2010年12月8日水曜日

本のご紹介です。堀秀道の水晶の本

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆たまには教養系

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堀秀道の水晶の本  堀 秀道
¥ 1,680  草思社 (2009/12/22)

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水晶を鉱物としてとらえた、実に真面目な本だった。

鉱物ファンにとって、水晶とは「圧倒的に普遍的でありかつ特殊
な鉱物」なのだそうだ。水晶が嫌いでは、鉱物の収集はできない
のだとまでおっしゃっている。

水晶は、たいていの鉱物の産地でその採掘に伴って採れるものな
のだそうだ。まれに採れないところもあるが、鉱物の採掘と水晶
は切っても切れない関係にある。

男性のコレクターは金属の鉱物が好きだが、そのような人でも水
晶については熱く語ることが往々にしてある。歴史的に見ても、
実用品であったり、呪術的な意味合いを持っていたり、水晶は実
に不思議な鉱物であるといえる。

水晶は酸素と珪素からできている。採れるのは地球の皮の部分、
地殻と呼ばれる場所である。長い年月をかけて、まるで「ラッ
シュアワーに人が押されて密度が高くなるように」規則的な形に
整えられてゆく。

だが一口に水晶と言っても、その色や形、様々なものに分類する
ことができる。

たとえばアメシスト。(アメジストと書かれることが多いが、正
式にはこう呼ぶらしい) 紫の色合いを帯びた水晶で、二月の誕
生石として宝石の扱いを受ける水晶である。

この紫色は、結晶の中に入った三価の鉄イオンが、放射線の影響
を受けて変化し、発色するものである。

アメシストは現在、人の手で合成して作ることができる。できが
よく、天然のものとの見分けが案外と難しい。もともと安価な宝
石であることも加味して、日本では特に区別されずに店頭に並ん
でいるようである。

水晶は日本の山でもよく採れる。山梨県にはよい鉱脈があり、昔
はよく掘られていた。水晶掘りを仕事にしていた人も、最近まで
はいたのである。筆者はその方から、ねじれ水晶という珍しい品
を譲ってもらった。

水晶という名前が入った地名も多くあり、古来から人々が水晶に
親しんできたというのがよくわかる。

その他、筆者のコレクション、世界の水晶の産地なども上げられ
ているので、ご興味のある方はぜひ。

最後に天然物の水晶の見分け方を、少しばかりご紹介してみたい
と考えている。

簡単なのは、一本線を引いた紙の上に球を乗せてみることだ。本
物なら線が二本に見える。複屈折という光学的現象のためである。

さらに理化学メーカーに持ち込んで、赤外線吸収スペクトル測定
という技法を頼むこともできる。だが高価なので、その価値あり
と判断される球以外はお勧めはしない。

筆者が最近、独自で考え出した手法が述べられている。球の中に
できる光の輪を見る方法だ。

透明な球の中には光の輪ができる。これが均等であるのが人工物。
天然の物には輪のふちが膨らんでいる場所があり、それが左右対
称に見える。これは新しい見分けの手法であり、今後どこかで発
表する予定のものであるのだとか。


うーん。パワーストーン大好き、という軽い頭で読んでみたら、
案外と難しくて居住まいを正す羽目となってしまった。だが、読
み応えは十分。

いつか掘りに行ってみたいものだなあと、ぼんやり考えるまでに
なってしまった。

アメリカには、そういうイベントなんかもあるみたいだね。ミネ
ラルパークとして、お金を払って鉱物を探すことができる場所も
あるらしい。楽しそうだなあ。

堀秀道の水晶の本

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●年末を見据えて、そろそろプリンターの季節ですなあ。

EPSON Colorio インクジェット複合機

無線LAN&高画質、カンタンLEDナビ搭載。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

絶望と希望が戦っている間に、

「今」という宝物が逃げていく。

今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月7日火曜日

第337冊 乙川優三郎「生きる」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 337 冊
              
                       2010.12.7
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【1】読書感想 (第337冊)
  
乙川優三郎  「生きる」  文春文庫

直木賞受賞作「生きる」(96ページ)の他、中篇2編「安穏河原」
「早梅記」を収めた中篇集。
乙川氏の作品は数冊読んでいて、現在活躍している時代小説家の中では
大好きになった作家であり、本書は直木賞受賞作も含んだ作品集とあって
大いに期待して読んだのだが、これがいけなかったのか。
そもそも「生きる」というベタな題名が、自分には違和感があったという
か、予感がしたというか。

父の代で、浪人から召し上げられて扶持を貰い、自分の代で殿様の覚え
目出度く、石高はうなぎ上り。
自分の才覚で収入を増やしたわけではあるけれど、封建時代は殿様の意向
あって初めて、昇格昇進給料倍増となるわけだ。
それだけに、江戸時代初期は「追い腹」というのが頻繁で、ご厚情特に
篤かった者は、殉死することが多かった。

「生きる」の主人公は、この殉死をめぐって翻弄される話。
ただし、人物の精神が低い。
あくまで一般的な人間性を据えたかった、ごく普通の人間を主人公にして、
「生きる」ことの深淵を描きたかったんだろうが、江戸初期の武士がここ
まで軸がないかなぁ。
結局人間とはこういうものなんだからと、著者は書きたかったんだろうけ
ど、昔の時代小説家はもっと峻烈な心理描写を書いたはず。
こうまで腑抜けた心だったのかなぁ・・・と思ってしまう。

