2011年1月31日月曜日

本のご紹介です。苦役列車

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆話題の小説系


苦役列車  西村 賢太
¥ 1,260  新潮社 (2011/1/26)


第144回芥川賞受賞作。

北町貫多は19歳。日雇いの仕事で生計を立てている。

自堕落な毎日だった。港の仕事でもらえる日給は5千円余り。一
日働いては、金がなくなるまで仕事を休むというのが、彼の日々
の過ごし方だった。

彼は中学を卒業したときに家を飛び出した。高校へは行きたかっ
たが、成績が足りなかった。努力もしなかった。彼の父親は犯罪
者である。がんばっても無駄だと、頭のどこかで考えていた。

中学校を出たばかりの少年が、働ける場所はほとんどなかった。
ようやく見つけたのが日雇いの仕事だが、これがよくなかった。
日銭を稼いでだらだらと過ごす癖がついてしまったのだ。

しかし、貫多の毎日に変化が訪れる。日下部という青年が、仕事
場にやって来た。彼も19歳で、専門学校の学生だった。

日下部は陽気な男で、たちまち貫多とも仲良くなった。うれし
かった。貫多には友達が一人もいない。久しぶりにできた話相手
に、貫多の心ははずんだ。

執拗に酒に誘うようになる。いつもは一人、安い酒場でちびりち
びりと飲むだけだが、相手がいると酒が楽しい。風俗にも連れ
立って行った。日下部はいやがったが、それはかえって貫多の優
越感を満たすものとなった。

のめりこんでいく貫多だが、二人の間には次第にずれが生じ始め
る。

日下部はまっとうな青年だった。仕事にも熱心で、たちまち難し
い作業を任されるようになった。待遇にも変化が生まれる。

また日下部には、学生としての暮らしがあった。ワンルームマン
ションに住んで、貫多のほかにも友達がいる。彼女もいるのだと
聞いて、貫多はショックを受けた。

貫多は一計を案じる。日下部の彼女に、友人を紹介してもらえな
いだろうか。そうすれば自分にも、まともな恋人ができる。日下
部がいる世界に、入っていけそうな気がする。

彼女と日下部、貫多は野球を見に行った。食事にも行く。酒が
入った貫多は、彼女に対して失礼な言動を取ってしまった。女性
を侮辱するような言葉を吐いてしまったのだ。

貫多はそういう人間だ。人付き合いができず、嫉妬深く、みじめ
で愚かしい。

そのうち仕事もクビになった。社員といさかいを起こし、いられ
なくなったためだ。

何もかもうまくいかない。相変わらずの日々が過ぎるだけだ。貫
多の希望はただ一つ、ある私小説家の作品を読むことだった。


電車で読んでいたのだけど、最後にぐっと、泣きそうになった。
前に座る女子高生が、いぶかしげな顔をしている。

お嬢さんにも読ませてあげたい、と私は思った。でも同時に、あ
んなお嬢さんが、この本を読んで泣くようなことがあっても、そ
れはそれでよくないとも思った。

私が親御さんならば、あの純粋なお嬢さんには、こんな本で泣く
ような人生は送ってほしくないと願うだろう。多分ね。

大人向けの一冊。酸いも甘いも、えっちらおっちら乗り越えてか
ら読もう。

文章が素敵。キレがいい。

苦役列車

No.385 青来有一「てれんぱれん」→ 3点

青来 有一「てれんぱれん」→ 3点

発行元 :株式会社文藝春秋
初版発行:2007/11/10

青来 有一(セイライ ユウイチ)


あらすじ

私の父は被爆者で、本当なら死ぬところを、爆心地でも逞しく自生していた
ニラを食べることによって生き残った。
人を押しのけたり怒ったりすることなく、ひたすらひっそりと生きていた父
には、ちょっと不思議な力があった。

父と同じようにひっそりと隅っこで佇んでいる「てれんぱれんさん」を見る
ことができたのだ。
父とてれんぱれんさん、そして私の不思議な出来事を描いた一冊。

コメント

自分自身が九州出身で、タイトルを見た瞬間に「てれんぱれんしなさんな!」
と昔よく母から怒られた記憶がよみがえってきたので読んでみた。

ある種の失われた世界について実に繊細に描かれた一冊。
魂的に合う・合わないがはっきり分かれるだろうなと思わせる内容で、私は
残念ながら「ちょっと同調できなかったかな」という感じでした。

主人公の「わたし」を含め、登場人物全体にあまり興味が湧かなかった。
ただ、最後までさらっと読めたので、作品が悪いのではなく単純に「合わな
かった」というだけの話しでしょう。

てれんぱれん

了。



0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

俺は目の前のことに100%注げているだろうか。

今日も一日味わいつくしましょう。

第349冊 荻原浩「コールドゲーム」

乱読! ドクショ突撃隊♪    第 349 冊

【1】読書感想 (第349冊)
  
荻原浩  「コールドゲーム」  新潮文庫

ラノベ人気が蔓延して、随分経つ。
西尾維新の本を一冊買ってあるが、未だ読んでいない。
そんなラノベ未経験者なのに、きっとラノベってこんな感じなんだろうな、
と思ってしまう。
流れや表現で映像が連想され、ドラマを観てる感じ。
それでいて、読んでいるとそこそこ面白い。
最近急速に彼の本が本屋で並んでいるのも、致し方ないのか。

主人公は高校野球も終わってしまい、あとは受験に突き進むか、別の道を
選ぶのか。
どうしたもんかなと思っている夏、事件は始まる。
いじめの無かった学校生活を送ったと言う日本人はいるだろうか?
私のクラスも、中学までは事の大小はあったけど、いじめはあった。
高校に入って、いじめそのものがクラスで全く無かった事に、逆に不思議
な違和感があったくらいだ。

いじめた方は軽い気持ちでも、いじめられた方は堪らない。
特に、軽い気持ちでいじめられたなら、余計恨み千倍となる。
本書はこの、いじめられたヤツが復讐鬼となって、かつての中学時代の
クラスメイト(半分以上)が復讐されてゆく。
ありそうでありえない、でも、ありえなくもない。
そんな、いじめが教室にあった人なら誰しも不安になる設定だ。

事が深刻なだけに、演出次第ではいくらでもダークに深く描ける題材だが、
読者対象を学生にしているようで、あまり深刻には向き合わない。
主人公はいじめに加わらず部活一筋だったという設定。
この辺がズルイ設定。
自分だけ関係ありませんでした、僕はイイ人でしたから、という感じ。
しかし、いじめられている人間は、助けてくれなかったヤツ、手を差し
伸べようとさへしなかったヤツにも恨みを抱いている。
その辺は著者も抑えていて、後半は主人公にも魔の手が近づいてくる。

描きようによってはトコトン恐ろしい題材になるけど、読みやすく若者に
「いじめ」を考えさせる本としては、かえって良い本かもしれない。
作品としては、ちょっと軽くて何かが足りないんだが。


コールドゲーム

【朝礼スピーチ】空飛ぶ車

『1日1分!朝礼スピーチネタ』
 No.146 2011/1/30

朝礼をはじめます。

今日は、「空飛ぶ車」について
お話します。

みなさん、空を飛んでみたい
と思ったことはありませんか?

スポーツで、

パラグライダー
スカイダイビング

など、

上から落下する
スポーツは、
いくつかあります。

けれども、近年、
「空飛ぶ車」が開発され、
実際に販売されているそうです。


お値段は1台1700万円
となっています。

購入するかは別として、
1度乗ってみたいと思っています。


もしご興味あれば、
「空飛ぶ車」で検索すると
動画などを見ることができるので、
一度閲覧してみてください。


以上、朝礼を終わります。(246文字)

2011年1月30日日曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

百回の「愛してる」より、

一回の「心をこめた肩たたき」

今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第431号『あなたがパラダイス』

週刊 お奨め本
2011年1月30日発行 第431号

『あなたがパラダイス』 平安寿子
¥640+税 朝日新聞出版(朝日文庫) 2010/9/7発行


今日の本は女性にオススメ。
特に更年期世代。
今、苦しんでいる人。乗り越えた人。近々来そうで脅えている人。

テーマは更年期。
だけじゃなくて、更年期を迎える年代が抱える、たとえば老親介護、たとえば夫
の定年、たとえば思い通りにいかない子育て、などなど。
自分の身体がコントロールできない、その歯がゆさ。
人生はもっとコントロールできない。
次から次と降りかかる難題。

苦しみながら、人生に立ち向かう、女たちを支えてくれるのは、「あなた」。
あなたがいればそこはパラダイス。
人生には、支えてくれる誰かが必要。誰かって「あなた」。
あなたっていうのは…沢田研二。
ジュリー!

独身図書館員・敦子、専業主婦・まどか、バツイチのライター・千里の三人の更
年期ライフと、それぞれのジュリーへの思い。


敦子は小学生以来の熱烈なファン。CDやDVDはコンプリート、ライブはもちろん
芝居の舞台も駆けつけ、ファンサイトにも熱心に書き込む。お給料からジュリー
予算を計上し、ジュリー中心に生活がまわる。
そんな敦子の鬼門は母だ。お嬢様育ちでいつまでもわがままな母に振り回される。
ある日、母に大切なジュリーのアルバムを失くされて、泣きながらファンサイト
に書き込むと、「亡妻の遺品を差し上げます」とメールが。
五十歳にして初めて感じる胸のときめき。
                            「おっとどっこい」

> 「アイドルの追っかけができればいいのにねえ。あれは一生やれます。あれが
> ある限り、元気でいられると私は思うわ」
> 敦子は本気で言った。(84頁)


ついにまどかにも更年期がやってきた。ホットフラッシュとめまい。苛立ち。息
苦しさ。そこに介護がのしかかる。
姑が骨折、父が脳梗塞、舅が心筋梗塞、母が初老期うつ病。
夫の両親は義兄夫婦が頑張ってくれていたが、ある日兄嫁が家出した。韓流の追
っかけを、兄に非難されたからだという。
高校生の頃、まどかは徹夜でチケットを取ってジュリーのコンサートに行った。
結婚してすっかり遠ざかっていた、あの頃の情熱を思い出した。
「誰かに夢中になるって、最高ですよね」
                           「ついに、その日が」

> 更年期は、親の老いやうっとうしさが増すばかりの配偶者や生意気になった子
> 供との確執に立ち向かう年回りでもある。そこから来る山のような用事と苛立
> ちと不安が、更年期の体調不良に加わるのだ。
> みんな、よく生きてられるわよ。女って、えらいと思わない?(106頁)


千里は離婚してから体調を崩した。
医者に調べてもらうと特に異常はないという。精神的なことが原因かと口にした
千里に対し、医者は更年期だと。ありえない! まだ四十三歳なのに!
納得できないまま、知人に紹介されて、「ヘイヘイ・メノポーズの会」に参加す
ることになった。メノポーズとは更年期のこと。
その会のテーマソングがジュリーの『MENOPAUSE』。会員に熱心なファンがいる
のだ。特にジュリーに対して思い入れのなかった千里だが、更年期の症状に向き
合い、自分の人生を見つめなおすにつれ、だんだんジュリーの歌に魅かれていく。
                             「こんなはずでは」

> 「私が出会った更年期で悲観する女性の大半が、情けない自分、哀れな自分に夢
> 中になってる。すごく視野が狭くなってね。自分しか見えないの。それも、ホル
> モンのせいで歪んだ心の鏡に映る、実際以上に可愛そうな、王子様のいないシン
> デレラの姿」
> ムッとした。自己憐憫に溺れているというのか。心外な。(213頁)

三人三様のジュリーへのスタンス。
それぞれが更年期のさまざまな症状を抱え、家族の面倒を抱え、将来に悩み、ジュ
リーの歌に未来に立ち向かう力を得る。

この小説ではジュリーという具体名を挙げて、ジュリーに助けられる女性たちを描
いているけれど、実際のところ、何でもいいわけですよ。情熱を傾けることができ
るものを持っている、ってことが大事。
韓流の追っかけでもいいし、フラダンスを踊ることでも、OK。これらはこの小説中
の例ね。

ああ、最初に女性向けと書いたけれど、男性にも読んでほしいなあ。
配偶者や恋人が更年期真っ最中だという人、あるいはそろそろだという人。パート
ナーを大切にしてあげてください。女は大変なんですよ。
パートナーがもう乗り越えたという人も、あの頃はたいへんだったんだなあ、と思
いを馳せてあげてください。お母さんや会社の上司や先輩や年上の友人が更年期だ
という若い人にも読んでほしい。今んところ縁がないという人にも将来のために読
んどいてほしい。

つまり、みんな読めよ、と(爆)。

> 歳をとるのは、ほんとにつらい。
> でも、この歳まで生きてこなければ、会えなかった人がいる。立ち会えなかった
> 時代の局面がある。だから、若さなんか羨ましくない。
> 若返りを望むなんて、無駄なこと。このまま更年期を過ぎて、彼と一緒に老いる
> 自分でいい。(271頁)


あなたがパラダイス』 平安寿子

2011年1月29日土曜日

第348冊 小田部雄次「華族」

乱読! ドクショ突撃隊♪    第 348 冊

【1】読書感想 (第348冊)
  
小田部雄次  「華族」  中公新書

歴史が好きと言っても色々で、戦国時代が好きだとか、伊達政宗とか
新撰組といった特定の人物とか団体に関心があるとか。
私は家系とか血縁といった、「お家」「血筋」に関心が高い。
これは敬愛する作家南條範夫が重視していた歴史鑑で、「お家」大事が
薄れてしまった現代では忘れがちだが、昔は個人よりも「お家」が重要
だった。どうしてそれほど才能の無い武将が伸し上がれたのか?
ある時期からメキメキと頭角を現したのは、姻戚関係や地縁が働いたので
はないか?
詰まらない見方と思えようが、歴史の裏面を見るには忘れてはならない。

