どうにもならなかったような、幾通りにも想像できる
不思議な結末。

いずれにせよ、強烈な印象が残る力作だと感じた。



下田治美「愛を乞うひと」

No.382 熊谷達也「いつかX橋で」→ 3点

熊谷 達也「いつかX橋で」→ 3点
発行元 :株式会社新潮社
初版発行:2008/11/20
熊谷 達也(クマガイ タツヤ)

あらすじ

太平洋戦争末期。
仙台大空襲で家も親兄弟も失った裕輔は、特攻隊帰りの彰太と出会い、
「いつか仙台駅前のX橋に大きな虹を掛けよう」と誓い合う。

生きるための毎日はつらいことも多かったが、親切な「徳さん」と出会っ
たことによって少しずつ生活の基盤を確かなものにすることができた。
しかしある日・・。
戦後の混乱期に、無一文から逞しく生き抜く若者たちの群像を描く。

コメント

血迷うたか熊谷達也!と言いたくなるほどのバッドエンド。
登場人物の誰もが素敵で、散々っぱら共感と感情移入をさせておいて、
最後に奈落へ突き落とされた。

熊谷氏が優れた作家であることは疑いないが、本作の「第5章」だけは
断じて許せない。
私が独裁者だったら強権を発動して書き直しを要求するところだ。
丁寧に作られたケーキを足元に叩きつけるような、精魂込めて描かれた
絵画にペンキをぶっ掛けるような実も蓋もない結末で、読後感は最悪
だった。

現実が厳しいのはよく分かっているが、だからこそ小説の世界では美し
い結末を求めたかった。
熊谷氏は何が言いたくてこの小説を書いたのだろうか。
ひょっとすると、第4章を書き終えたところでヨメに逃げられたとか人
に騙されたとか、熊谷氏がウツ状態になるような何かが起こったのかな、
とすら考えてしまう。

途中までは非常に気持ちよく読み進められただけに残念無念だった。
小説のレベルとしてはもっと上だが、そういうことで怒りの3点。

熊谷 達也「いつかX橋で」




0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

現状に、

心からめいっぱい満足しよう。


今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月9日日曜日

第343冊 宮下誠「カラヤンがクラシックを殺した」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 343 冊
              
                       2011.1.9
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【1】読書感想 (第343冊)
  
宮下誠  「カラヤンがクラシックを殺した」  光文社新書

題名に、著者の思いが籠められている、それが全て。

クラシック音楽界とレコードCDを詰まらなくさせてしまった最大要因は
カラヤンであり、彼をギュウギュウに締め上げる事に徹している。
一方、大好きなクレンペラーとケーゲルの音楽に各一章を割き、対比させ
る事で均整を取ろうとしているが、既に結論は決まっているので鼻白んで
しまう。

ちなみに、私もケーゲル旋風を浴びた世代で、許光俊の名文でケーゲルに
出会ったクラヲタは多いだろう。
だからこそ、彼が言いたい事、現代クラシック界を嘆く心意気は判るが、
こうまでカラヤン独りを貶めると戴けない。
カラヤンだけでなく、小澤征爾、レヴァイン、プレヴィン、ビシュコフ、
シャイーといった高収入を得ているが面白みに欠ける有名指揮者はゴマン
といる。
カラヤンと似たような路線を歩き、華やかな音響とハーモニーを重視した
才能の無い後継者たちを手付かずでは、腰が引けていると感じてしまう。
カラヤン批判は免罪符がばら撒かれた現代、その後継者も批判する勇気が
欲しい。

私はクレンペラーを聴かないので語れないが、ケーゲルなら多くを聴いて
いる。
だからこそと言おうか、彼のケーゲル感想とはあまり一致点がなく、ケー
ゲル大好き同士なはずなのに、こうも受け留め方が違うのが違和感だらけ。
それゆえ彼のカラヤン批評はあまり共感できず、「カラヤンがクラシック
を殺した」というお題目には否を唱えないけれど、各論には不満と苦笑の
連続だった。
大仰な形容詞やドイツ現代美術を基礎とした比喩が多く、煙に巻く酔い痴
れた文体も気に喰わない。

ただ寝覚めが悪いのは、著者は2009年50歳にも満たずに急死している事。
死んだばかりの人に対して、率直な感想を述べるのは酷いのだろうが、
820円も出して本書を購入したのだから、本音を少しだけ書きたかった。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

この世には、

自分にしかできないことが

もっともっとあるはずだ。


今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第428号『空白の五マイル』

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週刊 お奨め本
2011年1月9日発行 第428号
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『空白の五マイル』 角幡唯介
¥1,600+税 集英社 2010/11/22発行
ISBN978-4-08-781470-5
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副題:チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む
第八回開高健ノンフィクション賞受賞作


著者の角幡唯介は、早稲田大学探検部出身。
本書の内容は、ずばり「探検」です。
いまどき珍しいくらいの、直球で探検です。


探検とは言っても、そもそも、グーグルアースが砂漠の真ん中だろうがどこだろ
うがクリックひとつでPCに映し出してくれる時代、探検にふさわしい場所がこの
地球上に残されているのだろうか?
角幡も、まず大学時代にまずそこで躓いた。

「世界の可能性を拓け」という挑発的なあおり文句が書かれた探検部のビラに、
人生に対する渇望感を満たしてくれそうな期待を抱いた。
入部し、いつか訪れる本格的な探検に備えて登山に明け暮れたが、問題は、どこ
を探検すればいいのかわからないということだった。


欲求不満を募らせた大学四年時、角旗はたまたまツアンポー川の探検の歴史を
書いた本と出合う。
ツアンポー川はチベット高原を横断しインドへ流れ込む、長さ2900キロに及ぶ
アジア有数の大河である。チベット高原を西から東へ流れた後、ヒマラヤ山脈
の東端の二つの大きな山に挟まされた峡谷で流れを大きく南に旋回させる。
18世紀から19世紀にかけて、この川がヒマラヤ山中に消えたあと、どこに流れ
るのかまったくの謎だった。インドに流れ込むというのも当時はまだわかって
いなかった。

19世紀後半から20世紀にかけて、伝説的な何人かの探検の結果、ツアンポー
峡谷で未踏破の区間はわずか五マイル、約八キロにすぎなくなった。


ファイブ・マイルズ・ギャップ。
空白の五マイル。
この美しい響きの言葉がツアンポー峡谷にロマンを与えた。


角幡もまた、この五マイルに魅せられた。

2002年。探検家を夢見て就職せずにいた角幡は、二十六歳にして就職が決まった。
入社するまでの半年ほどの時間を利用し、ツアンポーを目指した。
今しかない、と思った。


> 挑戦しないままこの後の人生を過ごしても、いつか後悔する。今考えると、そ
> んなヒロイックな気持ちが当時の私にはたしかにあった。自分でも死ぬかもし
> れないと思う冒険をなぜおこなうのか、その心境を言葉で説明することはとて
> も難しい。人はなぜ冒険をするのだろう。私はなぜひとりでツアンポー峡谷に
> 行かなければならないのだろう。(21頁)


死にそうな目に遭いながらも、角幡はこの探検で空白の五マイルのほとんどの踏
破に成功した。自分の目で確認できなかったのは、距離にして合計わずか二キロ
かそこらにすぎない。
この成果に概ね満足して、帰国した角幡は、朝日新聞社に入社した。

しかし新聞記者を続けるうちに、再びツアンポーへの思いがじわじわと重みを増
してくる。もっと深いところでツアンポー峡谷を理解したい。もっと奥深くへ行
って、どっぷり漬かりたい。もっと逃げ場がない旅がしてみたい。
ついには退職し、再びツアンポーへと向かう。


ところがタイミング悪く、2008年北京五輪とダライ・ラマがチベットに亡命して
五十年目というタイミングに当たり、チベットでは大規模な抗議暴動が起きた。
外国人のチベット入域は極端に制限され、角幡は無許可でツアンポーに向かうこ
とに。


とまあ、ツアンポー探検の歴史と、角幡自身のツアンポー行とが語られ、にわか
ツアンポー博士になれます(笑)。
会社を辞めて無許可で向かったツアンポーでは、またまた死の危険と隣り合わせ。
読みながらぞっとするような危機を迎えます。
この本が出てるんだから、ここで死んだんじゃないよな、生還したんだよな、と
思いながらも読んでてどきどきしましたよ。


そんな「これぞ探検!」な探検記。
これからの時代、こんなオーソドックスな探検記はどんどん珍しくなっていくん
でしょうね。
だからこそ、この本が新鮮なのです。


『空白の五マイル』 角幡唯介

2011年1月8日土曜日

「同人誌ができるまで」のムービーを印刷所が公開、製本の様子などが紹介される

「同人誌ができるまで」のムービーを印刷所が公開、製本の様子などが紹介される: "昨年末(12月29日~12月31日)にかけて行われた世界最大級の同人誌即売会「コミックマーケット79」のように、同人誌が販売されるイベントは数多くありますが、実際に同人誌を印刷している様子が印刷所によってムービーで公開されました。

印刷から出荷までの一連の流れが軽快な音楽と映像で紹介されており、普段同人誌を手がけているサークルはもちろん、購入する側にとっても貴重なムービーとなっています。

詳細は以下から。

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双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

人間が言う正しさとは、

都合がいいかどうかのことである。


今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月7日金曜日

こんな本読んだよ!1101070241

フリーター、家を買う 有川浩 幻冬舎

大学卒業後就職した会社を三ヶ月でやめてしまった誠治。その後だらだらとバイトで食いつなぐ毎日。父親とも険悪な関係に。
しかし、母親のうつ病をきっかけに一念発起して再就職。父親と協力して母親のために家を買う。
ドラマにもなった話題作。おもしろかったですよ。

フリーター、家を買う。

本のご紹介です。歌うクジラ 下

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆話題の小説系

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歌うクジラ 下  村上 龍
¥ 1,680  講談社 (2010/10/21)

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棲み分けがなされていたのだった。格差が広がり、不要の争いが
生まれたが、棲み分けがなされると、社会は平和になった。

不老の遺伝子、SW遺伝子を組み込まれた富裕層の人々と、労働者
階級に属する人たちは、互いに別々の地域に住み接触を持たない。
貧しい人々は裕福な暮らしを知らないため、そこに悩みも妬みも
持つ必要がなかった。

アキラたちが訪れた労働者階級の町は「羊バス」と呼ばれていた。
その背後にある山を越えると、向こうは富裕層の住む地域だ。ア
ンジョウに導かれ、アキラ、アン、サブロウは未知の領域へと足
を踏み入れる。

金属の円盤の隙間から入り込んだそこは、人工的に無菌状態に置
かれた区域だった。実験だったのだという。

だが無菌状態で人が生きていけるわけもなく、そこに入れられた
大半の人が死んだ。生き残ったわずかな者が、水耕栽培で稲を
作って暮らしている。富裕層のための食べ物だ。

この社会では性犯罪が大きな問題となっている。下層階級は精神
安定剤でコントロールされており、平穏であるが、上層の人たち
の間ではその犯罪が耐えなかった。むしろエスカレートするばか
りだ。

無菌空間をさらに奥に進むと、性的欲求を覚えただけで全身が痛
むICチップを埋め込まれた男たちがいた。そこでは裸の女が見世
物としてさらされ、しかし男たちは触れることができない。

アキラはその場所で、アンを犯したい衝動に駆られる。彼は必死
で「想像」した。アンを犯して殺せば自分の旅はここで終わりに
なるだろう。具体的に未来を予見し、そうしてはいけないのだと
自らの衝動を押さえ込む。

欲望に打ち勝ったアキラのもとへ、サツキという老女が現れる。
かつてアキラを性的玩具として買ったことがある女だ。

彼女の案内で、アキラは一人上層の人たちが住む地域を進む。

動物として、原始に戻ることで理想社会を築こうとした人々の集
団を見た。病気になった老人たちが集められる洞窟にも入った。

老人の介護をしているのはロボットだ。ロボットの手で消毒され、
排泄を処理され、ただ生きているだけの姿にアキラは衝撃を受ける。

アキラの目的は、富裕層の男、ヨシマツに会うということだ。彼
に会うため、アキラは宇宙エレベーターに乗って地球の外へ出た。

選ばれた者たちは宇宙空間で暮らしていた。とうとう、目的の男、
ヨシマツに会ったアキラはこの世界の謎を知らされることとなる。

ヨシマツはSW遺伝子を持っている。人類の支配者と呼ぶべき人物
である。ヨシマツはかつて、性犯罪がはびこる社会を正すために
科学の力を用い、重大な損失を社会に招いた。

命を生む営みを、ヨシマツたちは制御しようとしたのだ。だがそ
れは失敗に終わり、女たちは子を宿すことがなくなった。

ヨシマツは命の誕生を、科学の手が及ばなかった下層階級の女た
ちに託そうとする。彼女らに自分たちの子供を生ませようとした。

アキラはそのような経緯で生まれた子であるという。ここまで来
るよう仕向けたのもヨシマツである。生まれた地から離れ、困難
を乗り越え、ヨシマツにたどり着くよう仕組まれていたと言うの
だ。

ヨシマツがそれを欲した理由。それはヨシマツがアキラの命を
乗っ取ろうとしたためだった。ヨシマツはもはや、体を失い脳し
か生きていない。ヨシマツの脳との同化を迫られたアキラは……。


管理社会と個、希望と絶望、暴力とセックス。村上龍さんらしい
物語だった。文章も濃く、緻密で体力勝負って感じで、ほんと、
堪能させていただいた。ありがたい、幸せだわ。

「恐怖は逃げれば逃げるほど追いかけてくる。向かい合えば自然
に消える」なんて、いつもの龍さん哲学も満載。お好きな方はぜ
ひどうぞ。

ただちょっと描写はグロテスクなので(私は気にならなかったけ
ど)、その辺は一応覚悟なさっておいてください。

間違っても、あのオシャレエコなカバーデザインにだまされて、
「クジラ? かわいくね? スピリチュアルっぽい話じゃね?」
なんて、安易な気持ちでは触れないように。

悶絶卒倒間違いなし! いろんな意味で危険です。

歌うクジラ 下  村上 龍

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

愚痴は、

発した自分の方向性が違っているという

ありがたい信号だ。

今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月6日木曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

