2011年1月24日月曜日

No.384 椎名誠「チベットのラッパ犬」→ 3.5点

椎名 誠「チベットのラッパ犬」→ 3.5点

発行元 :株式会社文藝春秋 初版発行:2010/8/30
椎名 誠(シイナ マコト)

あらすじ

最終戦争後の混沌とした世界。
工作員としてチベットに潜入したおれは幸運もあって首尾よく目当ての
品を手に入れることができた。
・・と思ったのもつかの間、ブツは生体偽装した誰かにブツをかっさら
われてしまった。
このままでは帰れないおれは、奴を探して追跡を始めることにしたのだった。

コメント

「最終戦争後」の近未来を描くシーナワールド最新作。
『武装島田倉庫」から始まった本シリーズも、気がつけば結構な冊数になった
よなあ。
一見荒唐無稽なようでよくよく考えると妙にリアリティのある世界観と、全編
に漂う「もうどうだっていいやあ。」という渺漠とした哀しみのようなものは
本編でもしっかりと健在で実によかった。

読むというよりはひとつの世界を旅するという方が相応しい一冊。
滔々と、終わることなく流れる長い長い川をゆっくりと下っていくような魅力
と安心感があった。
読み手によると思うが、個人的にはシーナ氏の描くこの世界はかなり好きだ。


チベットのラッパ犬

了。



0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

無駄な競争心のために、

どれだけの大切なことが

失われてきたのだろうか。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。1坪の奇跡

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆ビジネス、営業系


1坪の奇跡─40年以上行列がとぎれない 吉祥寺「小ざさ」味と
仕事  稲垣 篤子
¥ 1,500  ダイヤモンド社 (2010/12/3)


吉祥寺にある和菓子屋「小ざさ」。たった1坪の敷地に建つこの
店には、二種類の菓子しか売られていない。一本580円の羊羹と、
一個54円のもなかがそれだ。

特に羊羹は人気だ。一日150本しか作られないその羊羹を求めて、
日の出前から行列ができる。買える本数は一人5本まで。先の一
人が買い占めてしまうと、不公平が生じるからだ。

だが量産はしない。羊羹の小豆は小さな銅釜で炊かれる。一度で
羊羹50本分。一日三度が限界なのだ。

ぐらぐら煮える小豆を、大きなヘラでかき回す。最初は軽いが、
次第に水分が飛んでヘラは重くなる。コツがいる。釜の底より半
紙一枚分のところ。小ざさの小豆は職人の技で練り上げられてい
る。

小豆が紫色に輝く一瞬があるのだそうだ。その一瞬を得るために、
社長の稲垣篤子さんは三十年の年月を要した。先代である父とと
もに、命がけで作り上げてきた味だった。

稲垣さんは戦前の生まれ。戦時中は疎開するなど、苦しい経験を
した。

和菓子屋を始めたのは父親の照男さんだ。戦争ですべて失ったが、
戦後再び菓子を売る商売を始めた。

その頃菓子は自宅で作られていた。稲垣さんがそれを屋台で販売
する。屋台と言えど、店なのだからと、一枚しかない紺のスーツ
を着て店に立った。

狭い場所で立っているのは辛かった。だが父は稲垣さんに厳しく
申し渡す。「品物がなくなったからと店を閉めるのは屋台の商売
のやり方だ。ここは店なのだから、決まった時間はちゃんと商売
をしなさい」 厳しい父だった。

稲垣さんはカメラマンを志したこともある。だが、父の姿を見て
育った彼女は、いつか店を継ぐ決意をした。結婚もしていた。夫
には、自分の食事は自分でしてちょうだいねと宣言し、主婦業よ
りも仕事に打ち込んで過ごしてきた。

毎朝父と儀式をする。居間に座り、よい緑茶を用意して、昨日
練った小豆を食べる。父が納得する味ができるまで、三十年間毎
日小豆と格闘した。

お父様は糖尿病だったそうだ。医者には叱られたが、この儀式だ
けはやめようとしなかった。一番いいものを作る。この信念が、
親子を支え続けていた。

父は一族と従業員の生活を背負っていた。その責任感の強さが、
稲垣さんにも影響を与えていた。父が亡くなったとき、稲垣さん
はただ「ご苦労様、そしてありがとう」という言葉しか思いつか
なかった。苦労し通しの人生だったと思う。

今は稲垣さんが、従業員の暮らしを背負って立っている。皆が助
けあう職場にしたいと考えている。会社は家族のようなものだ。

障害者も積極的に採用している。だが、助成金をもらうことはな
い。助成金をもらってしまえば、それだけの付き合いだと思って
しまう。そうではなく、一人の人として向き合うのが当たり前と
思う。


小ざさの羊羹は人気で、午前一時から並んで待つ人もいるのだと
いう。地方から、わざわざホテルに宿泊して買いに来る人もいる。

平等に買ってもらいたいと考えるから、稲垣さんは家族、親族に
も特別扱いはしない。稲垣さんのご主人も、その行列に並んだこ
とがあるのだそうだ。徹底している。

いいものを誠実に作りたいという、職人さんの熱意が伝わってく
る一冊。稲垣さんは御年78歳だが、今でも元気に自転車で通勤し
ている。

読んで必ず元気になれる本。それから、甘いものが食べたくなる。


1坪の奇跡―40年以上行列がとぎれない 吉祥寺「小ざさ」味と仕事

第347冊 綱淵謙錠「聞いて極楽」

乱読! ドクショ突撃隊♪    第 347 冊

【1】読書感想 (第347冊)
  
綱淵謙錠  「聞いて極楽」  文春文庫

実は本書を読んだのは二度目。
私は滅多に本を二度読まないのだが、この本は数年前に読み、その感想を
書こうと思っているうちに忘れ、いざ書こうと思ってたら内容も忘れた。
パラパラと読めば思い出すだろうと読み返してみると、ほんとに忘れてい
る。
しかし面白い。結局全部読み直した。

見開き2ページに一話が載っており、それが全百話で二百ページ余。
戦国期から明治初期までの埋もれたエピソードが掘り出されており、時間
の合間合間に読むには打ってつけの面白さ。

大きな書店の片隅に、文庫目録と並んで「新刊のお知らせ」という小冊子
を見た事ない?
そこに一ヶ月一話のペースで百ヶ月、実に8年4ヶ月に亘って連載されて
いたものを、時代順に再構成して纏められたのが本書だそうだ。
「聞いて極楽」というのは、いろは歌(関東)の「き」=「聞いて極楽、
見て地獄」から採ったもので、表と裏では随分違うことを指す。
史実の表舞台と、その裏とではこうも違うのかと気付かせる名掌編が多い。

綱淵謙錠の文春文庫は十冊前後出ているが、古本屋でも見かけることが
少ない。
見つけたら迷わず買うが、ベストセラーになった訳でもないだけに、
出回っている量も多くない。
こういった「いい仕事」をした本が、もっと浮かばれるべきだと思う。



聞いて極楽―史談百話