明治の御一新によって武家社会は崩壊し、天皇を中心とした国家・官僚に
よる中央集権国家が産まれた。
江戸期は落ちぶれていた公卿、明治維新で大活躍した脱藩浪人も含めて、
大名や薩長土肥の中心メンバー、果ては高僧や大昔の忠臣(南北朝時代の
遺臣功臣の末裔)まで引っくるんで、華族が創設される。
岩倉具視と伊藤博文が対立しながら華族の骨格が構想されるが、岩倉の死
によって伊藤が押し進める形で公侯伯子男の五爵に分けられた。

最盛期には千家以上も華族が産まれることとなり、こんなものが現代まで
残ってたら飛んでもない問題になっていただろう。
きっと歴代の総理は、華族に入れた入れなかったと大騒ぎだったろう。
春秋の勲章だけでも苦々しいのに、華族は一度成れると相続できる。
華族に相応しい付き合いもしなくちゃいけないから、財力の無い人は爵を
返上したという。もしくは爵位を相続しないとか。
でもそんな人は少数であり、多くはありがたく叙爵したそうだ。
戦前日本なら、現代人では想像できないほど名誉なことだったのだろう。

本書は華族の成立から諸問題、諸事件、そして衰退、敗戦による廃止まで。
たっぷりと書いてあるようでいて、コンパクト。
華族とはなんぞや?という入門にも打ってつけ。



華族―近代日本貴族の虚像と実像

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

非常識が長年、苦難に耐え抜いて常識になるんだ。

耐え抜く覚悟はできている。

2011年1月28日金曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

サラリーマンという枠に、はまらないサラリーマンがいる。

芸術家というイメージに、とらわれる芸術家がいる。


どうやら「自由」に、職業や環境は関係ないようだ。

今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。世迷いごと

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆芸能、エンタメ系


世迷いごと  マツコ・デラックス
¥ 1,260  双葉社 (2010/10/13)


アマゾンのレビュー見て爆笑した。悪いレビューのほとんどが、
「マツコはこんなもんじゃない!」と主張している。この程度の
エッセイじゃ、マツコの真価は問えぬと声高に叫んでいる。

みんな、マツコさんが好きなのね。

テレビに出る女性有名人を槍玉に挙げた毒舌エッセイ。マツコさ
んの語りを編集したものだそうだ。

確かに、コタツでぐだぐだしゃべっているだけのような本では
あった。こちらも負けず、だらしない格好で猫でもいじくりなが
ら、気楽に読むのが吉というところだろう。構えず、楽しく。

以下、皆さん敬称略でご紹介させていただきます。ファンの方、
ご理解よろしくお願いしますよ。

・広末涼子 孤高に生きる凄いタマのオンナ

この人は「長い目で見なきゃ」って思ってたの。出てきた頃は日
本のロリコン市場に合致するオンナだったわけよね。

でも奇行が報道されたり離婚をしたり、バッシングの嵐にもさら
されたわけよね。それで彼女は一回り大きくなったのよ。

アタシ(マツコさんご本人のこと)の勝手な決めつけなんだけど、
女優や歌手として大成しようと思ったら、結婚なんかしちゃだめ。
家庭の安らぎなんか得ちゃだめなのよ。女優は生き様を見せつけ
るのが仕事なの。

広末は、最初吉永小百合みたいになると思ってた。でも今は、大
竹しのぶに似てると思うわ。狂気をはらんだ役ができると思う。

・川島なお美 脳細胞が健やかなオンナ

アタシ昔は、川島なお美を「生き恥をさらして、哀れなオンナ」
だと思ってたのよ。「私の血にはワインが流れている」なんて聞
いたときには、世間の皆と同じようにアレレと思った。

でもこの人、いつの間にかキャラを定着させてしまったわね。ワ
インのイベントには必ず呼ばれている。

この人は、世間にどう思われようと気にしないのよ。馬鹿にされ
てる? なんて、考えることがない。脳細胞が健やかなのね。自
分に興味のあることを純粋に楽しんでいる。

この人を理解するのに10年かかったわ。世間の反応に対する鈍さ、
でもそのおかげで、ハスにかまえず楽しそうに生きている。すご
いわ。

・沢尻エリカ

ファンに握手をせがまれたとして。長澤まさみだったら「キモイ」
と思いながらも笑顔で握手してくれるよね。でもエリカだったら、
「薄気味悪い奴はきらいだ」ってはっきり言うと思う。

相手をちゃんと人間として見てるのはどっちだろうね。

この人は、女優とは何であるかがよくわかっている。生意気言っ
て、変な男と結婚して、生き様を見せるのが女優の人生。あふれ
出すものがない人は、魅力的とは言えないの。

ただ、離婚が少々早すぎたわね。薄っぺらい男と結婚して、面白
くなったところだったのに、目が覚めるのは早すぎだと思うわ。
もう少しショッパイ思いをしてほしかった。

とはいえ、今後も見守りたいところ。この人には、無人島に取り
残されても、オオトカゲを食って生きのびそうな強さがある。楽
しみだわ。


藤原紀香のことを「芦屋のマダムくらいでおさまっておけばよ
かったのに」と評していたのには笑った。そこそこ美人で、ボラ
ンティアにも熱心で、ぴったりだと思うもん。(あ、私、紀香さ
んファンです)

エビちゃんモエちゃん、寺島しのぶ、高岡早紀、叶姉妹、女子ア
ナ、滝川クリステル、小谷真生子、など。

下ネタというか、その手の単語も多いです。やっぱこの人、視線
が男なんだなあって思う。だから怖いね。

ワイドショー好きな方に。

世迷いごと

2011年1月27日木曜日

本のご紹介です。きことわ

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆話題の小説系


きことわ  朝吹 真理子
¥ 1,260  新潮社 (2011/1/26)


第144回芥川賞受賞作。

貴子(きこ)と永遠子(とわこ)、七つ違いの幼馴染が、別荘の
後片付けをしましたよ〜、おしまい。


って感じだったけど、それだけで終わるのもさみしいよな。ぼち
ぼち筋らしいところを、がんばって書いてみようかな。

葉山のお話。永遠子の母は別荘の管理人をしている。その縁で、
永遠子は貴子と仲良くなった。

別荘は貴子の両親の所有である。貴子の父は外科医で、忙しくて
別荘にはあまり来られない。訪れるのは母の春子と義理の弟の和
雄、貴子の三人だけだ。

永遠子は幼くて知らなかったが、彼女が別荘を訪れるとき、春子
は交通費を支払っていた。七つ年少の貴子が、永遠子になつき、
そばにいたがったからだ。

だがその交流も、春子の死とともに途絶える。春子は心臓が弱
かった。

現在永遠子は40歳、結婚して子供がある。貴子は33歳、不倫の恋
に破れて父と二人暮らしである。その二人が、手放すことになっ
た別荘の片づけをする場面が描かれている。

過去と現在が行き交う。子供の頃遊んだ海の話、食事をした蕎麦
屋の話。歩いた道に道路反射鏡があったかしら、なかったかしら
と、二人は過去の思い出を語り合う。

永遠子はあるとき、母が父のほかに恋人を持っていたことを知ら
された。別荘の仕事は、外に出てゆくための理由だったのだと思
い至る。

貴子にも母の思い出がある。母春子は、心臓病を患っていたのに
タバコをやめられなかった。父は黙認していたようだ。

和雄は貴子の父を責めた。医者なのになぜ。別荘の片付けをしな
がら、封を切っていないタバコがワンカートン出てきて、和雄の
前では吸えなかったのだなと、貴子は母を思いやる。

片付けは一日では終わらず、貴子は別荘に泊まることにした。そ
の夜、かつての若い姿で別荘を歩く春子の姿を、貴子は目にした。

母は病に冒されていた。幼い貴子はいつも死におびやかされてい
た。母が亡くなったとき、ようやくその恐怖から解放された気に
なった。死者を縛り付けるものは生者なのかもしれない。

永遠子は一人家に戻った。帰り道、晩御飯の材料を買って踏み切
りにさしかかる。ぼんやり、電車が来たことに気づかなかった永
遠子だが、誰かに髪の毛を引っ張られて難を逃れる。

不思議だ。永遠子は子供を産んでから、ずっとショートカットな
のに。

翌朝業者の手を借りて片付けを終え、二人は弁当を広げた。永遠
子が作ってきたものだ。野菜の甘酢漬けがうまい。

そう言えば、父が蓮根を大量に買ってきていたなと貴子は思う。
甘酢漬けのレシピを聞いて、父のいる家に戻ってゆく。


文章は流れるようにきれい、冗長ではない。美しい環境ビデオを
見てるみたいだった。

それだけっつー感じもするけど、まああれや、偉い人にはきっと
わかるんやろな、そのよさが。こういう本は偉い人向き。

私にはちょっとよう、わからんかった。アホやもん、しょうがな
いな。

きことわ  朝吹 真理子

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

迷ったら、

よりかっこいいと思える方を選ぶ。

そしてかっこいいと思える心構えで臨む。


今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月26日水曜日

本のご紹介です。日本人でも知らない!?外国人の大疑問

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆世間話、時事ネタ系


日本人でも知らない!?外国人の大疑問  高橋 陽子
¥ 1,000  アルク (2010/8/31)


語学学習の、アルクのホームページなどに掲載されていたもの。
コミックエッセイ。外国人留学生が、日本について、疑問に思っ
ていることをまとめた。

著者の高橋さんがよく利用される喫茶店に、留学生の方が多いの
だそうだ。ものすごい、日本人でも難しい質問をぶつけられて、
高橋さんもたじたじ。

「アルバイト先の店長がもうすぐフルマラソンに挑戦します。
励ましたいので『がんばって』の尊敬語を教えてください」

これには、友人の編集者が答える。

「頑張るとは、我意を張り通すのことで、尊敬語はありません。
お励みください、というのが妥当でしょう。

ですが、目上の人にはちょっと失礼なので『よい結果をお祈りし
ております』とするといいのでは」

また、文化の違いを感じさせられることもある。

「日本には、どうして『今、もっと会いたい』という気持ちを表
す言葉がないのですか?」

韓国では、恋人と会っているその瞬間にも、もっともっと会いた
い(意味がわからんな)という熱烈な愛情表現があるのだそうだ。
見つめ合って、もっともっと!!という強い意味の言葉。

これには他国の人も賛同し、不思議がる。

「香港には、ものすごくものすごく会いたくて、会えたらすぐハ
グしたい!という言葉がありますが、日本にはありませんね。
すぐ会いたい、だけでは少し寂しいです」

「日本語には、恋愛に使う言葉が少ないですね。中国では『僕た
ちの出会いは運命で決まっていたのだね』というようなことを、
日常的に言っていますよ」

ちなみに韓国の男性は、おやすみの代わりに「俺の夢を見ろよ」
と言うのだそうです。皆さん、熱いのね。

面白かったのは漢字に関するエピソード。

留学生の皆さんにとって、漢字の勉強は大変難しいものであるら
しい。いろいろな工夫をしておいでだ。

「案」という字。女の人が木の上に立って道を示してくれる、と
覚える。「殴」という字の右側は、手が悪いことをする、という
意味があるのだそうだ。

だから「殺」にも使われている。ちなみに左側は木に縛るという
意味合い。何気なく読んでる漢字でも、こうやって見るといろい
ろと成り立ちがわかるものだね。

ある女の子は、看板に書かれている明朝体の文字が読めなくて
困っているそうだ。活字は読める。だが看板などの文字は飾り文
字に見えるらしい。私たちが、アルファベットの花文字を見づら
いと思う感覚みたいだ。


日本の居酒屋ではなぜお通しが出てくるのか。日本人はなぜ本に
カバーをするのか。お花見はなぜ大騒ぎなのか。お茶会のマナー
は?

改めて問われてみると、どう答えていいか迷っちゃうことが多い
よね。

漫画だからさらっと読める。そして楽しい。視点を変えて見るこ
とで、普段の暮らしが新鮮なものに感じられる、ような気がする。

タイから来たトライポップさんは、漢字の冬という字がお気に入
りなのだそうだ。理由はその形が、軽やかに踊る女の子に見える
から。すげえな。

だけどそう考えると、この寒い「冬」も素敵だと思えるよね。

本日ご紹介の本はこちらから↓
日本人でも知らない!?外国人の大疑問―日本語・異文化のギャップで笑えるコミックエッセイ

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

努力は愉しむもんだ。

苦しむもんじゃないと思う。

今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月25日火曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

豊かな家庭と人生を作るのは、

仕事やお金よりも、

安定した上機嫌。

今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。宝くじ(超)当せんデータ

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆世間話、時事ネタ系


宝くじ(超)当せんデータ「当たる人のルール」がわかった  
女性セブン編集部  ¥ 1,155  小学館 (2010/11/2)


とはいえ、私自身は宝くじはあまり買わないのよ。買うとしても、
お付き合いで十枚程度がせいぜいかな。なんせ、当たる自信がど
こを探しても見つからないのよ。

この本は、女性セブンが取材した、高額当選者に共通する点を集
め、まとめたもの。自己啓発の本に書かれているような事柄が多
い。

しかし高額当選となると、読みすすめる目も変わっちゃうよね。
少しご紹介してみます。いいことばかり、まねしてみても損はな
いことばかり。

・お金持ちのまねをする。

生活、意識から変える。しかし派手な暮らしをすればよいという
ものではない。本当のお金持ちは質素で、上手なお金の使い方を
している。

お金持ちの家はシンプルだ。実は、お金に困っている人のほうが、
ごちゃごちゃした家に住んでいるのだそうだ。安さだけで買い物
をしない。必要なものを見極めよう。

・近所の神社にお参りに行く。

氏神さまを決めたら、折に触れてお参りを。このとき「当選させ
てください」だとか、「出世をひとつ、お願いします」なんて祈
り方はしないように。

近況報告をして、これまで無事に生きてきたことを神様に感謝し
よう。そのほうが、結果的にうまくいくものだ。

・トイレ掃除。

お金持ちの家はトイレがきれい。習慣づけてしまえば楽だ。朝の
歯磨き、洗顔の流れでトイレも掃除してしまおう。

気をつけたいのがトイレのふた。これは必ず閉めること。底の水
から悪い気が発生するから。

・窓、カーテン、台所はきれいに。

基本的に、家は清潔がよい。玄関も、運気の入り口なのでこまめ
に掃除をしよう。窓は外のエネルギーを取り込む場である。カー
テンはきれいに、ガラスもぴかぴかにしよう。