自由とは、

ルールからはみ出した者ではない。


ルールをもてあそぶ者が勝ち取るものだ。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。歌うクジラ 上

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆話題の小説系

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歌うクジラ 上  村上 龍
¥ 1,680  講談社 (2010/10/21)

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2122年、タナカアキラは新出島を脱出し、本土へ向かおうとして
いた。

新出島とは九州北部に作られた島のことだ。昔、外国人を住まわ
せた土地にちなんで名づけられた。犯罪者が流される島である。
アキラは父の遺言を胸に、本土のある人物に会おうとしていた。

島にはクチチュという変異種の人間がいる。彼らはこめかみに開
いた穴から毒物を分泌する。アキラはクチチュの一人、サブロウ
という男と道行きを共にすることになった。また、アンという女
と知り合い、彼女の助けを得て本土へつながる橋を渡る。

2122年の日本は「文化経済効率化運動」なるものによって大きく
変えられていた。まず、非効率だからという理由で敬語が廃止さ
れた。

敬語を扱えるのは少数の人間しかいない。アキラはその一人だが、
それは父がサーバ管理というエリート職についていたからだ。父
のデータべースに触れることで、アキラは自然な敬語を覚えた。

だが、その父は殺された。「テロメア」を切られたのだ。

2122年は人の寿命を自由に操れる時代である。その発端となった
のは、2022年にハワイの沖でグレゴリオ聖歌を歌うクジラが発見
されたことだった。

そのクジラ、singing whaleは長寿の遺伝子を持っていた。略して
SW遺伝子。その遺伝子を組み込むことで、簡単に寿命を長くするこ
とができた。

同時に、命を永らえる遺伝子も発見された。その遺伝子、テロメ
アを切断されてしまうと、急激な老化が始まり死に至る。犯罪者
に適応される刑罰が、アキラの父にも下されたというわけだ。

本土に渡ったアキラはアンの導きのもとに、岡山を拠点とする反
乱分子の仲間に加わることになる。

反乱分子はもともと、外国から日本にやって来た移民たちである。
政府の圧制から逃れようとし、彼らは岡山にアジトを築いていた。

彼らの言葉は独自である。日本語からの独立を求めている。外国
人にとって難解である助詞をあいまいにすることで、彼らは彼ら
の言語を作り出そうとした。

「冗談ほどじゃないよ。おれたちがお前を信頼するから、絶対お
れたちが嘘を言うな」 移民の反乱分子達はこんな話し方をする。

アジトは自由だった。文化経済効率運動によって、日本の社会で
は食欲が悪とされている。楽しむ食事は罪悪なのだ。

人々は棒食と呼ばれるスティック状の食べ物を食べ、そこに入れ
られている精神安定剤によって管理されている。

だがアジトでは、メキシコ料理のナチョスが出された。アキラは
それを口にして不思議な興奮を覚えた。

移民たちは資金を得るために、ある取引を成立させようとしてい
た。だが時間に遅れ、中国人の罠に落ちる。移民たちは頭を割ら
れて殺されて、スープにされて食べられてしまった。

アキラを救ったのは、彼の脳に直接語りかけてくる謎の男の声で
ある。父の遺言にあった人物だ。アキラは彼に会わなければなら
ないし、彼もアキラをどこかで見守っている様子である。

生き残ったアキラはアンとサブロウを連れて、中国人の拠点から
脱出する。このとき、ネギダールという猿と人の混血女の飛行機
に乗って空を飛ぶ。この場面、爽快。

アキラは労働者たちの住む地域に下りた。劣悪な環境下で人々は
暮らしている。文化経済効率化運動の後、富める者は長い寿命を
手にし、いっそう裕福になった。だが貧しい人は命を削って働き
続け、希望のない生活を余儀なくされている。

ここでアキラはアンジョウという男に出会った。新出島にいた男
だ。アンジョウは新出島で、子供を裕福な老人に売っていた。性
の相手をさせていたのだ。

現れたアキラにアンジョウはおびえ、許しを乞うた。アンジョウ
は三人の子供と暮らしているという。子供たちは足に、歩くと痛
みを伴う輪をはめられていた。

以下下巻へ。

本日ご紹介の本はこちらから↓
歌うクジラ 上  村上 龍

2011年1月5日水曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

悔しさや恐れ、悲しみを完全否定することは、

半分、本能を捨てるようなものだ。

今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。自己信頼[新訳]

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆自己啓発系

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自己信頼[新訳]   ラルフ・ウォルドー・エマソン
¥ 1,260  海と月社 (2009/1/26)

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帯にあった「オバマ大統領座右の書」という文句に惹かれて読み
始めた。薄い本だ。字も大きい。

著者のエマソンさんという人は、19世紀のアメリカに生きた思想
家なのだそうだ。牧師の職を得たものの、形骸化した教会の教え
についていけず、野に下って己の思想を追求した。

形式を否定し、個人の中に神を見ようとした。世間体よりも己の
信念に従って生きることを是とした彼の教えは、過激なものとし
て批判を浴びたこともある。

この「自己信頼」は、彼のそういった思想をまとめたものだ。
エッセイ、散文のような感じ。これまでにも何度か邦訳されてい
るが、現代人に向けたメッセージとして新な訳本が出された。

以下、いくつか文章を抜き出してみる。

・世間の中にあって大衆の意見に従うことはたやすい。ひとりで
いるなら、自分の意見に従うのは造作もないことだ。偉大な人と
は、たとえ群衆の中にあっても、一人のときと同じ独立心を保ち、
にこやかな態度で人と接することのできる人である。

・社会に服従することを拒めば、世間の不興を買ってむち打たれ
るだろう。だから人は他人の表情を見て、相手の機嫌をうかがう
ようになる。

しかし世の人々の渋面は、そのやさしげな表情と同様に深い理由
などない。それは風がふくまま、新聞の論調にあわせて浮かんだ
り消えたりする。

・草の葉や咲きほこるバラを見ると、自分が恥ずかしくなる。

我が家の窓の下で咲いているバラは、過去のバラや、もっと美し
いバラを気にかけたりはしない。

これらのバラはあるがままに咲いている。神とともに今日という
日を生きている。これらのバラに時間はない。ただ、バラという
ものがあるだけだ。

・自分以外のものに依存している人は集団におもねり、数を頼み
にするようになる。政党はひんぱんに集会を開き、若い愛国者は
自分が前より強くなったように感じる。

しかし友よ! 神はそのようなやり方ではなく、まさに逆の方法
によってあなたの中に宿るのだ。

外からの支援をすべて退け、一人立つときにのみ、人は強くなり、
権利を手にする。一人の人間は、一つの町より優れた存在である
はずだ。

他人には何も求めるな。そうすれば万物流転の世にあっても、あ
なたは唯一不動の柱として、周囲のものすべてを支えるようにな
るだろう。


世間からはみ出すことを恐れるな。堂々と個人であれ。

そうエマソンさんは説くが、といって孤立、孤独の人ではなかっ
たようだ。思想家とも交流を深め、生涯の友情を誓った相手もい
る。

流されず、個と立って人と交われ、ということか。

大統領が読んでいるというのもうなずける。リーダーには必要な
心構えなのかも。

自己信頼[新訳]

第342冊 レスラー「FBI心理分析官2」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 342 冊
              
                       2011.1.4
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【1】読書感想 (第342冊)
  
レスラー  「FBI心理分析官2」  ハヤカワ文庫

1996年日本語訳単行本刊行、2001年単行本化されたから、もう十数年前の
ベストセラー。
プロファイリングという捜査技法ですっかり有名になった著者レスラー氏。
冒頭では、彼の近年の活動について言い訳めいた説明が続きうっとおしい
が、事件そのものに話が収斂されてゆくと内容も重くなってゆく。

全部で9章あり、つくば母子殺人事件という日本の事件解明から話は始ま
る。
ヴェトナム戦争での心的外傷後ストレス障害を含んだ様々な類型犯罪。
ハロウィン訪問で起こった誤射事件。
連続殺人事件の考察や、詳細なインタビュー。
英国と南アフリカの事例レポート、地下鉄サリン事件と続く。

前作の衝撃度には及ばなかったが、実際にあった事件をもとに意見開陳し
ている重みは大きい。
こういったノンフィクションは、感想如何より、読んでない人は読んでみ
てから、といった気持ちが大きい。
読んだ人ごとに感じたことや思うことは千差万別だろうし、ベクトルが
違えば意見交換にもならないだろう。
発刊後十数年も経ってようやく読んだわけだが、こういったベストセラー
は、まず読む方が先だったと思う。



FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記

FBI心理分析官〈2〉―世界の異常殺人に迫る戦慄のプロファイル

2011年1月4日火曜日

書籍を無料で電子書籍化してくれる代行サービス「SCAN48」

書籍を無料で電子書籍化してくれる代行サービス「SCAN48」: "2010年に大躍進したサービスの1つとして、本を送るとスキャンして電子書籍化してくれる「BOOKSCAN」がありました。基本は1冊100円、書籍を宅配便で送るだけという簡単手順で、PDF化まで3ヶ月待ちという大人気っぷりでした。

そんなBOOKSCANと同じように、書籍を電子書籍化してくれるサービスが「SCAN48」。こちらはなんと価格が無料だそうです。一体、どんなカラクリになっているのでしょうか……。

詳細は以下から。

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"

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

道を極めようとは思わない。

歩いた跡が道となるのだから。


今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月3日月曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

「だいじょうぶ」


最も美しい日本語のひとつ。

今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月2日日曜日

第341冊 原りょう「私が殺した少女」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 341 冊
              
                       2011.1.2
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【1】読書感想 (第341冊)
  
原りょう  「私が殺した少女」  ハヤカワ文庫

直木賞とファルコン賞をW受賞した、原りょうの代表作にして傑作。
原りょうの「りょう」は、「寮」のウ冠を取った字体であり、文字化けし
そうなので使用しない。

題名から邪推すると、ロリコン犯人の悪徳小説のように思えていたが、
内容は全く違う。
沢崎探偵が依頼主宅を訪問すると、突然誘拐犯の共犯者として逮捕されて
しまう。
何がなんだか判らない展開はまるで自分が沢崎探偵になっている様に同化
させてゆく。警察署で取調べを受け、事情聴取を受けている頃には完全に
小説にのめり込んでしまっている。
依頼主の娘、天才ヴァイオリン少女が誘拐され、沢崎探偵は誘拐犯の一味
と誤解されていたのだ。
誘拐犯からの相次ぐ指令で、事態は少しづつ見えてくる。
この読めば読むほど見えてくる展開がたまらん、これは最高に傑作だ。

ハードボイルドの権化のような作品。
探偵の行動や思考・会話は一言一句おろそかに出来ない隠し味があり、
三十分で二十ページしか読み進められない。
四百数十ページの長編なので、時間を見つけては読み進めたが、完読まで
に一週間も掛かった。
でも、この一週間は本当に有意義だった。
面白い本を読んでいる期間は、本当に楽しい。

著者の第一作「そして夜は甦る」は良さが判らなくて、自分には合わない
作家なんだろうと本作(第二作)を長い間放置していたんだが、こうも
素晴らしい第二作に出会えた例はない。
第三作も素晴らしければ著者が本物だという事だし、そうでなければ本作
「私が殺した少女」が本物という事になろう。

四百数十ぺーじあるのだが、どのページも目が離せず、淡々とジリジリと
話は進む。予想外の展開が多く、ストーリーは探偵の勘がことごとく当た
るのが有利だが、警察捜査と探偵単独捜査の対比によって違和感とまで感
じさせないようにしている造りが美味い。
誘拐となれば家族や親戚が重要な登場人物なのだが、最初から「変だな」
と思う動きをしている人物がいる。
えてしてこういう人物の動きは最小限の描写に留められており、ここに目
星をつけて読み、最終的にもクローズアップされてしまったのは残念だが、
何度も事件が解決しそうになる造りなので、その都度「読みが間違ってた
のか?」と混乱できて楽しめた。

ハードボイルドものは東直己や黒川博行などで好きだが、本作で一層好き
になった。
こういう「早く読めば良かった」と思える傑作に、今年は何冊出会えるだ
ろう。



私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

百年じっと願うより、

今、一歩踏み出す。

今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第427号『引かれものでござい』

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週刊 お奨め本
2011年1月2日発行 第427号
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『引かれ者でござい』 志水辰夫
¥1,600+税 新潮社 2010/8/20発行
ISBN978-4-10-398606-5
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今年最初のオススメ本は、時代小説から。
そういえば2010年の最初のオススメも時代小説でしたね。?田郁の『八朔の雪
 みをつくし料理帖』。ここ数年、時代小説好きなんです(笑)。


さて、『引かれ者でござい』。
『つばくろ越え』の続編、蓬莱屋帳外控シリーズ二作目になりますが、前作を読
まずとも、本書からいきなり読んでも問題ありません。ありませんが、やっぱり
順番に読んだほうがわかりやすくはあります。


蓬莱屋は飛脚問屋。江戸から届け先までひとりで運ぶという「通し飛脚」を考案
して名を売った。ひとりで走りぬく健脚、預かり物を守り抜く信用、飛脚を務め
るのは誰でもよいというわけではない。
蓬莱屋の飛脚の面々がそれぞれの仕事を通して関わったさまざまな土地、事件、
人…。

三篇収録の短篇集。

表題作の「引かれ者でござい」は、尊皇攘夷を騙る悪党浪人連中から放蕩息子の
身代金を要求された多賀屋の使いで、三百両を運んできた鶴吉の話。
「旅は道連れ」では仕事を終えて急ぎ江戸へ帰ろうとする宇三郎が、大雨で氾濫
した川で足止めを食らい、迂回路を求め峠を越えようとしたところ、思わぬ道連
れができ…。
「観音街道」は、むかし蓬莱屋で勤めていた次郎吉をふたたび飛脚仕事に誘うた
めにやってきた治助が、藩に締め付けられる炭焼き衆の反乱に巻き込まれる。

江戸時代を舞台にした小説、という時代小説のくくりのなかで、飛脚である彼ら
は江戸から離れて、地方を走る(『つばくろ越え』のほうでは江戸を舞台の話も
あるのだが)。
町人ではない、武士でもない、本来圧倒的多数であるはずの、農村、山村に生き
る人びとの暮らしをリアルに描く。
百姓も、炭焼きも、浪人も、抜け目なく、したたかに生きている。
ずる賢く、狡猾に、精一杯に、できるかぎりの手を使い、知恵を使い。
虐げられる民衆という姿とは遠い、そのありよう。
新鮮!


