2011年1月27日木曜日

本のご紹介です。きことわ

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆話題の小説系


きことわ  朝吹 真理子
¥ 1,260  新潮社 (2011/1/26)


第144回芥川賞受賞作。

貴子(きこ)と永遠子(とわこ)、七つ違いの幼馴染が、別荘の
後片付けをしましたよ〜、おしまい。


って感じだったけど、それだけで終わるのもさみしいよな。ぼち
ぼち筋らしいところを、がんばって書いてみようかな。

葉山のお話。永遠子の母は別荘の管理人をしている。その縁で、
永遠子は貴子と仲良くなった。

別荘は貴子の両親の所有である。貴子の父は外科医で、忙しくて
別荘にはあまり来られない。訪れるのは母の春子と義理の弟の和
雄、貴子の三人だけだ。

永遠子は幼くて知らなかったが、彼女が別荘を訪れるとき、春子
は交通費を支払っていた。七つ年少の貴子が、永遠子になつき、
そばにいたがったからだ。

だがその交流も、春子の死とともに途絶える。春子は心臓が弱
かった。

現在永遠子は40歳、結婚して子供がある。貴子は33歳、不倫の恋
に破れて父と二人暮らしである。その二人が、手放すことになっ
た別荘の片づけをする場面が描かれている。

過去と現在が行き交う。子供の頃遊んだ海の話、食事をした蕎麦
屋の話。歩いた道に道路反射鏡があったかしら、なかったかしら
と、二人は過去の思い出を語り合う。

永遠子はあるとき、母が父のほかに恋人を持っていたことを知ら
された。別荘の仕事は、外に出てゆくための理由だったのだと思
い至る。

貴子にも母の思い出がある。母春子は、心臓病を患っていたのに
タバコをやめられなかった。父は黙認していたようだ。

和雄は貴子の父を責めた。医者なのになぜ。別荘の片付けをしな
がら、封を切っていないタバコがワンカートン出てきて、和雄の
前では吸えなかったのだなと、貴子は母を思いやる。

片付けは一日では終わらず、貴子は別荘に泊まることにした。そ
の夜、かつての若い姿で別荘を歩く春子の姿を、貴子は目にした。

母は病に冒されていた。幼い貴子はいつも死におびやかされてい
た。母が亡くなったとき、ようやくその恐怖から解放された気に
なった。死者を縛り付けるものは生者なのかもしれない。

永遠子は一人家に戻った。帰り道、晩御飯の材料を買って踏み切
りにさしかかる。ぼんやり、電車が来たことに気づかなかった永
遠子だが、誰かに髪の毛を引っ張られて難を逃れる。

不思議だ。永遠子は子供を産んでから、ずっとショートカットな
のに。

翌朝業者の手を借りて片付けを終え、二人は弁当を広げた。永遠
子が作ってきたものだ。野菜の甘酢漬けがうまい。

そう言えば、父が蓮根を大量に買ってきていたなと貴子は思う。
甘酢漬けのレシピを聞いて、父のいる家に戻ってゆく。


文章は流れるようにきれい、冗長ではない。美しい環境ビデオを
見てるみたいだった。

それだけっつー感じもするけど、まああれや、偉い人にはきっと
わかるんやろな、そのよさが。こういう本は偉い人向き。

私にはちょっとよう、わからんかった。アホやもん、しょうがな
いな。

きことわ  朝吹 真理子