・朝日を浴びる

様々な占いでも、太陽は力を持つものと定義されている。医学的
にも、日光は人間によい影響を及ぼすことが証明されている。セ
ロトニンの分泌が活発化するからだ。

よく眠り、姿勢をよくし、太陽の光を浴びて日々の活動に励む。
活力のある暮らしに運が引き寄せられる。


冒頭に、実際に宝くじを当てた人のレポートがある。中から一人、
80歳になる男性の話をここでご紹介してみる。

兄が戦争で亡くなり、12歳年上の兄嫁と結婚することになった男
性。

彼には気がかりがあった。兄の遺言である。兄は一言「近所の神
社を建て直してほしい」と言って戦地に旅立って行った。

平成になって、生活が落ち着いた頃に宝くじを買い始めた。妻も
賛成してくれた。毎年十万円ずつ、金額を決めて買うことにした。

平成20年に妻が亡くなった。その年の夏、3億円当選。妻と兄が
見守ってくれたおかげだと思う。神社を修復し、7千万以上を寄付
した。次当たっても、世のため人のため、使いたいと思う。


こういう人が当選するんだなあ。ええ話や。


宝くじ(超)当せんデータ「当たる人のルール」がわかった

2011年1月24日月曜日

No.384 椎名誠「チベットのラッパ犬」→ 3.5点

椎名 誠「チベットのラッパ犬」→ 3.5点

発行元 :株式会社文藝春秋 初版発行:2010/8/30
椎名 誠(シイナ マコト)

あらすじ

最終戦争後の混沌とした世界。
工作員としてチベットに潜入したおれは幸運もあって首尾よく目当ての
品を手に入れることができた。
・・と思ったのもつかの間、ブツは生体偽装した誰かにブツをかっさら
われてしまった。
このままでは帰れないおれは、奴を探して追跡を始めることにしたのだった。

コメント

「最終戦争後」の近未来を描くシーナワールド最新作。
『武装島田倉庫」から始まった本シリーズも、気がつけば結構な冊数になった
よなあ。
一見荒唐無稽なようでよくよく考えると妙にリアリティのある世界観と、全編
に漂う「もうどうだっていいやあ。」という渺漠とした哀しみのようなものは
本編でもしっかりと健在で実によかった。

読むというよりはひとつの世界を旅するという方が相応しい一冊。
滔々と、終わることなく流れる長い長い川をゆっくりと下っていくような魅力
と安心感があった。
読み手によると思うが、個人的にはシーナ氏の描くこの世界はかなり好きだ。


チベットのラッパ犬

了。



0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

無駄な競争心のために、

どれだけの大切なことが

失われてきたのだろうか。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。1坪の奇跡

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆ビジネス、営業系


1坪の奇跡─40年以上行列がとぎれない 吉祥寺「小ざさ」味と
仕事  稲垣 篤子
¥ 1,500  ダイヤモンド社 (2010/12/3)


吉祥寺にある和菓子屋「小ざさ」。たった1坪の敷地に建つこの
店には、二種類の菓子しか売られていない。一本580円の羊羹と、
一個54円のもなかがそれだ。

特に羊羹は人気だ。一日150本しか作られないその羊羹を求めて、
日の出前から行列ができる。買える本数は一人5本まで。先の一
人が買い占めてしまうと、不公平が生じるからだ。

だが量産はしない。羊羹の小豆は小さな銅釜で炊かれる。一度で
羊羹50本分。一日三度が限界なのだ。

ぐらぐら煮える小豆を、大きなヘラでかき回す。最初は軽いが、
次第に水分が飛んでヘラは重くなる。コツがいる。釜の底より半
紙一枚分のところ。小ざさの小豆は職人の技で練り上げられてい
る。

小豆が紫色に輝く一瞬があるのだそうだ。その一瞬を得るために、
社長の稲垣篤子さんは三十年の年月を要した。先代である父とと
もに、命がけで作り上げてきた味だった。

稲垣さんは戦前の生まれ。戦時中は疎開するなど、苦しい経験を
した。

和菓子屋を始めたのは父親の照男さんだ。戦争ですべて失ったが、
戦後再び菓子を売る商売を始めた。

その頃菓子は自宅で作られていた。稲垣さんがそれを屋台で販売
する。屋台と言えど、店なのだからと、一枚しかない紺のスーツ
を着て店に立った。

狭い場所で立っているのは辛かった。だが父は稲垣さんに厳しく
申し渡す。「品物がなくなったからと店を閉めるのは屋台の商売
のやり方だ。ここは店なのだから、決まった時間はちゃんと商売
をしなさい」 厳しい父だった。

稲垣さんはカメラマンを志したこともある。だが、父の姿を見て
育った彼女は、いつか店を継ぐ決意をした。結婚もしていた。夫
には、自分の食事は自分でしてちょうだいねと宣言し、主婦業よ
りも仕事に打ち込んで過ごしてきた。

毎朝父と儀式をする。居間に座り、よい緑茶を用意して、昨日
練った小豆を食べる。父が納得する味ができるまで、三十年間毎
日小豆と格闘した。

お父様は糖尿病だったそうだ。医者には叱られたが、この儀式だ
けはやめようとしなかった。一番いいものを作る。この信念が、
親子を支え続けていた。

父は一族と従業員の生活を背負っていた。その責任感の強さが、
稲垣さんにも影響を与えていた。父が亡くなったとき、稲垣さん
はただ「ご苦労様、そしてありがとう」という言葉しか思いつか
なかった。苦労し通しの人生だったと思う。

今は稲垣さんが、従業員の暮らしを背負って立っている。皆が助
けあう職場にしたいと考えている。会社は家族のようなものだ。

障害者も積極的に採用している。だが、助成金をもらうことはな
い。助成金をもらってしまえば、それだけの付き合いだと思って
しまう。そうではなく、一人の人として向き合うのが当たり前と
思う。


小ざさの羊羹は人気で、午前一時から並んで待つ人もいるのだと
いう。地方から、わざわざホテルに宿泊して買いに来る人もいる。

平等に買ってもらいたいと考えるから、稲垣さんは家族、親族に
も特別扱いはしない。稲垣さんのご主人も、その行列に並んだこ
とがあるのだそうだ。徹底している。

いいものを誠実に作りたいという、職人さんの熱意が伝わってく
る一冊。稲垣さんは御年78歳だが、今でも元気に自転車で通勤し
ている。

読んで必ず元気になれる本。それから、甘いものが食べたくなる。


1坪の奇跡―40年以上行列がとぎれない 吉祥寺「小ざさ」味と仕事

第347冊 綱淵謙錠「聞いて極楽」

乱読! ドクショ突撃隊♪    第 347 冊

【1】読書感想 (第347冊)
  
綱淵謙錠  「聞いて極楽」  文春文庫

実は本書を読んだのは二度目。
私は滅多に本を二度読まないのだが、この本は数年前に読み、その感想を
書こうと思っているうちに忘れ、いざ書こうと思ってたら内容も忘れた。
パラパラと読めば思い出すだろうと読み返してみると、ほんとに忘れてい
る。
しかし面白い。結局全部読み直した。

見開き2ページに一話が載っており、それが全百話で二百ページ余。
戦国期から明治初期までの埋もれたエピソードが掘り出されており、時間
の合間合間に読むには打ってつけの面白さ。

大きな書店の片隅に、文庫目録と並んで「新刊のお知らせ」という小冊子
を見た事ない?
そこに一ヶ月一話のペースで百ヶ月、実に8年4ヶ月に亘って連載されて
いたものを、時代順に再構成して纏められたのが本書だそうだ。
「聞いて極楽」というのは、いろは歌(関東)の「き」=「聞いて極楽、
見て地獄」から採ったもので、表と裏では随分違うことを指す。
史実の表舞台と、その裏とではこうも違うのかと気付かせる名掌編が多い。

綱淵謙錠の文春文庫は十冊前後出ているが、古本屋でも見かけることが
少ない。
見つけたら迷わず買うが、ベストセラーになった訳でもないだけに、
出回っている量も多くない。
こういった「いい仕事」をした本が、もっと浮かばれるべきだと思う。



聞いて極楽―史談百話

2011年1月23日日曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

人は変えられない。

自分なら変えられる。

自分が変われば人だけでなく、

景色も変わる。

夢も変わる。

今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第430号『シティ・マラソンズ』

週刊 お奨め本
2011年1月23日発行 第430号

『シティ・マラソンズ』 三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵
¥1,200+税 文藝春秋 2010/10/30発行


「純白のライン」       三浦しをん
「フィニッシュ・ゲートから」 あさのあつこ
「金色の風」         近藤史恵

アシックスが2008〜10年に期間限定で実施した「マラソン三都物語 
〜42.195Km先の私に会いに行く〜」キャンペーンの一環として、書き
下ろされた作品とのこと。この三作を収録した書籍も部数限定で配布
されたらしい。

ニューヨークシティマラソン、東京マラソン、パリマラソン。
それぞれの街を舞台に、走ることを通して自分を取り戻す物語。


不動産会社に勤める安部広和は、社長にとつぜん翌日のニューヨーク行きのチケ
ットを手渡された。ニューヨークシティマラソンに出場しろ。
なんという無謀。広和は不覚にも少し涙ぐんだ。なんで俺、こんな社長のために
身を粉にして尽くしてるんだろう。
社長の娘の監視役を仰せつかってニューヨークに赴いた広和は、真結のペースで
ゆっくりと走りながら、過去を振り返る…。
                             「純白のライン」

スポーツメーカーのシューズオーダーメイド部門で働く南野悠斗。ある日、昔の
友人から電話を受ける。東京マラソンで走る、と。悠斗は「俺のシューズで走っ
てくれ」と頼んだ。
才能があると思っていた。オリンピックも夢じゃないと思っていた。限界を知っ
て、がむしゃらにトレーニングをしすぎて、疲労骨折した高校時代。それからす
べてに中途半端だった自分…。
                       「フィニッシュ・ゲートから」

バレエ一筋だった香坂夕。凡庸な才能しかない自分に比べ、妹は天賦の才に恵ま
れていた。バレエをやめて、夕はパリに留学した。
金髪の女性がゴールデン・レトリバーと共に走っていく。借りている部屋の前が、
彼女たちのランニングコースになっているらしい。金色の風が駆けて行く。彼女
たちに誘われるように、夕も走り始める。
親しくなったアンナが言う。「あなたもバレエという芸術の一部なのよ」。…
                               「金色の風」

三篇とも、短すぎてちょっと物足りないなー。
「純白のライン」はニューヨークシティマラソンガイドとしてもおもしろい。
スタートと同時に参加者が脱ぎ捨てる防寒着はボランティアが拾い集めて寄付に
まわすとか、ランナーも心得ていて寄付用に新品を着てくるとか、流しそうめん
型男性用トイレとか。きっと取材に行ったんだな。

東京マラソンはさすがに街のガイドは必要なかったようだ。

パリマラソンの「金色の風」は、マラソンコースとしてではなくパリの街のガイ
ドになっている。『タルト・タタンの夢』『ヴァン・ショーをあなたに』でフラ
ンス通らしさを披露している近藤史恵。うー、街角のパン屋さんでバゲット買っ
て食べたい。

こういうのを読むと、無性に走りたくなってしまう。
実際には、走るどころかウォーキングですら10キロも自信ないのだけど。
自信はないけど…走ってみようかな。
もしかしたら、新しい自分に出会えるかも。





えー、先週に引き続き、もう一冊紹介しちゃいます。
個人的には『シティ・マラソンズ』よりも面白かったんですけどね、いくら発行
人の趣味と偏見で選んで紹介するメルマガといっても、あまりに偏りすぎかなー
と遠慮してみました。しかしもしかしたら発行人と趣味の近い読者さんが意外に
多いかもしれないしーと、ここにちらりと紹介してみます。

『戦場のハローワーク』 加藤健二郎
¥695+税 講談社(講談社文庫) 2009/12/15発行
ISBN978-4-06-276524-4

軍事ジャーナリストの加藤健二郎氏が、戦争をメシの種にする方法を紹介。
つまんないネタでもそれが戦場である限り、売れるのだ! 戦場はネタの宝庫だ!
食いっぱぐれはない! と陽気に言ってのけます。
女の子をナンパしても記事になる、酒を飲んでも記事になる、人質になったら本だ
って出せる、と経験談を交えて気楽に面白おかしく書いてるのが、すごく痛快!
素人が軽い気持ちで行くもんじゃないと大御所がしかめ面をするのは既得権益を
守りたいだけだ、と一刀両断。
好きだー、こういうキャラ、好きだー(爆)!



