反対されたり批判されてあきらめるくらいなら、
その夢は、そもそも叶わなかったものだろう。
今日も一日味わいつくしましょう。
人には言えない…大人の心理テスト 齊藤 勇
¥ 760 日本文芸社 (2010/07)
面白かったので。文庫本。盛り上がるんだよね、こういうの。
・自己診断篇
Q、福引で、一頭の旅行券が当たりました。さて、どこ行きの旅
行券だったでしょうか。
1、砂漠 2、ニューヨーク 3、アフリカ 4、宇宙
A、「ビビリ度」をチェックします。
何もない1を選んだあなたはプレッシャーに弱い。無害な人、物
を周りに置きたがります。人の多い2を選ぶ人は、高圧的な人に
弱い。強い者に弱く、弱い人に強気になるので要注意。
3、野生動物がいるアフリカを選んだあなたは強い人。「ビビリ
度」は低いと言えます。4は注目されると弱くなる。人の目がプ
レッシャーになるようです。
・恋愛篇
Q、おいしそうな果物がなる木を見つけたあなた。どの果物をとる?
1、手を伸ばせば届くところにある実 2、上の方、手が届かない
位置の実 3、すぐ近くに落ちている実 4、上にはあるが、台に
乗れば届く場所になる実
A、実の位置は理想の高さを表しています。1は現実的。そばにいる
人と恋に落ちるタイプ。2は理想が高すぎ、報われないことも。
3は気が合うことが一番の条件。仲良しと付き合うように。4も理
想が高いが、相手につりあうよう、努力ができる人。
Q、目の前に池があります。深さ、広さを答えてください。
A、池の広さはストライクゾーン、深さは一人の人に対する感情を表
しています。広くて浅い人は浮気性、狭くて深い人はストーカー気
質が。
・社会生活篇
Q、川で釣りをしています。目の前で魚が跳ねました。さて、どれく
らい高く跳ねましたか?
A、10年先の成り上がり度を示しています。高ければ高いほど、人生
は順調といえるかも。低い想像をした人は、理想に現実が追いつい
ていない、苦しい思いを抱えているかもしれません。がんばりどき
です。
Q、突然、あなたの家に正体不明の客が来ました。どうする?
1、友好的に迎える 2、武器になりそうなものを持って身構える
3、身を隠して様子をうかがう 4、部屋を飛び出して逃げる
A、あなたの第一印象を表しています。
1は愛想のいい人と思われる。八方美人ととられないよう、注意を。
2は初対面の相手に身構えがち。強気な人と思われます。3は真面
目で几帳面な印象。裏表がありそう、と疑われるかも。4、落ち着
いた対応、大人だと思われる。気難しいと思われることも。
どないでした? 当たる、当たらん、あまり気にせず、楽しく読ん
で盛り上がりたい一冊でした。
中学時代、
先生にこんないたずらをしかけた男がいます。
先生が黒板に文字を書いてるすきに
タイガーマスクをかぶるのです。
先生はふりかえると、そこに突如、
タイガーマスクが座っているので
「ひゃーーー」と叫び声をあげるわけです(笑)
これを1時間目から5時間目までやり、
いろんな先生のリアクションを楽しんでいたのは、
チームひすい@岩手のワイルドボーイ、キンちゃんです。
なかには
こんな反応をした先生がいたそうです。
「なにしてんだ!!!!」
とカンカンに怒る先生。
それに対して、キンちゃんは
ごほごほとセキこんで、
一言。
「今日、風邪ぎみでマスクを……」
すると、
先生は
「マスク違う!!!!!
