何を選んだか。
よりも、
どういう思いで選んだか。
今日も一日味わいつくしましょう。
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本日は ◆社会派、ドキュメンタリー系
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台湾人生 酒井 充子
¥ 1,650 文藝春秋 (2010/04)
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旅行記ではなかった。読み始めてすぐに「ありゃりゃ」と思っ
たけれど、本を閉じようとは思わなかった。
台湾はかつて日本の統治下にあった。50年という長い年月だ。
その時代を生きた人に会い、聞いた話をまとめたもの。ドキュ
メンタリー映画にもなっている。
統治時代をめったやたらに賛美するものではない。差別はあっ
た。軍国教育を受けて徴兵に応じ、死んでいった台湾人もいる。
だが50年だ。生まれたときには日本人で、そのまま成人した人
が台湾にはたくさんいる。本書に出てくる人たちは、そのよう
な時代を生きた人だった。
少年工として、日本の兵器工場で働いた男性がいる。工場の
あった町を今でも懐かしく思い、第二のふるさとであると考え
ている。当時働いていた日本人とは、今でも交流がある。
彼は貧しい育ちだった。就学を断念しかけたが、日本人の先生
が金を出してくれたおかげで学校に通えた。「先生がなかりし
かば」と、彼は口癖のように言う。今の私の人生はなかった。
恩師が病に伏せたとき、彼は日本まで来て看病をした。先生の
最期の言葉は「もういいよ」だったそうだ。
ビルマで戦った元日本兵がいる。軍国少年だったから、軍隊に
は自ら志願した。軍での差別、戦友の死を見て、やはり戦争は
いけないと思う。
なんとか帰国することができた。帰国後の暮らしは厳しいもの
だった。
台湾は中国に占拠されていた。同胞が来たと、喜ぶ声も確かに
あった。だが中国人の統治は横暴で、次第に日本のほうがまし
だと考えるようになった。
暴動が起きた。このことがきっかけで、多くの知識人が逮捕さ
れ、殺された。彼も拷問を受けた。危うく助かったが、弟が銃
殺されるという悲劇を経験した。
今彼は、観光ガイドのボランティアとして活動し、若者に本当
の歴史を伝えようと務めている。日本人が来ると、教育勅語を
印刷した紙を手渡すのだそうだ。
日本人には親しみがある。だが日本政府には納得がいかない。
戦後台湾を見捨てた。今も中国の顔色ばかり見て、台湾の国連
加盟を後押ししてくれない。
彼らの日本に対する感情は、陳腐だけれど、愛憎半ばというこ
となのだろうかと考える。
茶道も生け花も、日本人の若者よりも知っているという自負が
ある。好きな歌は日本の歌。勇ましい軍歌が好きで、日本語の
歌詞ですらすらと歌う。
しかし日本は彼らに報いなかった。捨てられた、なぜ捨てたの
だと責める気持ちが消えない。
アメリカよりも、中国よりも仲良くすべきは日本だと思うのに、
台湾人も日本人も、かつて同国であったことを忘れ去ってし
まっている。歯噛みするような思いがある。
押し付けがましい思想はないので安心して読める。知らないこ
とがたくさんあって、とても勉強になった。
本日は ◆自己啓発系
禅的シンプル仕事術 枡野 俊明
¥ 1,260 実業之日本社 (2010/5/8)
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昨年読んだビジネス書で、「減らす技術」というのがとてもよ
かったので、類似の本かと思って読んでみた。
ところがちょっと違っていて、どちらかというと、小池龍之介さ
んの著作に似ていると思った。小池さんも、この本の著者もお坊
さんである。
キーワード一つに対して解説あり。とても読みやすい。煮詰まっ
ているときにふっと開いて、気分転換ができそうな本だった。
・ていねいに呼吸する。
禅において呼吸は、最も大切な修行のうちのひとつである。丹田
(おへその下の辺り)に意識を集中させて、ゆっくり、長く細く
息を吐く。
吐ききったら自然に吸いたくなる。呼吸という言葉は、吸うより
も吐(呼)くという字が先に来ている。どっしりとした呼吸をく
り返していると、気持ちが落ち着いてくる。
・ためない
「一日なさざれば、一日食らわず」という言葉がある。働かざる
者食うべからず、という意味ではない。
一日を一生懸命働いて、その日の分の食事をする。二日分働くこ