シティ・マラソンズ』 三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵

戦場のハローワーク』 加藤健二郎

2011年1月22日土曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

もし、強靭な精神を手に入れることができたら、

きっと、「したたかさ」も「かけひき」も

いらなくなると思う。

今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月21日金曜日

本のご紹介です。月と蟹

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆話題の小説系


月と蟹  道尾 秀介
¥ 1,470  文藝春秋 (2010/9/14)


第144回直木賞受賞作。

主人公は小学生、慎一。父親をガンで失った彼は、母と二人、鎌
倉の祖父のもとへ身を寄せていた。貧しい暮らしだ。

祖父の片足は義足である。漁師だった昔、船の事故に巻き込まれ
たのだ。同じ事故で、慎一の同級生も母親を亡くしていた。

鳴海という。お金持ちで、人気のある女子児童だ。彼女のことが
あるせいか、慎一はクラスに溶け込めないでいた。慎一の友人は
ただ一人、春也という、大阪から転校してきた子供だけだ。

学校が終わると、春也と連れ立って海へ遊びに出かける。彼らの
楽しみは、ヤドカリを捕まえてあぶりだすことであった。ライ
ターの火を近づけて、熱くなったヤドカリが殻から出てくるのを
見て楽しむ。

あるとき二人は、岩の上にくぼみがあるのを見つける。ここでヤ
ドカリを飼うことにした。そこは不思議な場所だった。風が吹く
と岩がうなる。

ヤドカリをあぶって遊ぶ。残酷な楽しみがあった。金がほしいと、
何気なしに言いながらヤドカリをあぶると、ヤドカリは死んでし
まった。その日、二人は五百円玉を拾った。

ヤドカリを殺せば、願いがかなうのかもしれない。慎一はいつか、
ヤドカミさまという妙な名前でヤドカリを呼ぶようになっていた。

その頃、慎一は二つの悩みを抱えていた。親友の春也が、どうや
ら虐待を受けているらしいこと。もう一つは母が、鳴海の父と恋
愛関係にあるらしいということだ。

鳴海も気づいていたようだ。慎一に近づいてくる。やがて鳴海は、
慎一と春也と、三人で岩のくぼみに行くようになった。

鳴海が慎一の家を訪ねる。祖父も母も、普段と違う様子を見せて
いた。祖父は明らかに酒量が増えていた。祖父はあの事故のこと
を語り始める。

祖父は子供の頃、怪我をした友人を捨てて逃げたことがあった。
足をなくしたのはその報いかも知れぬ。

鳴海は逃げた。では母も、悪行の報いで死に至ったのか。祖父は
追い、転倒して頭に傷を負う。

また、鳴海が介在したことで、慎一と春也の仲にも微妙な隙間が
生まれていた。対抗心と独占欲。よどむ感情を抱えながら、二人
はヤドカリをあぶり続ける。その儀式だけが互いを結ぶもので
あった。

慎一は母を尾行する。決定的な瞬間を見た。春也は腕を骨折し、
虐待がのっぴきならぬ状態にまで進んでいた。ヤドカリを殺し、
ヤドカミさまに願いをこめる。

慎一は鳴海の父の死を願った。このとき、慎一は錯乱状態にあっ
た。春也が慎一のため、鳴海の父を殺すのではないかと錯覚する。
救うため、慎一は父が乗った車の前に飛び出した。ヤドカミと
なった春也が、父の車に潜んでいる想像をしたからだ。

慎一は一命をとりとめる。母と二人、鎌倉を去る。


まあくどい。長かった。100ページの短編くらいにしてくれたら
よかったのに、というのが正直な感想。疲れたわ。

ちなみに、表題の蟹というのは、父を奪ったガン(キャンサー)
と、ヤドカリの意味であるようだ。

月と蟹  道尾 秀介

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊


夢を持つことで

日々のなにげない出来事に
彩りを感じるようになる。


今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月20日木曜日

本のご紹介です。島さんぽ

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆生活、ほっこり系


島さんぽ  上大岡 トメ
¥ 1,365  角川書店(2010/3/27)


「キッパリ!」の上大岡トメさんが、日本の島をめぐる。イラス
ト入りエッセイ。向かう島は屋久島、沖縄、淡路島、八丈島。

この中で、私が最も訪れてみたい屋久島を、ここでご紹介してみ
ようと思う。

屋久島までは、鹿児島から船か飛行機で行ける。トメさんは着い
てすぐに、レンタカーで島を一周されたのだそうだ。半日ほどで
まわれるようだな。

翌日、縄文杉を見に行く。タオルを首に巻き、シャツは二枚重ね、
ステッキを持って本格的な登山スタイルで。

それもそのはず、縄文杉を見るには、合計往復10時間もの登山が
必要であるらしい。けっこうハードなんだな。

トロッコ線路に伝って歩き、線路が終わると山道になる。急な斜
面であるが、珍しい杉がたくさんあって飽きることがない。

中でも「ウィルソン株」という、樹齢300年の切り株がトメさんの
印象に残っている。中が空洞で、立ったままは入ることができる。
ほかにも二つの木が絡み合うように生えているものもあり、自然
のすごさを感じさせられる道だった。

水は流れているものを好きなだけ飲める。緑がむせ返り、山の精
がいるような気になった。

樹齢1000年を超えるものが、総じて屋久杉と呼ばれるそうだね。
中で縄文杉と呼ばれているものは、樹齢なんと、7200年を数える
と推定されている。

森の中にいると、人間以外の何かがいても、おかしくないと思え
る。

トメさんはそう言う。普段はスピリチュアルなものなどに、そう
興味はないほうだが、屋久島に来て少しだけ考えが変わった。

目に見えない大切なものはいっぱいある。屋久島は、そんなこと
が自然に思えるような場所だ。

行ってみたいなあ。山の中、川のそばにいると、なんだか無性に
うおーってなるときあるよね。(え、ない?)

トメさんは、大昔、人間が森の中で暮らしていた頃の遺伝子が呼
び起こされるような気がする、とおっしゃっていた。わかるわ。

あとは観光案内なんかもある。

この本には、宿の名前とか、レジャースポットの名前とかがたく
さん記されていた。その意味で、旅行記というよりは観光ガイド
みたいな印象が強い本だった。

そこは少し残念。もっとがっつり、著者の考えや目で見たものを
書いてほしかったという思いは残る。

しかし、島巡りってのは面白そうだね。幼い頃から淡路島を見て
育ってきて、海の向こうへの憧れは私のうちにずっとある。向こ
うへ渡って行きたいという原始的な欲求がある。

日本は島がたくさんあるもんね、と、締めようと思っていたけれ
ど、よくよく考えれば本州だって島なんだよね。

島国ニッポン。島の魅力を語る本、以後続刊希望だな。

島さんぽ  上大岡 トメ

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊


イライラしてはいけないと強く思っている人ほど
なぜかイライラが増えていくという現象。

まずは
イライラしている自分を受け入れることから。


今日も一日味わいつくしましょう。

こんな発想があったとは…本を折り紙にしてしまった斬新なアート

本アート00

以前、本を削った彫刻をご紹介したことがありますが、今回ご紹介するものはページを折り込むことで文字や図形を浮かび上がらせた、本の折り紙とも言うべき作品。



その他、アーティストのIsaac Salazar氏による、文字通りクリエイティブなアートをご覧ください。


続きを読む

2011年1月19日水曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

何を選んだか。

よりも、

どういう思いで選んだか。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。台湾人生

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆社会派、ドキュメンタリー系

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台湾人生  酒井 充子
¥ 1,650  文藝春秋 (2010/04)

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旅行記ではなかった。読み始めてすぐに「ありゃりゃ」と思っ
たけれど、本を閉じようとは思わなかった。

台湾はかつて日本の統治下にあった。50年という長い年月だ。
その時代を生きた人に会い、聞いた話をまとめたもの。ドキュ
メンタリー映画にもなっている。

統治時代をめったやたらに賛美するものではない。差別はあっ
た。軍国教育を受けて徴兵に応じ、死んでいった台湾人もいる。

だが50年だ。生まれたときには日本人で、そのまま成人した人
が台湾にはたくさんいる。本書に出てくる人たちは、そのよう
な時代を生きた人だった。

少年工として、日本の兵器工場で働いた男性がいる。工場の
あった町を今でも懐かしく思い、第二のふるさとであると考え
ている。当時働いていた日本人とは、今でも交流がある。

彼は貧しい育ちだった。就学を断念しかけたが、日本人の先生
が金を出してくれたおかげで学校に通えた。「先生がなかりし
かば」と、彼は口癖のように言う。今の私の人生はなかった。

恩師が病に伏せたとき、彼は日本まで来て看病をした。先生の
最期の言葉は「もういいよ」だったそうだ。

ビルマで戦った元日本兵がいる。軍国少年だったから、軍隊に
は自ら志願した。軍での差別、戦友の死を見て、やはり戦争は
いけないと思う。

なんとか帰国することができた。帰国後の暮らしは厳しいもの
だった。

台湾は中国に占拠されていた。同胞が来たと、喜ぶ声も確かに
あった。だが中国人の統治は横暴で、次第に日本のほうがまし
だと考えるようになった。

暴動が起きた。このことがきっかけで、多くの知識人が逮捕さ
れ、殺された。彼も拷問を受けた。危うく助かったが、弟が銃
殺されるという悲劇を経験した。

今彼は、観光ガイドのボランティアとして活動し、若者に本当
の歴史を伝えようと務めている。日本人が来ると、教育勅語を
印刷した紙を手渡すのだそうだ。

日本人には親しみがある。だが日本政府には納得がいかない。
戦後台湾を見捨てた。今も中国の顔色ばかり見て、台湾の国連
加盟を後押ししてくれない。


彼らの日本に対する感情は、陳腐だけれど、愛憎半ばというこ
となのだろうかと考える。

茶道も生け花も、日本人の若者よりも知っているという自負が
ある。好きな歌は日本の歌。勇ましい軍歌が好きで、日本語の
歌詞ですらすらと歌う。

しかし日本は彼らに報いなかった。捨てられた、なぜ捨てたの
だと責める気持ちが消えない。

アメリカよりも、中国よりも仲良くすべきは日本だと思うのに、
台湾人も日本人も、かつて同国であったことを忘れ去ってし
まっている。歯噛みするような思いがある。


押し付けがましい思想はないので安心して読める。知らないこ
とがたくさんあって、とても勉強になった。

台湾人生  酒井 充子

2011年1月18日火曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

人生は、

世間に対する自分の

プレゼンテーションの連続だ。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。禅的シンプル仕事術

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆自己啓発系


禅的シンプル仕事術  枡野 俊明
¥ 1,260  実業之日本社 (2010/5/8)

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昨年読んだビジネス書で、「減らす技術」というのがとてもよ
かったので、類似の本かと思って読んでみた。

ところがちょっと違っていて、どちらかというと、小池龍之介さ
んの著作に似ていると思った。小池さんも、この本の著者もお坊
さんである。

キーワード一つに対して解説あり。とても読みやすい。煮詰まっ
ているときにふっと開いて、気分転換ができそうな本だった。

・ていねいに呼吸する。

禅において呼吸は、最も大切な修行のうちのひとつである。丹田
(おへその下の辺り)に意識を集中させて、ゆっくり、長く細く
息を吐く。

吐ききったら自然に吸いたくなる。呼吸という言葉は、吸うより
も吐(呼)くという字が先に来ている。どっしりとした呼吸をく
り返していると、気持ちが落ち着いてくる。

・ためない

「一日なさざれば、一日食らわず」という言葉がある。働かざる
者食うべからず、という意味ではない。

一日を一生懸命働いて、その日の分の食事をする。二日分働くこ
とはせず、二日分食うこともしない。それが人間にとって、一番
健康なことだ。

・一日10分、ぼーっとする。

一度やってみてほしい。案外難しいことに気づくだろう。

何も考えない状態。禅では「無の境地」といい、この状態を得る
ために、僧侶は厳しい修行に取り組む。

私たちにその必要はないかもしれないが、頭を休めることは大切
なこと。座禅を組むのもいい。

・ことなる意見に耳を傾ける。

境内に僧侶が二人。幡(吹流し)を見ながら言い争っていた。

「幡が動いているのではない。風が動いている」
「いや、幡そのものが動いており、風は動いていない」

そこに現れた師が言った。「動いているのは風でも幡でもない。
お前たちの心だ」

世の中にはこれが正しいと、言い切れることはない。物の見方は
さまざま。すべてを一度受け入れ、自らの心に問い直してみよう。


レオ・バボータさんの「減らす技術」は、仕事をいかにシンプル
にするかという、ビジネス書寄りの本だった。その意味で「禅」
が本当に理解されているのか、疑問だったのは確か。

とにかくその作業に集中すること。無駄なものを削ること。

このことを荒削りに「ゼンっつったらゼンなんだからね!」と、
言い切ってしまっていたかもしれない、と今になってはわずかに
思う。

それに比べて今度は本当に「禅」だった。心構えを書いたもの。

字、大きめ、レイアウトがきれい。読みやすい。カバーデザイン
もシンプルで、ちょっと固めの手触りもよろしい。(本屋さんで
見つけたら、ぜひなでなでしてやってね)

忙しい毎日を送っている方に。

禅的シンプル仕事術

2011年1月17日月曜日

本のご紹介です。チュートリアル福田充徳の家呑みレシピ

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆生活、ほっこり系


チュートリアル福田充徳の家呑みレシピ  福田 充徳
¥ 1,365  ワニブックス (2010/2/27)


福田さん、早く良くなってね!