お前のマスク、
口だけ出てる!」
この話は
講演翌日
チームひすいのみんなが
岩手山が最高に美しく見える神社へ
連れていってくれる車中で聞いた話なのですが、
「お前のマスク、口だけ出てる!」
僕は、この話
ツボにはいってしまいまして
うちの息子もこんなふうに
授業中にタイガーマスクをかぶるような
おバカな男の子に育ってほしいな〜って
思った1日でした。
選択肢は
正しいか正しくないか
ではなく、
愉快かどうか。
「それは愉快か?」
ひすいこたろうでした(^^♪
飯島愛ちゃんのベストセラー。愛ちゃんが亡くなってどれくらいになるかなあ。忘れちゃったなあ。
愛ちゃんは厳格な両親に厳しく育てられたようです。それに反発して素行が悪くなっていく。歌舞伎町で夜遊び。万引き、シンナー、売春。やりたい放題。その後ホステスとして働く。風俗にも手を染める。AVへの出演をきっかけに芸能界へ。
非常に赤裸々な告白本です。
本日は ◆ビジネス、営業系
15分あれば喫茶店に入りなさい。 齋藤 孝
¥ 1,365 幻冬舎 (2010/09)
「カフェ仕事」という言葉があるのだそうだ。
最初聞いたとき、てっきり喫茶店経営、つまりカフェそのものを
仕事にすることかと思った。
でも違うんだって。その意味は、事務所から出て、カフェで仕事
をすることなんだそうだ。増えているんだってね、こういう人が。
タイトルには喫茶店という言葉が使われている。だがその中には、
スターバックスなどの今風のカフェ、ファミリーレストランも含
まれている。
外で座って考え事や仕事ができる場所。こういう場所をひっくる
めて喫茶店と呼び、そこでの作業のコツが語られている。
著者が喫茶店に入るのは、思考を深めたいときだ。一つの物事を
掘り下げて考える、垂直思考にふけりたいとき、その場所を利用
する。
インターネットから離れる意味もある。ネットを検索していると、
余計なものに目が行ってしまい、思考が平行に分散する。
15分を仕事の目安にしている。そのために、持っていくのは手帳、
クリアファイル、三色ボールペン、A4用紙、ノート、電子辞書、
時計もしくはストップウォッチ。
クリアファイル一枚に一つのプロジェクトの書類をまとめて入れ
ておく。持ち運び、喫茶店で骨格を決め、仕上げは家などで行う。
短い時間で集中して、短い骨組みを組み立てることができれば、
後はそう時間はかからない。生産性が高まるというもの。
喫茶店では、いつでも時間が見られるように心がけている。腕時
計を外してテーブルの上に置くか、最近ではストップウォッチを
買って持つようにしている。
あと10分、あと5分と、自分を追いつめるように仕事をしていくの
が大事。一分一秒を無駄にしない、集中が成果につながる。
喫茶店の有効利用。雑用を片付けるのにも、喫茶店はいい場所だ。
たとえば交通費の清算、報告文の作成、資料の読み込み。こうい
う雑用をまとめて喫茶店に持ち込もう。雑用をどんどん片付けて
いけば、人生は明るくなり、仕事にも前向きになれる。
本を読むのもいい、勉強をするのにも向いている。そもそも齋藤
先生は、図書館などのしんとしたところよりも、雑然と人の声が
ある場所のほうが、勉強ははかどるのだそうだ。ライブ感がある。
見知らぬ人の中にあって、自己を客観視する時間を作るのもよい。
次会う人と何を話すか、雑談のネタを仕込むのもよい。
喫茶店を利用しよう。仕事の能率、人生の生産性があがる。
私が住む町には、素敵な喫茶店がたくさんある。田舎だけど、カ
フェには恵まれた町だ。
さっそく、出かけようと思った。
本日ご紹介の本はこちらから↓
15分あれば喫茶店に入りなさい。
本日は ◆世間話、時事ネタ系
シンプルライフ 森理世
¥ 1,470 幻冬舎 (2010/4/17)
ミスユニバースに選ばれた森理世さん。美しさの秘訣、これまで
の人生、ミスユニバースの仕事についてが語られている。
美しさについて。
とにかく世界一なのだから、ものすごいことをしているのかと
思ったが、そういうわけでもないのが驚きだった。
基礎化粧品は花王のキュレル。高校生の頃からほかに変えたこと
がない。適当なお値段で、たっぷり使えるのが好き。
