2011.1.15
【1】読書感想 (第345冊)
南條範夫 「日本史の謎と真説」 銀河出版
お正月のような長期休暇は、少し分厚い本を読む事にしている。
電車の中で単行本を片手にして読むのは手が疲れ、薄めの文庫本がありが
たい。
しかし長期休暇は家でゆっくり読め、特に長風呂の大好きな私は本や簡単
な料理を持ち込んで一時間以上風呂に浸かるのが楽しい。
大好きな南條範夫を半年以上御無沙汰にしていたのに気付き、単行本と新
書判の中間くらいのサイズの本書を手に取った。
南條氏が日本史の数々の謎を採り上げ、更に真説を披露する。
考えただけでもワクワクする構成の題名。
大和朝廷から明治維新まで全39章と、書名に偽りはなかったが、期待した
ほどの真説は無かった。
そう、真説。
新説では無いのだ。
日本史の数々の謎を提示した本は多い。
そして俗説や一般に流布された話をした後、実際はこうだったと説明が入
る。
しかしあくまでそれは「真実の」説=真説であり、「新しい」説=新説で
はないのだ。
歴史初心者や中級者には勉強になろうが、歴史本を何十年と愛読してきた
人にとっては、謎も知ってりゃ真説も大体聴いた事がある。
ときどき南條氏ならではの視点と考察が面白いが、大体はフンフンなるほ
どと読む内容が多かった。
そうは言っても敬愛する作家南條範夫。
彼がこれまで書いてきた得意分野では滅法筆が走ってるのが判った。
源鎮西八郎為朝、真田幸村、没落した武将のその後、西郷隆盛と伊藤博文。
上記については特に著者独自の知り抜いた情報が開陳され、内容も深かっ
た。
少しディープな人物として、光厳帝のその後を追った内容は初めて読んだ。
福山城の「淀殿の湯殿」事件も私にとっては初ネタで面白かった。
他にも宮本武蔵・二刀流の真相や、坂本竜馬暗殺犯の考察など、他の作家
とはちょっと違う内容も多々あった。
もっとも意気込んで展開した真説は、西郷隆盛についてだろう。
これはなかなかの真説だと思った。