とはせず、二日分食うこともしない。それが人間にとって、一番
健康なことだ。
・一日10分、ぼーっとする。
一度やってみてほしい。案外難しいことに気づくだろう。
何も考えない状態。禅では「無の境地」といい、この状態を得る
ために、僧侶は厳しい修行に取り組む。
私たちにその必要はないかもしれないが、頭を休めることは大切
なこと。座禅を組むのもいい。
・ことなる意見に耳を傾ける。
境内に僧侶が二人。幡(吹流し)を見ながら言い争っていた。
「幡が動いているのではない。風が動いている」
「いや、幡そのものが動いており、風は動いていない」
そこに現れた師が言った。「動いているのは風でも幡でもない。
お前たちの心だ」
世の中にはこれが正しいと、言い切れることはない。物の見方は
さまざま。すべてを一度受け入れ、自らの心に問い直してみよう。
レオ・バボータさんの「減らす技術」は、仕事をいかにシンプル
にするかという、ビジネス書寄りの本だった。その意味で「禅」
が本当に理解されているのか、疑問だったのは確か。
とにかくその作業に集中すること。無駄なものを削ること。
このことを荒削りに「ゼンっつったらゼンなんだからね!」と、
言い切ってしまっていたかもしれない、と今になってはわずかに
思う。
それに比べて今度は本当に「禅」だった。心構えを書いたもの。
字、大きめ、レイアウトがきれい。読みやすい。カバーデザイン
もシンプルで、ちょっと固めの手触りもよろしい。(本屋さんで
見つけたら、ぜひなでなでしてやってね)
忙しい毎日を送っている方に。
本日は ◆生活、ほっこり系
チュートリアル福田充徳の家呑みレシピ 福田 充徳
¥ 1,365 ワニブックス (2010/2/27)
福田さん、早く良くなってね!
というわけで、本日は話題性もたっぷりのこの一冊。漫才コンビ、
チュートリアル福田充徳さんの、自慢のレシピを集めたもの。
実はこの福田さん、お酒がものすごく好きなのだそうだ。ほぼ毎
日飲んでいる。家で飲むのも好きで、あわせるお料理もご自身で
作っている。
簡単にできるものが多い。凝っているわけではないが、手抜きで
はない。家庭でマネできるものばかりだった。
・豚キムチフライ
豚の薄切り肉にチーズとキムチを巻いて、パン粉をつけて揚げる。
・ちくわのバジルツナマヨ
ビニール袋に水気を切ったツナ、バジルペースト、マヨネーズを
入れる。
袋のはしを切って、中のバジルツナをしぼり出すようにしてちく
わの中に入れる。ちくわを斜めに切って皿に盛る。
・イカ刺身の大根おろしマヨネーズ和え
大根おろしは水気を切る。大根おろし、マヨネーズ、イカの刺身
をボウルで和える。醤油で味を調えて。唐辛子をふるとよい。
・レタスの丸ごとしゃぶしゃぶ
レタスは芯をくり抜く。お湯をわかし、塩と酒を入れる。レタス
を丸ごと入れてさっとゆでる。ゆですぎないように。
たれは醤油、バルサミコ酢、みりん、酒、水を混ぜて熱したもの。
片栗粉でとろみをつけて。
・トマトと卵のザーサイ炒め
トマトは乱切り、種をとる。ザーサイは粗みじん。溶き卵に塩、
コショウをふっておく。
フライパンにごま油、トマト、ザーサイを炒め、醤油、紹興酒、
コショウで味を調える。卵でとじてできあがり。
福田さんいわく「ちょっと良さげな店ではイイ値段とるんですよ」
というメニューなのだそうだ。
・うなぎのピカタ
うなぎは小麦粉をふって、溶き卵にくぐらせる。フライパンで焼
いて、うなぎのたれをかけて食べる。少ないうなぎでも満足感が
得られる一品。
男性が作る料理はがっつり、ジャンクなものが多くなりがち。福
田さんは、鍋物やスープで栄養バランスを整えています。
・いろいろきのこ汁
だし汁に薄口醤油とみりん。お好みのきのこに鶏肉を入れて。
ほか、サムゲタンも作る。トマトスープも好き。豚汁にはコチュ
ジャンを入れて辛味をくわえるとおいしい。
福田さんの料理のルーツはあの「美味しんぼ」。小学校高学年の
頃にはまり、一時は料理人を夢見たこともあったとか。
スーパーが好きで、住居を決めるときは必ず近くのスーパーを確
認する。遅い時間に行って、食材がお値打ちになる時間帯がとて
も好きなのだそうだ。ツナ缶、納豆、さけるチーズなどを家に常
備している。
一人で飲むことは寂しいことだとは思わない。好きなものを食べ
て、好きなように飲める。いいことだと思う。グルメ番組をぼん
やり見ているのが好きだ。
ご家庭で、おつまみを作ることが多い人には便利な一冊かもしれ
ないな。
しかし、飲み過ぎにはご注意。元気な福田さんの笑顔を、早く見
られますように!