食べ物も好きなものを食べる。体が欲すると思うから、甘いもの
も特に遠ざけることはない。ただ、食べる前には水を飲むように
している。朝起きたときも、胃を動かすために水。
しかしこれにもこだわりはなくて、実家(静岡)にいるときは、
水道水でも平気で飲んでいる。
この方のご実家は、ダンススクールを経営なさっているようだ。
理世さんも講師として活躍している。もともとおとなしく、人前
に出るのが苦手だったそうだが、克服したのは留学中のことであ
るようだ。
静岡で、海外のダンスチームの公演があった。理世さんはそれを
見て、将来あんなチームで踊りたいと考えたそうだ。では、留学。
目標が決まった。
理世さんは、ご自分でご自分を「おとなしい、恥ずかしがりや」
と書かれているけど、そうかな、と読み手としては思う。
目標を定めた後の行動力がすごい。高校生、留学当初は一年で戻
るはずだった。だがバレエスクールへの入学を決意し、周りを説
得して、留学先の学校へ転校してしまう。
高校の授業と、バレエスクールと、実にハードな日々を過ごした。
泣いてばかりだった。そうも、この本には書かれてあるが、決し
て弱虫というわけではないのだと思う。
ミスユニバースへの挑戦を決めたのは、幼い頃から聞かされてい
た、祖母の言葉に影響されたから。祖母はよく「二十歳になった
らミスコンテストに出てほしいな」と言っていた。
もちろん、世界大会を意味していたのではないとわかっている。
だが、挑戦するならやはり一番がよかった。
書類審査が通ったとき、理世さんはニューヨークのダンススクー
ルの入学直前だった。キャンセルの手続きを一人でして、いざ、
コンテストへ。
見事日本代表となり、世界大会へ出場したが、これも大変なこと
だった。
審査は実に一ヶ月に渡る。集団生活をしながら、詳しくその人柄
を見られるのだ。また、その間はインタビューなどのスケジュー
ルが過密に組まれてあり、仕事に耐えられるかどうか試される。
大会当日には祖母が応援にかけつけてくれた。優勝が決まったと
き、祖母はとても喜んでくれた。そのとき交わした言葉が、祖母
との最後の会話になった。
ミスユニバースの仕事は、8割がチャリティーなんだって。とき
にはジャングルで、ホテルもないようなところで過ごすことも。
美しいだけではないんだなあ。タフで賢くて、優しくなければな
らない。なかなかできることじゃないよ。
ある国などは、ミスユニバースに選ばれると、一生涯の生活を国
が保証してくれるらしい。そんな事情も知ることができて、面白
い本だった。
あらすじ
女同士、半年に一回の集まりは、いつでも他愛ないテーマでふけてゆく。
「銀座か、あるいは新宿か」
スーパーマーケットでの微妙な女心の揺れ動きを描いた「パパイヤと五家
宝」
空港での印象的なシーンを切り取った「彼らが失ったものと失わなかった
もの」など、日常に潜む一瞬の味わいを描いた短編11編。
コメント
森絵都氏の才能が詰まった短編11編。
しかし上手いよなあ。ホント上手い。
文体も良いが、何気ない日常に潜むちょっとした味わいみたいなものをさ
らりと切り取る手口の見事さはちょっと尋常じゃない。
脱帽です。
個人的に好きだったのは「銀座か、あるいは新宿か」「ハチの巣退治」
「パパイヤと五家宝」「太陽のうた」「彼らが失ったものと失わなかった
もの」かな。
特に「彼らが・・」は題名を含めて秀逸。
通勤電車で読んでもよし、旅先で読むのもよし、家でウイスキーでも飲み
ながらじっくり読むのもまた良しの一冊。オススメ。
0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。
※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。
本日は ◆自己啓発系
本気になればすべてが変わる 松岡 修造
¥ 1,500 文藝春秋 (2009/03)
こ、この本は出色。アスリートの自著ということで、正直、あま
り期待はしていなかった。修造さん、まじ、ごめん。暑苦しい根
性論じゃねえの、なんてうがった見方をしていた自分が恥ずかし
い。ごめんなさーい!!