そしてなにより魅力なのが、志水辰夫の文章である。
美文であるというのと違い、流麗であるとかそういうこともなくて、むしろハー
ドボイルドな文体であるのは、かつて「シミタツ節」と呼ばれていた頃と通ずる。


ここ数年、めっきり時代小説を読む機会が増えました。
私の年齢がそうさせるという部分も無きにしも非ずなのではありますが、実際、
時代小説に優秀な書き手が増えている気がします。
もちろん、時代小説以外の分野でも、優秀な新人はどんどん登場していて、ベテ
ラン作家も新作をどんどん発表していて、だからつまり、分野に限らず読みたい
本に追われて嬉しい悲鳴を上げ続けている今日この頃であります。

発行人はたぶん、普通の方々よりも読書に充てる時間が多くて、その分たくさん
読んでいて、だからこんなメルマガを出しちゃってるわけですが、当然のことな
がらそれでも個人が読める本の数なんて高が知れてます。ほぼ一日一冊、年400
冊ペースで読んでいるにもかかわらず、読むのに追いつかない新刊の数よ! 読
みたいのは新刊だけじゃないし!
もっともっと読みたい、あれも読みたい、これも読みたい。

私よりもっと読書タイムが限られていて、その分読む本を選びたいと思っている
だろう皆さんに、「この本読んでる時間に別の本読めばよかった、もったいなかっ
た!」という思いをしなくてすむよう、おもしろい本をオススメしていきたいと
思っています。
……その「おもしろい」の基準が、上手くマッチするといいんですけど(^^;ゞ。


発行人の独断と偏見のセレクトが、皆さまのお好みと多少なりとも合いますように!


『引かれ者でござい』 志水辰夫

2010年12月31日金曜日

第340冊 山本周五郎「さぶ」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 340 冊
              
                       2010.12.31
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【1】読書感想 (第340冊)
  
山本周五郎  「さぶ」  新潮文庫

学生の頃読んでいただろうと勝手に思い込んでいたが、今回読み始めてみ
て、すぐ未読だった事を悟った。

何をやってもドジでグズな「さぶ」と、対照的な「栄二」。
経師屋の住み込み奉公の二人は互いに励まし合いながら、というよりは、
栄二がさぶを励まし続ける形で修行期間が過ぎてゆく。
大体こういう始まりは、颯爽と上手く行っている方に不幸が訪れる。
本書も予想した通りだったのだが、その不幸が半端ない。
ここまで何もかもが裏目恨めに出てゆくと、後半でどう落とし前をつける
のか不安になってくる。
本書の最大の読み場はこの中盤で、鬼平ファンお馴染みの石川島の人足寄
場での描写は詳細を極め、刑務所実録でも読んでいるような充実ぶり。

ただし終盤の落ち着けどころ、これは少し説教臭い。
周五郎作品全体に言えるのが「説教臭さ」で、サラリと事象だけを淡々と
積み重ねて行った方が重みがあるのに、じわじわと気付かせようと書き重
ねてゆく重圧が重い。
また、栄二が人生転落してしまう原因が終盤で明らかにされるのだが、こ
の原因はとんでもない話。
すっかり人間の出来上がった栄二だから修まるのであって、そこまで人の
人生いじくれるものだろうか、と筋に納得がいかない。

小説としては中盤まで面白くて先が読みたいばかりに一気呵成に読み耽っ
てしまう。
それだけに終盤が、明らかにされてゆくストーリーに不満が残ってしまっ
た。



さぶ (新潮文庫)

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

ありがたい。

すべてがありがたい。

すべてが。

今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月30日木曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

「損得」より

「心地いい」かどうかで判断する。


今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月29日水曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

失わないとわからないのか。

その大切さが。

今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月28日火曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

百人がつまらないという状況でも、

自分一人だけは楽しんでいたい。


今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月27日月曜日

本のご紹介です。スリー・カップス・オブ・ティー

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆話題の小説系

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スリー・カップス・オブ・ティー  グレッグ・モーテンソン
¥ 1,995  サンクチュアリパプリッシング(2010/3/25)

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1993年、アメリカ人のグレッグ・モーテンソンはK2の登頂に失敗、
下山途中に山道に迷い、パキスタンの小さな村にたどり着いた。

グレッグは父の仕事の都合でアフリカで育った。妹は難病をわず
らっており、その影響もあって、成人した彼は看護師の資格を手
にしていた。

パキスタンの小さな村、コルフェ村で彼は村人に治療を授ける。
村人と心通じ合った彼は、村に学校がないことに愕然とする。小
さな子供たちが、霜の降りた地面に座り、そこに木切れで字を書
いていた。いたいけな姿が妹に重なって見えた。

「僕が学校を建てます」。彼はこう宣言して村を去った。

アメリカに戻り、グレッグは著名人に宛てた手紙を書き始めた。
500通余り出したがうまくいかず、行き詰ったところでヘルニ博士
という人の名前を知らされた。

ヘルニ博士はマイクロチップを開発した科学者である。同時に登
山家であった。気難しい人物だったが、支援を引き出すことに成
効。寄付された120万ドルを持って、グレッグは再びパキスタンへ。

ここから、私は少し笑ってしまった。グレッグは徒手空拳、何も
知らず、何も持たない。学校を建てるための資材を発注し、山道
を運ぶのだが、そのどたばたぶりと手際の悪さにははらはらさせ
られっぱなしだった。

なんとか、コルフェ村にたどり着いたグレッグ。しかし村人は、
学校よりも橋が必要なのだと彼に話した。コルフェ村と下の町を
つなぐのは一本のケーブルだけなのだ。これでは資材を運ぶこと
もできないと、グレッグは改めて己の計画の甘さを思い知る。

何も得ないままアメリカに戻ったグレッグは、ヘルニ博士に泣き
ついた。失敗したこと、ついでに、アメリカに待たせていた彼女
にもふられてしまったこと。ヘルニ博士は橋のための金を出した。

老齢の博士には死期が近づいていた。口の悪い老人だが、子供た
ちのための学校ができるのを、彼は心底心待ちにしていたのだ。
早く建てて写真を持って来いとグレッグをせかす。

博士の助力で橋ができ、学校の建設にも取りかかった。この頃、
グレッグは新しい恋をしていた。今度は結婚にまでこぎつけ、工
事を済ませてアメリカに帰りたかった。博士の容態も気になる。

急ぐ彼に村の長老が言った。「私たちのやり方も尊重してくださ
れ。よその人が来たとき、私たちはお茶を出してともに飲む。最
初の一杯目はよそ者。次の二杯目はお客、三杯目で家族となる。
その時間を大切にしてくだされ」

欧米のやり方がすべて正しいわけではない。村には村の文化と歴
史があるのだ。その中に入り込まなければ真の理解など得られる
べくもない。グレッグはそのことを知った。

イスラムの掟厳しい山間の村だ。あるとき、アメリカ人の学校が
建てられるときいて、有力者が妨害に訪れた。逆らって建てるの
ならば、羊を十二頭差し出せと無茶を言う。羊は家族であり、大
切な財産だ。

村人は泣いたが、長は言った。「悲しむことはない。彼らは一時
の食料を手に入れたかも知れんが、我々の子供たちには学校が残
る。字が読めるようになる。そのためなら何を犠牲にしても惜し
くはない」

コルフェ村に学校が建ち、グレッグは博士の支援を受けて、ほか
の村にも学校を建てようとした。親たちはこぞって学校を求めた。

貧しいのは教育がないせいだと言う。狂信的なイスラム信者にな
るのは、まともな教育が受けられないせいだと言う。テロの温床
とは実は、教育を受けられない貧困の中にあった。

誘拐されたり、資金援助にかけずりまわったり、アメリカでテロ
リスト扱いされたり、グレッグは大奮闘。やがて8年が経ち、パ
キスタンにいたグレッグに重大なニュースがもたらされた。

「アメリカの、ニューヨークという村が爆撃された」

それがイスラム教徒の行いであると知り、グレッグの友人たちは
皆心を痛める。イスラム教徒の名に値しないと、憤慨する者ばか
りだった。

あるとき、夫を亡くした女性たちがグレッグのもとへやって来た。
貴重な、生みたての卵を手に手に持って。彼女らは言った。

「ニューヨーク村で夫を亡くした女性たちに届けてください。私
たちからのお悔やみのしるしとして」


もうここで大号泣だった。たんぱく資源の乏しい村だ。羊が一頭
解体されると、人々は祭り気分でむしゃぶりつく。大切な卵を、
同じ悲しみを味わったアメリカ人に渡してくれとパキスタンの貧
者の村が泣くのだ。傍目にこっけいなところがまた、いじらしさ
と感動をそそる。

アメリカが国を挙げて憎み、敵と定めたイスラムの女が心を痛め
ている。敵であるはずのアメリカ人のために。戦争とは何なのか、
考えさせられる場面だった。

また、教育の大切さにも、改めて思いを深めることができた。

今年を締めくくるにはふさわしい一冊と言える。

あとがきがまた最高にいい。素晴らしい「オチ」になっている。
そやな、そやなと非常に納得できた。確かに私も、グレッグ先生
は素晴らしいと思うけれど、親しく付き合っていける自信はない。
(ごめんよ、グレッグ)

最後でさっぱり笑えるのもよかった。

スリー・カップス・オブ・ティー  グレッグ・モーテンソン

No.381 石田衣良「龍涙(池袋ウエストゲートパーク9)」→ 3.5点

石田 衣良「龍涙(池袋ウエストゲートパーク9)」→ 3.5点
発行元 :株式会社文藝春秋
初版発行:2009/8/10

石田 衣良(イシダ イラ)

あらすじ

池袋商店街の一角にある小さな果物屋。
ここの若主人(兼使用人)の真島誠は、警察や弁護士でもとうてい解決が
難しい様々な事件を無料で解決してくれる若きトラブルシューターとして
池袋中の若者たちに知られていた。

悪質なキャッチセールスの被害に苦しむOL、孤独なホームレス、社会の底
辺で喘ぐ中国人労働者。
今日も真島誠の前には様々な人生の中で深刻なトラブルを抱えた「依頼人」
達が現れる。
絶好調のシリーズ第9弾。

コメント

2001年に衝撃的なデビューを飾った池袋ウエストゲートパーク(IWGP)シリー
ズも、本作でもう9巻目となった。
だいたい一巻あたり4作が収録されているので、既に35作品以上を読んだこ
とになる。

5〜6巻目くらいでは「ちょっとマンネリ&トーンダウンしてきたかな」と
いう感がなきにしもあらずだったが、7巻以降は再び面白さが増してきた気
がする。
一作目からのファンなのだが、絶妙の軽さと読み応えのバランスが嬉しい。

複雑さを増す一方の現代社会に翻弄されながら、そうは言っても俺たち庶民
は半径5mのリアルな世界でひとつひとつ問題を解決していくしかないよな、
という健全な開き直りは本作でも遺憾なく発揮されていて独特の爽快感があっ
た。

個人的には表題作「龍涙」が一番良かった。
まっとうな勤勉さと善意、そしてちょっとした「粋」があればそれだけで人
生楽しいよな、と思える一冊。

石田 衣良「龍涙(池袋ウエストゲートパーク9)」

了。



0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

元気いっぱいのときは、人のため。

元気のないときは、自分のために動く。


今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月26日日曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

依存せず自立するためには、

その過程で「わがまま」が必須であることは事実だ。


今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第426号『路地裏ビルヂング』

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週刊 お奨め本
2010年12月26日発行 第426号
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『路地裏ビルヂング』 三羽省吾
¥1,524+税 文藝春秋 2010/7/10発行
ISBN978-4-16-329340-0
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三羽省吾を紹介するのは、これで四回目かな?
発行人けっこうお気に入りの作家です。


入り組んだ路地の、築後半世紀近く経っていると思われるおんぼろビル、「辻堂ビ
ルヂング」を舞台にしたゆるーい人間ドラマ。
感動とか涙とか愛とかそーゆードラマチックな盛り上がりはないし、ほのぼのとか
優しさとかそーゆー癒しもないけど、ふつーの人々のそれなりの頑張りが、ふつー
にいい感じです。


辻堂ビルヂング5階に、健康食品&グッズの販売会社「オーガニック・ヘルス
(株)』がある。
フリーターだった加藤は、とりあえず半年頑張って失業手当をもらう目的で、こ
の会社に入社した。おそろいの黄色いジャケット、体育会系のノリ、ノルマたっ
ぷり。同期入社はどんどんやめていく。
残ったのは、加藤、元ヤンの酒井、気の弱そうなデブの宇佐美、幸薄そうなメガ
ネ女の沼田、五十くらいのくたびれたオヤジ久米沢。
そんななか、ひとりマイペースだった久米沢の口車に乗って…。
                                「道祖神」


辻堂ビルヂングの屋上には、植木鉢やプランターが大量に置かれ、けっこうな数の
緑が茂っている。その片隅に、小さな祠。
ビルが建っている場所は、江戸時代には街道が交わる辻に当たり、道中の無事を祈
る道祖神が屋上に移されて今も祀られているのだという。

二階には「あおぞら保育園」という無認可保育園がある。
五十半ばで資格のないおばさん、種田はここで働いている。
自慢の息子は結婚して、母親を引き取って一緒に暮らしたいと毎日電話をかけて
くるが、種田は仕事をやめる決心がつかない。仕事はハードで月給は十二万ちょ
っとしかない、執着するような職場じゃないのに。
                              「紙飛行機」


> なにも持っていないただのおばさんでも、きっかけさえあれば、風を上手くつか
> まえさえすれば、まだまだ飛ぶことはできる。[…]
> おばさんは、まだ終わっていない。
> このゾクゾクを手に入れただけでも、私はもう既に飛んでいる。(108頁)


