2011年1月21日金曜日

本のご紹介です。月と蟹

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆話題の小説系


月と蟹  道尾 秀介
¥ 1,470  文藝春秋 (2010/9/14)


第144回直木賞受賞作。

主人公は小学生、慎一。父親をガンで失った彼は、母と二人、鎌
倉の祖父のもとへ身を寄せていた。貧しい暮らしだ。

祖父の片足は義足である。漁師だった昔、船の事故に巻き込まれ
たのだ。同じ事故で、慎一の同級生も母親を亡くしていた。

鳴海という。お金持ちで、人気のある女子児童だ。彼女のことが
あるせいか、慎一はクラスに溶け込めないでいた。慎一の友人は
ただ一人、春也という、大阪から転校してきた子供だけだ。

学校が終わると、春也と連れ立って海へ遊びに出かける。彼らの
楽しみは、ヤドカリを捕まえてあぶりだすことであった。ライ
ターの火を近づけて、熱くなったヤドカリが殻から出てくるのを
見て楽しむ。

あるとき二人は、岩の上にくぼみがあるのを見つける。ここでヤ
ドカリを飼うことにした。そこは不思議な場所だった。風が吹く
と岩がうなる。

ヤドカリをあぶって遊ぶ。残酷な楽しみがあった。金がほしいと、
何気なしに言いながらヤドカリをあぶると、ヤドカリは死んでし
まった。その日、二人は五百円玉を拾った。

ヤドカリを殺せば、願いがかなうのかもしれない。慎一はいつか、
ヤドカミさまという妙な名前でヤドカリを呼ぶようになっていた。

その頃、慎一は二つの悩みを抱えていた。親友の春也が、どうや
ら虐待を受けているらしいこと。もう一つは母が、鳴海の父と恋
愛関係にあるらしいということだ。

鳴海も気づいていたようだ。慎一に近づいてくる。やがて鳴海は、
慎一と春也と、三人で岩のくぼみに行くようになった。

鳴海が慎一の家を訪ねる。祖父も母も、普段と違う様子を見せて
いた。祖父は明らかに酒量が増えていた。祖父はあの事故のこと
を語り始める。

祖父は子供の頃、怪我をした友人を捨てて逃げたことがあった。
足をなくしたのはその報いかも知れぬ。

鳴海は逃げた。では母も、悪行の報いで死に至ったのか。祖父は
追い、転倒して頭に傷を負う。

また、鳴海が介在したことで、慎一と春也の仲にも微妙な隙間が
生まれていた。対抗心と独占欲。よどむ感情を抱えながら、二人
はヤドカリをあぶり続ける。その儀式だけが互いを結ぶもので
あった。

慎一は母を尾行する。決定的な瞬間を見た。春也は腕を骨折し、
虐待がのっぴきならぬ状態にまで進んでいた。ヤドカリを殺し、
ヤドカミさまに願いをこめる。

慎一は鳴海の父の死を願った。このとき、慎一は錯乱状態にあっ
た。春也が慎一のため、鳴海の父を殺すのではないかと錯覚する。
救うため、慎一は父が乗った車の前に飛び出した。ヤドカミと
なった春也が、父の車に潜んでいる想像をしたからだ。

慎一は一命をとりとめる。母と二人、鎌倉を去る。


まあくどい。長かった。100ページの短編くらいにしてくれたら
よかったのに、というのが正直な感想。疲れたわ。

ちなみに、表題の蟹というのは、父を奪ったガン(キャンサー)
と、ヤドカリの意味であるようだ。

月と蟹  道尾 秀介

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊


夢を持つことで

日々のなにげない出来事に
彩りを感じるようになる。


今日も一日味わいつくしましょう。