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こんにちは!活字中毒のモモちゃんです。
明石公園で。
数羽、鳩がいたのでパンをちぎって投げてやった。鳩、食べる。
しばらくすると鳩の数がぐんと増えた。またパンをやる。鳩、
食べ、そして飛んでいく。
また少しすると、今度はお城の向こうの森から鳩の大集団がやっ
てきて私たちの周りを飛び、威嚇し始めた。身包みはいでやる
ぜという、気概にあふれた集団だった。
怖くて、その頃になると誰が最初にパンを投げたか、犯人探
しが始まる始末だ。ほんと怖いよ、鳥の集団って。
伝達手段みたいなものがあるのかな。多分それでは、「いい
カモがいるぜ」みたいな言葉が交わされてたんだろうな。鳥
のくせに。
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本日は ◆たまには教養系
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先生、カエルが脱皮してその皮を食べています! 小林朋道
¥ 1,680 築地書館 (2010/4/17)
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著者の小林先生は、鳥取環境大学で教鞭をとっていらっしゃる方。
動物行動学、人間比較行動学なる学問を教えておられるのだそう
だ。
この本では、動物たちの珍しい行動が、エッセイという形で紹介
されている。
とはいえ、ぜんぜんお堅い本ではないのよ。先生の文章は知的で
ありながらユーモラスで、つい吹き出してしまう場面がたくさん。
「動物のお医者さん」が好きな方にお勧めしてみたい一冊だ。
脱皮するカエル(表題になったエピソード)、ヤギの脱走、海辺
の生き物の生態、はたまた子ガラスを保護するお話など、面白い
ものはたくさんある。
ここでは「春の田んぼでホオジロがイタチを追いかける!」と題
されたエピソードをご紹介してみたい。
学生さんたちと田んぼを作ったときのお話。いろんな生物を見る
ことができた。イモリ、めだか、サンショウウオ、カルガモ、
ヌートリア。
その中で、貝に手を挟まれた(写真あり、本当に、かわいらしい
手に貝がくっついている)イモリを見つけたときは皆で大笑いを
した。
先生が気を止めたのは、畦でイタチを見た瞬間である。野生のイ
タチを目にすることは珍しいのだ。眺めていると、ホオジロが二
羽、その上を舞うように飛ぶ姿が目に入った。
「モビングだ!」と、先生は学生に言った。先生曰く、このよう
な「少しでも私の教員としての株があがる可能性を、黙っている
ことはありえない」のだそうだ。
学生さんたちにも説明したそのモビングとは、つまりは被食動物
が捕食動物に対して行う防衛的な行動のことであるらしい。
自然界では、食べら得る側の動物が、食べる側の動物に「近づい
ていき、一定の距離を保ちながら警戒的な動作や発声をくり返す」
ことがあるんだって。
先生は以前、シベリアシマリスでもその行動を実験、確認してい
た。リスは捕食者である蛇に対し、尾を激しく左右に振ったり、
地団太踏むような動作をくり返すことがある。
しかし、それは危険な行為でもある。捕食者のそばにいて行うも
のであるからだ。その行為は、近親者に対して警戒を呼びかける
ためのものであり、捕食者を脅かして追い払うためのものでもあ
る。そういうことを、動物は自然に行っているわけだ。
野生のイタチに付きまとい、その上を舞うホオジロは、きっとそ
ばにある巣を守ろうとしたのだと思う。非常に珍しいその瞬間を、
先生はパチリ、カメラに収めた。
後日講義でその写真を使うと、学生たちの間に「なんと言ったら
いいのか、説明に納得いっていない空気」が流れた。
もちろん、「聡明で知識豊かな私(原文引用、先生のこと)は、
すぐに、それが、写真の中の鳥についての疑念であることに気づ
いた」。
その写真は掲載されているが、実際、私が見た感じでもどこに鳥
がいるのかはわかりづらかった。先生は言う。「ひょっとしたら
鳥に見えない人がいるかもしれません。率直な感想を質問用紙に
書いてください」
すると学生さんたちは「鳥に見えないが、動物はいます。いや、
鳥ですね」と、非常に気遣いのある答えを書いて提出してきた。
ちゃーんとオチもついていて、非常に楽しい文章なのである。
カエルの脱皮の話は、気持ち悪いナと思う方もいらっしゃるかも
しれない。でもお話の面白さは請け合い。
文章の間から、先生の動物好き、いや、失礼ながらはっきりと述
べさせていただくと「オタク」っぷりが漂ってくる。もうそれは
すごい、濃い。
動物への愛情あふれた一冊。シリーズの、これが四冊目だそうで
すが、どれも読んでみたいな〜。