自己啓発書。テーマが一つ提示され、それぞれに修造さんが解説
を加えるという、自己啓発書の黄金パターンに乗っ取って作られ
ている。
提示されているテーマの中には、凡庸なものも少なくはない。ネ
ガティブワードは避けようだとか、楽しむ気持ちを忘れずにだと
か。
しかし解説が深い。実に冷静だし、ご自分の体験をもとにしてい
るので異様に説得力がある。また、世界的なテニスプレーヤーと
して活躍したからこそ、言えることも多くあり、話が個性的なの
も魅力。
修造さんは日記をつけておいでだ。この日記のおかげで、自分を
客観的に見ることができる。過去の失敗も振り返ることができる
ので、対処法も見つけやすい。同じ事をくり返さずに済む。
自分の状態を把握するために、現役時代はストレスチェックを日
記で行っていたそうだ。
ストレスになる項目を10個、決めておく。練習時間、強度、試合
量、プライベートのストレスなど。
そして、それをリカバリーできると思われる項目も10個用意する。
睡眠時間、昼寝、動的休養(ウォーキングなどの楽しくできる軽
い運動)、静的休養(読書、音楽鑑賞など)。
松岡修造さんと言えば、いつも暑い、蒸し暑い印象がある方だけ
ど(ほんまごめんやで!)、実に冷静によいコンディションを保
つ方法を考えておいでだったということのようだ。
彼はそもそも「頑張っている自分」を格好悪いとは考えないのだ。
最近、熱血とか、一生懸命とか、そういう言葉をネガティブな意
味でとらえる人がときどきいる。確かに、努力が報われるとは限
らないし、要領よく生きるほうが楽に見えるかもしれない。
でも、一生懸命な人の姿は格好いいものだし、周りの人にパワー
を与えることもできる。第一、頑張らない生き方もつまらないじゃ
ないか。
やってらんないよと思うとき、「でも俺、頑張ってるよな」とつ
ぶやいてみたらどうだろう。頑張ってる自分、けっこう好きにな
れるんじゃないだろうか。
しかし修造さんにだって、テニスから離れて遊びの道に迷いこん
だことがある。学生時代、麻雀にはまってしまったことがあるの
だ。そのときは、犬が吠えても「ロン」と聞こえた。
しかしあるとき、このままでいいのかという疑問が脳裏に浮かん
だ。こういうときは自分の声に素直に耳を傾けてみるべき。
自分がやりたいことというのは、なかなかつかみづらいものかも
しれないけど、日記を書いたりしていると、ぼんやり浮かび上
がってくることがある。その気持ちを忘れないように。自分の声
に従おう。
修造さんは麻雀漬けの毎日から足を洗い、再びテニスに打ち込み
始めた。守りから攻めの姿勢に転じることができた。過去の過ち
なんか悔いても仕方がない。過去があるから現在の自分がある。
遅すぎることなんてないのだから、いつも前向きに。
緊張したときは「自分は今、本気で頑張っている(だから緊張す
る)」と考えよう。記憶したいことがあるときは、脳がぶるぶる
震えるイメージを持とう。記憶が定着しやすくなる。
決断力を養うトレーニング。レストランのメニューは5秒以内に
決めよう。周囲と摩擦を起こさないうまい「ノー」の言い方を覚
えよう。
とにかくいろいろ、ちょっと信じられないくらいがっつり読みふ
けってしまった本だった。おすすめ!
この本、ある方にご紹介いただいたんだけど、読んでよかった。
ほんとありがとう!
金輪際興味なんかありません、名前を聞くのもいや、文字を読むのもいや、という
方、来週はもっと耳当たりのいい本をご紹介できると思いますので、今日のところ
はご勘弁ください。来週またお会いしましょう。
実際のところ、私もそのクチです。
決して好きではありません。
雨上がりに歩道に迷いだしてきているミミズを目撃なんかしちゃったら、悲鳴を
上げて飛びすさります。
だって気持ち悪いじゃないですか、ぬめぬめしてて、にゅにゅる動いて、うにょ
うにょしてんですよ、奴等は! 高等哺乳動物たる人類が親しく感じられる生物
じゃないですよ!
ではあるけれど、理性で考えるならたいへん有益な動物であることはご存知の通り。
> ミミズは土壌の組成を変え、水分の吸収・保持能力を高め、栄養分や微生物を
> 増やす。つまり、農耕に適した土地を用意してくれるのである。(25頁)
ミミズがたくさんいる土地は豊かな土地。
もっとも、どんなことにも例外はあって、第六章ではミミズによる被害もレポー
トされている。
現在、北米大陸に生息するミミズの多くは在来種ではなく、移民と共に渡ってき
たものだという。鉢植えの土や、苗木の根土や、荷馬車の車輪についた土や、船
のバラストなどと共に。
それらが合衆国の農地にとって役立つ存在でもあったのは間違いないだろうが、
森林に対しては問題を引き起こしてもいる。
森の下層植生を、ミミズが変えてしまっているのだ。ミミズが落ち葉を食べてし
まうために、シダや山野草が発芽できなくなっていた。
ミミズはそれらの地では悪者なのだけど、そもそもミミズ自身の移動距離は年に
数メートル。人間が森にミミズを持ち込まなければ、森を守る時間は充分にある。
ていうか、今起きている問題は、森にミミズをもち込む人がいるから起きたって
ことだ。湖に来た釣り人が、残った餌をその辺に捨てていくような。
ミミズは正しく付き合えば、人類にとってたいへん有益な友人になる。
そんなミミズに魅せられたひとりが、かのチャールズ・ダーウィンで、晩年の
ダーウィンはミミズ研究に没頭した。
著者のエイミィ・ステュワートはミミズコンポストを使っていて、本書ではそこ
で飼っているミミズと、ダーウィンのミミズ研究を併行して紹介している。
ミミズ研究はまだまだわからないことばかり。
土の中は謎がいっぱい。
わからないことって魅力的。
気持ち悪くて魅力的で役に立つけど困りもの。そんなミミズの生態に、ちょっと
だけ近づいてみませんか?