というわけで、本日は話題性もたっぷりのこの一冊。漫才コンビ、
チュートリアル福田充徳さんの、自慢のレシピを集めたもの。

実はこの福田さん、お酒がものすごく好きなのだそうだ。ほぼ毎
日飲んでいる。家で飲むのも好きで、あわせるお料理もご自身で
作っている。

簡単にできるものが多い。凝っているわけではないが、手抜きで
はない。家庭でマネできるものばかりだった。

・豚キムチフライ
豚の薄切り肉にチーズとキムチを巻いて、パン粉をつけて揚げる。

・ちくわのバジルツナマヨ
ビニール袋に水気を切ったツナ、バジルペースト、マヨネーズを
入れる。

袋のはしを切って、中のバジルツナをしぼり出すようにしてちく
わの中に入れる。ちくわを斜めに切って皿に盛る。

・イカ刺身の大根おろしマヨネーズ和え
大根おろしは水気を切る。大根おろし、マヨネーズ、イカの刺身
をボウルで和える。醤油で味を調えて。唐辛子をふるとよい。

・レタスの丸ごとしゃぶしゃぶ
レタスは芯をくり抜く。お湯をわかし、塩と酒を入れる。レタス
を丸ごと入れてさっとゆでる。ゆですぎないように。

たれは醤油、バルサミコ酢、みりん、酒、水を混ぜて熱したもの。
片栗粉でとろみをつけて。

・トマトと卵のザーサイ炒め
トマトは乱切り、種をとる。ザーサイは粗みじん。溶き卵に塩、
コショウをふっておく。

フライパンにごま油、トマト、ザーサイを炒め、醤油、紹興酒、
コショウで味を調える。卵でとじてできあがり。

福田さんいわく「ちょっと良さげな店ではイイ値段とるんですよ」
というメニューなのだそうだ。

・うなぎのピカタ
うなぎは小麦粉をふって、溶き卵にくぐらせる。フライパンで焼
いて、うなぎのたれをかけて食べる。少ないうなぎでも満足感が
得られる一品。

男性が作る料理はがっつり、ジャンクなものが多くなりがち。福
田さんは、鍋物やスープで栄養バランスを整えています。

・いろいろきのこ汁
だし汁に薄口醤油とみりん。お好みのきのこに鶏肉を入れて。

ほか、サムゲタンも作る。トマトスープも好き。豚汁にはコチュ
ジャンを入れて辛味をくわえるとおいしい。


福田さんの料理のルーツはあの「美味しんぼ」。小学校高学年の
頃にはまり、一時は料理人を夢見たこともあったとか。

スーパーが好きで、住居を決めるときは必ず近くのスーパーを確
認する。遅い時間に行って、食材がお値打ちになる時間帯がとて
も好きなのだそうだ。ツナ缶、納豆、さけるチーズなどを家に常
備している。

一人で飲むことは寂しいことだとは思わない。好きなものを食べ
て、好きなように飲める。いいことだと思う。グルメ番組をぼん
やり見ているのが好きだ。

ご家庭で、おつまみを作ることが多い人には便利な一冊かもしれ
ないな。

しかし、飲み過ぎにはご注意。元気な福田さんの笑顔を、早く見
られますように!

本日ご紹介の本はこちらから↓
チュートリアル福田充徳の家呑みレシピ

No.383 吉田修一「女たちは二度遊ぶ」→ 3.5点

吉田 修一「女たちは二度遊ぶ」→ 3.5点

発行元 :株式会社角川書店
初版発行:2006/3/31
吉田 修一(ヨシダ シュウイチ)

あらすじ

女たちはいつでもちょっと不思議で、そしてそれぞれに魅力的だ。
どしゃぶりの雨の一日から始まって、ひたすら僕の家でじっとしていた女。
中学生の時に初めてデートした女の子。
公衆電話でのちょっとしたすれ違いから僕と寝るはめになった女。。
とりたてて変化のある訳でもない僕の人生を彩ってくれた様々な女たちの
エピソード11編。

コメント

これ、確かドラマにもなってたよな。
と思い手に取った一冊。意味はよく分からんが、何となく肌触りがよくて
魅力的なタイトルだと思う。

ほほう、ふふん。なるほど。なぬ!?・・と言う感じで、11篇の短編を
あっという間(1.5時間)で平らげてしまいました。

男にとって全ての女性は永遠に謎を秘めた存在なのだけれど、それを実に
さらりと手際よく料理したよなあという感じの一冊。
読みやすさ満点なので、秋の夜長にウイスキーでもちびちび飲みながら読
むと良いですよ。

昔のことをちょっと思い出すかもしれません。。



女たちは二度遊ぶ

了。



0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

自分が好きとか嫌いとかじゃない。

すべてなんだ。

今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月16日日曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

高いところには行けなくとも、

上向きにはなれる。


誰でも、どんな状況においても。

今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第429号『折れた竜骨』

週刊 お奨め本
2011年1月16日発行 第429号


『折れた竜骨』 米澤穂信
¥1,800+税 東京創元社(ミステリ・フロンティア) 2010/11/30発行
ISBN978-4-488-01765-1


米澤穂信のミステリです。
今まで現代日本を舞台にした作品ばかりだった米澤穂信が、十二世紀末のヨーロ
ッパを舞台にしているという、それだけで仰天。しかも、ページを開いてみれば、
そこは魔術や呪いが存在する世界。いったいどんな物語が始まるのか! わくわ
くして読みました。
そんなわくわくを裏切りません。


イングランドの王位争いがリチャード王の王位就任によって決着したのも束の間、
リチャード王は十字軍に遠征に出、イングランドに国王不在が続く不安定な時代。

ロンドンから海路三日はかかるソロン諸島。
小ソロン島とソロン島からなるこの地の、領主はローレント・エイルウィン。小
ソロンに居を構える。小ソロンとソロン島の間の海は浅瀬が多く、島でただひと
りの渡し守でなければ渡れない。その渡し守も日が落ちてからは舟を出さない。
夜の間は誰も入り込むことはできないはずの小ソロン。

ある日、騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士ニコラ・バゴが領主を訪ね
てくる。
暗殺騎士が領主を狙っている。その暗殺騎士を我々は追っているのだと。
その晩、領主は小ソロンの館の一室で健で胸を突かれて殺される。…

領主の娘、アミーナは、ファルクとニコラとともに、犯人を追う。

この物語の世界には、魔術がある。呪いがある。

呪われたデーン人。切っても突いても血さえ流さず、食物も飲み物も不要、老い
ることはなく、爪も髪も伸びない。デーン人がソロンを狙っている。

暗殺騎士は、魔術によって人を操り人形《走狗(ミニオン)》にして、殺人を犯
させる。《走狗》は自分が魔術にかかったことに気づかず、人を殺した記憶もな
い。


もちろん、魔術がある世界だからといって、魔術のひと言ですべてが説明できて
しまうような非論理的なことはありえない。
なんといっても米澤穂信だし。
むしろ、こういう特別な設定の特殊世界だからこそ、ルールがはっきりして、論
理性が際立つともいえる。


> 「何も見落とさなければ真実は見出せる。理性と論理は魔術をも打ち破る。必
> ず。そう信じることだ」(100頁)


設定こそ魔術が跋扈する中世ヨーロッパだけれど、実は正統派本格推理。
実際、終盤には名探偵物のお約束、「名探偵 皆を集めてさてと言い」シーンも
あるし(笑)。

こういう特殊設定ミステリというと、私は条件反射で西澤保彦を思い出します。
『七回死んだ男』『人格転移の殺人』『瞬間移動死体』etc…
大好きなんですよ!
本書のあとがきでも、米澤自身、西澤保彦に触れています。ちょっと嬉しい。


ファンタジー風味の本格ロジック。
おいしいとこどり。


ところで、今週のメルマガは、どっちを紹介しようかとかなり迷ったのです。
この本と、木内一裕の『キッド』と。
『キッド』は、二十歳のあんちゃんがついつい首を突っ込んでしまった事件に
振り回されるジェットコースターノベル。すっごくテンポがよくて、面白くっ
て、軽快で、とにかく爽快! すかっとしたぁ! 
よろしかったらこちらも是非!


『折れた竜骨』 米澤穂信

第345冊 南條範夫「日本史の謎と真説」

  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 345 冊
              
                       2011.1.15
              
          
          
【1】読書感想 (第345冊)
  
南條範夫  「日本史の謎と真説」  銀河出版

お正月のような長期休暇は、少し分厚い本を読む事にしている。
電車の中で単行本を片手にして読むのは手が疲れ、薄めの文庫本がありが
たい。
しかし長期休暇は家でゆっくり読め、特に長風呂の大好きな私は本や簡単
な料理を持ち込んで一時間以上風呂に浸かるのが楽しい。

大好きな南條範夫を半年以上御無沙汰にしていたのに気付き、単行本と新
書判の中間くらいのサイズの本書を手に取った。
南條氏が日本史の数々の謎を採り上げ、更に真説を披露する。
考えただけでもワクワクする構成の題名。
大和朝廷から明治維新まで全39章と、書名に偽りはなかったが、期待した
ほどの真説は無かった。

そう、真説。
新説では無いのだ。
日本史の数々の謎を提示した本は多い。
そして俗説や一般に流布された話をした後、実際はこうだったと説明が入
る。
しかしあくまでそれは「真実の」説=真説であり、「新しい」説=新説で
はないのだ。
歴史初心者や中級者には勉強になろうが、歴史本を何十年と愛読してきた
人にとっては、謎も知ってりゃ真説も大体聴いた事がある。
ときどき南條氏ならではの視点と考察が面白いが、大体はフンフンなるほ
どと読む内容が多かった。

そうは言っても敬愛する作家南條範夫。
彼がこれまで書いてきた得意分野では滅法筆が走ってるのが判った。
源鎮西八郎為朝、真田幸村、没落した武将のその後、西郷隆盛と伊藤博文。
上記については特に著者独自の知り抜いた情報が開陳され、内容も深かっ
た。
少しディープな人物として、光厳帝のその後を追った内容は初めて読んだ。
福山城の「淀殿の湯殿」事件も私にとっては初ネタで面白かった。
他にも宮本武蔵・二刀流の真相や、坂本竜馬暗殺犯の考察など、他の作家
とはちょっと違う内容も多々あった。
もっとも意気込んで展開した真説は、西郷隆盛についてだろう。
これはなかなかの真説だと思った。



南條範夫  「日本史の謎と真説」

2011年1月15日土曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

願いが叶うまでのプロセスを楽しめないなら、

願いなんて持たない方がいいと思う。

2011年1月14日金曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

根拠のない不安の後に、

根拠のない自信がくる。


今日もただ、根拠をつくっていくだけだ。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。ミステリーの書き方

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆話題の小説系



ミステリーの書き方  日本推理作家協会
¥ 1,890  幻冬舎 (2010/12)



なぜこんな本を読んだのか、自分でもわからないんです。だって
あたし、普段からミステリーなんて、そう読まないんですもの。

もちろん書く予定なんかもぜんぜんないわ。刑事さん、私の中の
虫が騒いだんです。たるんだ腹の中にいる、活字中毒の、虫。

手にとって、面白かったから読んでしまった。まるで光におびき
寄せられる虫のように。ハッ、わかったわ。私、虫なのね、虫並
みの脳みそしかないということなのねサヨウナラ刑事さん…。

と、まあ、崖から身投げしてもいいくらい、不思議なチョイスだ
と自分でも思う。でも面白かった。だからいい。

現代日本を代表するミステリー作家137人が、創作に対する思い
を語っている。

テーマはそれぞれにある。プロットの立て方だとか、キャラク
ターの描き方だとか。文体についての意見もある。しかし私の印
象としては「好き勝手しゃべってるなあ」という思いが強い。

皆書くことが好きで、こだわりを持っていらっしゃる。そのこだ
わりを、余すところなく語りつくしたのが本書と言っても過言で
はないだろう。二段組、480ページ。圧巻。

例のごとく独断と偏見で、コメントを取り上げてみる。

・冒険小説の取材の仕方 船戸与一

ストーリィもプロットも決めずに現場へ行く。写真も撮らない。
メモも不要。書くときも、完全に物語を決めて書き始めるわけで
はない。

取材の旅で出会った人たちをデフォルメした登場人物が、こうし
てくれと語りかけてくる。

・ブスの視点と気持ちから 岩井志麻子

世の中には四種類の人間がいる。1、人から好意を向けられてい
て、気づく人。2、気づかない人。3、人から好意を向けられて
いないことを、気づく人。4、気づかない人。

小説家に向いているのは3のタイプの人ではないか。

・書き出しで読者をつかめ 伊坂幸太郎

アマチュア時代に書いた文を例として。冒頭で読者を驚かせるこ
とに腐心した。本屋にずらりと並ぶ本の中で、自分の本を手に
とってもらえる工夫がしたかった。誰かに届けたいという思いが
ある。

・手がかりの埋め方 赤川次郎

ミステリーを書いて一番苦労するのは、トリックや、どんでん返
しを考えることではなく、手がかりをいかにして、読者の目につ
かないように、かつ記憶の隅にとどまっているように書き入れる
のか、ということ。


本当に、どの作家さんもプロットにも、トリックにも、文章にも
思い入れを持っていらっしゃる。「!」や「?」、「…」の使い
方にも、それぞれの個性があった。ミステリーファンなら読んで
損なし、の一冊。

トリックについての解説、綾辻行人さんのは、私にはよくわから
んかったけど、マニアックで面白い雰囲気はビシバシ伝わってき
たよ。

では最後に、帯に書かれている、東野圭吾さんの名言を。

「どうやって作品を生み出しているのか。一言で言えば、苦労し
て、です」

だよなあ! みなさま、楽しい作品をありがとうございます!

ミステリーの書き方

2011年1月13日木曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

最初だけは偽善でもよいと思う。

ひたむきに続ければ本当の善になる。

続けなければ。

今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。日本映画空振り大三振

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆世間話、時事ネタ系

日本映画空振り大三振  柳下 毅一郎 江戸木純 クマちゃん
¥ 1,575  洋泉社 (2010/6/2)

毒舌映画評論。昨年末に公開された「ゴースト」が入っていない
のが惜しい。(同年6月の発行だから、仕方ないんだけど)

柳下氏、江戸木氏はともに映画評論家。クマちゃんとは、謎の着
ぐるみ人物(?)なのだそうだけど、映画をよくご存知の方のよ
うだ。

お三方とも知識豊富な語りなので、面白いだけでなく、勉強にな
ることも多かった。

・釣りキチ三平

田舎で釣りばかりしている三平くんを、香椎由宇演じる姉が連れ
戻しにやってくる。しかし姉は釣りの面白さに目覚め……。

と、言ってみれば「釣りキチ由宇」というべき映画だった。自然
の光景も魚もすべてCG。原作の生き生きとした様子が伝わって
こない。

魚紳さんはトラウマを抱えた変態みたいだし、三平くんはやたら
と「キャッチ&リリース」を強調するし、エコやら何やら小細工
が多かった。

釣りの楽しみを描ききった原作の楽しさを、素直に表現するだけ
ではいけなかったのか?

