2010年12月24日金曜日

本のご紹介です。「普天間」交渉秘録

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これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆社会派、ドキュメンタリー系

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「普天間」交渉秘録  守屋 武昌
¥ 1,680  新潮社 (2010/7/9)

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クリスマスなのに。アホのくせにに。いろんな意味で勘違いの
チョイスとなってしまったが。

しかしいい本だった。何より文章がいい。硬質で理路整然として
いて、その上情景描写も素晴らしい。冒頭の、沖縄の海の描写を
読んで、素敵な冒険小説が始まるのかと思ったほどだ。

だが、難解でもあった。もともと政治に詳しくはない。事態や人
が入り乱れ、正確に読めた自信はない。種々読み間違いがあるか
もしれないが、自分なりにわかったことをまとめておきたいと思
う。

守屋氏は防衛次官という職にあって、普天間基地返還の仕事に長
く関わってきた。本書ではその経緯と、著者なりの自衛隊考察の
がつづられている。今日のメルマガでは、普天間基地返還交渉に
ついての部分を主にご紹介したい。

まず、アホの私が驚いたのは、普天間基地返還については、日米
の合意がすでになされていたということ。住宅地の中にあるこの
基地の危険性は、アメリカも十分承知だということだ。

1996年、普天間基地については、海上施設を作ってそこに収容す
ることに取り決めがされていた。名護市の沖に埋立地を作って、
そこに基地を移転するつもりだった。

しかし、沖縄が求めたのは「移動」(本書では単純返還という言
葉が使われている)ではなく、県内からの完全撤去だった。基地
を他県に移せというわけだ。

それを受けて、海上に空港を作る案が提出される。最初は軍用空
港で、後に民間用として沖縄に払い下げられる予定だった。稲嶺
県知事はこれを是として公約に掲げ、当選した。

海を埋め立てるにはアセスメントが必要である。環境を調査し、
影響がないよう配慮がされなければならない。この費用は当初、
沖縄が持つとされたが、知事は費用を出すことを渋った。

政府が金を出して調査を開始すると、妨害の動きが見られた。調
査する民間会社の人間に対して、小船に乗った市民の嫌がらせが
続いた。

やがて、沖縄で事業を手がけるある有力者から「浅瀬案」が提出
される。辺野古近くの浅瀬を埋め立てて、ここに滑走路を作ろう
というのだ。

驚いたことにこの案は、日本政府の頭越しに米国にも持ち込まれ
ていた。沖縄県民から出されたものだ。これで交渉が進むと思っ
たが、浅瀬を埋め立てるのは環境に最悪の影響をもたらす。環境
団体を敵に回すことは必至と考えられた。

小泉元首相はこの案を認めなかった。自身、環境団体に敵視され、
選挙運動が危なくなった経験がある。彼らと対立してはいけない。
また、ジュゴンなどの海洋生物への保護も必要であった。

沖縄は浅瀬案を押す。この辺が奇怪なんだけど、彼らはこの案が
通れば、環境団体が動き始めることを知っているのだ。実質的に、
実現不可能な案であった。

(ここで改めて書いておくけれど、この本は自衛隊の「中の人」
によって書かれたものである。沖縄には沖縄の主張がもちろんあ
ることを忘れてはいけない。しかしこの本を読む限りでは、沖縄
の交渉術は非常にしたたかであり、狡知であるように見えた。)

守屋氏は対抗して、キャンプシュワブの延長上に土地を確保して
滑走路を作る「L字案」を唱える。これなら海への影響は最低限で
済む。

以後、交渉はこの案をメインに進み始め、滑走路をV字型にすると
いう修正が加えられる。

防衛省が窓口となる交渉であるが、沖縄は外務省につてを作り、
省庁同士の争いを引き起こそうとする。V字の滑走路の角度にもこ
だわりを見せ、交渉は遅々として進まなかった。

この間、防衛省の不祥事もいくつかあった。そのたびに守屋氏は
批難の的とされ、また、彼自身を陥れようとする動きもあった。
小池百合子議員などは、沖縄の言葉に篭絡され、交渉の場で一人
反対の陣を張ったこともある。

だがその後、小池議員は梯子を外された格好になり、「なんだっ
たの?」とぼやく羽目に。


守屋氏の日記をもとに書かれたもの。様々な人が実名で出てくる。
大臣が何度か変わり、そのたびに状況も変わるさまには、読んで
いて頭が痛くなるほどだった。

なぜ沖縄はこうまで交渉を引き延ばそうとするのか。はっきりと
書かれてはいないが、あとがきで基地の周辺に落ちる金が、利権
があることが示唆されている。

このあとがきでは同時に、基地周辺に住む一般市民についても言
葉が添えられている。安全を脅かされ、不安なままで過ごす人た
ちが沖縄にはまだたくさんいる。

その人たちのことを、一番に考えなあかんはずやんな。


本日ご紹介の本はこちらから↓
「普天間」交渉秘録

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

語ろう、理想の人類の在り方を。

想像しよう、最悪の事態を。


今日も一日味わいつくしましょう。