「安穏河原」は女郎に身売りした悲劇。
武士として理想を貫き通したばかりに浪人となり、世間知らずもはなはだ
しい挙句に食うに食わずの貧乏生活。
妻が長患いとなって薬代がどうのもならなくなったので、一人娘を女郎に
身売りさせてしまう。
ここから話のスタートなんだが、浪人となった理想論を唱えてきた父の
行動にイライラ。
結局、娘とはいえ我が身の方がかわいいんじゃないかと憤ってしまう。

「早梅記」もなんだかなぁ、という話。
武士として大出世を遂げた隠居爺さんが、今日も息子夫婦に気兼ねしなが
ら散歩に出かけるところから話は始まる。
しかし、その爺さん、若い頃は当時の武士としては当たり前だったのだろ
うが、一人の若い娘の人生を台無しにしてしまっている。
しかも、責任を取るつもりだったのに何やかやで取れなかったと言い訳し
ている始末。
所詮、自分より階級の低い者への考え方はそんなとこだったのです、と
著者はさらりと書いているが、現代人から見れば、もうここで許せない話
となってしまう。
結局そんな気持ちで読み続けるもんだから、主人公(爺さん)の心情には
まったく寄り添えず、勝手なことばかり言うな!という気持ちで話は終わ
った。

結局3編とも、イライラムカムカばかりしていた。
時代小説は、読書の合間の清涼水みたいに読んでいるのに、本書はまった
く駄目だった。

●名言セラピー【おべんとう】

名言セラピー


亡き父へ贈る 「ぼくとお父さんのおべんとうばこ」 ゆきのり君7歳の作文より。




おとうさんがびょうきでなくなってから三年、
ぼくは小学一年生になりました。


おとうさんにほうこくがあります。
きっとみてくれているとおもうけど、
ぼくはおとうさんのおべんとうばこをかりました。


ぼくは、きのうのことをおもいだすたびにむねがドキドキします。


ぼくのおべんとうばことはしがあたって、
すてきなおとがきこえました。

きのうのおべんとうは、とくべつでした。
まだ十じだというのに、おべんとうのことばかりかんがえてしまいました。


なぜきのうのおべんとうがとくべつかというと、
それはおとうさんのおべんとうばこをはじめてつかったからです。
おとうさんがいなくなって、ぼくはとてもさみしくてかなしかったです。


おとうさんのおしごとは、てんぷらやさんでした。

おとうさんのあげたてんぷらはせかい一おいしかったです。
ぼくがたべにいくと、いつもこっそり、ぼくだけにぼくの大すきなエビのてんぷらをたくさんあげてくれました。

そんなとき、ぼくはなんだかぼくだけがとくべつなきがしてとてもうれしかったです。
あれからたくさんたべて空手もがんばっているのでいままでつかっていたおべんとうばこではたりなくなってきました。


「大きいおべんとうにしてほしい」


とぼくがいうと、おかあさんがとだなのおくからおとうさんがいつもしごとのときにもっていっていた
おべんとうばこを出してきてくれました。


「ちょっとゆうくんには、大きすぎるけどたべれるかな」
といいました。


でもぼくはおとうさんのおべんとうばこをつかわせてもらうことになったのです。


そしてあさからまちにまったおべんとうのじかん。
ぼくはぜんぶたべることができました。

たべたらなんだかおとうさんみたいに、つよくてやさしい人になれたきがして、
おとうさんにあいたくなりました。
いまおもいだしてもドキドキするくらいうれしくておいしいとくべつなおべんとうでした。


もし、かみさまにおねがいができるなら、
もういちどおとうさんと、おかあさんと、ぼくといもうととみんなでくらしたいです。

でもおとうさんは、いつも空の上からぼくたちをみまもってくれています。


おとうさんがいなくて、さみしいけれど、
ぼくがかぞくの中で一人の男の子だから、
おとうさんのかわりに、おかあさんといもうとをまもっていきます。
おとうさんのおべんとうばこでしっかりごはんをたべて、もっともっとつよくて、やさしい男の子になります。


おとうさん、おべんとうばこをかしてくれてありがとうございます。


ゆきのり君7歳の作文より。


【出典】

本のご紹介です。DVD付ストレッチ大全

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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こんにちは!活字中毒のモモちゃんです。
義母は健康マニア。

昨年はバランスボール、一昨年は何やらチューブを引っ張って
いた。その前は金魚運動だったり、ダンベルを持ち上げてみた
り、とにかくその辺りには隙がない、余念がない。

しかし続いているものはどれ一つとしてなく、しかもその一つ
一つに凝った(?)言い訳があるのでそれなりに楽しんでいる。

バランスボールからは転げ落ちそうになった。ダンベルを足に
落としかけて危なかった。チューブは、とにかく面倒なのよ!