・アマルフィ 女神の報酬

日本人の少女が誘拐されるサスペンス映画、のはず。

だが基本的には観光地ばかりをめぐる旅になっている。誘拐犯が
なぜか、なぜなのか、取引場所に観光地を指定してくるせいだ。

世界遺産の土地もあるので、当然アクションシーンは撮れず。
アマルフィの土地自体も、最後に空撮でちょろっと流されるだけ。

誘拐犯の目的もよくわからなくて、主演の織田裕二さんに諭され
てあっさりと犯行を中止してしまう。七年かけた計画なのに、
「殺して何になる?」と言われて「わかったよ」と納得。そんな
素直な犯罪者、いるか!

しかしよくわからんな。原作を読んだけれど、それなりに面白い
話だったと思う。原作者が脚本も書いたはずだったけど……。

と、思っているとこんなことが書かれていた。

「この映画には脚本家のクレジットがない。原作者が脚本も書い
たのだが、現地の撮影状況から原作どおりにいかなかったことも
あり、原作者が(名前を載せるのを)辞退した」

ぐだぐだですやん。

・剣岳 点の記

明治のお話だ。陸軍測量部と、山岳会の人間が競い合いながら剣
岳初登頂を目指すという物語。

映像がすごい。「CGを使わない」というのが監督の信念であっ
たので、雪山の迫力ある映像が楽しめる。また、物語も実に真面
目で、人が死んだり、滑落があったり、わざとらしい見せ場は作
られていない。

しかしそれがもったいないとも言える。映像ありき、物語の筋が
弱く感じられてしまう。

実はこの映画、高山が撮影現場であったため、誰も脚本を持って
来ていなかったのだそうだ。荷物を極限まで軽く。役者さんも、
監督さんも、誰一人脚本を見ずに撮影が進んだ。ドキュメンタ
リーと言うのがいっそ正しいかもしれない。

ただクライマックスの、登頂の場面がなかったのが残念。寒すぎ
て機材も凍ったか?


槍玉に上がる映画は全部で46本。GOEMON、ルーキーズ、蟹工船、
真夏のオリオン、いろいろ、たくさん。

昴。超酷評だったけど、かえって観たくなった映画だ。バレエ映
画であるらしいんだけど、それがストリップ・バレエという珍妙
なものなんだそうだ。

主人公が目隠しをして町を歩き、踊りの練習とする場面もある。
一昔前の少年漫画みたいな特訓が行われるとのことだ。すごいな
あ。いい大人が真面目にそんな映像を撮っているなんて。

本も映画も、ご興味のある方はぜひ。

日本映画空振り大三振 ~くたばれ!ROOKIES (映画秘宝COLLECTION 41)

2011年1月12日水曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

言うは易し。

行うは難し。

認められるは更に難し。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。みんなでニホンGO!

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆世間話、時事ネタ系



正しい日本語は本当に"正しい"の? みんなでニホンGO!
オフィシャルブック
¥ 1,365   祥伝社 (2010/7/27)
NHK「みんなでニホンGO!」制作班著



NHKのテレビ番組をそのまま本にしたものらしい。アマゾンのレ
ビューでは、そのことに関しての苦言が呈されているが、見てい
ない私にとってはとても面白い内容のものだった。

取り上げられていた言葉遣いが、私自身、気になっていたものば
かりだったからだ。

別に目くじら立ててどうのこうのと言うつもりはないが、なんと
なく違和感を感じる言葉遣い。そんなものが多かったので、例の
ごとくへえへえふうんとうなずきながら読み進めることができた。

言葉遣いの変化=悪という考え方はされていない。言葉は移り変
わるものという前提で、その経緯を理解し、新しいものも受け入
れましょうというスタンスだった。好感触。

面白いネタがたくさんあった。

「人」は実は、人間が横を向いた姿をかたどった象形文字である。
支え合って人というのは間違いだった。〜っしょ、というのは北
海道弁。うざったいとはもともと八王子近辺の方言であったのだ
が、大学が郊外に移転するに従って、若者に話されるようになっ
た、などなど。

では、私が選ぶ「気になる大賞」を、本書解説の中から選んでご
紹介してみたいと思います。ちなみに「大賞」は二つあるのです
が、その辺は曖昧に笑ってごまかすつもりです。ご理解ください。

・させていただく。

最近では「やらさせていただく」「名乗らさせていただく」など、
余分なところに「さ」を入れて話す人が増えた。
(本来は「やらせていただく」「名乗らせていただく」)

過剰矯正と言われるものだ。緊張のあまり、丁寧に喋ろうと力む
あまりに、文法を超えた表現になっている。

しかしこの言葉を使う政治家が増えている。国会会議録検索シス
テムという、国会議員の発言を記録したデータベースで調べると、
90年以降この「さ入れ」言葉が急増しているとわかる。

政治家の言葉は社会の変化を表す鏡。今後はこの「さ入れ」言葉
が常識になると考えられる。

ちなみにこの「させていただく」は、近江商人が使い始めた言葉
だ。他人に感謝し、おかげさまの精神を表す商人言葉だった。

・ヤバイ

江戸時代にできた「ヤバ」という言葉が語源になっている。牢屋
のこと。危ないという意味で、使う人はごく少数だった。

しかし近年、ヤバイはプラスの意味で使われている。このラーメ
ン、ヤバイ、と言えば、若者はそれがおいしい、うまいと受け取
るはずだ。

マイナスからプラスへ。「ヤバイ」は進化、成長する語である。

似たような例は各国に見られる。スペイン、モンストロとは化物
の意味であった。だが最近ではフラメンコがうまい人、ギターを
弾くのが上手な人がこう称される。

韓国ではチョギンダ。もともとは殺すという意味だったが、殺人
的においしい、楽しい、という意味に。

古くは英語のナイスもそうで、ナイスの語源はラテン語のネスキ
ウスだった。愚かという意味である。それが変化し、今ではよい
意味合いでしか使われることがない。

こう見ていくと、人の考えなんて似たり寄ったりで、面白いと思
うな。


テレビの内容を、本当にそのまま本にしたものらしい。出演者の
船越栄一郎さん、山崎弘也さん、松本あゆ美さんらのトークが楽
しく文字に起こされている。気楽に読めることうけあい。

以前読んだ「日本人の知らない日本語」でも、言葉は変化するも
のだと書かれていた。

「前向きに」理解して、受け入れていきたいな。

正しい日本語は本当に“正しい”の? みんなでニホンGO!オフィシャルブック

2011年1月11日火曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

力を抜いて手を抜かない。

その意味とコツがだんだんつかめてきた。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。クスリごはん─おいしく食べて体に効く!

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆生活、ほっこり系

クスリごはん─おいしく食べて体に効く!  ¥ 1,155
ヘルシーライフファミリー   リベラル社 (2010/08)

漫画、イラストで紹介する体によい食べ物、レシピ。おばあちゃ
んの知恵という感じ。病院に行くことももちろん、とても大切だ
けれど、こういう日々の心がけも大切にしたい。

登場人物は主婦のケロミさん、夫のヒロさん、元気なお姑さん、
小さな女の子ブーリンと、その弟ダイちゃん。にゃんこ先生とい
う猫もいて、人間の食べ物を虎視眈々と狙っています。

ごく一般的な家族が経験する体のトラブルと、その解決法を漫画
で紹介するというやり方。絵がかわいいので楽しく読める。

・ブーリンが風邪をひいた。

おばあちゃんが冷蔵庫を探す。出てきたのは大根と蜂蜜。大根を
1センチ角に切り、蜂蜜につけて咳止めシロップの代わりに。一
晩つけるとさらに効果的です。

かるい鼻づまりにはごま油を。綿棒につけて鼻腔につけてやると
よい。ねぎと豚肉の炒め物、玉ねぎ入りのスクランブルエッグな
どもいいよ。

・ヒロさん激務で疲労困憊。

肩こりにはグレープフルーツ。クエン酸がよい。その意味では梅
もとりたい食品だ。山芋にあえたり、豚肉のソテーの味付けにす
ると食べやすい。

豚肉のソテーは、フライパンで焼いた豚肉にみりんを混ぜた梅肉
を乗せ、オーブントースターで軽くあぶって作る。

ストレスにはくるみトースト。食パンの上にスライスチーズと刻
んだくるみを乗せて焼く。

不眠にはホット豆乳ミルクを。温めた豆乳に蜂蜜を混ぜるのがコ
ツ。チーズも効果的なので、茹でた人参にたらこ、チーズ、ごま
をまぜたものをあえるのもおいしい。

・ご馳走を食べて胃がもたれた。

カブおろしが口にやさしい。大根おろしとは違って辛味がないか
ら子供でも食べられる。レモンをしぼって、うどんに乗せても
さっぱりといただける。しらすを混ぜるのもあり。

お通じが悪くなったときは、小豆やごぼうをたくさん取ろう。ご
ぼうと人参の煮物、さつまいもと小豆の煮物など。

バナナラッシーはおいしく飲める。バナナ、ヨーグルト、牛乳、
蜂蜜をミキサーでかき混ぜる。おやつにもいいかも。

口内炎にはナスとトマトのラタトゥイユ、腰痛にはニラ玉、メタ
ボが気になるなら小豆ご飯、痔にはほうれん草炒め、食中毒には
シソジュース、下痢には蜂蜜緑茶、貧血には梅こぶ茶。


実家では、冬になるとオカンが必ず大根の蜂蜜漬けを作っていた。
咳をすると、汁をお湯で割ったものを飲まされていた。

これで完治というものではもちろんないよね。それはわかってる。
だけど知っていたら、気をつけて取りたいなと思うものが多かっ
た。

民間療法、先にも書いたけどおばあちゃんの知恵みたいなものな
んだよね。高価で難しい本だったら遠慮したいけど、親しみやす
く、お値段も手ごろ。これなら手元に一冊備えておいてもいいか
なあ、と思える本だった。

症状ごとに分類がされていてわかりやすい、探しやすい。凝った
レシピではないので、体が弱っているときでも作るのが楽。あり
がたい。

お正月のご馳走疲れの体には、大変優しく、役に立つ一冊。

クスリごはん─おいしく食べて体に効く!

2011年1月10日月曜日

第344冊 下田治美「愛を乞うひと」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 344 冊
              
                       2011.1.10
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【1】読書感想 (第344冊)
  
下田治美  「愛を乞うひと」  角川文庫

幼児期、主人公が母から凄惨な折檻を何度も受ける描写が激しすぎて、
衝撃を持って受け留められた作品。

この作品を読んで考えるに、二つの見方がある。
著者自身の実体験を赤裸々に描いたものなのか、純粋に創作なのかだ。
相当リアルな描写が理不尽なほど続き、その細かい描写は想像力を超え
た迫真性がある。

現実にあった話って意外と「?」となる行動や展開が多く、もっと感動
作品に仕上げる事も出来ただろうに、敢えて突き放したような動きに
なっているのはこのためじゃないだろうか。
本作での結末はどちらにも受け留められるような、母と娘の関係がどう
なったか、否、どうにもならなかったような、幾通りにも想像できる
不思議な結末。

いずれにせよ、強烈な印象が残る力作だと感じた。



下田治美「愛を乞うひと」

No.382 熊谷達也「いつかX橋で」→ 3点

熊谷 達也「いつかX橋で」→ 3点
発行元 :株式会社新潮社
初版発行:2008/11/20
熊谷 達也(クマガイ タツヤ)

あらすじ

太平洋戦争末期。
仙台大空襲で家も親兄弟も失った裕輔は、特攻隊帰りの彰太と出会い、
「いつか仙台駅前のX橋に大きな虹を掛けよう」と誓い合う。

生きるための毎日はつらいことも多かったが、親切な「徳さん」と出会っ
たことによって少しずつ生活の基盤を確かなものにすることができた。
しかしある日・・。
戦後の混乱期に、無一文から逞しく生き抜く若者たちの群像を描く。

コメント

血迷うたか熊谷達也!と言いたくなるほどのバッドエンド。
登場人物の誰もが素敵で、散々っぱら共感と感情移入をさせておいて、
最後に奈落へ突き落とされた。

熊谷氏が優れた作家であることは疑いないが、本作の「第5章」だけは
断じて許せない。
私が独裁者だったら強権を発動して書き直しを要求するところだ。
丁寧に作られたケーキを足元に叩きつけるような、精魂込めて描かれた
絵画にペンキをぶっ掛けるような実も蓋もない結末で、読後感は最悪
だった。

現実が厳しいのはよく分かっているが、だからこそ小説の世界では美し
い結末を求めたかった。
熊谷氏は何が言いたくてこの小説を書いたのだろうか。
ひょっとすると、第4章を書き終えたところでヨメに逃げられたとか人
に騙されたとか、熊谷氏がウツ状態になるような何かが起こったのかな、
とすら考えてしまう。

途中までは非常に気持ちよく読み進められただけに残念無念だった。
小説のレベルとしてはもっと上だが、そういうことで怒りの3点。

熊谷 達也「いつかX橋で」




0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

現状に、

心からめいっぱい満足しよう。


今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月9日日曜日

第343冊 宮下誠「カラヤンがクラシックを殺した」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 343 冊
              
                       2011.1.9
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【1】読書感想 (第343冊)
  
宮下誠  「カラヤンがクラシックを殺した」  光文社新書

題名に、著者の思いが籠められている、それが全て。

クラシック音楽界とレコードCDを詰まらなくさせてしまった最大要因は
カラヤンであり、彼をギュウギュウに締め上げる事に徹している。
一方、大好きなクレンペラーとケーゲルの音楽に各一章を割き、対比させ
る事で均整を取ろうとしているが、既に結論は決まっているので鼻白んで
しまう。

