2011年2月28日月曜日

No.389 小川糸「食堂かたつむり」→ 4.5点

小川 糸「食堂かたつむり」→ 4.5点
発行元 :株式会社ポプラ社
初版発行:2008/1/15
小川 糸(オガワ イト)

あらすじ

最愛の恋人に捨てられ、全てを失った私は、たったひとつだけ残された
ぬか床の壺を抱えて郷里の家に戻った。
自宅ではしばらく呆然としていたが、ある日私は一念発起して立ち上がった。
一日一組だけのお客様に、その人専用の料理をつくる食堂を開きたい!
かくして「食堂かたつむり」はOPENしたのだった。

コメント

私にとって料理とは祈りそのものだ。
・・物語の後半に出てくるこのワンフレーズが書きたくて、このたった
一言に力を持たせたくて作者の小川氏はこの作品を書いたんじゃないか
な、というのが第一印象。

実に味わいのある、まっとうな小説でした。

人間は食べなければ生きていけない。
そして食べるということは基本的に他の命をもらうということだ。
まず、この動かしがたい事実が前提としてあり、その上で人が命を食べ
るのに料理という文化をもっていることに深い感謝を捧げている作品だ
と思う。

出てくる登場人物がみんなそれぞれイイ!という点でも久々のヒット作。
料理って、しかしあらゆる芸術の中でサイコーに分かりやすくて、神秘
的で、しかも官能的だよな、と改めてそう思った。

最近読んだ料理作品としては平山夢明氏の「ダイナー」があり、これは
これで文句なしの傑作なのだけれど、同じ料理をテーマとした小説であ
りながら、こっちはタフでハードで黒い世界を描いている。

本作はひたすら真っ直ぐで力強く、明るく白い世界に浸ることができた。
他の書評を見ると結構酷評している人もいてへえっと思ったけれど、これ
は小川氏の描く世界を肯定的に捉えるかウソくさいと取るかによって大き
く変わってくるんだろうなあ。

個人的にはリアリティもきちんとあって良い小説だと思います。
しかし、こんな食堂があったら絶対に行きたいよな。
おすすめ!

小川 糸「食堂かたつむり」


0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。