これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介
☆−−−☆−−−☆−−−☆−−−☆−−−☆−−−☆−−−☆
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
本日は ◆世間話、時事ネタ系
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
アフリカ 動きだす9億人市場 ヴィジャイ マハジャン
¥ 2,310 英治出版 (2009/7/14)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
著者のヴィジャイさんは大学教授。アメリカの大学で経営学を教
えている。インドの生まれ、商人の家庭で育った。
10年か20年前、同僚に「インドは世界的にも重要な市場になる」
と言って笑われた。だが現在、その言葉を疑う者は一人もいない。
ではアフリカはどうだ? ワールドカップが開かれたとはいえ、
未だ暗黒の大陸、戦争と飢餓の土地のイメージを持つ人が多いの
ではないだろうか。
著者はその目で確かめるべく、アフリカに渡り現地を歩いた。本
書はそのレポートである。実例、エピソードが多いので素人が読
んでも飽きない、わかりやすい。
もちろん数字や統計、難しいこともちゃんと書かれているのだけ
ど、本日このメルマガでは、印象深かったいくつかのエピソード
を取り上げてご紹介してみたいと思う。
・ブラックダイヤモンドなる層が現れている。「もう少しで中流」
というのが彼らの自己評価だ。懸命に働いて子供達にいい教育を
受けさせようとしている。家電、携帯電話などを買うのがこの層だ。
携帯電話をほしがる人、持つ人が増えている。中には友人数人で
一台の電話を共有している例もある。電話器を一台購入し、使用
するときは各自のSIMカードを入れて使う。
携帯電話を貸す「事業」もある。通話時間に応じて料金が課される。
・アフリカには9億人の市場がある。若年層が多く、しかも年々増
加している。幼児、子供向けの商売の機会があふれている。イン
フラも弱く、その需要は巨大である。
金融関連の伸びも期待される。未だ全家庭の20パーセントほどしか
口座を持っておらず、欧米各国の銀行はこれを狙っている。もちろ
んアフリカの銀行も着実に成長しており、国を超えてのサービスが
受けられるものもある。
金融機関では、携帯電話の画面で操作ができる電子マネーを取り入
れるところがある。近くにATMや営業所がなくても利用できるた
め便利で、多くの人に受け入れられている。
・欧米企業はアフリカの文化、宗教に即した商売を展開している、
取り組んでいる。たとえばP&Gは、イスラム諸国の女性が髪の悩
みを持っていることに目をつけた。
ヘッドカバーをかぶっているので、汗をかきやすく、髪が傷みがち
になる。洗浄力の強いシャンプーを売り出してヒットした。
また「小分け作戦」も有効な手段である。たとえば石鹸、洗剤など、
貧困層はまとめて買うことができない。計り売りが伝統としてある
地域でもある。
なじんでもらうために洗剤を小袋に分けて売り、暮らしの中に浸透
させようとしている。
・チーター世代と呼ばれる若い世代の台頭がまぶしい。年配の人た
ちが唱えるのは貧困、帝国主義への反対である。だが若い人たちは
経済発展を純粋に追い求め、親の世代からの期待もその肩に担って
いる。親世代はこの子供達にいい教育を受けさせようと必死だ。
・映画はノリウッドで生み出される。ナイジェリアの映画産業をこ
う呼んでいるのだ。
安い予算で多くの映画が作られる。就労人口は100万人を越え、同
国では農業に次ぐ大規模産業である。質が良いとはまだ言えない状
況であるが、続々とスタジオが建てられている、今後が楽しみな産
業である。
・在外アフリカ人も今後の起爆剤になると考えられている。たとえ
ばアメリカで、ケニア産の紅茶を売る女性がいる。スターバックス
などにもかけあい、故国の産業を盛り上げようとがんばっている。
社会問題などにも関心があるこの人たちが、アフリカと世界とをつ
なげようと試み、奮闘している。
興味深かったのは欧米企業と中国の動きだ。
中国は安い製品をアフリカで売り、その暮らしの中にメイドイン
チャイナを浸透させつつある。
また同時に、欧米企業は社会福祉にも取り組みながら、やはりその
ブランドをアフリカに構築しようとしている。子育て支援の動きと
ともに、ミルクを売るなどの企業活動をしている。
マラリアの薬を一部無料で配り、そのよさを知らしめるなどの手法
もとられている。
パワー溢れる一冊。字が小さくて活字だらけで、開くと「うっ」と
なりがちだけれども、書いてあることはとても面白い、生き生きし
ている。
興味のある方には安心しておすすめできる、なかなかの良書である。