ちなみに、私もケーゲル旋風を浴びた世代で、許光俊の名文でケーゲルに
出会ったクラヲタは多いだろう。
だからこそ、彼が言いたい事、現代クラシック界を嘆く心意気は判るが、
こうまでカラヤン独りを貶めると戴けない。
カラヤンだけでなく、小澤征爾、レヴァイン、プレヴィン、ビシュコフ、
シャイーといった高収入を得ているが面白みに欠ける有名指揮者はゴマン
といる。
カラヤンと似たような路線を歩き、華やかな音響とハーモニーを重視した
才能の無い後継者たちを手付かずでは、腰が引けていると感じてしまう。
カラヤン批判は免罪符がばら撒かれた現代、その後継者も批判する勇気が
欲しい。

私はクレンペラーを聴かないので語れないが、ケーゲルなら多くを聴いて
いる。
だからこそと言おうか、彼のケーゲル感想とはあまり一致点がなく、ケー
ゲル大好き同士なはずなのに、こうも受け留め方が違うのが違和感だらけ。
それゆえ彼のカラヤン批評はあまり共感できず、「カラヤンがクラシック
を殺した」というお題目には否を唱えないけれど、各論には不満と苦笑の
連続だった。
大仰な形容詞やドイツ現代美術を基礎とした比喩が多く、煙に巻く酔い痴
れた文体も気に喰わない。

ただ寝覚めが悪いのは、著者は2009年50歳にも満たずに急死している事。
死んだばかりの人に対して、率直な感想を述べるのは酷いのだろうが、
820円も出して本書を購入したのだから、本音を少しだけ書きたかった。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

この世には、

自分にしかできないことが

もっともっとあるはずだ。


今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第428号『空白の五マイル』

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週刊 お奨め本
2011年1月9日発行 第428号
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『空白の五マイル』 角幡唯介
¥1,600+税 集英社 2010/11/22発行
ISBN978-4-08-781470-5
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副題:チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む
第八回開高健ノンフィクション賞受賞作


著者の角幡唯介は、早稲田大学探検部出身。
本書の内容は、ずばり「探検」です。
いまどき珍しいくらいの、直球で探検です。


探検とは言っても、そもそも、グーグルアースが砂漠の真ん中だろうがどこだろ
うがクリックひとつでPCに映し出してくれる時代、探検にふさわしい場所がこの
地球上に残されているのだろうか?
角幡も、まず大学時代にまずそこで躓いた。

「世界の可能性を拓け」という挑発的なあおり文句が書かれた探検部のビラに、
人生に対する渇望感を満たしてくれそうな期待を抱いた。
入部し、いつか訪れる本格的な探検に備えて登山に明け暮れたが、問題は、どこ
を探検すればいいのかわからないということだった。


欲求不満を募らせた大学四年時、角旗はたまたまツアンポー川の探検の歴史を
書いた本と出合う。
ツアンポー川はチベット高原を横断しインドへ流れ込む、長さ2900キロに及ぶ
アジア有数の大河である。チベット高原を西から東へ流れた後、ヒマラヤ山脈
の東端の二つの大きな山に挟まされた峡谷で流れを大きく南に旋回させる。
18世紀から19世紀にかけて、この川がヒマラヤ山中に消えたあと、どこに流れ
るのかまったくの謎だった。インドに流れ込むというのも当時はまだわかって
いなかった。

19世紀後半から20世紀にかけて、伝説的な何人かの探検の結果、ツアンポー
峡谷で未踏破の区間はわずか五マイル、約八キロにすぎなくなった。


ファイブ・マイルズ・ギャップ。
空白の五マイル。
この美しい響きの言葉がツアンポー峡谷にロマンを与えた。


角幡もまた、この五マイルに魅せられた。

2002年。探検家を夢見て就職せずにいた角幡は、二十六歳にして就職が決まった。
入社するまでの半年ほどの時間を利用し、ツアンポーを目指した。
今しかない、と思った。


> 挑戦しないままこの後の人生を過ごしても、いつか後悔する。今考えると、そ
> んなヒロイックな気持ちが当時の私にはたしかにあった。自分でも死ぬかもし
> れないと思う冒険をなぜおこなうのか、その心境を言葉で説明することはとて
> も難しい。人はなぜ冒険をするのだろう。私はなぜひとりでツアンポー峡谷に
> 行かなければならないのだろう。(21頁)


死にそうな目に遭いながらも、角幡はこの探検で空白の五マイルのほとんどの踏
破に成功した。自分の目で確認できなかったのは、距離にして合計わずか二キロ
かそこらにすぎない。
この成果に概ね満足して、帰国した角幡は、朝日新聞社に入社した。

しかし新聞記者を続けるうちに、再びツアンポーへの思いがじわじわと重みを増
してくる。もっと深いところでツアンポー峡谷を理解したい。もっと奥深くへ行
って、どっぷり漬かりたい。もっと逃げ場がない旅がしてみたい。
ついには退職し、再びツアンポーへと向かう。


ところがタイミング悪く、2008年北京五輪とダライ・ラマがチベットに亡命して
五十年目というタイミングに当たり、チベットでは大規模な抗議暴動が起きた。
外国人のチベット入域は極端に制限され、角幡は無許可でツアンポーに向かうこ
とに。


とまあ、ツアンポー探検の歴史と、角幡自身のツアンポー行とが語られ、にわか
ツアンポー博士になれます(笑)。
会社を辞めて無許可で向かったツアンポーでは、またまた死の危険と隣り合わせ。
読みながらぞっとするような危機を迎えます。
この本が出てるんだから、ここで死んだんじゃないよな、生還したんだよな、と
思いながらも読んでてどきどきしましたよ。


そんな「これぞ探検!」な探検記。
これからの時代、こんなオーソドックスな探検記はどんどん珍しくなっていくん
でしょうね。
だからこそ、この本が新鮮なのです。


『空白の五マイル』 角幡唯介

2011年1月8日土曜日

「同人誌ができるまで」のムービーを印刷所が公開、製本の様子などが紹介される

「同人誌ができるまで」のムービーを印刷所が公開、製本の様子などが紹介される: "昨年末(12月29日~12月31日)にかけて行われた世界最大級の同人誌即売会「コミックマーケット79」のように、同人誌が販売されるイベントは数多くありますが、実際に同人誌を印刷している様子が印刷所によってムービーで公開されました。

印刷から出荷までの一連の流れが軽快な音楽と映像で紹介されており、普段同人誌を手がけているサークルはもちろん、購入する側にとっても貴重なムービーとなっています。

詳細は以下から。

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双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

人間が言う正しさとは、

都合がいいかどうかのことである。


今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月7日金曜日

こんな本読んだよ!1101070241

フリーター、家を買う 有川浩 幻冬舎

大学卒業後就職した会社を三ヶ月でやめてしまった誠治。その後だらだらとバイトで食いつなぐ毎日。父親とも険悪な関係に。
しかし、母親のうつ病をきっかけに一念発起して再就職。父親と協力して母親のために家を買う。
ドラマにもなった話題作。おもしろかったですよ。

フリーター、家を買う。

本のご紹介です。歌うクジラ 下

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆話題の小説系

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歌うクジラ 下  村上 龍
¥ 1,680  講談社 (2010/10/21)

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棲み分けがなされていたのだった。格差が広がり、不要の争いが
生まれたが、棲み分けがなされると、社会は平和になった。

不老の遺伝子、SW遺伝子を組み込まれた富裕層の人々と、労働者
階級に属する人たちは、互いに別々の地域に住み接触を持たない。
貧しい人々は裕福な暮らしを知らないため、そこに悩みも妬みも
持つ必要がなかった。

アキラたちが訪れた労働者階級の町は「羊バス」と呼ばれていた。
その背後にある山を越えると、向こうは富裕層の住む地域だ。ア
ンジョウに導かれ、アキラ、アン、サブロウは未知の領域へと足
を踏み入れる。

金属の円盤の隙間から入り込んだそこは、人工的に無菌状態に置
かれた区域だった。実験だったのだという。

だが無菌状態で人が生きていけるわけもなく、そこに入れられた
大半の人が死んだ。生き残ったわずかな者が、水耕栽培で稲を
作って暮らしている。富裕層のための食べ物だ。

この社会では性犯罪が大きな問題となっている。下層階級は精神
安定剤でコントロールされており、平穏であるが、上層の人たち
の間ではその犯罪が耐えなかった。むしろエスカレートするばか
りだ。

無菌空間をさらに奥に進むと、性的欲求を覚えただけで全身が痛
むICチップを埋め込まれた男たちがいた。そこでは裸の女が見世
物としてさらされ、しかし男たちは触れることができない。

アキラはその場所で、アンを犯したい衝動に駆られる。彼は必死
で「想像」した。アンを犯して殺せば自分の旅はここで終わりに
なるだろう。具体的に未来を予見し、そうしてはいけないのだと
自らの衝動を押さえ込む。

欲望に打ち勝ったアキラのもとへ、サツキという老女が現れる。
かつてアキラを性的玩具として買ったことがある女だ。

彼女の案内で、アキラは一人上層の人たちが住む地域を進む。

動物として、原始に戻ることで理想社会を築こうとした人々の集
団を見た。病気になった老人たちが集められる洞窟にも入った。

老人の介護をしているのはロボットだ。ロボットの手で消毒され、
排泄を処理され、ただ生きているだけの姿にアキラは衝撃を受ける。

アキラの目的は、富裕層の男、ヨシマツに会うということだ。彼
に会うため、アキラは宇宙エレベーターに乗って地球の外へ出た。

選ばれた者たちは宇宙空間で暮らしていた。とうとう、目的の男、
ヨシマツに会ったアキラはこの世界の謎を知らされることとなる。

ヨシマツはSW遺伝子を持っている。人類の支配者と呼ぶべき人物
である。ヨシマツはかつて、性犯罪がはびこる社会を正すために
科学の力を用い、重大な損失を社会に招いた。

命を生む営みを、ヨシマツたちは制御しようとしたのだ。だがそ
れは失敗に終わり、女たちは子を宿すことがなくなった。

ヨシマツは命の誕生を、科学の手が及ばなかった下層階級の女た
ちに託そうとする。彼女らに自分たちの子供を生ませようとした。

アキラはそのような経緯で生まれた子であるという。ここまで来
るよう仕向けたのもヨシマツである。生まれた地から離れ、困難
を乗り越え、ヨシマツにたどり着くよう仕組まれていたと言うの
だ。

ヨシマツがそれを欲した理由。それはヨシマツがアキラの命を
乗っ取ろうとしたためだった。ヨシマツはもはや、体を失い脳し
か生きていない。ヨシマツの脳との同化を迫られたアキラは……。


管理社会と個、希望と絶望、暴力とセックス。村上龍さんらしい
物語だった。文章も濃く、緻密で体力勝負って感じで、ほんと、
堪能させていただいた。ありがたい、幸せだわ。

「恐怖は逃げれば逃げるほど追いかけてくる。向かい合えば自然
に消える」なんて、いつもの龍さん哲学も満載。お好きな方はぜ
ひどうぞ。

ただちょっと描写はグロテスクなので(私は気にならなかったけ
ど)、その辺は一応覚悟なさっておいてください。

間違っても、あのオシャレエコなカバーデザインにだまされて、
「クジラ? かわいくね? スピリチュアルっぽい話じゃね?」
なんて、安易な気持ちでは触れないように。

悶絶卒倒間違いなし! いろんな意味で危険です。

歌うクジラ 下  村上 龍

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

愚痴は、

発した自分の方向性が違っているという

ありがたい信号だ。

今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月6日木曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

自由とは、

ルールからはみ出した者ではない。


ルールをもてあそぶ者が勝ち取るものだ。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。歌うクジラ 上

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆話題の小説系

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歌うクジラ 上  村上 龍
¥ 1,680  講談社 (2010/10/21)

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2122年、タナカアキラは新出島を脱出し、本土へ向かおうとして
いた。

新出島とは九州北部に作られた島のことだ。昔、外国人を住まわ
せた土地にちなんで名づけられた。犯罪者が流される島である。
アキラは父の遺言を胸に、本土のある人物に会おうとしていた。

島にはクチチュという変異種の人間がいる。彼らはこめかみに開
いた穴から毒物を分泌する。アキラはクチチュの一人、サブロウ
という男と道行きを共にすることになった。また、アンという女
と知り合い、彼女の助けを得て本土へつながる橋を渡る。

2122年の日本は「文化経済効率化運動」なるものによって大きく
変えられていた。まず、非効率だからという理由で敬語が廃止さ
れた。

敬語を扱えるのは少数の人間しかいない。アキラはその一人だが、
それは父がサーバ管理というエリート職についていたからだ。父
のデータべースに触れることで、アキラは自然な敬語を覚えた。

だが、その父は殺された。「テロメア」を切られたのだ。

2122年は人の寿命を自由に操れる時代である。その発端となった
のは、2022年にハワイの沖でグレゴリオ聖歌を歌うクジラが発見
されたことだった。

そのクジラ、singing whaleは長寿の遺伝子を持っていた。略して
SW遺伝子。その遺伝子を組み込むことで、簡単に寿命を長くするこ
とができた。

同時に、命を永らえる遺伝子も発見された。その遺伝子、テロメ
アを切断されてしまうと、急激な老化が始まり死に至る。犯罪者
に適応される刑罰が、アキラの父にも下されたというわけだ。