どれもこれも、グッズにではなく、義母自身に問題があるのを、
いつ指摘しようかと迷っている。できそうにはないけど。

まあ、義母の世代にとっちゃあ、健康も一つの娯楽なんだろう
なと割り切っている。娯楽ならいいのだ。どんどん消費すれば。


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本日は ◆さわやか、スポーツ系

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DVD付ストレッチ大全  有賀 誠司
¥ 1,418  成美堂出版 (2010/02)

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というわけで、世間話のついでに健康ネタを振ってみたら、この
本と「NHKストレッチ」が送られてきた。NHKストレッチというの
もDVD本で、お値段はけっこう張る。

しかし小金を持っている世代だし、とかく健康に使う金は惜しく
ないという風なので、ありがたく受け取ってどちらも一通り試し
てみた。

そんで、気に入ったのがこちらだ。道具を使わなくていい。寝転
んで、もしくは壁に手をついて、いすなど、使うストレッチが少
ないのが私にはうれしい。

DVDで先生のお手本を見ながらストレッチができる。ありがたいこ
とに左右両方、きっちりその時間運動をしてくれるので、声にあ
わせ、画面を見ながらストレスなく体を動かすことができる。

メニューもいろいろ。朝夕のストレッチ、部位別、悩み別(肩こ
り、腰痛など)、体幹を鍛える運動、有酸素運動、体全体のスト
レッチなど、好きなところから再生して使えるのがまた便利だ。

運動時間は10分程度、気負わずにできるところもまた素晴らしい。

本日は基本のストレッチ、全身を伸ばす運動を簡単にご紹介して
みたい。

お尻のストレッチ。仰向けに寝転んで片方の足を曲げ、腕で抱え
る。左右10秒ずつ。

横腹。寝転んで体をひねり、片方の足を、反対の足をまたいで向
こう側の床につける。膝を手で押さえ、わき腹を伸ばすように。

足の付け根。立って四つんばいのような格好に。そのまま足を前
後に開き、上半身を前に傾ける。後ろの足は伸ばしたまま、太も
もの前の筋肉にストレッチを感じる。

太ももの内側。お相撲さんがよくやる、股割りの要領で。

太ももの前。座って片膝を曲げ、状態を後ろへ倒す。気持ちのい
いところで止めること。

胸を開く。壁際に並行して立ち、片方の手を壁に当てて後ろに伸
ばす。腕の付け根のストレッチ。

背中の横、脇。壁に向かって立ち、両手を壁について背中を曲げ
る。体を九十度に曲げ、壁を押す感じ。

ひじから手首。手を前に伸ばし、手の平を外側に向ける。反対の
手で手の平を押さえ、腕の内側の筋肉を伸ばす。

肩甲骨の内側。両手の平を合わせた状態で、手を体の前に伸ばす。
首を内側に入れ、肩甲骨が伸びる感じを。

首の横、後ろ。首を横に曲げる。左に曲げる場合は右の手を、背
中の後ろで左手で引っ張ってやるとよりストレッチを感じること
ができる。

首の後ろ。仰向けに寝て首を抱え、頭を起こすような感じでスト
レッチ。


DVDのお手本では、先生が同じ動きをしてくださるので流れるよ
うについていくことができる。私程度ができるのだから、難易度
もそう高くはないと言ってもいい、と思う。

10分程度の動きだけど、やってみると案外気持ちがすっきりする
よ。肩こりのストレッチなどは、職場でもできそうなものがある。

ちなみに義母はやっていないそうなので、年末に帰ったら、これ
は太鼓判を押してあげなければと考えている。

くれた人に対して、太鼓判を押すというのも不思議で妙なものな
のだけど、これが現実なのだから仕方がない。おかしなものだ。

本日ご紹介の本はこちらから

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

すごいことをすごく見せるのではなく、

当り前のことをすごくこなせるようになりたい。

今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月6日月曜日

本のご紹介です。できそこないの知

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆芸能、エンタメ系

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できそこないの知  ウエンツ 瑛士
¥ 1,575  青志社 (2010/10)

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若いのに。

タレントのウエンツ瑛士さんのエッセイ本。中堅サラリーマンが
飲み屋で部下に語る人生訓みたいな感じだった。

・手紙を書こう

本書で彼が一番読者におすすめしたいことがこれ。メールではな
く、手紙を書くということ。

彼が手紙を出すのは、事務所の人、年配の人、地方の友達。内容
はお礼であることが多い。

「拝啓」と書き出して、しかし「すみません、このような手紙は
自分にはまだ書けません。ここから先は自分らしく書かせていた
だきます」と、ちょっとした笑いをいれる。二十代半ばの若者ら
しいおふざけをこのようにして演出する。

それでも、相手は感激してくれる。特に年配の人に出すと評価が
上がることは間違いない。へたくそな字でも、難しいことは書け
なくても、メールではなく手紙を書こう。

・人脈は広げるよりも切る

携帯に登録している電話番号やアドレスは、人よりも少ないと思
う。連絡がなくなったらばっさばさ、削除していくからだ。

使える時間は限られている。大切な相手と、親密な関係を築いた
方がよいと考えている。

もともと、やりたいことがあったら一人でも動き出すタイプだ。
交友関係でなんとかしようとは考えない。人付き合いに損得勘定
は差し挟まないし、本気でがんばっていれば応援してくれる人が
集まってくると信じている。

いい人の周りにはいい人が集まってくる。だから、嫌な人とは無
理につきあわず、いい人の近くにいようと努めている。

・自分はどんな人間か、よりも、何を求められているか、を知る。

ウエンツさんは自分のことをこう考えている。ものすごく面白い
ことを言えるか、否、自分は面白い人間ではない。ではアイドル
と呼べるのか、否、相方の小池徹平さんには到底かなわない。