三階には学習塾「辻堂塾」。
そこでアルバイト講師をしている大貫。いまだにバイト生活の自分に忸怩たるも
のを感じている。学生時代の友人の結婚披露宴に出席し、そこで定職を持たない
海外放浪趣味の河原とトラブる。
塾の教え子は公開テストを受けたくないと相談を持ち込み、生活費は底をつき、
黄色いジャケットの男にはひそかに思いを寄せている二階の保母さんのことをか
らかわれ…。
「サナギマン」


> 「人生ってのは、敗北感の上に喪失感が重なって、そのまた上に虚無感とか脱
> 力感とか、たまには人に騙されて、そいつをぶっ殺したいような気持ちとかも
> 重なってって出来てる。つまり人生つーのはだなあ、挫折と絶望のミルクレー
> プなんだよ」(161頁)


四階には「HN不動産分室」がある。契約社員の桜井は、今日もひたすら電話を
かける。最近、このビルに続けざまに泥棒が入り…。       「空回り」

六階「辻堂デザイン事務所」の営業マン、江草。大学で故障するまで続けた野
球の無念を仕事で晴らす。がむしゃらに、やるだけやったといえるだけのこと
をやってみせたいのだ。後輩の背とは振り回されてたいへんだけど。 「風穴」

一階にはお食事処「辻堂」。おでん屋だったりカレー屋だったりお好み焼き屋
だったりホルモン焼き屋だったりするが、店員は常に同じ。そして、とにかく、
まずい。ここで置物のようにちんまりしている管理人が、辻屋の歴史を振り返る。
「居残りコースケ」


ばかばかしくもナサケナイ、おんぼろビルで出会う人々の日常ドラマ。
頑張ってる人も、流されてる人も、ちょっとだけ前向きな人も、困ってる人も、
いろんな人がいて、それぞれの事情のなかでそれなりに毎日を生きている。
同じビルのなかで毎日顔をあわせ、だけど名前も知らない仲の、不思議な距離感。

上に引用した「人生ミルクレープ」、ここだけ読むとなんかマジメにいいこと
言ってるっぽいですが、実はそうとうお間抜けです(爆)。映像を思い浮かべて
しばらく思い出し笑いが続きました(笑)。三羽省吾って、こういうの、うまい
よねー。



『路地裏ビルヂング』 三羽省吾

2010年12月25日土曜日

第339冊 奥田英朗「イン・ザ・プール」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 339 冊
              
                       2010.12.25
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【1】読書感想 (第339冊)
  
奥田英朗  「イン・ザ・プール」  文春文庫

精神科医と患者のとんでもエピソードからなる、短編5編。
こいつぁ面白いや、と第1編(憂鬱脱却のため水泳にのめり込む話)は
読んだが、編を追う毎にインパクトが弱まってくる。
ベストセラーになって、映画化されて、本書の次回作「空中ブランコ」は
直木賞と、今じゃ奥田英朗の出世作となったわけだが、奥田作品全体を
見通せばそこまで評価できるかな?というのが正直な感想。

総合病院の御曹司?は精神科医で、各科で放り出された患者が最後の頼み
と精神科のある地下にやって来る。
思い起こせば、各学年で一二を競う天才秀才は医者になっている可能性が
高い。
そんな彼らは、明朗活発でスポーツマンというより、一癖あるおとなしい
人が多かった。
そこへ以って、開業医の子供であるわけだから、少し変わった医者がいる
設定は実にノーマル。

変わった精神科医に、変わった症状の患者がやって来る。
治療法も変わっていれば、成り行きや結末も変わっている。
小説としてはなかなか良く出来た基本設定なんだが、これが何パターンも
続くと胸焼けしてくるのは私だけだろうか。

面白い事は確かだから、各編、時間を空けて時々読んだ方が良かったのか
も。
もしくは数冊の短編集を著者も変えて、交代交代しながら読めば良かった
のかも。
そうは言いつつ、当然次作「空中ブランコ」は読むつもり。
奥田英朗自体は大好きだから、これからも読んでいきたい。


イン・ザ・プール (文春文庫)

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

戦争なんて絶対亡くならないと言う人よりも、

なくそうともがいている人のほうが好きだ。

今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月24日金曜日

本のご紹介です。「普天間」交渉秘録

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆社会派、ドキュメンタリー系

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「普天間」交渉秘録  守屋 武昌
¥ 1,680  新潮社 (2010/7/9)

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クリスマスなのに。アホのくせにに。いろんな意味で勘違いの
チョイスとなってしまったが。

しかしいい本だった。何より文章がいい。硬質で理路整然として
いて、その上情景描写も素晴らしい。冒頭の、沖縄の海の描写を
読んで、素敵な冒険小説が始まるのかと思ったほどだ。

だが、難解でもあった。もともと政治に詳しくはない。事態や人
が入り乱れ、正確に読めた自信はない。種々読み間違いがあるか
もしれないが、自分なりにわかったことをまとめておきたいと思
う。

守屋氏は防衛次官という職にあって、普天間基地返還の仕事に長
く関わってきた。本書ではその経緯と、著者なりの自衛隊考察の
がつづられている。今日のメルマガでは、普天間基地返還交渉に
ついての部分を主にご紹介したい。

まず、アホの私が驚いたのは、普天間基地返還については、日米
の合意がすでになされていたということ。住宅地の中にあるこの
基地の危険性は、アメリカも十分承知だということだ。

1996年、普天間基地については、海上施設を作ってそこに収容す
ることに取り決めがされていた。名護市の沖に埋立地を作って、
そこに基地を移転するつもりだった。

しかし、沖縄が求めたのは「移動」(本書では単純返還という言
葉が使われている)ではなく、県内からの完全撤去だった。基地
を他県に移せというわけだ。

それを受けて、海上に空港を作る案が提出される。最初は軍用空
港で、後に民間用として沖縄に払い下げられる予定だった。稲嶺
県知事はこれを是として公約に掲げ、当選した。

海を埋め立てるにはアセスメントが必要である。環境を調査し、
影響がないよう配慮がされなければならない。この費用は当初、
沖縄が持つとされたが、知事は費用を出すことを渋った。

政府が金を出して調査を開始すると、妨害の動きが見られた。調
査する民間会社の人間に対して、小船に乗った市民の嫌がらせが
続いた。

やがて、沖縄で事業を手がけるある有力者から「浅瀬案」が提出
される。辺野古近くの浅瀬を埋め立てて、ここに滑走路を作ろう
というのだ。

驚いたことにこの案は、日本政府の頭越しに米国にも持ち込まれ
ていた。沖縄県民から出されたものだ。これで交渉が進むと思っ
たが、浅瀬を埋め立てるのは環境に最悪の影響をもたらす。環境
団体を敵に回すことは必至と考えられた。

小泉元首相はこの案を認めなかった。自身、環境団体に敵視され、
選挙運動が危なくなった経験がある。彼らと対立してはいけない。
また、ジュゴンなどの海洋生物への保護も必要であった。

沖縄は浅瀬案を押す。この辺が奇怪なんだけど、彼らはこの案が
通れば、環境団体が動き始めることを知っているのだ。実質的に、
実現不可能な案であった。

(ここで改めて書いておくけれど、この本は自衛隊の「中の人」
によって書かれたものである。沖縄には沖縄の主張がもちろんあ
ることを忘れてはいけない。しかしこの本を読む限りでは、沖縄
の交渉術は非常にしたたかであり、狡知であるように見えた。)

守屋氏は対抗して、キャンプシュワブの延長上に土地を確保して
滑走路を作る「L字案」を唱える。これなら海への影響は最低限で
済む。

以後、交渉はこの案をメインに進み始め、滑走路をV字型にすると
いう修正が加えられる。

防衛省が窓口となる交渉であるが、沖縄は外務省につてを作り、
省庁同士の争いを引き起こそうとする。V字の滑走路の角度にもこ
だわりを見せ、交渉は遅々として進まなかった。

この間、防衛省の不祥事もいくつかあった。そのたびに守屋氏は
批難の的とされ、また、彼自身を陥れようとする動きもあった。
小池百合子議員などは、沖縄の言葉に篭絡され、交渉の場で一人
反対の陣を張ったこともある。

だがその後、小池議員は梯子を外された格好になり、「なんだっ
たの?」とぼやく羽目に。


守屋氏の日記をもとに書かれたもの。様々な人が実名で出てくる。
大臣が何度か変わり、そのたびに状況も変わるさまには、読んで
いて頭が痛くなるほどだった。

なぜ沖縄はこうまで交渉を引き延ばそうとするのか。はっきりと
書かれてはいないが、あとがきで基地の周辺に落ちる金が、利権
があることが示唆されている。

このあとがきでは同時に、基地周辺に住む一般市民についても言
葉が添えられている。安全を脅かされ、不安なままで過ごす人た
ちが沖縄にはまだたくさんいる。

その人たちのことを、一番に考えなあかんはずやんな。


本日ご紹介の本はこちらから↓
「普天間」交渉秘録

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

語ろう、理想の人類の在り方を。

想像しよう、最悪の事態を。


今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月23日木曜日

第338冊 紀田順一郎「古書収集十番勝負」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 338 冊
              
                       2010.12.23
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【1】読書感想 (第338冊)
  
紀田順一郎  「古書収集十番勝負」  創元推理文庫

神田神保町の古書店。
老人店主の余命は、あと1年ももつかどうか。
後継者は二人、同居して病人介護を十年努めた長女の夫と、店主の後釜を
狙って途中参加してきた次女夫婦。
倫理的には長女の夫であり、この店に長く勤めてはいるが本の知識が浅く、
事務的で商売上手とは言えない。
一方次女の夫は浪花の商人。コテコテの大阪人で、東京人が大阪人に持つ
イヤな面全開な人物。
ただし本の知識や商売のからくりに精通しており、こすっからくて目端が
利く。

この二人の婿に対し、老人店主は古書収集十種で競わせる。
これは古書に対して深い洞察のある著者ならではの本領発揮であり、古書
界でどういった本がお宝なのか、古書収集の醍醐味がどこにあるか、など
滔々と語られてゆく。
ここが本書の白眉。

著者としては、古書界の裏話とミステリを絡めたかったんだろうけど、正
直、古書の裏話だけの方が面白い。
「ミステリが何が何でも大好き」という私ではないので、こんな感想にな
るのかもしれないが、素晴らしいミステリになってるとまでは言えない。
古書に絡む大半は素晴らしい面白さで、このあたりを短編集みたいに一編
一冊で紹介してくれた方が嬉しい。

何はともあれ、本好きの私にとっては実に面白かった。
最終盤、いよいよ十番勝負が大詰めになったとき、完全に密室紛失事件に
なってしまうのは白けてしまい、著者はつくづくミステリとして書いてた
んだなぁと思った。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

「前向き」とは、

プラスの側面だけを見るといいう意味ではなく、

光も影もすべて抱えたまま前に進むことだ。


今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月22日水曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

雨の日だからこそ、できることはたくさんある。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。超雑学 読んだら話したくなる 世界史

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆世間話、時事ネタ系

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超雑学 読んだら話したくなる 世界史  宮崎 正勝
¥ 1,365  日本実業出版社 (2010/8/31)

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大人になって学校に縁がなくなって、かえって学ぶことの意義や
楽しさがわかったような気がしている。

そんな人は少なくないのか。去年あたりから、山川出版の教科書
がよく売れているのだそうだ。日本の歴史、世界の歴史をじっく
り学びなおしたいと思う人が増えているらしい。

そこで手に取ったのは世界史のトリビア、小ネタが集められた本。
世界史の授業中に先生がおまけに付け足して、話してくれたよう
な話だ。えてしてそういう話ばかり、覚えているものなんだよね。

・紀元前一世紀頃。この頃ローマの市民は120万人。そのうち半数
は無職だった。属州に重い税負担を押し付け、ローマ市民は娯楽
にふけっていたのだ。

「すべての道はローマへに通ず」。この言葉通り、たくさんの道
路が建設されたが、これは失業対策だった。それでも仕事を供給
できず、結果、五世紀末には一年の半分175日が休日と定められる
ことに。ローマの休日は数え切れないほどあった。

・応援の際に発する「フレーフレー」は、ヨーロッパを制服した
モンゴル人の雄たけびに由来するもの。彼らの雄たけびはロシア
語で「ウラー」、ドイツ語で「フラー」、後に英語で「フレー」
と言われるようになった。

ハンバーグの起源もモンゴル人である。彼らは遠征の際、馬をつ
ぶして食べることがあった。生肉を刻んで草に混ぜ、柔らかくし
て食べた。これがタルタルステーキの起源であり、後に火で焼く
ハンバーグステーキに変わった。

ハンバーグステーキはヨーロッパからアメリカにわたり、パンに
はさまれてハンバーガーに、そして世界を席巻している。

・スペインによる南米大陸の支配。南米大陸から多量の銀が欧州
へ渡った。結果、銀の価格が大暴落、品物の流通が盛んになり、
経済が活性化した。

スペインはイスラム教徒に支配されていたフィリピンも占領した。
中国の明とはここで貿易を行っており、南米の銀は明にも流れこ
んだ。明は銅の不足に悩んでいたが、銀の流通量が増えたため、
それを貨幣にすることができた。明の税制が整ったのも、新大陸
の銀のおかげなのである。

・アメリカンコーヒーとは、従来より薄いコーヒーを指す。

イギリスの植民地であったアメリカ。紅茶に高い税金が課され、
憤った市民はついに本国に対して独立戦争を起こす。戦時中、紅
茶の輸入が制限されたため、コーヒーが盛んに飲まれるように
なった。ミルクもなく、砂糖もなしで、薄いコーヒーがよく飲ま
れるようになったのだそうだ。

・1914年、セルビアの首都サライエボで、セルビアの民族運動を
威圧するための大演習が行われた。オーストリア陸軍によってだ。

このとき、セルビア人の暗殺団七人が都市にもぐりこんでいた。
その中の一人、19歳のセルビア人青年がオーストリア皇太子夫妻
を銃で暗殺。激怒したオーストリアは、彼の裁判をセルビアに求
めた。

セルビアはその要求の大部分を飲んだが、オーストリア世論は収
まるところを見せず、宣戦布告を行った。その後、スラブ人の盟
主としてロシアが参戦。ヨーロッパ中を巻き込む大戦となった。

