2011年1月6日木曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

自由とは、

ルールからはみ出した者ではない。


ルールをもてあそぶ者が勝ち取るものだ。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。歌うクジラ 上

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆話題の小説系

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歌うクジラ 上  村上 龍
¥ 1,680  講談社 (2010/10/21)

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2122年、タナカアキラは新出島を脱出し、本土へ向かおうとして
いた。

新出島とは九州北部に作られた島のことだ。昔、外国人を住まわ
せた土地にちなんで名づけられた。犯罪者が流される島である。
アキラは父の遺言を胸に、本土のある人物に会おうとしていた。

島にはクチチュという変異種の人間がいる。彼らはこめかみに開
いた穴から毒物を分泌する。アキラはクチチュの一人、サブロウ
という男と道行きを共にすることになった。また、アンという女
と知り合い、彼女の助けを得て本土へつながる橋を渡る。

2122年の日本は「文化経済効率化運動」なるものによって大きく
変えられていた。まず、非効率だからという理由で敬語が廃止さ
れた。

敬語を扱えるのは少数の人間しかいない。アキラはその一人だが、
それは父がサーバ管理というエリート職についていたからだ。父
のデータべースに触れることで、アキラは自然な敬語を覚えた。

だが、その父は殺された。「テロメア」を切られたのだ。

2122年は人の寿命を自由に操れる時代である。その発端となった
のは、2022年にハワイの沖でグレゴリオ聖歌を歌うクジラが発見
されたことだった。

そのクジラ、singing whaleは長寿の遺伝子を持っていた。略して
SW遺伝子。その遺伝子を組み込むことで、簡単に寿命を長くするこ
とができた。

同時に、命を永らえる遺伝子も発見された。その遺伝子、テロメ
アを切断されてしまうと、急激な老化が始まり死に至る。犯罪者
に適応される刑罰が、アキラの父にも下されたというわけだ。

本土に渡ったアキラはアンの導きのもとに、岡山を拠点とする反
乱分子の仲間に加わることになる。

反乱分子はもともと、外国から日本にやって来た移民たちである。
政府の圧制から逃れようとし、彼らは岡山にアジトを築いていた。

彼らの言葉は独自である。日本語からの独立を求めている。外国
人にとって難解である助詞をあいまいにすることで、彼らは彼ら
の言語を作り出そうとした。

「冗談ほどじゃないよ。おれたちがお前を信頼するから、絶対お
れたちが嘘を言うな」 移民の反乱分子達はこんな話し方をする。

アジトは自由だった。文化経済効率運動によって、日本の社会で
は食欲が悪とされている。楽しむ食事は罪悪なのだ。

人々は棒食と呼ばれるスティック状の食べ物を食べ、そこに入れ
られている精神安定剤によって管理されている。

だがアジトでは、メキシコ料理のナチョスが出された。アキラは
それを口にして不思議な興奮を覚えた。

移民たちは資金を得るために、ある取引を成立させようとしてい
た。だが時間に遅れ、中国人の罠に落ちる。移民たちは頭を割ら
れて殺されて、スープにされて食べられてしまった。

アキラを救ったのは、彼の脳に直接語りかけてくる謎の男の声で
ある。父の遺言にあった人物だ。アキラは彼に会わなければなら
ないし、彼もアキラをどこかで見守っている様子である。

生き残ったアキラはアンとサブロウを連れて、中国人の拠点から
脱出する。このとき、ネギダールという猿と人の混血女の飛行機
に乗って空を飛ぶ。この場面、爽快。

アキラは労働者たちの住む地域に下りた。劣悪な環境下で人々は
暮らしている。文化経済効率化運動の後、富める者は長い寿命を
手にし、いっそう裕福になった。だが貧しい人は命を削って働き
続け、希望のない生活を余儀なくされている。

ここでアキラはアンジョウという男に出会った。新出島にいた男
だ。アンジョウは新出島で、子供を裕福な老人に売っていた。性
の相手をさせていたのだ。

現れたアキラにアンジョウはおびえ、許しを乞うた。アンジョウ
は三人の子供と暮らしているという。子供たちは足に、歩くと痛
みを伴う輪をはめられていた。

以下下巻へ。

本日ご紹介の本はこちらから↓
歌うクジラ 上  村上 龍