新井淑則さんは埼玉県の長瀞町立長瀞中学校で国語を教えています。全盲です。
新井先生は網膜剥離により視力を失いました。35歳の時でした。仕事ができなくなり荒れた生活になってしまいました。壁にパンチをし、穴を開けたり、奥さんとは喧嘩の毎日。しかし、リハビリを続け養護学校の教員として復職。盲学校を経て、ついに普通中学校の教壇帰ってくることができました。
新井先生の復職の影には多くの人の善意の協力がありました。そして何より本人の努力と忍耐力がすばらしかったのでしょう。
復職について不安ばかりでしたが、それが少しだけ和らいだ気がします。
本日は ◆さわやか、スポーツ系
佐藤琢磨終わらない夢─F1との決別、もうひとつの戦場ヘ
松本 浩明 ¥ 1,500 三栄書房 (2010/11/30)
佐藤琢磨。この人に対する私の印象は「うさんくさい笑顔の人」
というものだ。
好青年である。アスリートらしい鍛えた体。さわやかな口元。発
言はいつも前向きで、ファンを思いやるものばかりだ。
だが目が笑っていない。笑う形をしていても、いつもどこか、チ
ンピラみたいな凄みが残されている。ああ俺、いつでもやる気な
んだぜかかってこいよ、ボッコボコにしてやんよ。そう言ってい
るように見えて仕方がない。ファイターの目なんだよ、こええ。
世の中には、才能だけではあがっていけない場所がたくさんある
と思う。運も必要だ。そしてこの人には、なんだかんだで運が足
りない場面があるような気がする。
佐藤琢磨は2001年、ジョーダン・ホンダでF1デビューを果たす。
02年には鈴鹿で5位入賞。輝かしい実績を残したが、08年には所
属していたチームが解散し、シートを失ってしまう。
09年にはトロロッソ・チームへの加入が決まりかけたが、ロシア
人ドライバーに敗れて、F1に戻ることはできなかった。
なんや、難しいことがあるらしいわ。ドライバーになるには、政
治力や資金力がいる。スポンサーの後ろ盾があって、チームに経
済的に貢献できないと、雇ってもらうことはかなわない。
ロシア人ドライバーの背後には、潤沢なロシアマネーが控えてい
た。技術は決して劣らなかったと自負している。
カーレースの業界では、やっぱり花形はF1だ。銀座の寿司屋みた
いなもんだ。その厨房に立つことが許されなかった佐藤琢磨は、
活躍の舞台をよそへ移すことを決意する。
アメリカのインディーカーだ。どうしてもレースに出たかった。
場所は変わっても、先の例なら地方に下っても店を変えても、一
線で働くことを忘れたくなかったのだ。
KVRTというチームが彼を受け入れた。急だったので、準備が十分
にできなかった。初戦のブラジルでは、スタート直後にスピンし
てリタイア。悔しい結果となった。
その後も車の不備による無念のリタイアが続く。波に乗りきれな
い苦しさがあった。
インディーカーにはオーバルコースというレース場がある。競輪
の競技場のように、すり鉢状になったサーキットだ。F1では見ら
れない形状で、琢磨にとっては初挑戦に近いものだった。
とにかく、レースは経験が物を言うようだ。コースの状態、作り、
そんなものを熟知していないといけない。なのに練習の日に、暴
風雨が襲った。誰よりも長くコース上にいたいのに、これも無念。
しかしこの初めてのオーバルコース、カンザスサーキットでは琢
磨は入賞を手にしかけた。4番手、5番手争いに加わることができ
たのだ。
しかも競っていたのは同じ日本人のドライバーである。日本から
来たマスコミは色めきたった。皆の期待を一身に背負い、走り続
けるが、衝突。
死角となっていた、女性ドライバーからのもらい事故だった。
「いい経験でした」と琢磨は語る。「ファンの皆さんには申し訳
なかったけど、手ごたえはあったし、難しさもわかった。手の皮
もむけたしね」
必死でハンドルを握っていた手は、擦り切れて、皮がめくれてい
たらしい。それでも琢磨は「楽しかった」と言い切っている。