カリスマと呼べる魅力がない。ではどうやって仕事に向き合えば
いいのか。

彼が最優先とするのは「自分に何が求められているか」だ。自分
はこうだから、と固定概念を持たないようにしている。

やりたくないな、と思った仕事でも、一生懸命取り組んでみる。
すると意外な一面があることが知れる。与えられたことをチャン
スと考え、無駄にせず自分のものにするのが大切である。


話し言葉で書いてあるので気楽に読める。

この方、小さいころから芸能界でお仕事をされているんだよね。
さすがさすが、達観してるわあ、と少しばかりのほほえましさを
覚えながら読みすすめることができる。

ウエンツさんはおうちでたくさんの植物を育てておいでなのだそ
うだ。観葉植物や、トマトなどの実のなる植物もあり、その世話
だけで軽く一時間はかかってしまうんだって。

そのために毎朝早起きをして、せっせと水やりなんかに励んでい
る。規則正しい生活、朝の時間を活用させる生活が一番と考えて
いるようだ。

若いのに、偉いねえ。

ファンの方ならぜひ。そうでない方も、肩の力を抜いて読んでみ
れば、案外とためになることも多いかも。

できそこないの知  ウエンツ 瑛士

No.378 中村文則「掏摸」→ 4点

中村 文則「掏摸」→ 4点
発行元 :株式会社河出書房新社
初版発行:2009/10/30
中村 文則(ナカムラ フミノリ)

あらすじ

この世のほとんどに居心地の悪さを感じている僕は、同時にこの世のほとんど
から拒絶されて今まで生きてきた。
抑圧された憎しみをぶつけるように僕は金持ちの財布を抜き取り続けるのだが、
それは僕が社会とつながりを持つための唯一の方法でもあった。

掏摸として生きる僕のどこにも辿り着けない毎日と、ふと気付けばどっぷりと
取り込まれていた暗黒の世界を描く。

コメント

中村氏の描く世界には、いつも色がない。
黒とグレーばかりの陰鬱な世界だ。
過去に読んだ2冊−「土の中の子供」と「何もかも憂鬱な夜に」は正に暗黒世界
というか、どっちを向いてもどっぷりと暗い世界が鬱々と広がっているばかりで、
正直読んでいて不愉快だったし詰まらなかった。

本作ではしかし、要所要所で「一瞬の白」が効果的に配置されていて、そのコン
トラストが実に素晴らしかった。
中村氏の作品を読むのはこれで3作目だが、エンタテイメントという意味におい
ては初めて読む価値のある作品だと思った。

異端の感性をもつ中村氏が、作家として一皮向けた記念碑的な作品ではないだろ
うか。
全2作を読んだ時には「こんな話しばっかりだったらもう読みたくないな」と思っ
たが、今の気持ちは「はやく次作がみたい!」という感じ。

ちなみに「塔」のイメージについてはほとんど「ベルセルク」のグリフィスと同じ
ですな。

中村 文則「掏摸」



0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

自信があるからやるんじゃない。

やるから自信がつくんだ。

今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月5日日曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

ワクワクという言葉を考えた人はすごい。

言うだけでワクワクしてくる。

週刊 お奨め本 第423号『刀圭』

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週刊 お奨め本
2010年12月5日発行 第423号
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『刀圭』 中島要
¥1,500+税 光文社 2010/9/25発行
ISBN978-4-334-92730-1
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薬を盛るために使う匙を別名「刀圭」と呼ぶ。
古代中国の貨幣の下端にある孔を「圭」といい、その孔の大きさが薬を量る基準
であったことから生まれた言葉である。

──お前はゆるぎなき「圭」となれ。そこが狂えば、薬も毒になりうるのだぞ。

亡父の言葉を胸に、井坂圭吾は貧乏長屋で医者をしている。
父も貧民救済の医者だった。


ということで、「赤ひげ」系、時代小説。
江戸の貧乏長屋で、ろくに金を取らずに治療に当たる、若い医者。長崎帰りで本
道だけでなく外科の心得もある。
貧しい人々から頼りにされ、それを誇りに感じている。

ヒューマンドラマです。
出だしは。

そんな単純な話ではいまどきの読者は満足しません。
特に発行人のようなひねくれ者は(笑)。


井坂圭吾の父は、「慈悲仏」とまで呼ばれた医者だった。
父の背を見て育ち、誇りに思う圭吾は、当然のごとく、医者を志す。
ところが、阿蘭陀医学を学ぶための長崎遊学も五年が過ぎた頃、父が酒に溺れて
いるとの連絡を受ける。
信じがたい思いで急ぎ江戸へ戻ったときには、父はすで亡くなっていた。…


その頃、タキは貧乏長屋で父と二人で暮らしていた。
長患いの父は、娘に迷惑ばかりかける我が身を疎んじ、鼠捕りを飲んだ。タキは
医者を呼びに走るが、貧乏長屋へは医者は来てくれない。「身の程をわきまえろ」
あからさまに見下されたタキの、「あんたたちは医者なんだろ! 病人を助ける
のが仕事じゃないか!」声を、圭吾が聞きつける。
娘の長屋へついていって治療に当たった圭吾は、そのまま長屋に居つき…。


タキと、しっかり者の隣人おしまの尽力で、開業にこぎつけた圭吾。
満足に薬礼が期待できない貧乏人相手では、薬種問屋に代金を払う当てもない。
あちこち回った挙句、融通のきく、ある時払いをきいてくれる薬種問屋「千歳屋」
をみつけた。