第一次世界大戦は、始まった当初は短期決戦になると思われてい
た。一人の青年が放った一発の弾丸が、欧州全体を暗い戦火の渦
に巻き込んだのだ。


各章ごとにまとめが載せられていて、大まかな歴史の流れが把握
できるようになっている。

わずかなこと、ちょっとしたことが影響しあって大きな流れにな
るというのがよくわかるように説明されていた。物語風の記載だ
から、楽しく歴史を理解できるのね。それがうれしかった。

もう年号ばかり、覚えなくてもいいんだもんね。こういう学び方
もあっていいと思う。

超雑学 読んだら話したくなる 世界史

2010年12月21日火曜日

本のご紹介です。伝える力

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆ビジネス、営業系

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伝える力  池上 彰
¥ 840  PHP研究所 (2007/4/19)

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2007年と古い本だけど、今年異例の売れ行きを記録したらしい。
近所のコンビニなんかにも置いてあってね、おばさんたちが「池
上さんの本だって」と手にとって眺めたりもしていた。

2010年、池上さんの大ブレイクを記念して。また、内容もとても
よかった。勉強になる箇所が多くて、珍しくふせんを片手にしな
がら本を読みすすめていた。

解説がわかりやすいと評判の池上さん。彼の「伝える力」は「週
間こどもニュース」という番組で培われた。

「週間こどもニュース」は子供に時事問題を説く番組。相手が子
供だから、難しい言葉を使って説明するわけにはいかない。子供
たちが納得するまで説明をしてあげなくてはならず、いい加減な
知識では通用しないことを実感された。

池上さんは考える。「自分がわかっていないことを、正確に、わ
かりやすく伝えることは不可能だ」。

自分が知らないこと、わからないことは素直にそうと認めよう。
事実に対する畏れを持たずに、真の理解を得ることはできない。
「自分がいかに物事を知らないか」。それを知った上で学び続け
ることが大切だ。

人の気をひく「つかみ」も用いるようにしたい。池上さんは講演
のとき「日本経済が回復したのは小泉首相のおかげ」と話し始め
るのだそうだ。

人々は「エッ?」という顔をする。すかさず、「小泉さんは何も
手を打たなかったので、企業が自力でがんばったのですね」と口
にして、観客の関心をぐっと引き寄せる。

また、伝える力が発揮されるのは会話においてだけではない。文
章を書くときでも、注意すべき点はいろいろとある。

文章力をアップさせる近道は、優れた文章を書き写すことだ。池
上さんご本人も、NHKの記者時代は先輩記者の文章を写して勉強さ
れていた。

独りよがりにならないために、客観的な視点を持つようにもした
い。文章を書きながら、常に「もう一人の自分」を意識するよう
にしたい。池上さんは原稿を書いて自分でツッコミを入れ、さら
なる改良点を見つけるようにされている。

また、書いた原稿はしばらく寝かせて、プリントアウトして読み
返すようにもしている。すると誤字脱字など、画面ではわからな
かったことが見えてくる。

音読するのもよい方法だ。ビジネス文書などでも、声に出して読
んでみると、そのリズムの悪さに気づくときがある。文章のリズ
ムを整えると、読みやすい文章が書けるようになる。

先輩や上司に読んでもらうのもいい。あらかじめ人に話して、反
応を見る手もある。カタカナは多用せず、伝わりやすい、面白く
読んでもらえる工夫をしたいもの。

「そして」「それから」は極力省く。「ところで」「さて」も使
わないようにする。ビジネス文書では「いずれにしても」という
言葉も避けたいもの。これを使うと、前述の言葉に説得力がなく
なってしまう。

よい言葉、豊かな語彙を得るためには読書が不可欠。できれば小
説を読みたいもの。語彙も増えるし、別の人生を知ることで視野
が広がる。ビジネス小説などを読むと、自分の立場に重ねて楽し
く読むことができるだろう。


講演をしたり、難しい文章を書くための本ではない。基本的にビ
ジネス書であって、社会の中で上手に自分の言いたいことを伝え
る方法を書いたもの。

とてもわかりやすかったし、すぐに取り入れられることが多いこ
とがよかった。

ビジネスパーソン向けに書かれた本だけど、どなたにでも役に立
つことが見つかると思う。ご興味のある方はぜひ。

伝える力  池上 彰

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

天国はと地獄は、


自分の心の中にあったんだ。


今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月20日月曜日

本のご紹介です。魚ガールの 築地でうまい魚 食べ歩き

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆生活、ほっこり系

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魚ガールの 築地でうまい魚 食べ歩き 二枚貝、監修・生田與克
¥ 1,260  中経出版 (2010/9/4)

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山ガール、森ガールのお次は魚ガールということらしい。

テレビ朝日の「おかずのクッキング」、番組HPに連載されたイラ
ストエッセイ。二枚貝なるユニットが、築地に出向いて旬の魚を
レポートするというもの。

先生役は築地のマグロ中卸店「鈴与」の三代目、生田のアニキと
呼ばれる方。この方がおいしい魚の食べ方や、見分け方を教えて
くれる。

春 アジ、ホタルイカ、イワシ、イイダコ、タイなど。

中でもイワシは昔から、日本人の食生活に大きく関わっている。

幼いものはシラスと呼ばれる。シラス干しにされる魚だ。釜茹で
にして、干したものがシラス干し。これをさらに乾燥させるとち
りめんジャコと呼ばれるそうだ。(関西人の私はちりめんジャコ
しか知らなかった。関西では、シラス干しはめったに見ない)

大きく育つとメザシになり、煮干になる。塩焼き、つみれにして
もうまい。「七回洗えばタイの味」なんてことも言われるそうだ
が、庶民の暮らしに密着している魚であるのだ。

さばくときは、梱包に使うビニールバンドを利用するとよい。え
らの後ろの辺りに当てて引くと、簡単に三枚おろしができる。

夏 イサキ、サケ、アユ、タカベ、シンコ、コチなど

シンコとはコハダの幼名。4、5センチの頃をそのように呼ぶ。初
物好きの江戸っ子はこの魚がたいそう好きで、今でも初せりは高
値になるのが常のこと。

この魚、コハダになってもコノシロになっても、酢じめで食べら
れることが多い。焼くと人肉を焼くようなにおいがするそうなん
だけど、誰にも真偽はわかんないよね。

シンコはさばくのにも手間がかかるから高い。銀座の寿司屋では
数万円もすることがある。シンコとコハダは脂ののりの違いでわ
かる。旬の魚を知っておくと、寿司屋で一目置かれるようになる。

秋 ハゼ、サンマ、シシャモ、イクラ、エビ、サバ

サンマのおいしい食べ方。焼き魚だけじゃないんだなと、まさに
目からウロコだった。

サンマを三枚におろして塩をふる。15分ほど置いて、酢水(1対1)
につける。これだけでさっぱり、たくさん食べられるようになる。

また、味噌にみりん、ねぎを混ぜたねぎ味噌を、背開きにしたサ
ンマにはさんで焼いてもよい。安くておいしい庶民の味方。いろ
んな食べ方で味わいたいもの。

冬 タラ、アンコウ、ホタテ、ヒラメ、サワラ、カキ

タラとホタテ、私がぜひ、やってみたいと思う料理があった。

タラ豆腐 つけ汁を作る。煮切った酒にしょうゆとほぐした鰹節、
ねぎを入れてつけ汁とする。容器に入れる。

鍋に湯を張り、つけ汁の入った容器を真ん中に置く。豆腐とタラ
を湯の中に入れ、つけ汁につけながら食べる。湯豆腐みたいに楽
しめばよいらしい。

ホタテのカレースープ ホタテの貝柱、適当な貝(本書ではホッ
キ貝を使用)を水に入れて煮立て、沸騰したところにカレールー
を入れる。貝のだしとカレースープが絶妙な味。


二枚貝はアラフォー女子二人のユニット。若い女子アナをねたん
だり、男子ゲットをたくらんだり、ギャグも十分楽しかった。

知らないことを、たくさん知ることができたのもうれしかった。

無性に魚が食べたくなる。「魚っ食い」の日本人の血に訴える一
冊。

魚ガールの 築地でうまい魚 食べ歩き 二枚貝、監修・生田與克



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●年末を見据えて、そろそろプリンターの季節ですなあ。

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No.380 平野啓一郎「ドーン」→ 2.5点

平野 啓一郎「ドーン」→ 2.5点

発行元 :株式会社講談社

初版発行:2009/7/9

平野 啓一郎(ヒラノ ケイイチロウ)



あらすじ

2033年11月6日。
人類はついに火星の上に降り立った。
一兆ドルの予算と人類の夢を乗せた「ドーンプロジェクト」は華々しく成功
したことになっていたが、その裏には闇に葬られた事実もいくつかあった。
発展を続ける科学技術と、ますます混迷の度を深める社会の矛盾を鋭く切り
取った近未来小説。

コメント

「ドーン」とはDAWN、つまり『夜明け』という意味らしい。
人類に夜明けをもたらす火星行きロケットに付けられた名前だ。
人類初の火星旅行を描いたSFかと思いきや、米国軍産複合体やら生物化学兵
器やら大統領選挙やらがわらわらと出てきてどうにもまとまりようのない作
品だった。
なんと言うか、一言で言うと難解な作品。
兵士の派遣労働化とかITの究極である「散影」とか、近未来に現実化しそう
な概念の切り取り方は実にスルドクて唸らされたのだけれど、いかんせんテー
マと登場人物が多すぎてついていけなかった。

個人的な評価としては明らかな失敗作ですな。
最後の方は圧倒的な眠気と戦いながら、根性のみで読了しました。ダメ。

平野 啓一郎「ドーン」



0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

徹底的に自分の欠点と向き合うんだ。

それを活かすか、治すか、放置するかは、

自由なのだから。

今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月19日日曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

長所をガッと伸ばして、

グッと自信をつけて、

短所をサラッと認めよう。


今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第425号『木暮荘物語』

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週刊 お奨め本
2010年12月19日発行 第425号
***********************************************
『木暮荘物語』 三浦しをん
¥1,500+税 祥伝社 2010/11/10発行
ISBN978-4-396-63346-2
***********************************************


三浦しをんの連作短篇集。
世田谷線代田駅から徒歩五分の、築ウン十年の木造二階建ての木暮荘が物語の舞
台。木暮荘の住人と、その周辺の人々が巻き起こす、おかしな物語。


木暮荘203号室の住人である坂田繭が、恋人の伊藤晃生と日曜日の昼下がりにごろ
ごろしていると、三年前にふらりといなくなった元恋人の瀬戸並木が突然やって
きた。
三年間の諸国放浪を終えて帰国したばかりだという。
「住むところが見つかるまでここにいさせて。だって俺たちつきあってるだろ?」
「断じてつきあってない!」
奇妙な三角関係が始まって…。
                           「シンプリーヘブン」


木暮荘の大家である木暮氏は、年寄りではあるが、元気である。
最近木暮氏が考えていること、望んでいることは、セックスである。
きっかけは、旧くからの友人の見舞いに行ったことだった。七十を過ぎている友
人は、老妻にセックスを求めて断られたと愚痴をこぼした。それを聞いて、木暮
は俄然セックスがしたくなったのだ。遠からず訪れるであろう死のときの前に。
頼むべきは妻であろうが、妻とは遠慮のない間柄であるから断られる可能性が高
い。死の間際に妻にセックスを求め、妻に断られてがっかりしたまま死にたくな
い。…
                                 「心身」


峰岸美禰はトリマーだ。一年ほど前に引っ越してきて、近所を散歩するのも楽し
い。散歩の途中、気になるアパートを見つけた。広々とした庭に雑草が生き生き
とはびこり、薄汚れた雑種の犬が飼われている。
ああ、洗いたい。あの犬をシャンプーしてやりたい。
そんなある日、代田駅で奇妙なものを見つける。どぎつい水色をしたキノコのよ
うなもの。謎のキノコはどんどん大きくなり、いつのまにか男根そっくりの形状
になった。しかも誰もその存在に気づいていないらしい。それが見えるのは、美
禰と、駅で知り合った前田という男だけだ。
前田はミネという名のプードルを飼っている。そして、ヤクザだ。
                               「柱の実り」


木暮荘201号室の神崎は、外食産業に勤めるサラリーマンだ。
ある日、掃除機を片付けようとして、うっかり押入の奥の壁を破ってしまった。
隣室の押入との間は板一枚で仕切られているだけだったのだ。どんだけ壁が薄い
んだ! これでは階下の音が丸聞こえなのも当然だ。
空室である隣室にしのびこんだ神崎は、102号室の女子大生の生活を覗き見ること
に熱中しはじめた。
覗き見は気持ちがいい。目だけの生き物になるようだ。
                                  「穴」

他に、坂田繭の勤め先である「フラワーショップさえき」の佐伯が夫に向けるジ
ェラシーが泥の味がするコーヒーに象徴される「黒い飲み物」、「穴」で覗き見
される側の女子大生が、友達が産んだ赤ん坊を押し付けられて右往左往しながら
育児に励む「ピース」、坂田繭を諦めきれない瀬戸並木がストーカーもどきにな
って、「フラワーショップさえき」の常連客であるニジコに拾われる「嘘の味」
の、全七編収録。


共通するのは、セックス。
人と人がつながる。セックスと、人肌のぬくもりで。


> 男は花束をとおして、自身の力をアピールしようとする。金銭や自分の存在の
> 大きさといったものを。でも女は、受け取った花束から相手の気づかいや対話
> の意志を読み取ろうとする。どれだけ自分の好みを知ってくれているか、どれ
> だけ細やかな思いを注いでくれているかを。
> 男女の気持ちがすれちがうのも当然だ。[…]だからこそ、いつまでも飽きずに
> 恋ができるのかもしれない。(122頁・「黒い飲み物」)


> 並木は繭のことが好きだった。いままでに寝た女は繭しかいない。並木が肌を
> 添わせ、粘膜で粘膜に触れたことのある生き物は、地球上で繭以外にいない。
> これから繭のほかに、そういうことをしたいと思える相手が現れるのか定かで
> はない。もし現れなかったとしても、我が人生に一片の悔いなし!(229頁「嘘の味」)