本土に渡ったアキラはアンの導きのもとに、岡山を拠点とする反
乱分子の仲間に加わることになる。

反乱分子はもともと、外国から日本にやって来た移民たちである。
政府の圧制から逃れようとし、彼らは岡山にアジトを築いていた。

彼らの言葉は独自である。日本語からの独立を求めている。外国
人にとって難解である助詞をあいまいにすることで、彼らは彼ら
の言語を作り出そうとした。

「冗談ほどじゃないよ。おれたちがお前を信頼するから、絶対お
れたちが嘘を言うな」 移民の反乱分子達はこんな話し方をする。

アジトは自由だった。文化経済効率運動によって、日本の社会で
は食欲が悪とされている。楽しむ食事は罪悪なのだ。

人々は棒食と呼ばれるスティック状の食べ物を食べ、そこに入れ
られている精神安定剤によって管理されている。

だがアジトでは、メキシコ料理のナチョスが出された。アキラは
それを口にして不思議な興奮を覚えた。

移民たちは資金を得るために、ある取引を成立させようとしてい
た。だが時間に遅れ、中国人の罠に落ちる。移民たちは頭を割ら
れて殺されて、スープにされて食べられてしまった。

アキラを救ったのは、彼の脳に直接語りかけてくる謎の男の声で
ある。父の遺言にあった人物だ。アキラは彼に会わなければなら
ないし、彼もアキラをどこかで見守っている様子である。

生き残ったアキラはアンとサブロウを連れて、中国人の拠点から
脱出する。このとき、ネギダールという猿と人の混血女の飛行機
に乗って空を飛ぶ。この場面、爽快。

アキラは労働者たちの住む地域に下りた。劣悪な環境下で人々は
暮らしている。文化経済効率化運動の後、富める者は長い寿命を
手にし、いっそう裕福になった。だが貧しい人は命を削って働き
続け、希望のない生活を余儀なくされている。

ここでアキラはアンジョウという男に出会った。新出島にいた男
だ。アンジョウは新出島で、子供を裕福な老人に売っていた。性
の相手をさせていたのだ。

現れたアキラにアンジョウはおびえ、許しを乞うた。アンジョウ
は三人の子供と暮らしているという。子供たちは足に、歩くと痛
みを伴う輪をはめられていた。

以下下巻へ。

本日ご紹介の本はこちらから↓
歌うクジラ 上  村上 龍

2011年1月5日水曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

悔しさや恐れ、悲しみを完全否定することは、

半分、本能を捨てるようなものだ。

今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。自己信頼[新訳]

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆自己啓発系

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自己信頼[新訳]   ラルフ・ウォルドー・エマソン
¥ 1,260  海と月社 (2009/1/26)

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帯にあった「オバマ大統領座右の書」という文句に惹かれて読み
始めた。薄い本だ。字も大きい。

著者のエマソンさんという人は、19世紀のアメリカに生きた思想
家なのだそうだ。牧師の職を得たものの、形骸化した教会の教え
についていけず、野に下って己の思想を追求した。

形式を否定し、個人の中に神を見ようとした。世間体よりも己の
信念に従って生きることを是とした彼の教えは、過激なものとし
て批判を浴びたこともある。

この「自己信頼」は、彼のそういった思想をまとめたものだ。
エッセイ、散文のような感じ。これまでにも何度か邦訳されてい
るが、現代人に向けたメッセージとして新な訳本が出された。

以下、いくつか文章を抜き出してみる。

・世間の中にあって大衆の意見に従うことはたやすい。ひとりで
いるなら、自分の意見に従うのは造作もないことだ。偉大な人と
は、たとえ群衆の中にあっても、一人のときと同じ独立心を保ち、
にこやかな態度で人と接することのできる人である。

・社会に服従することを拒めば、世間の不興を買ってむち打たれ
るだろう。だから人は他人の表情を見て、相手の機嫌をうかがう
ようになる。

しかし世の人々の渋面は、そのやさしげな表情と同様に深い理由
などない。それは風がふくまま、新聞の論調にあわせて浮かんだ
り消えたりする。

・草の葉や咲きほこるバラを見ると、自分が恥ずかしくなる。

我が家の窓の下で咲いているバラは、過去のバラや、もっと美し
いバラを気にかけたりはしない。

これらのバラはあるがままに咲いている。神とともに今日という
日を生きている。これらのバラに時間はない。ただ、バラという
ものがあるだけだ。

・自分以外のものに依存している人は集団におもねり、数を頼み
にするようになる。政党はひんぱんに集会を開き、若い愛国者は
自分が前より強くなったように感じる。

しかし友よ! 神はそのようなやり方ではなく、まさに逆の方法
によってあなたの中に宿るのだ。

外からの支援をすべて退け、一人立つときにのみ、人は強くなり、
権利を手にする。一人の人間は、一つの町より優れた存在である
はずだ。

他人には何も求めるな。そうすれば万物流転の世にあっても、あ
なたは唯一不動の柱として、周囲のものすべてを支えるようにな
るだろう。


世間からはみ出すことを恐れるな。堂々と個人であれ。

そうエマソンさんは説くが、といって孤立、孤独の人ではなかっ
たようだ。思想家とも交流を深め、生涯の友情を誓った相手もい
る。

流されず、個と立って人と交われ、ということか。

大統領が読んでいるというのもうなずける。リーダーには必要な
心構えなのかも。

自己信頼[新訳]

第342冊 レスラー「FBI心理分析官2」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 342 冊
              
                       2011.1.4
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【1】読書感想 (第342冊)
  
レスラー  「FBI心理分析官2」  ハヤカワ文庫

1996年日本語訳単行本刊行、2001年単行本化されたから、もう十数年前の
ベストセラー。
プロファイリングという捜査技法ですっかり有名になった著者レスラー氏。
冒頭では、彼の近年の活動について言い訳めいた説明が続きうっとおしい
が、事件そのものに話が収斂されてゆくと内容も重くなってゆく。

全部で9章あり、つくば母子殺人事件という日本の事件解明から話は始ま
る。
ヴェトナム戦争での心的外傷後ストレス障害を含んだ様々な類型犯罪。
ハロウィン訪問で起こった誤射事件。
連続殺人事件の考察や、詳細なインタビュー。
英国と南アフリカの事例レポート、地下鉄サリン事件と続く。

前作の衝撃度には及ばなかったが、実際にあった事件をもとに意見開陳し
ている重みは大きい。
こういったノンフィクションは、感想如何より、読んでない人は読んでみ
てから、といった気持ちが大きい。
読んだ人ごとに感じたことや思うことは千差万別だろうし、ベクトルが
違えば意見交換にもならないだろう。
発刊後十数年も経ってようやく読んだわけだが、こういったベストセラー
は、まず読む方が先だったと思う。



FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記

FBI心理分析官〈2〉―世界の異常殺人に迫る戦慄のプロファイル

2011年1月4日火曜日

書籍を無料で電子書籍化してくれる代行サービス「SCAN48」

書籍を無料で電子書籍化してくれる代行サービス「SCAN48」: "2010年に大躍進したサービスの1つとして、本を送るとスキャンして電子書籍化してくれる「BOOKSCAN」がありました。基本は1冊100円、書籍を宅配便で送るだけという簡単手順で、PDF化まで3ヶ月待ちという大人気っぷりでした。

そんなBOOKSCANと同じように、書籍を電子書籍化してくれるサービスが「SCAN48」。こちらはなんと価格が無料だそうです。一体、どんなカラクリになっているのでしょうか……。

詳細は以下から。

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"

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

道を極めようとは思わない。

歩いた跡が道となるのだから。


今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月3日月曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

「だいじょうぶ」


最も美しい日本語のひとつ。

今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月2日日曜日

第341冊 原りょう「私が殺した少女」

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  乱読! ドクショ突撃隊♪    第 341 冊
              
                       2011.1.2
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【1】読書感想 (第341冊)
  
原りょう  「私が殺した少女」  ハヤカワ文庫

直木賞とファルコン賞をW受賞した、原りょうの代表作にして傑作。
原りょうの「りょう」は、「寮」のウ冠を取った字体であり、文字化けし
そうなので使用しない。

題名から邪推すると、ロリコン犯人の悪徳小説のように思えていたが、
内容は全く違う。
沢崎探偵が依頼主宅を訪問すると、突然誘拐犯の共犯者として逮捕されて
しまう。
何がなんだか判らない展開はまるで自分が沢崎探偵になっている様に同化
させてゆく。警察署で取調べを受け、事情聴取を受けている頃には完全に
小説にのめり込んでしまっている。
依頼主の娘、天才ヴァイオリン少女が誘拐され、沢崎探偵は誘拐犯の一味
と誤解されていたのだ。
誘拐犯からの相次ぐ指令で、事態は少しづつ見えてくる。
この読めば読むほど見えてくる展開がたまらん、これは最高に傑作だ。

ハードボイルドの権化のような作品。
探偵の行動や思考・会話は一言一句おろそかに出来ない隠し味があり、
三十分で二十ページしか読み進められない。
四百数十ページの長編なので、時間を見つけては読み進めたが、完読まで
に一週間も掛かった。
でも、この一週間は本当に有意義だった。
面白い本を読んでいる期間は、本当に楽しい。

著者の第一作「そして夜は甦る」は良さが判らなくて、自分には合わない
作家なんだろうと本作(第二作)を長い間放置していたんだが、こうも
素晴らしい第二作に出会えた例はない。
第三作も素晴らしければ著者が本物だという事だし、そうでなければ本作
「私が殺した少女」が本物という事になろう。

四百数十ぺーじあるのだが、どのページも目が離せず、淡々とジリジリと
話は進む。予想外の展開が多く、ストーリーは探偵の勘がことごとく当た
るのが有利だが、警察捜査と探偵単独捜査の対比によって違和感とまで感
じさせないようにしている造りが美味い。
誘拐となれば家族や親戚が重要な登場人物なのだが、最初から「変だな」
と思う動きをしている人物がいる。
えてしてこういう人物の動きは最小限の描写に留められており、ここに目
星をつけて読み、最終的にもクローズアップされてしまったのは残念だが、
何度も事件が解決しそうになる造りなので、その都度「読みが間違ってた
のか?」と混乱できて楽しめた。

ハードボイルドものは東直己や黒川博行などで好きだが、本作で一層好き
になった。
こういう「早く読めば良かった」と思える傑作に、今年は何冊出会えるだ
ろう。



私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

百年じっと願うより、

今、一歩踏み出す。

今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第427号『引かれものでござい』

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週刊 お奨め本
2011年1月2日発行 第427号
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『引かれ者でござい』 志水辰夫
¥1,600+税 新潮社 2010/8/20発行
ISBN978-4-10-398606-5
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今年最初のオススメ本は、時代小説から。
そういえば2010年の最初のオススメも時代小説でしたね。?田郁の『八朔の雪
 みをつくし料理帖』。ここ数年、時代小説好きなんです(笑)。


さて、『引かれ者でござい』。
『つばくろ越え』の続編、蓬莱屋帳外控シリーズ二作目になりますが、前作を読
まずとも、本書からいきなり読んでも問題ありません。ありませんが、やっぱり
順番に読んだほうがわかりやすくはあります。


蓬莱屋は飛脚問屋。江戸から届け先までひとりで運ぶという「通し飛脚」を考案
して名を売った。ひとりで走りぬく健脚、預かり物を守り抜く信用、飛脚を務め
るのは誰でもよいというわけではない。
蓬莱屋の飛脚の面々がそれぞれの仕事を通して関わったさまざまな土地、事件、
人…。

三篇収録の短篇集。

表題作の「引かれ者でござい」は、尊皇攘夷を騙る悪党浪人連中から放蕩息子の
身代金を要求された多賀屋の使いで、三百両を運んできた鶴吉の話。
「旅は道連れ」では仕事を終えて急ぎ江戸へ帰ろうとする宇三郎が、大雨で氾濫
した川で足止めを食らい、迂回路を求め峠を越えようとしたところ、思わぬ道連
れができ…。
「観音街道」は、むかし蓬莱屋で勤めていた次郎吉をふたたび飛脚仕事に誘うた
めにやってきた治助が、藩に締め付けられる炭焼き衆の反乱に巻き込まれる。

江戸時代を舞台にした小説、という時代小説のくくりのなかで、飛脚である彼ら
は江戸から離れて、地方を走る(『つばくろ越え』のほうでは江戸を舞台の話も
あるのだが)。
町人ではない、武士でもない、本来圧倒的多数であるはずの、農村、山村に生き
る人びとの暮らしをリアルに描く。
百姓も、炭焼きも、浪人も、抜け目なく、したたかに生きている。
ずる賢く、狡猾に、精一杯に、できるかぎりの手を使い、知恵を使い。
虐げられる民衆という姿とは遠い、そのありよう。
新鮮!


そしてなにより魅力なのが、志水辰夫の文章である。
美文であるというのと違い、流麗であるとかそういうこともなくて、むしろハー
ドボイルドな文体であるのは、かつて「シミタツ節」と呼ばれていた頃と通ずる。


ここ数年、めっきり時代小説を読む機会が増えました。
私の年齢がそうさせるという部分も無きにしも非ずなのではありますが、実際、
時代小説に優秀な書き手が増えている気がします。
もちろん、時代小説以外の分野でも、優秀な新人はどんどん登場していて、ベテ
ラン作家も新作をどんどん発表していて、だからつまり、分野に限らず読みたい
本に追われて嬉しい悲鳴を上げ続けている今日この頃であります。

発行人はたぶん、普通の方々よりも読書に充てる時間が多くて、その分たくさん
読んでいて、だからこんなメルマガを出しちゃってるわけですが、当然のことな
がらそれでも個人が読める本の数なんて高が知れてます。ほぼ一日一冊、年400
冊ペースで読んでいるにもかかわらず、読むのに追いつかない新刊の数よ! 読
みたいのは新刊だけじゃないし!
もっともっと読みたい、あれも読みたい、これも読みたい。

私よりもっと読書タイムが限られていて、その分読む本を選びたいと思っている
だろう皆さんに、「この本読んでる時間に別の本読めばよかった、もったいなかっ
た!」という思いをしなくてすむよう、おもしろい本をオススメしていきたいと
思っています。
……その「おもしろい」の基準が、上手くマッチするといいんですけど(^^;ゞ。


発行人の独断と偏見のセレクトが、皆さまのお好みと多少なりとも合いますように!


『引かれ者でござい』 志水辰夫