齢二十三にして天涯孤独、しかも敬愛する父の死に目に立ち会えなかったせいで、
圭吾は親不孝者が大嫌いだ。
ところが、世話になっている千歳屋には放蕩息子がいる。幼い頃から病弱で、「お
前は生きているだけでいいんだよ」と言われつづけて育った生三郎は、吉原がよい
で月に何百両と散財する。それだけでも業腹なのに、生三郎の敵娼の花魁が「たか
が医者の分際でえらそうに」とケンカを売ってくる。
ついには生三郎を怒らせ、千歳屋との取引が止められてしまった。


それまで圭吾を頼りにしてきた患者たちは、圭吾が千歳屋の跡取りを怒らせたせい
で薬をもらえなくなったことで、圭吾を責める。
──あたしら貧乏人のために下げる頭はないってことだろ。
貧乏人を救いたいなら、金持ちにへつらうことは避けられない。何事も金主あって
の世の中なのだ。


圭吾の胸に迷いが生じる。
いったい何のために、私は治療を続けるのだろう。
患者が頭を下げるのは、ただで薬をもらえるからだ。

> 「人が頭を下げるのはお金をもらうためだもの。タダで治療をしてやれば、いつ
> でも威張っていられてさぞ気分がいいでしょうけど」(141頁)

「赤ひげ」でも、貧乏人からは金を取らなくても、金持ちからは高額の謝礼をも
らう。入金の当てがなくては施しはできない。そこんところをちゃんと段取りで
きないところが、青二才。
という、理想と現実のあいだで煩悶する若者を描いているわけで、古今東西、い
つの世も若者が陥りがちな罠ではあります。それを青春だとまぶしく感じるか、
青臭いと苦々しく感じるかは読み手次第。


物語はこの後、永代橋崩落事故(文化四年)を絡ませ、出奔した父の後妻やら千
歳屋の番頭の画策やらケチ衛門やら幇間の善八やら、なにやらかやらと圭吾はふ
りまわされていくわけですが…。


> 崩落事故の始末を終えると、圭吾は再び医者として診察を始めた。[…]
> 問答無用の生死の境を垣間見たことで、圭吾は己の悩みがいかに卑小かを思い
> 知った。(164頁)


青年は挫折を経て、成長する。


これが長編デビュー作という中島要。
新人にしてはしっかりした構成力で、読ませます。
期待の新人といえましょう。


『刀圭』 中島要

2010年12月4日土曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

何を迷っていたのだろう。

何に怯えていたのだろう。

ただ、目の前のことに集中すればいいだけなのに。

今日も一日味わいつくしましょう。

2010年12月3日金曜日

こんな本読んだよ!1012030238

『みぽりんのえくぼ』岡田典子・文/岡田美穂・絵 文芸社

13才という若さで天国へ旅立っていったみぽりんの闘病記。お母さんの文章とみぽりんの絵で構成されている。お父さんからプレゼントされた絵手紙セットで描かれたもの。これがなかなか味がある。
2才で白血病を患う。骨髄移植で病気を克服するも12才で脳腫瘍が見つかる。写真も掲載されているが、本当にかわいらしい女の子。こんな子がなぜ、と言いたくなった。
病気で苦しんでいる人は多い。一日も早い医学の進歩を望みたい。

みぽりんのえくぼ

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

事象がつまらないのではなく、

自分の見方や考え方がつまらないんだ。

今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。NASAより宇宙に近い町工場

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆ビジネス、営業系

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NASAより宇宙に近い町工場  植松 努
¥ 1,365  ディスカヴァー・トゥエンティワン (2009/11/5)

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北海道の赤平市、富良野や夕張が近いその町に、植松電機という
会社がある。社員は二十名、パワーショベルを作るのがその「本
業」だ。

しかしその会社が有名なのは、そこが宇宙を目指しているからで
ある。宇宙だ。失礼な言い草だけど、日本の小さな町工場が、な
んとあのNASAからも注目される研究を行っているのだという。し
かも自費で。

植松電機ではロケットが作られている。人工衛星も作った。世界
に三つしかない無重力実験施設の一つが、この会社に存在する。

ものすごいことなんだけど、さらに驚かされるのが社長の植松さ
んのお言葉だ。彼は言う。この事業は金を設けるためのものでは
ない、と。

ではなぜそんなことをしているのか。答えは「この世から『どう
せ無理』という言葉をなくすため」だ。あきらめる人、やれっこ
ないよと言う人に、「そんなことあるものか」と立ち向かうのが
植松さんという人だ。

小さいころから好きなことばかりをして過ごしてきた。学校の成
績はよくなかったが、大人になった今、それが大いに役に立って
いる。

ペーパークラフトで飛行機を作った。大きくなってから、植松さ
んは飛行機を作る会社に就職したが、そのことは決して無駄に
なってはいなかった。

子供達がやりたいこと、好きなことを認めて伸ばしてあげたいと
思う。大人が無理やりやらせることではなくて、本当に好きなこ
とに没頭し、熱中すれば夢はかなうのだと教えてあげたい。

宇宙開発も、最初は無理だと言われていた。植松電機が作ってい
るのは「爆発しない」ロケットだ。

ロケットの打ち上げが危険なのは、引火すれば爆発する燃料を
使っているからだ。だが植松電機が北大の教授と共同開発した燃
料は、ポリエチレンを材料とする安全性の高いもの。