「穴」に関して言えば、すべての男性に読んでほしいね!
女性に対する夢は消えるかもしれないけど、現実的に女性への理解は深まると思
うぞ。さすが三浦しをん、リアルだぜ〜。
いや、すべての女性がここまで自堕落ではないとしても。


帯や、レビューにあるみたいに「木暮荘に住みたくなる」ってことはないけど
(音がダダ漏れだったり、覗き見されたりするようなアパート、やだ!)、住
人たちがやさしいのはたしかです。

なにかあったら、駆けつけてくれる。
助けが必要なときは手を貸してくれる。

木暮荘の生活を覗いてみませんか。

『木暮荘物語』 三浦しをん

2010年12月18日土曜日

こんな本読んだよ!1012180239

『東京島』桐野 夏生 新潮文庫

夫の隆と共にクルーザーで世界一周の旅に出た清子。嵐で遭難してしまい、小さな島に流れ着いた。そこは無人島であった。
やがて、与那国島のきついアルバイトから逃げてきた日本人の若者たちが流れ着く。さらに中国籍の漁船から捨てられた中国人の男たちが加わる。
清子は「トウキョウ島」と名付けられた島の唯一の女、女帝として君臨する。果たして清子は生き延びることができるのか。救援の手は延びるのか。
無人島生活には憧れる。小さい頃、「ロビンソンクルーソー」や「十五少年漂流記」に心踊らせた人も多いのではないでしょうか。 女性を主人公にしたところが新しいですね。


東京島 (新潮文庫)

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

全部うまくやろうとして全部中途半端だった。

ひとつだけでいいんだ。

たったひとつだけで。


今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月17日金曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

楽しいことをやるんじゃなくて、

起こることを楽しむんだ。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。KAGEROU

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆話題の小説系

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KAGEROU  水嶋ヒロ
¥ 1,470  ポプラ社 (2010/12/15)

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ああ、面白かった。本を読みながら、声を出して笑うなんて本当
に久しぶりだ。評判どおり約一時間で読了。わけのわかんない箇
所の戻し読みなんかしなかったら、きっと40分くらいで読めてた。

主人公はヤスオ。41歳の誕生日を明日に控える中年男。リストラ
勧告「らしき話」を受けたので自ら会社を辞め(やむを得ぬリス
トラではない、かっとして自ら辞表を提出している)、借金まみ
れになって自殺を思いついた。

行き着いたのは閉店したデパートの屋上。死のうとフェンスに足
をかけたとき、「ビリー・ジーンのときのマイケル・ジャクソン
のような」黒服の男に止められる。彼はキョウヤ。全日本ドナー・
レシピエント協会の者だと名乗った。

臓器が金になるという。借金を返して、父母に残す資産があると
わかり、ヤスオは逡巡する。ちなみにヤスオ、独身である。結婚
を考えていた女性はいたが、リストラ(?)後、別れを告げられ
てしまった。(40歳という設定にしては、どうなのって感じ)

しかし、どうせ死ぬのだしと、ヤスオはキョウヤの申し出を受け
た。組織の病院へ行き、検査を受け、よくわからんけどデパート
で心臓発作の芝居を打って(その症状が出る不思議な薬がある)、
無事ヤスオは死人となった。

そのとき、組織は精巧な人形を作って両親に見せた。ヤスオの死
を納得させるため。ヤスオは嘆く両親の姿を見て、死ぬべきでは
なかったかと悔やむ。

臓器の提供者が決まった。手術場所への移動の途中でヤスオはそ
の相手と偶然出会う。二十歳になる美しい女性だった。茜という。
彼女の助けになるとわかり、ヤスオはやや安堵する。

ヤスオが再び目を覚ましたとき、彼の体からは心臓が失われてい
た。無事茜に渡ったようだ。だが他の臓器を提供するはずのド
ナーに不慮の事故があり、心臓以外の臓器はまだ彼の体にある。

心臓のないヤスオに生があったのは、人工心臓が埋め込まれてい
たからだ。……!

人工心臓はぜんまい仕掛け。電源を外しても30秒は機能するよう
作られている。ぜんまい仕掛け!

やがて他の臓器を提供する相手が決まり、ヤスオは脱走すること
を決意した。

ヤスオが寝ているベッドには、上体を起き上がらせるためのハン
ドルがついている。リモコン操作ではない。今どき。このハンド
ルが心臓を動かす部分にぴたりとはまることがわかった。

電源が切れる30秒の間のどきどきアクション、ベッドのハンドル
を人工心臓に取り付け、ヤスオは病室の外へ。
(ぜんまい仕掛けだから、ハンドルで回せば動くらしいの)

夜である。なのになぜか、心臓病で入院していた茜と庭で再会。
この時点で手術から(つまりヤスオの心臓が移植されてから)、
二ヶ月が経ったという設定なのだけど、いいのか? 夜中に散歩
なんかしてて。

とにかく出会ってしまったので、二人は茜の秘密の隠れ家へ行く。
防空壕であったらしいその穴の中で、二人は命のすばらしさにつ
いて語り合う。

追われている自覚があるのだろうか。喉が渇いたため地上に出た
ヤスオ、捕まってしまう。彼をここに連れてきたキョウヤは、仕
事の多忙のせいなのか倒れ、

ここから最後のネタばれ

ヤスオの脳が、キョウヤの体に移植される。キョウヤとなったヤ
スオは茜に会いに行き、彼女の心臓の音を聞いた。自分の心臓が、
彼女の中で刻む鼓動の音を……。


あかん。面白すぎやろ。人工心臓大雑把すぎやし、そもそもそん
なものがあるのに、なぜ裏社会の臓器提供事業が成り立つんだ?

逃げるときにも切迫感がなく、そもそもその間も胸の前でベッド
のハンドルを回していると想像するともうおかしくておかしくて!

また、ところどころに真面目腐った「命とは」の問答が挿入され、
その重さとのバランスをとるためなのか、いろいろダジャレがち
りばめられているのもすごい。

「イギリスならジンだな。イギリスジン、なんちゃって」

なんちゃってじゃねえよなあ。

感じで言えば、以前取り上げた「王様ゲーム」みたいな感じ。山
田悠介さんが好きな人なら楽しめそうな物語だった。

しかし、いろいろ予想通りだなあ。ある意味安堵。

ファンの方はぜひ!
(としか言いようがないよ……)

KAGEROU

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●年末を見据えて、そろそろプリンターの季節ですなあ。

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2010年12月16日木曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

コミュニケーションにおいて最も大事なことは、

技術や経験よりも、相手を好きになることだ。

否、相手の中に好きな部分を見つけるんだ。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。仕事に幸せを感じる働き方

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆ビジネス、営業系

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仕事に幸せを感じる働き方  横山 信治
¥ 1,470  あさ出版 (2010/12/10)

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いつの間にか、自分の結婚生活に重ね合わせながら読んでいた。

会社勤めの日々の中で、転職を考えない人は一人もいないのでは
ないだろうか。既婚者の大半が、離婚を思わないことがないのと
同じように。(え? 皆さんはお幸せですか?)

だけど理想の会社(相手)なんて、本当はどこにも存在していな
いのだと思う。奮闘努力の甲斐あって、離別が叶い、新しい会社
(相手)と出会ってみても、自分が変わらなければ元の木阿弥。
やさぐれパンダの日々再び、というのがせいぜいのオチだろう。

著者は金融関連の会社にお勤めの方。これまでに約3000人の転職
希望者に面会してきた。

だがそのうち、転職して成功すると感じられたのはわずか10人程
度。残りの2990人、つまり大半の人々は、転職しても同じ失敗を
くり返すように思われた。

転職希望者はこんな言葉を口にする。

自分は正当に評価されていない。上司が悪い。お客様のための仕
事がしたい。スキルアップ。高い給与がほしい。

しかし、自分の評価に関しては、自己評価の甘さをよく思い知る
べきである。他者に尋ねてみるといい。他人の冷静な目から見る
と、会社の評価が正当なものであるとわかる。

給与に関してもそうだ。能力にきちんと見合っているはず。自分
の市場価格は自分で決めるものである。努力する人、能力のある
人には必ず相応の評価が下される。

また、上司に関しては、不満を言っても無駄。嫌いだと思っても、
自分からあわせていくほか仕方がない。

視点を変えて見ることも大切。若いうち、部下でいるうちにはわ
からない、上司なりの仕事のやり方というものがある。よく「上
司は暇そう」という人がいるが、それでいいのだ。フォローが主
な仕事なのだから、余裕があるくらいでちょうどいい。

顧客第一主義に関してもそうである。たいていの会社は顧客にき
ちんと向き合っている。そうでなければこの厳しい状況で、生き
残っていけるわけがないのだ。

その上で会社の利益も勘案しなければならない。この辺りを勘違
いしている人がたまにいる。

スキルアップも、今いる場所で十分にできること。転職希望者は
「○○がしたい」「○○になりたい」と口にするが、「ではその
ために何か努力をしていますか?」と尋ねると黙る。今できてい
ないことが、ほかでできる可能性はないと考えるべき。

非常に冷静に、転職に対する考えの甘さを指摘している。だが同
時に、ご自分のエピソード(失敗談もあり)をはさみながら、親
身に諭そうとする優しさも感じられる。

なんとこの方、小学生の頃、落語家として活躍をされていたのだ
そうだ。修行を始めるため、落語家の弟子にしてもらうために懸
命の、しかしある意味無謀な行動を重ねた。熱意があれば門は開
くと考えている。

その頃、同じ弟子修行をしていたのがあの鶴瓶さんだった。鶴瓶
さんには「FOR YOU」の仕事の姿勢を教えてもらった。

あるとき鶴瓶さんは、師匠から「何か面白いことをやれ」と言わ
れた。そのとき彼はまだ新人で、できることはあまりない。

だが怖気づかず、鶴瓶さんは師匠の前で裸踊りを始めた。髪をふ
り乱し、一生懸命踊る姿に、人を楽しませたいという熱意を感じ
た。

鶴瓶さんは自分のためではなく、師匠のため、その場にいる人に
笑ってもらうために、できる最大のことをしたのだ。仕事にもそ
ういった姿勢で取り組みたいと思う。それが、幸せに成功する鍵
なのだと考える。


もちろん、コンプライアンスのなっていない会社など、やめた方
がいい会社もある。だけど普通の会社にいる間は、まだできるこ
とを自分の中に探すべき。

いい本だよ。こういう話ってさ、飲み屋で愚痴って説教されると、
正しいとわかっていても「俺の気持ちなんかわかるかよ」って、
やさぐれネタになっちゃうよね。

でも本が相手だとそうはいかない。理路整然としているし、文字
を追ううちに落ち着いて判断できるようになる。

できることを一生懸命やる。目の前にいる相手を好きになって仲
良くする。熱意は通じる。がんばればできる。結婚も一緒?!

仕事に幸せを感じる働き方

2010年12月15日水曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

前向きに明るく、

世の中の出来事を疑う。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。英国式事件報道─なぜ実名にこだわるのか

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆世間話、時事ネタ系

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英国式事件報道─なぜ実名にこだわるのか  澤 康臣
¥ 1,800  文藝春秋 (2010/9/28)

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副題を見落としていた。面白事件簿かと思って読んだら、けっこ
う真面目な、報道に関する問題提起の本だった。

とはいえ、イギリスでの事件報道の実態が興味深く、読み始めれ
ばそれなりに読める。やや内向き、業界向けのきらいは残る。

著者は通信社で社会部の記者をしている。一年休職をとり、英国
オックスフォード大学でジャーナリズムを学んだ。その折に感じ
た日英の報道の違いを本書にまとめている。

売春婦が殺される事件があった。それも四人連続で。過去に起き
た「切り裂きジャック」を思い起こさせる、凄惨でセンセーショ
ナルな事件だった。

著者が驚いたのは、新聞がこの事件の詳細を連日、大きなスペー
スを取って報道したことだ。被害者の実名も当然のように出た。

親や知人、友人のコメントも、やはり実名で報道された。被害者
の親の中には、娘の職業を報道で知らされた者もあったようだ。

日本なら考えられないことである。被害者の職業からして、まず
扱いに繊細さが求められる。また日本では、事件被害者の実名を
出さない動きが近年はより強まっている。

だが英国の新聞は実名を出し、顔写真を出し、その人生を克明に
追った。同じ仕事をしている女性にインタビューをして、「15ポ
ンド以下では何もしたことがない」という、強烈な記事を載せた
新聞もあった。

説明を加える。15ポンド以下ではしたことがないとはつまり、そ
の金額以下では仕事を請けたことがない、性交渉をしたことがな
い、という意味だ。

15ポンドはヘロイン一袋が買える、最低の金額である。その言葉
は彼女らが麻薬の常習者であり、そのために売春をしていて、さ
らに足元を見る客が多いことを物語っている。彼女らの仕事の深
くにまで、切り込んだ記事と言えた。

一方で事件の経過や、警察からの発表はそれほど重要視されない。
英国の新聞は、事件を通し人を描き、社会に問題を提起するのが
その役割と言える。

事件関係者の名前を秘することは、彼らの存在を記号にすること
だ。その生い立ちも、その人生も語られることがなくて、どう
やって事件を「人の物語」ととらえることができるだろうか。

ニュースとはつまり、歴史の一場面なのである。それが無味乾燥
で語られることは果たして正しいのだろうか。その人の姿を伝え
ることが、本当の報道ではないのかと、自身の仕事を振り返りな
がら著者は苦悩する。

とはいえ、英国でもやはり、事件を語りたがらない関係者も多い。
また、パブリックの観念が広まっていることから、一度表に出た
情報は公的なものとされ、以後長く使われても文句を言えない状
況ができている。

事件被害者、関係者はそのことを語りたいと思うことがある。
知ってほしいと思うのだ。だが事件の興奮、混乱が終わると、話
したことを後悔することもある。英国の報道にもやはり問題はあ
る。


たくさんの情報提供者とやり取りをするジャーナリスト。リスト
ラにおびえ、薄給ながらも仕事にやりがいを見出す記者。英国の
報道機関の内側がよく描かれている。ご興味のある方はぜひ。

