2011年3月7日月曜日

第356冊 T・ハリス「ハンニバル」

  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 356 冊
              
                       2011.3.7

          
【1】読書感想 (第356冊)
  
T・ハリス  「ハンニバル」上下  新潮文庫

十年ほど前、映画はリアルタイムで観た。
ラストのディナー・シーンが衝撃的過ぎて、正直あの「お食事」シーンし
か覚えていない。
しかし「ハンニバル」といえば、あの「お食事」と言う様に、全く忘れら
れない強烈な後味の悪さを残している。

この小説は、5年ほど前に買ったもの。
ようやく読む順番になったので読んだのですが、久々に寝食を忘れて読み
耽りました。
読後、姉妹作「羊たちの沈黙」「レッド・ドラゴン」「ハンニバル・ライ
ジング」と四部作と云われる全作を買い揃えたほど。
面白いというのは不謹慎だけど、ベストセラーになったのは良く分かりま
す。

有名な「羊たちの沈黙」では、地下牢に拘束されたハンニバル・レクター
の、その後の悪事を描きます。
なぜこうなったかは、「レッド・ドラゴン」「ハンニバル・ライジング」
を読まないと見えてこないですが、本作でも彼の過去(幼少期)が所々
登場します。
恐怖の幼児体験が彼の異常基調となっているのですが、こうまで怪物にな
ってしまうものなのか。

終盤は手に汗握る展開の連続で、勧善懲悪で終わらない、妖しく不思議な、
霧に消えてゆくような終わり方。
鳥肌が立ちます。



ハンニバル〈上〉 (新潮文庫)

ハンニバル〈下〉 (新潮文庫)

No.390 江國香織「号泣する準備はできていた」→ 3点

江國 香織「号泣する準備はできていた」→ 3点
発行元 :株式会社新潮社

初版発行:2003/11/20
江國 香織(エクニ カオリ)

あらすじ
すべて大人の女が主人公の短編12編。自宅で、旅先で、あるいは買物先
のデパートや行きつけのバーで繰り広げられる日常と非日常の点景をリ
アルに切り取ったオムニバス作品。

コメント

まっとうな大人の女であれば、大抵恋のひとつや二つは経験している。
そして、それはほとんど例外なくと言っていい確率で、既に失われている。

だから、どんなに甘やかな恋愛の渦中にあろうとも、女にとって号泣する
準備は常にできているのだ。
本作の12編の短編のテーマを一言で言うとこんな感じだろうか。

大人になるということは子どもや青春期の自分から見ると成長するという
ことであり、生きていくために必要なありとあらゆるものを獲得するとい
うことなのだが、それは同時にかつて自分が当たり前にもっていた何かを
喪失することと同義である。

本作では12人の様々なタイプの女性が、それぞれ実に多種多様なシチュエー
ションの中で自分の中にある「既に失われてしまったもの」と直面する。

その瞬間、ひとつのシーンを実に鋭く丁寧に切り取ったクロッキー画のよ
うな短編集だと思う。
そして、どちらかというと本作は「感じる」タイプの小説で、「考える」
方が好きな私にとってはちょっと苦手分野かな、という感じだった。

簡潔でさらりとした文体なので読みやすいが、本質的にはセンスが合うか
どうかで読者を選ぶ作品だと思う。

号泣する準備はできていた


0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

気楽に進もう。

ものすごいスピードで。

今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。うまくいかない自分から抜け出す方法

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆自己啓発系


うまくいかない自分から抜け出す方法  大川内 麻里
¥ 1,470  かんき出版 (2010/3/17)


「素直になりなさい」 こう人に言われて、あなたはどんな風に
受け取りますか?

「自分に素直に、自由にふるまっていいんだ!」と考える人と、
「人に素直に、従順に振舞えということだな」と考える人がいる
のだそうだ。

ポジティブになろう、がんばろうと思っても、ささいなことで失
敗してしまう人、しかもその失敗を何度もくり返してしまう人は、
自分の心の奥をもう一度、見つめ直すと楽になれるかもしれない。

「交流分析」と呼ばれる考え方を、とってもわかりやすく紹介し
たもの。人の心を5つのパーツに分けて、心の構造を知ろうとい
う学問だ。

自分の心の動き、他者の心のありよう。そういったものを冷静に
見ることで、人間関係や人生をよくしようと語っている。

人の心には5つの要素があるようだ。

CP 父 ○○しなければならない、が口癖。道徳に厳しく、責
めるような考え方をする。

NP 母 面倒見がよく、他人に優しい。程度を過ぎるとおせっ
かい、過干渉になる。

FC 自由な子供 感情を優先する。自由奔放、わがままである
が、想像力が豊かでもある。

AC 人の顔色を伺う子供。従順で協調性があり、引っ込み思案。

A 大人 論理的。上の四つと違い、感情に支配されることがな
い。冷たい人にも見える。

これら5つの要素の強弱で、性格が分かれる。厳格で人を責めが
ちな人は、他に比べてCPの要素が強いといえる。NPとFCが
高い人は、楽天的で人懐こい性格であることが伺える。

本書では、自分がどのタイプに当たるかの診断項目がある。それ
をした上で、低い要素を高めていくことが、うまく生きてゆくコ
ツなのだそうだ。

もちろんそのやり方も記載されている。自分の欠点を客観的に見
て、対処できるように、ちゃんと配慮がされている。

人に対するときも、この要素での判別が使える。たとえば上司な
どが、CPの要素で接してきているとき、ACで対応するのが一
番スムーズだといえる。

「ラーメン食べに行こうよ!」と、友達がFCの顔で言ったとき
は「行こう、楽しそう!」と、あなたもFCで応じてあげよう。
「君に合わせるよ」などと、ACで応じると感情の阻害が生じる
ことになる。ちょっと、寂しさが残る。

また人は、NPを装いながらCPの感情を押し付けてくることも
ある。本音と建前が違う、そういうことが往々にしてある。

「あなたのためを思っているのよ」、言葉自体は相手を案じるN
Pであるが、本音は相手を思うままにしたいCPのそれである。

そのような、隠された本音とコミュニケートする方法も説明され
ている。


著者の方は、恋愛において苦しい思いばかりされて生きてきた。
その原因を探ることが、本書を書くきっかけになった。

また、親が子にするコミュニケーションの間違いも多く取り上げ
られている。根拠のない不安や、度重なる失敗の原因が、実は成
長段階において植えつけられた「縛り」である場合も多い。

読んでいて、ちょっと怖くなる場面もあった。自分自身を省みて、
だ。

しかし面白かった。筆致は誠実。安心して一読をおすすめできる
本であると思う。

ちなみに、冒頭に書いた「素直になれ」の云々。自由に振舞おう
とするのがFC、従順であろうとするのがACの考え方だそうだ。

うまくいかない自分から抜け出す方法