家の近くでも打ち上げが可能だし、近づいて見ることだってでき
るのである。

人工衛星を作ったときのエピソードが面白い。ある人から「真空
中で動くのか?実験もできないだろう」と言われた。

真空中で実験するには国の施設を借りなければならない。レンタ
ル料が一日600万円もかかる。

払えるわけがないだろうと、植松さんは自社でその施設を開発す
ることにした。ロケット自体は小さいのだし、施設も小さくてい
いやと思って作ったら、廃材を利用して20万円でできてしまった。

そして実験は成功。何事も工夫ありき、あきらめたら終わりだと
考えている。

植松電機にはたくさんの子供達が見学に来るのだそうだ。その中
に、学習障害だといわれている子供達がいた。彼らは熱心に工場
を見学し、興味を抱き、あげられた質問の手は「普通の」子たち
よりも多かった。

植松さんご自身が、優等生でなかったせいもある。あの子達の何
が悪いのかと真摯に悩んでしまった。社員達も泣き出してしまい
「あの子達が異常なら、俺も異常だ」「ほかの子の邪魔になるか
らと排除して、その親達がどんな辛い思いをしているか」と、疑
問を口にした。

一律に、型にはめてしまうことが教育ではないはず。やれっこな
い、どうせだめと決め付けるのは間違っている。

植松さんは今、建築費が格段に安くなる家を作ろうとしている。
そのために借金を負ったが、居住費が安くなって、親に余裕がで
き、子供達ときちんと向き合える未来を作りたいと考えている。


ロケットって、ホームセンターで売ってる材料で作れるんだって。
知らなかった。やろうと思えばできるものなんだねえ。

字が大きく、話し言葉で文章もやさしいので、小学校高学年くら
いのお子さんから十分に読めるのではないかと思う。読む本に
迷ったらぜひ。

もちろん大人が読んでもいい。夢をあきらめない、工夫し続ける。
シンプルだけど熱い主張に、きっと元気になれるはず。



本日ご紹介の本はこちらから

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●なんとなく、この本を読みたくなった。
変人と言っても過言ではない、情熱あふれる科学者列伝。

人類の進化は、愛すべき変人たちによってもたらされたもの。
異質を排除する社会ではいけない……、けど、真似はできん
なあ(笑) 

自分の体で実験したい─命がけの科学者列伝

2010年12月2日木曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

がんばりたいと思わない限り、

がんばらないほうがいいと思う。

今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。仕事にすぐ効く 魔法の文房具

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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仕事にすぐ効く 魔法の文房具  土橋 正
¥ 1,680  東京書籍 (2010/6/23)

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発想、記録、整理、事務作業、ツール。それぞれの分野で使いや
すい文房具を紹介したもの。写真にがっつりコラムつきで、文房
具好きな人には非常に楽しめる一冊。

発想の章では筆記具が紹介されていた。鉛筆を収納できる、短い
鉛筆を長く使うことができるブラスペンシル。たった5ミリの芯の
中にシャープペンとボールペン、二種類の機能を備えているパイ
ロット・バーディスイッチ。

万年筆、サインペンの紹介もあるが、私がいいなと思ったのは手
帳にはさめる小さいサイズのペンだ。ゼブラのSL-F1Mini。8ミリ
ちょっと、手帳にジャストサイズのペンだが、11ミリに伸ばして
使うこともできる。

手帳にメモするだけでなく、普通の書き物にも使えるのがいいね。

記録の章、ここではふせんやノートなど、アイディアを生かすた
めの道具が案内されている。

ハックノート。裏表紙が観音開きになっており、あらかじめ付箋
を貼り付けておくスペースが用意されている。ここはアイディア
ボードと呼ばれ、思いついたことを付箋にメモして貼り付けてお
く場所になっている。

作業中、ひらめいたことをメモにとったはいいものの、書いた場
所を忘れてしまうことはないだろうか。このアイディアボードに
付箋で貼っておけば、探す手間が省け、ひらめきを有効に使える
のである。

付箋にもいろんな種類があって、かわいらしい草の形をしたもの
がある。本など、気になる場所にこの付箋を貼っていくと、閉じ
たとき、本から草が生えているように見える。

ユルリクのグリーンマーカー。弁当に入っているバランのような
付箋だ。

ノートを選ぶときは、スキャンすることも念頭においておきたい
もの。保存するメモ帳abrAsusは、縦11センチ、横8センチの本皮
仕様の文房具。

このしっかりしたファイル(?)のようなものにA4コピー用紙を
折りたたんではさむ。広げてメモを取ることができ、さらに外し
てスキャンすることができる。

エバーノートという、メモをオンラインで見られるソフトを使え
ば様々な場所でアイディアを整理することができる。PCでも携帯
でも、スマートフォンでも使えるので便利。

3章め、整理の項目ではスケジュール管理の仕方について書かれて
いる。スケジュールは基本、カレンダーを模した手帳に書くのが
お好きなのだそうだ。

月曜始まりのマンスリータイプ、これにシャープペンで予定を書
きこんでいく。消して調整できるのがいい。

大切な予定にはエーワン・ポータブル蛍光テープを貼って目立つ
ようにする。必要なページを開くためにははさむしおりを利用す
る。ブックダーツ、メタル製のクリップが気にいている。