まあでもな、本音を言わせてもらうと、私は新聞やテレビで「事
件の内側、人の物語」なんか、見たくも読みたくもないと思って
しまうなあ。

申し訳ないけど、そういうことが今の報道にできるとは、本当に
生意気だけどあんまり期待できないんだなあ。いやーな気持ちに
なりそうな気がする。ついでだけど、海老蔵ネタには飽きた。

(ごめんなさい。ワイドショーのあり方は、海老蔵さんご本人に
はまったく関係のないことです。お早い快癒をお祈りしています)

まああんまり、被害者の方、事件関係者の方がいやな思いをされ
ないような報道をしてほしいと思うわね。それが一番よ。

英国式事件報道─なぜ実名にこだわるのか  澤 康臣




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●年末を見据えて、そろそろプリンターの季節ですなあ。

EPSON Colorio インクジェット複合機

無線LAN&高画質、カンタンLEDナビ搭載。

2010年12月14日火曜日

本のご紹介です。わたくしが旅から学んだこと

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆世間話、時事ネタ系

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わたくしが旅から学んだこと 80過ぎても「世界の旅」は継続中
ですのよ!  兼高 かおる
¥ 1,575  小学館 (2010/9/1)

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世界中を旅してきた兼高かおるさんが、ご自身の人生についてつ
づったエッセイ。

旅のことももちろんだけど、ご自分の老いをしっかりと見つめて
おられる姿には感動した。飾りのない、うそ偽りのない文章を書
かれる方なんだよね。非常に冷静で、ごく自然に受け止めておら
れる。毅然、という言葉がぴったりのエッセイだった。

兼高さんのお母様は明治のお生まれ。しっかりした働き者で、昼
のうちから夕飯の下ごしらえをしていたのだという。品数は多く、
家族にたくさん食べさせるために、お母様は食事の間も台所と食
卓を一人往復しておいでだった。

このことが兼高さんを結婚から遠ざける一因となった。仕事をし
て、家事まで完璧にこなす自信がない。今のカップルを見ている
と、早く生まれすぎたのかなと思うこともあった。

お母様は自由な考え方をする方だった。兼高さんは学校では問題
児だったが、お母様はまるでそのことを気になさらなかった。勉
強をさぼって本を読んでいても、叱られることは一切なかった。

戦後、兼高さんはアメリカに留学する。ここでは体重が激減する
くらい、必死に勉強した。先生のサポートもあって、アメリカで
勉強することはとても楽しかったようだ。

だが病を得て帰国。このことを、兼高さんはちっとも悔やんでは
いない。兼高さんは人生を「運次第」だと考えている節がある。

運任せというのとはもちろん違う。だが人には与えられる運やめ
ぐり合いのようなものがあって、それを活かしていくことが大切
だと考えている。人にはそれぞれの道がある。よいも悪いもなく、
人生とはそういうものだと悟りに似た感覚を持っている。

英語ができるので、インタビューの仕事が舞いこみ、やがて外国
を取材する番組の依頼が舞いこんだ。「兼高かおる世界の旅」の
前身だ。

かつてなかった類の番組で、手本にするものがないのが幸いだっ
た。自由に、思いのまま番組を作ることに決めた。

車の中で、兼高さんの指定席は助手席。窓から外を眺めながら、
目に付いたものをかたっぱしから取材することにした。「兼高さ
んが通った後にはなにも残っていない」と、言われたこともある
ほど。

珍しいもの、変わったもの、世界の風景を視聴者に届けようと必
死だった。市場に行き、有名な人に会い、外国の光景をテレビで
伝えようとした。着物を着、真珠を身に着けラジオを持って、日
本の産業をアピールするつもりでも歩いた。

兼高さんは、仕事と結婚したようなものだ。兼高さんのだんなさ
まは、「兼高かおる世界の旅」。もてる力の9割を、番組に注いだ
ものだった。

やめた今でも、旅は続けている。一人でふらりとミュージアムに
出かけたり、日本の名所をめぐったりしている。

日本は素晴らしい国だと思う。世界を見てきて、日本ほど自然が
豊かで、恵まれた国は珍しいのだと実感している。日本のよさも、
多くの人に知っていてもらいたい。

若い頃との違いも最近は感じ始めている。一緒に世界を回った仲
間が、一人一人世を去っていくと、思い出話ができなくなる寂し
さを感じる。

だから若い人とも付き合うようにしている。世代が違うと話も違
い、これはこれで楽しい。

若い頃のことで悔やまれることの一つは、ずっとノーメイクでい
たこと。大きなシミができて困っている。指先の動作にも遅れが
見られ、老いてきたことを実感している。

一度夜中に体調が悪くなって、入院する羽目となった。そのとき、
携帯電話を枕元に置いていなかったことをひどく悔やんだ。また、
母がしていたように、衣類や下着の整理がついていなかったこと
も後悔の種となった。

またいつか、そのときのために、入院に必要なものはしっかり整
えてある。いざというときのために備えることは、決して後ろ向
きなことではない。


旅に持っていく荷物が、紹介されていたのが面白かった。兼高さ
んはゴムでできたベルトを必ず身に着けていたのだそうだ。

メモをしたノートをベルトにはさむため。ノートを一度、置き忘
れたことがあったため、体から離さない工夫をしたのだ。何より
大切なものだから。

字、大きめ。言葉がとてもきれいなので、読んでいて背筋が伸び
る思いだった。

わたくしが旅から学んだこと 80過ぎても「世界の旅」は継続中ですのよ!

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●年末を見据えて、そろそろプリンターの季節ですなあ。

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双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

深く考えるということは、

ひとつのことに囚われることとは異なる。

今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月13日月曜日

本の紹介です。誰のうえにも奇跡は降りてくる

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆自己啓発系

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誰のうえにも奇跡は降りてくる  はる
¥ 1,260  PHP研究所 (2010/6/17)

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著者のはるさんは沖縄のユタ。では、ユタとはいったい何なのか。
本書からその答えになる部分を引用してみたい。

「ユタは一般人と同じように生活し、一般人を相手に霊的アドバ
イスを行うことを生業とする在野のシャーマン、カンナギ。沖縄
の人の自警団。

パブリックな場所には存在せず、住民達の先生として地域に存在
し、先祖を祀るだけでなく、現在の生活の悪いところを指摘した
り、幸せの方向にいける方法を教えたりします」

霊的な存在であると同時に、俗世間的な問題にも通じる地域の相
談役のようなものであるか。集団の中に、こういう人を置くのは
古来からの知恵なのかもしれないな。

そんでもってこのはるさん、これまで16万人の人から相談を受け、
カウンセリングを行ったのだそうだ。伝説のユタと呼ばれている。

本書には、その経験から得た人生の知恵、処世術がまとめらえて
いる。女性向けのきらいはあるが、恋愛に偏っているわけでもな
く、誰が読んでもためになる部分はあると思う。

・女性の恋愛について

思い込みは捨てよう。「若くないから恋愛ができない」と悩む女
性が大勢いる。だが「男性は若い子が好き」というのは単なる思
い込みでしかない。

年下の彼とうまくいかなくて悩む女性に、「あなたからアプロー
チしてごらん」とアドバイスすると、たいてい、すんなりとうま
くいく。しっかりした男性は、大人の女性のよさを知っている。

・仕事について

男性社会である。女性はまずそのことを知り、うまく合わせた生
き方をしよう。先を見据え、ニコニコ笑っておなかを開かせ、ず
ばりと切り込んでいくのも一つの方法である。

会社での出来事はすべて「お仕事」。人との関係もお給料のうち
だ。仕事でも恋愛でも、最後に勝つのは人を見る人、相手の出方
を見定めることができる人。会話のキャッチボールを楽しみなが
ら、相手にしゃべってもらうことがうまく事を運ぶコツ。

・人生について

体を動かすと運気があがる。動いてから考えるのも一つの手。そ
の場合、失敗したらさっと方向転換する柔軟性も大切である。

運気には予兆がある。たとえば交通事故。事故を起こす前の行動
を見直すと、かすったり、石が飛んできたり、何かしらのよくな
いことが起きているとわかる。

予兆を早めにつかんで対処しよう。その際、悪いことのあとには
よいことがあるのだからと、恐れず希望を持ち、明るい心持でい
ること。

ネガティブな自分がいやになったら、その思考や行動を変えよう。
性格や性質を変えようと思ってはいけない。無駄だし、無理だし、
とても大変なことだからだ。口に出す言葉を変えるだけで、ずい
ぶんと多くのことが変化してゆく。

それでもマイナス思考が抜けない人は、これまでの自分に感謝し
て別れを告げよう。

マイナス思考に陥っていたのは、それなりの理由があることだし、
必然性があったこと。だがその自分はもう必要はなくて、新しい
自分に生まれ変わろうとしている。

一つの役が終わったと考えよう。「もういいの、これまでありが
とう」と言って、辛かった役目を捨ててしまう気持ちで。希望が
あれば人は死なない。


オーラを見る方法が紹介されている。手を壁にかざし、3D画像を
見るような感覚で手と壁、両方に焦点を合わせる。すると手の先
から見えてくるものがあるのだそうだ。

一瞬、その気になってやってみたけど、私には当然のように無理
だった。面白そうだとは思うんだけど。

誰のうえにも奇跡は降りてくる

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●年末を見据えて、そろそろプリンターの季節ですなあ。

EPSON Colorio インクジェット複合機

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No.379 江國香織「落下する夕方」→ 3点

江國 香織「落下する夕方」→ 3点
発行元 :株式会社角川書店
初版発行:1996/10/30
江國 香織(エクニ カオリ)

あらすじ

別れは突然だった。
8年間を一緒に暮らし、私と私の幸福のほとんど全てを形づくっていた男、
健吾が突然私の元から去っていったのだ。
理由は新しい女。

実にまあ良くある話だが、自分の身に起こってしまうと骨身にこたえた。
そして、話しはそれで終わらなかった。
あろうことか、健吾が好きになった女、華子が家に転がり込んできたのだ。
私と華子の、奇妙な共同生活のはじまりから終わりまでを描く。

コメント

なんとも女性らしい視点の作品だなあというのが読後の第一感想。
感性と理性、感覚と思考、ココロとアタマ、主観と客観、いろいろあるけど
常に前者を優先させるのが女性だと言う思い込みが私にはあって、その観点
からいうと本作はいかにも女性的だ。

別に詰まらなくはなかったけど、梨果にも華子にも付いていけねーやと思っ
た箇所がちょこちょこあった。
ちょっと前に「話を聞かない男、地図が読めない女」という本が話題になり、
読んでみて男と女の考え方というか成り立ちの違いみたいなものに「なるほ
どなあ」と感心した記憶がある。

曰く、男と女の最大の違いは「自分」と「外の世界」との捉え方にあるらしい。
確かに個人的な意見としても男は自分というものをどこかで客観視していて、
「まず世界があり、その中に自分が居るのだ」という俯瞰的な認識があるよう
に思う。
対して世の女性は自分という境界線がもの凄く強固であり、「まず自分があり、
それを取り巻く周囲の環境として世界はある」という構図で世の中を見てらっ
しゃるような気がしている。(もちろんどちらが良いとか悪いとかいう話しで
はありません。)

本作は、そういった直球ド真ん中の「オンナ」を梨果と華子という二つのキャ
ラクターの視点からじっくりと描いていて、ふたりの中間にいる健吾が、まる
でテニスボールのように梨果と華子の間を行き来する状況がなかなか面白かった。

まあしかし、男の立場から読んでると、やっぱ女性はよく分からんわいと思って
しまう部分もあるお話しでした。。

江國 香織「落下する夕方」





0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

家族の大切さを知るほど、

自分の大切さに気づくようになった。


今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月12日日曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

何もない平和な日が、

かけがえのない一日だと常に思える人でありたい。


今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第424号『パンとペン』

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週刊 お奨め本
2010年12月12日発行 第424号
***********************************************
『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』 黒岩比佐子
¥2,400+税 講談社 2010/10/7発行
ISBN978-4-06-216447-4
***********************************************


11月に逝去したノンフィクション作家・黒岩比佐子氏の、最後の著作。
副題の通り、堺利彦と「売文社」がテーマ。


堺利彦は、日本の社会主義運動の先駆者、思想家、啓蒙家。
のみならず。
社会主義者で投獄された第一号、女性解放運動に取り組んだフェミニスト、海外
文学の紹介者で翻訳の名手、言文一致体の推進者、平易明快巧妙な文章の達人、
憲兵隊に命を狙われた男。Etc…


発行人は不勉強で、日本の社会主義史をよく知らないんですけど、太平洋戦争以
前の日本が社会主義者にとってつらい時代であったことくらいは、そりゃわかる。

日露戦争開戦の前年、堺利彦と幸徳秋水は平民社を創設し、週間『平民新聞』を
発行して戦時下に反戦運動を続けた。
平和という理想に燃えた平民社時代は、当時の主義者達にとって美しい時代だっ
た。その後、赤旗事件、大逆事件が起き、幸徳秋水は死刑。
堺利彦をはじめとする社会主義者たちにとって、その後の明治末期から大正期の
売文社時代は、暗闇のなかで息をひそめ、迫害のなかですごした苦闘の時期だった。

著者・黒岩比佐子は、その冬の時代、売文社に焦点を当てて、堺利彦の人物像を
描き出す。

冬の時代から暗黒時代へと向かう時代の中で、堺利彦は「売文社」で、仲間たち
に生活の糧を与えた。
売文社は、現在の「編集プロダクション」の先駆的なもので、おそらく日本初の
「外国語翻訳会社」であった。

実際に取り扱った仕事の一覧を見ると、写真説明文の英訳、雅号の選定、商標考
案、広告文英訳、新刊雑誌発行趣意書、新刊雑誌発行の辞、雑誌原稿、カタログ
編集及び意匠、英文及び独文書簡、演説草案起稿、某氏自伝談話筆記及び編集、
等々。
新刊雑誌の趣意書に発行の辞って、そんなもの発行者が書かなくてどーすんの、
という気もするが。
他に大学卒論やら赤ん坊の命名、絶縁状に金の無心、自殺しようとする男の遺言
の草稿まで引き受けたとのことで、本当になんでもあり。