ファンの方向け。カタカナが多く、基本的に「これくらいわかっ
てるよね」という、暗黙の了解の下で話が進んでゆくからだ。
レース用語など、詳しい解説は特別にはない。
といって、難解というほどでもない。基本的にはしぶとく、たく
ましく世界で戦う青年の物語、というところだから。
「終わらない夢」ってのはいいタイトルだと思ったよ。世界に飛
び出て挑戦をして、うまくいかないこともあるだろうけど、どう
かいつまでも前を見ていてほしい。
本日は ◆ビジネス、営業系
「惜しい努力」で終わらせない思考法 午堂登紀雄
¥ 1,470 実務教育出版 (2010/8/31)
タイトルは素晴らしくいいと思うのだけど。
他人が流す情報に右往左往しているようでは、大成は望めない。
自分の頭で考える。それが、努力を成功に結びつけるコツ。
この本は「地頭」を鍛えるために書かれた。鵜呑みにせず、各自
なりの主張を抱いてほしい、そうだ。
・残業ゼロで仕事ができるようになったやつはいない。
・「できるヤツは遊びもできる」は嘘
ノー残業を提唱している人を見よ。彼らは若い頃、わき目もふら
ずに働いてきた人だ。二十代、三十代は土台を作る時期。がむ
しゃらに仕事をしよう。遊びも仕事も境がなくなって始めて、己
の能力が開花するのだ。
・「自己投資商人」のカモになってはいけない。
・やみくもな勉強が身を滅ぼす。
教材を買ったり、セミナーに通ったりする前に、そのリターンが
いかほどであるか、冷静に考えよう。自分が何をしたくて、何に
なりたいのか、わからないうちは自己投資は控えるべし。
資格に関してもそう。その資格がどう役に立つか、マーケティン
グをしてから、勉強を始めるようにしたい。
・ロジカルシンキングを学んで、賢くなった気になってはいけない。
シャ乱Qのメンバーが「シングルベッド」をヒットさせたときの逸
話。彼らはまず「有線放送で一番になる」という目標を立てた。そ
のために、メンバー全員で朝から晩まで有線に電話をかけまくった。
つんく♂さんはそのときのことをこう語る。「どんな壮大な目標で
も、プロセスを分解すると誰でもできる作業に行き当たる」
論理的な考え方だ。だがつんく♂さんがロジカルシンキングを学ん
だかといえばそうではない。目標を持って始めること、動き出すこ
とで、自然、答えが出るのである。
……と、まあ、前半は悪い感じではないねんけどな。後半に差しか
かると、なんやちょっと、どこぞ、未開の国の王様みたいな時代遅
れの話が始まるのよ。そこが違和感、まさに惜しい感じ。
・単なるワーカーの賃金が安いのは当たり前。
・「仕事がない」と言いながら選り好みしている人たち。
なんかなあ。この手の話を根性論で片付けるのは、頭のいい人がす
ることとは思えないなあ。
中に「先進国は北半球に集中している。それはなぜか。寒さが人を
鍛えるからだ」という一文がある。ならば南に住む人が貧困にあえ
ぐのは、温帯の恵まれた気候に甘えて堕落したせいであるのか。
であれば、イヌイットが世界制覇に乗り出してもかまわない、むし
ろそうあるべきだと思うのに、そうなっていないのはなぜか。
つじつまがあわんやんけ。
いや別に、ええねんけどな。だけどしかし、こういう「酒場の
オッサンがする議論」が中に混じっていると、本全体がどうにも
安っぽく思えてむなしい。
「俺らはよう、がんばって働いたんだ。若いのは甘えてる。貧乏人
は甘えてるんだぃ!」
まあ、それもそうかもしれんけど、世の中いろいろありますわいな。
その辺脇が甘いので、大人が読むにはちょっと残念。
覇気あふれる青年淑女が、ささっと読んでよいエッセンスだけを残
し、一晩で忘れるくらいがちょうどいい一冊。
「心配り」と「気配り」は似ているが
「り」を取ると、
「心配」と「気配(けはい)」と全く違ったものとなる。
言葉を選ぶ時
一文字の違いで人生は変っていくんだ。
今日も一日味わいつくしましょう。