はさむといえば面白いものが一つあった。月光荘の右手クリップ
だ。アマゾンで見つからず、写真をお見せできないのが残念なの
だけど、この発想やよし!の一品。

針金を右手の形に折り曲げただけの文房具である。何に使うのか
といえば、紙を挟む、しおり代わりとして利用するものらしい。

著者はこれを、着手したプロジェクトのファイルのはしに挟んで
いる。まさに手をつけたというわけ。

事務作業の章では郵便物の重さを量るポストマン100、ガムテー
プをストレスなしで切れるはさみ、エアロフィットなどが紹介さ
れている。

エアロフィット、ガムテープの粘着を気にしなくていいらしいか
ら、よく使う人には便利かもね。

最後辺りに乗っているスイステック・ユーティリキーはユニーク
な文房具だ。

鍵の形をしているマルチツールで、ナイフ、のこぎり、ドライ
バーなどの機能を備えている。万能ナイフが鍵の形をしている物
だ。


個人的にはユーティリキーが一番ほしいかも。使うことはないと
わかっているが、やはりこういうのは好きだ。


本日ご紹介の本はこちらから

2010年12月1日水曜日

本のご紹介です。アフリカ 動きだす9億人市場

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆世間話、時事ネタ系

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アフリカ 動きだす9億人市場  ヴィジャイ マハジャン
¥ 2,310  英治出版 (2009/7/14)

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著者のヴィジャイさんは大学教授。アメリカの大学で経営学を教
えている。インドの生まれ、商人の家庭で育った。

10年か20年前、同僚に「インドは世界的にも重要な市場になる」
と言って笑われた。だが現在、その言葉を疑う者は一人もいない。

ではアフリカはどうだ? ワールドカップが開かれたとはいえ、
未だ暗黒の大陸、戦争と飢餓の土地のイメージを持つ人が多いの
ではないだろうか。

著者はその目で確かめるべく、アフリカに渡り現地を歩いた。本
書はそのレポートである。実例、エピソードが多いので素人が読
んでも飽きない、わかりやすい。

もちろん数字や統計、難しいこともちゃんと書かれているのだけ
ど、本日このメルマガでは、印象深かったいくつかのエピソード
を取り上げてご紹介してみたいと思う。

・ブラックダイヤモンドなる層が現れている。「もう少しで中流」
というのが彼らの自己評価だ。懸命に働いて子供達にいい教育を
受けさせようとしている。家電、携帯電話などを買うのがこの層だ。

携帯電話をほしがる人、持つ人が増えている。中には友人数人で
一台の電話を共有している例もある。電話器を一台購入し、使用
するときは各自のSIMカードを入れて使う。

携帯電話を貸す「事業」もある。通話時間に応じて料金が課される。

・アフリカには9億人の市場がある。若年層が多く、しかも年々増
加している。幼児、子供向けの商売の機会があふれている。イン
フラも弱く、その需要は巨大である。

金融関連の伸びも期待される。未だ全家庭の20パーセントほどしか
口座を持っておらず、欧米各国の銀行はこれを狙っている。もちろ
んアフリカの銀行も着実に成長しており、国を超えてのサービスが
受けられるものもある。

金融機関では、携帯電話の画面で操作ができる電子マネーを取り入
れるところがある。近くにATMや営業所がなくても利用できるた
め便利で、多くの人に受け入れられている。

・欧米企業はアフリカの文化、宗教に即した商売を展開している、
取り組んでいる。たとえばP&Gは、イスラム諸国の女性が髪の悩
みを持っていることに目をつけた。

ヘッドカバーをかぶっているので、汗をかきやすく、髪が傷みがち
になる。洗浄力の強いシャンプーを売り出してヒットした。

また「小分け作戦」も有効な手段である。たとえば石鹸、洗剤など、
貧困層はまとめて買うことができない。計り売りが伝統としてある
地域でもある。

なじんでもらうために洗剤を小袋に分けて売り、暮らしの中に浸透
させようとしている。

・チーター世代と呼ばれる若い世代の台頭がまぶしい。年配の人た
ちが唱えるのは貧困、帝国主義への反対である。だが若い人たちは
経済発展を純粋に追い求め、親の世代からの期待もその肩に担って
いる。親世代はこの子供達にいい教育を受けさせようと必死だ。

・映画はノリウッドで生み出される。ナイジェリアの映画産業をこ
う呼んでいるのだ。

安い予算で多くの映画が作られる。就労人口は100万人を越え、同
国では農業に次ぐ大規模産業である。質が良いとはまだ言えない状
況であるが、続々とスタジオが建てられている、今後が楽しみな産
業である。

・在外アフリカ人も今後の起爆剤になると考えられている。たとえ
ばアメリカで、ケニア産の紅茶を売る女性がいる。スターバックス
などにもかけあい、故国の産業を盛り上げようとがんばっている。

社会問題などにも関心があるこの人たちが、アフリカと世界とをつ
なげようと試み、奮闘している。


興味深かったのは欧米企業と中国の動きだ。

中国は安い製品をアフリカで売り、その暮らしの中にメイドイン
チャイナを浸透させつつある。

また同時に、欧米企業は社会福祉にも取り組みながら、やはりその
ブランドをアフリカに構築しようとしている。子育て支援の動きと
ともに、ミルクを売るなどの企業活動をしている。