堺利彦、多才である。
もちろん堺ひとりでそのすべての仕事をこなしたわけではないが、注文が立て込
んできたときの堺の「早業と芸当は並大抵ではなかった」という。「万人向きと
いふあんな調法の人はちょっと見つかるまい」。


堺利彦は、自分ひとりが生きるだけなら、売文社を必要とはしなかった。
名文家で知られ、高名な作家たちとの交友も多かった堺には原稿の依頼もあった。
就職口を奪われ、糊口を凌ぐ術を持たない仲間たちに仕事を与えるためにこそ、
売文社は必要だった。


作家の尾崎士郎は、売文社をモデルとした小説のなかで、堺利彦を大石内蔵助に
喩えている。「仮名手本忠臣蔵」で主君の仇討ちを狙う大石内蔵助が、周囲を欺
くために遊蕩三昧の日々を送るように、堺も官憲の目を欺きながら、時期の到来
を待とうとしたのだと。


1917年、堺は売文社を社会主義運動と完全に切り離す、と表明した。
顧客が社会主義とのかかわりを怖れて依頼をためらうようではビジネスに差し障
りが出る。社員にきちんと給料を支払うためにも、売文社の経営を成り立たせる
必要があったのだ。

> 理想を追うためには、どうしても金銭が必要になる。その金銭を得るために何
> か手段を講じるのは当然で、座して死を待つべきではない。誤解を招くことも
> 怖れず、批判を受けることも承知の上で、堺はこの時期に売文社の大拡張を推
> 進していった。(318頁)


ユーモアと筆の力を武器に、冬の時代を生きた。
幸徳秋水のようなカリスマ性はなく、刑死せず畳の上で病死したことで軽視され
る向きもあるが、堺利彦の存在が日本の社会主義に与えた影響は大きい。

勉強になったうえに、堺利彦がとにかく魅力的で、読んでて楽しかった!
硬い本だと敬遠しないで、まあいちど手にとってみてくださいませ。



『パンとペン』 黒岩比佐子

2010年12月11日土曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

先の見える時代だろうと、

見えない時代だろうと、

自分の未来は自分で切り拓くしかない。

今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月10日金曜日

●名言セラピー【寿命が40年だとしたら】

━━━━━━━━━━━━━━●名言セラピー


If the average human life span was 40 years, how would you live your life differently?
もしも、人間の寿命が40年だとしたら、どんな人生を生きたい?

Would you rather be a worried genius or a joyful simpleton?
悩み多き天才と、単純でハッピーな人。どっちになりたい?


What is the one thing you'd most like to change about the world?
世の中でたった一つだけ変えられるとしたら、何を変えたい?

What is the best choice you slould buy,if you have 1,260yen?

Off course, this one!(笑)

→ 名言セラピー幕末スペシャル The Revolution!

龍馬(33歳)、高杉晋作(27歳)、吉田松陰(29歳)、
彼らは40歳まで生きることができなかった……
文字通り命がけで葛藤の中を生きたサムライたち。


彼らには
一つだけ
何があってもやりぬきたいことがあった……


それは……

革命!

日本を変えること。

「日本史上最高にかっこいい男たちを見よ」


と始まる
「名言セラピー 幕末スペシャル
 The Revolution!」


12月10日本日発売です。

→ 名言セラピー幕末スペシャル The Revolution!

これほどまでにかっこいい日本人がいたことを知らずに死んではいけない。
なぜなら、僕らにもその血が流れているのだから。

あなたのソウルスイッチを入れる1冊になったとおもっちょります。

本のご紹介です。どんぐり姉妹

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆話題の小説系

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どんぐり姉妹  よしもと ばなな
¥ 1,365  新潮社 (2010/11)

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姉の名前はどん子、妹はぐり子。二人合わせてどんぐりだ。双子
ではない。両親は姉が生まれたとき、対になる名前をつけるべき
妹が生まれることを、なぜか知っていたようだ。

妹の一人称で語られる物語。二人は「どんぐり姉妹」というサイ
トを開き、メールを受け、返信する。

どんぐり姉妹では金銭のやり取りは発生しない。誰かにメールを
出したくなったとき、しかしその相手が見当たらないとき、そっ
とアクセスしてほしいというのがどんぐり姉妹の趣旨である。

両親はのんびりした人だった。二人とも文章に関わる仕事をして
いた人で、その影響なのか、姉のどん子はフリーライターとして
働いている。

妹がメールを見、事務処理をして姉が返信をする。どんぐり姉妹
はさまざまな人のつぶやきを聞いて、その孤独に寄り添う作業を
くり返している。

姉妹の両親は二人が幼い頃に亡くなってしまった。交通事故だ。
新鮮な魚を地方から運ぶトラックに、衝突して死んでしまったの
だ。妹はしばらく刺身を食べられない時期が続いた。

最初に二人を引き取ってくれたのは、静岡のお茶農園の親戚だ。
農園の仕事をたくさんしたが、労働で汗を流すのは楽しかった。

次に身を寄せたのは医者の家だった。派手好きなおばさんと趣味
が合わず、姉妹は次第に追い詰められていく。姉は家を出、妹と
暮らすために懸命に働く。残された妹は衰弱し、ついに腎臓を悪
くするほどになってしまう。

その頃、妹はクラスメイトにひそかな恋をしていた。海が好きな
男の子、麦君だ。海に連れて行ってと、妹は言いたかった。麦君
も一度「いつか」とだけ言って黙り込んだことがある。いつか、
一緒に海へ行こう。

弱りきった妹を、姉が迎えに来た。親戚のおじいさんの家に転が
り込み、介護をし、その死を見取る。姉妹が住んでいるのはその
おじいさんが残してくれたマンションだ。

姉は奔放な恋をしている。結婚はしないという考えだが、恋が燃
えあがる瞬間を楽しんでいる。今のお相手は韓国人の青年だ。四
角い顔をした彼に、姉は父の面影を見ているらしい。

どんぐり姉妹に一通のメールが届く。夫が死んで悲しいというも
のだ。妹はふと、麦君を思い出して消息を尋ねる。そして、麦君
がバイクの事故で亡くなっていたことを知る。

妹にはその予感があった。夫の死を嘆く女性のメールに、不思議
と共感を得ていたのだ。妹は麦君の住んでいた場所を訪ね、偶然
にもその母親と道端で出会う。

持っていた花を手渡しながら、これを海に置いてこなくてよかっ
た、いや、置かずに持ってきたのは何らかの力によるものなのだ
と妹は考える。


どこか不思議な、インスピレーションと優しさに満ちた物語。

あらすじをご紹介してしまったけれど、あらすじなんか、実はど
うでもいいと思えるお話。地の文が面白い。

妹がサムゲタンを作る場面が出てくる。鶏肉や人参の香りが漂っ
てくるようで、とても幸せだった。食べ物が出てくる小説、好き
だわ。

本日ご紹介の本はこちらから



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双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

忙しいと口にするだけで、何倍も忙しくなれる。

楽しいと口にするだけで、何倍も楽しくなれる。


今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月9日木曜日

本のご紹介です。集団感染マーケティング

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆ビジネス、営業系

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1通のちょっと変わった手紙で、新規客が殺到する! 集団感染
マーケティング  杉村 晶孝
¥ 1,575  ダイヤモンド社 (2010/10/29)

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ピンクの背景に黄色の放射線。いや、派手やわあ、この表紙。

セールスの手法を書いた本。くり返されるのは「金を使うな、知
恵使え」という主張である。

お金を使ったマーケティングの愚、お金をかけず行った工夫とそ
の効果。様々な例が示されている。お金をかければかけるほど、
モノは売れなくなるというテーマが非常に面白い。

お金をかけた例

・雑誌にお金を出して紹介記事を出してもらった。広告を記事に
見せかけて書くという手法だ。以後、会社に電話がかかってくる
ようになったが、どれも広告の売込みばかり。需要がある、カモ
と思われたせいだ。

・コンサルタントにすがる経営者が多い。セミナーに出かけ、暗
示をかけられたように意気揚々とするが、すぐにしぼんで類似の
セミナーに出かける羽目になる。

・コンサルタントの指導を受けてFAXでDMを流した。結果、か
かってきた電話は苦情ばかりだった。

お金をかけない例

・流行している言葉を広告に取り入れる。その言葉は流行歌から
抜き出すとよい。「一人じゃない」「同じ空の下」「会いたい」
など、同じような言葉を羅列した歌詞に注目し、コピーに使おう。

人は聞きなれた言葉、刷り込まれた言葉に反応する。テレビが流
行させた言葉は遠慮なく使いたい。話題の商品、ベストセラーに
共通するタイトルなども、同じく使うべき言葉である。

・人は権威に弱い。だがその権威とは何か、冷静に考えてみよう。

権威は作られるものである。であれば、自らその権威になってし
まえばことは簡単。「カリスマ」「先生」「職人」「巨匠」「鉄
人」。人からそう呼ばれる工夫をしてみよう。

自分では当たり前と思っていることも、ほかの人はまるで知らな
いということがある。たとえば魚屋さん。新鮮な魚の身分け方、
おいしい料理法。こんなことくらい、と思っていることを教えて
あげると、案外と人は驚く。「カリスマ」になるのも簡単なので
ある。

・個人ではなく、集団を釣り上げる手法がある。個人が属する集
団を狙う方法だ。

棚ボタ式に客が見つかる集団がある。職人気質が強い職場、上下
関係がはっきりしている職場、小規模の職場、タバコ部屋や休憩
所がある職場。

こういう場所で客を見つけると、その客が味方になってくれるこ
とがある。

このような場所に告知をする方法を教えよう。それは、その会社
のポストにチラシを入れておくことだ。

その際、封筒の表に「○○事務所ご担当者様」と宛先人を書き、
さらに「回覧」という判子を押しておくこと。すると担当者だと
自認する人が現れ、チラシを掲示板に張ったり、回覧で回してく
れるようになる。

社内で掲示されるもの、回覧されるものは信用しやすい。受注に
結びつきやすくなる。


実に泥臭く、気合を感じる一冊だった。読みやすい。

うちの近所に、行列ができるパン屋さんというのがあるんだ。天
使のチョコリングなんてものを売り出しているお店だ。

確かにおいしいけど、といって、それがほかの店にない特別なも
のかと言えばそうでもないと私は思う。でもその名前と行列、か
わいいお店の外観で、みんなその店でパンを買うことを「特別」
なことと考えている節がある。

その社長さんは、考えの90パーセントが商品のこと、ヒット商品
の構想なのだそうだ。日夜人々を引きつける手法を考えていると
いうことらしい。

知恵に勝る宝なし。すばらしいね。

1通のちょっと変わった手紙で、新規客が殺到する! 集団感染マーケティング

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双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

悪い人もいい人もいない。

悪い部分といい部分がどれくらい、

今その人の表面に現れているかだ。


だから人類に少しだけ希望が持てるのだ。

今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月8日水曜日

本のご紹介です。堀秀道の水晶の本

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆たまには教養系

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堀秀道の水晶の本  堀 秀道
¥ 1,680  草思社 (2009/12/22)

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水晶を鉱物としてとらえた、実に真面目な本だった。

鉱物ファンにとって、水晶とは「圧倒的に普遍的でありかつ特殊
な鉱物」なのだそうだ。水晶が嫌いでは、鉱物の収集はできない
のだとまでおっしゃっている。

水晶は、たいていの鉱物の産地でその採掘に伴って採れるものな
のだそうだ。まれに採れないところもあるが、鉱物の採掘と水晶
は切っても切れない関係にある。

男性のコレクターは金属の鉱物が好きだが、そのような人でも水
晶については熱く語ることが往々にしてある。歴史的に見ても、
実用品であったり、呪術的な意味合いを持っていたり、水晶は実
に不思議な鉱物であるといえる。

水晶は酸素と珪素からできている。採れるのは地球の皮の部分、
地殻と呼ばれる場所である。長い年月をかけて、まるで「ラッ
シュアワーに人が押されて密度が高くなるように」規則的な形に
整えられてゆく。

だが一口に水晶と言っても、その色や形、様々なものに分類する
ことができる。

たとえばアメシスト。(アメジストと書かれることが多いが、正
式にはこう呼ぶらしい) 紫の色合いを帯びた水晶で、二月の誕
生石として宝石の扱いを受ける水晶である。

この紫色は、結晶の中に入った三価の鉄イオンが、放射線の影響
を受けて変化し、発色するものである。

アメシストは現在、人の手で合成して作ることができる。できが
よく、天然のものとの見分けが案外と難しい。もともと安価な宝
石であることも加味して、日本では特に区別されずに店頭に並ん
でいるようである。

水晶は日本の山でもよく採れる。山梨県にはよい鉱脈があり、昔
はよく掘られていた。水晶掘りを仕事にしていた人も、最近まで
はいたのである。筆者はその方から、ねじれ水晶という珍しい品
を譲ってもらった。

水晶という名前が入った地名も多くあり、古来から人々が水晶に
親しんできたというのがよくわかる。

その他、筆者のコレクション、世界の水晶の産地なども上げられ
ているので、ご興味のある方はぜひ。

最後に天然物の水晶の見分け方を、少しばかりご紹介してみたい
と考えている。

簡単なのは、一本線を引いた紙の上に球を乗せてみることだ。本
物なら線が二本に見える。複屈折という光学的現象のためである。

さらに理化学メーカーに持ち込んで、赤外線吸収スペクトル測定
という技法を頼むこともできる。だが高価なので、その価値あり
と判断される球以外はお勧めはしない。

筆者が最近、独自で考え出した手法が述べられている。球の中に
できる光の輪を見る方法だ。

透明な球の中には光の輪ができる。これが均等であるのが人工物。
天然の物には輪のふちが膨らんでいる場所があり、それが左右対
称に見える。これは新しい見分けの手法であり、今後どこかで発
表する予定のものであるのだとか。


うーん。パワーストーン大好き、という軽い頭で読んでみたら、
案外と難しくて居住まいを正す羽目となってしまった。だが、読
み応えは十分。

いつか掘りに行ってみたいものだなあと、ぼんやり考えるまでに
なってしまった。

アメリカには、そういうイベントなんかもあるみたいだね。ミネ
ラルパークとして、お金を払って鉱物を探すことができる場所も
あるらしい。楽しそうだなあ。

堀秀道の水晶の本

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