日本人はほとんどが、
江戸時代の殿様よりも贅沢だ。
なぜ身の回りにある
ありがたさを
忘れてしまうのだろう。
今日も一日味わいつくしましょう。
鬼平は面白いと書きつつ、前巻10巻を読んだのは昨年9月、
あれから4ヶ月も経っている。
もう少しテンポを上げた方がいいね、池波正太郎はこの鬼平だけにあらず、
剣客商売や梅安、真田太平記と大シリーズや大作が待っている。
少年時代司馬遼太郎で歴史小説に入門した者にとって、池波の酸いも甘い
もな世界はとっても楽しい。
4ヶ月ぶりとはいえ数ページ読み始めただけで、すぅっと鬼平の世界に
戻っていく。
「男色一本饂飩」「土蜘蛛の金五郎」「穴」「泣き味噌屋」「密告」
「毒」「雨隠れの鶴吉」の全7編。
初っ端の「男色一本饂飩」はドキっとする題名だが、実際の内容もかなり
きわどい。
歴史時代小説と男色は切っても切れないテーマで、戦国・江戸期は男色・
衆道が盛んだった。
武家ほどその傾向が強く、男色を絡めた作品も自然と多くなる。
本編ではサブキャラとして重要を成す兎忠が男色を狙われ危機を脱せるか?
とハラハラドキドキ。
鬼平は兎忠の操を信じてやるが、どうとでも取れる描き方をしてしまって
いる池波先生の容赦なさが怖い。
「土蜘蛛の金五郎」では、二人の「鬼平」が戦うという、ちょっと映像を
意識しすぎた面白作品。
ドラマ受けを想定して描かれたような気がするが、実際のドラマで是非
観てみたくなるシーンが出てくる。
冒頭の男色はお笑いで済ませられても、「泣き味噌屋」は悲惨の限りを
描いている。
愛する新妻を陵辱された泣き味噌な武士が、死んだも同然の気持ちで悪党
を一刀両断する話。
悪党は叩きのめし泣き味噌な汚名は晴らせるが、死んだ妻は帰ってこず、
後味の悪い作品も淡々と混ぜている。
極悪非道集団を取り締まる火付盗賊改め方に身を置いている、男達の戦慄
が実に伝わってくる作品が挟まれることで、鬼平の厳しい環境が作品をよ
りリアルに仕上げていると思われる。