マラリアの薬を一部無料で配り、そのよさを知らしめるなどの手法
もとられている。

パワー溢れる一冊。字が小さくて活字だらけで、開くと「うっ」と
なりがちだけれども、書いてあることはとても面白い、生き生きし
ている。

興味のある方には安心しておすすめできる、なかなかの良書である。

アフリカ 動きだす9億人市場

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

時代の変化に合わせて自分も変化していくか、

時代に関係なく通用する強烈な何かを身につけるか、

生き残るには、このどちらかを選択しなければならない。


今日も一日味わいつくしましょう。

2010年11月30日火曜日

本のご紹介です。野宿入門

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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こんにちは!活字中毒のモモちゃんです。
アルプスの少女ハイジが、絶対的な憧れだったんだ。

干草のベッド。あれも夢だったなあ。刈り入れの済んだ田んぼ
の藁に寝ようとして、どえらい勢いで叱られたことがある。
せっかく片付けたものを散らかすなということだった。

草の上に寝転んで、服をシミだらけにして戻り、これもひどく
怒鳴られたこともああった。

現実の厳しさを、幼いながらに知らされた瞬間だ。こうして人
はテレビの世界と現実の違いを知っていくのだと思った。

そういえば校庭のブランコで、ハイジを真似て180度水平にこ
ぐことを試した友達もいたな。

その子は叱られる前に、怖くなって泣きながら下りてきたけど。


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本日は ◆世間話、時事ネタ系

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野宿入門  かとうちあき
¥ 1,050  草思社 (2010/9/23)

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世界は広い。世の中にはいろんな人がいると、つくづく実感させ
られた本だった。

著者のかとうさんは野宿をこよなく愛している。難しいことでは
ない。ふらりと寝袋を持って、ときには段ボールにもぐって、外
で眠ることを自由自在に行っている。

そもそもかとうさんが野宿をしたいと思い立ったのは高校生のと
きだ。その頃彼女には「野宿=青春、今しかできないことであり、
やってみるしか仕方がないのではないか」という、焦れるような
思いがあったのだそうだ。

で、やってみた。意外と簡単だった。以後野宿の楽しさにはまり、
社会人となった今でも寝袋を片手に旅に出ることを続けている。

かとうさんは考えている。「寝袋の所有は大人のしるし」

寝袋は大いに役に立つものだ。友達が不意に訪ねてきたときにも、
予備の布団として使うことができる。それにいつなんどき、外で
眠る用が生まれるやもしれぬ。

寝袋があればあわてずに済む。緊急時の備えなのだから、社会人
になった証として、初任給で手に入れるくらいの心がまえがあっ
てもよいのではないか。

しかし、だ。寝袋がなくとも野宿はできるのだ。

先にも述べたが、かとうさんは野宿が特別なことだとは考えてい
ない。終電を逃したとき、酔っ払ってうちに帰るのがおっくうな
とき、外でごろんと寝てしまえばそれで野宿は成立してしまう。

大げさな準備をする必要はない。

都会ならしたくは簡単に整えることができる。新聞紙を拾って敷
いて、そこで寝転べばそれでよい。ぐしゃっと丸めて服の中につ
めると意外とこれが暖かい。

段ボールをコンビニでもらうのも一つの手だ。なるべく大きなも
のをもらい、いくつか連結させると立派な寝床になる。もぐりこ
んで入り口を閉じれば安心して眠ることができる。

かとうさんは一度、知り合った男性とこの段ボール野宿をしたこ
とがあるのだそうだ。終電を逃してなんとなく段ボールに寝転び、
すると不思議な親しみが彼との間に生まれてしまった。野宿は恋
のはじまりになることもある。

野宿は簡単。だが眠りやすい場所を選ぶのも大切なことである。

できればトイレは確保しておきたい。公園や駅、用を足したいと
きにトイレがそばにある場所を選びたいものだ。最近の野宿愛好
家たちは、道の駅などもよく利用しているようだ。

(ちなみにトイレの中で眠るのも一つの選択肢であるのだそうだ
が、なかなか大変そうに思える。しかし、鍵がかかる安心感は格
別なものだあるのだとか。いずれにせよワイルドやわあ)

警察の職務質問にあうこともある。そこは一つ、余裕と、堂々と
した態度で乗り切りたいものだ。おまわりさんも人の子。話せば
わかってくれると信じよう。

野宿の旅は不思議な人との出会いを呼び寄せることがある。駅で
眠っていた著者に、つらつらと己の境遇を語った男性がある。四
国のお遍路さんの道で、見ず知らずの若い男性を弟子と連れて歩
くオジサンにも会った。

ちなみにこのオジサンには、寝袋にブルーシートを巻くワザを伝
授してもらった。これを巻くと、暖かさが逃げずに朝までぐっす
り眠れるのだそうだ。


入門とあるがハウツー本ではない。だが考えてみれば、確かに野
宿は難しいことはない。ハウツーなんかいらんと、著者は考えて
いるのだろう。常識を飛び越えるはずみとか、そういうものを与
えてくれる本だった。

とはいえ、真似はできないかなあとも思うよ。思いながらも、な
んとなく妙な開放感や自由ってものを味わうことができた。

こういう気持ちになれるから、本ってありがたいんだよなあ。か
とうさんの体験に便乗させてもらって、ちょっぴりどきどき、冒
険気分を味わえた。楽しかった。


本日ご紹介の本はこちらから

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●年末を見据えて、そろそろプリンターの季節ですなあ。

EPSON Colorio インクジェット複合機 

無線LAN&高画質、カンタンLEDナビ搭載。
どんどん便利になるね。