本日ご紹介の本はこちらから↓
チュートリアル福田充徳の家呑みレシピ
あらすじ
女たちはいつでもちょっと不思議で、そしてそれぞれに魅力的だ。
どしゃぶりの雨の一日から始まって、ひたすら僕の家でじっとしていた女。
中学生の時に初めてデートした女の子。
公衆電話でのちょっとしたすれ違いから僕と寝るはめになった女。。
とりたてて変化のある訳でもない僕の人生を彩ってくれた様々な女たちの
エピソード11編。
コメント
これ、確かドラマにもなってたよな。
と思い手に取った一冊。意味はよく分からんが、何となく肌触りがよくて
魅力的なタイトルだと思う。
ほほう、ふふん。なるほど。なぬ!?・・と言う感じで、11篇の短編を
あっという間(1.5時間)で平らげてしまいました。
男にとって全ての女性は永遠に謎を秘めた存在なのだけれど、それを実に
さらりと手際よく料理したよなあという感じの一冊。
読みやすさ満点なので、秋の夜長にウイスキーでもちびちび飲みながら読
むと良いですよ。
昔のことをちょっと思い出すかもしれません。。
了。
0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。
※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。
米澤穂信のミステリです。
今まで現代日本を舞台にした作品ばかりだった米澤穂信が、十二世紀末のヨーロ
ッパを舞台にしているという、それだけで仰天。しかも、ページを開いてみれば、
そこは魔術や呪いが存在する世界。いったいどんな物語が始まるのか! わくわ
くして読みました。
そんなわくわくを裏切りません。
イングランドの王位争いがリチャード王の王位就任によって決着したのも束の間、
リチャード王は十字軍に遠征に出、イングランドに国王不在が続く不安定な時代。
ロンドンから海路三日はかかるソロン諸島。
小ソロン島とソロン島からなるこの地の、領主はローレント・エイルウィン。小
ソロンに居を構える。小ソロンとソロン島の間の海は浅瀬が多く、島でただひと
りの渡し守でなければ渡れない。その渡し守も日が落ちてからは舟を出さない。
夜の間は誰も入り込むことはできないはずの小ソロン。
ある日、騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士ニコラ・バゴが領主を訪ね
てくる。
暗殺騎士が領主を狙っている。その暗殺騎士を我々は追っているのだと。
その晩、領主は小ソロンの館の一室で健で胸を突かれて殺される。…
領主の娘、アミーナは、ファルクとニコラとともに、犯人を追う。
この物語の世界には、魔術がある。呪いがある。
呪われたデーン人。切っても突いても血さえ流さず、食物も飲み物も不要、老い
ることはなく、爪も髪も伸びない。デーン人がソロンを狙っている。
暗殺騎士は、魔術によって人を操り人形《走狗(ミニオン)》にして、殺人を犯
させる。《走狗》は自分が魔術にかかったことに気づかず、人を殺した記憶もな
い。
もちろん、魔術がある世界だからといって、魔術のひと言ですべてが説明できて
しまうような非論理的なことはありえない。
なんといっても米澤穂信だし。
むしろ、こういう特別な設定の特殊世界だからこそ、ルールがはっきりして、論
理性が際立つともいえる。
> 「何も見落とさなければ真実は見出せる。理性と論理は魔術をも打ち破る。必
> ず。そう信じることだ」(100頁)
設定こそ魔術が跋扈する中世ヨーロッパだけれど、実は正統派本格推理。
実際、終盤には名探偵物のお約束、「名探偵 皆を集めてさてと言い」シーンも
あるし(笑)。
こういう特殊設定ミステリというと、私は条件反射で西澤保彦を思い出します。
『七回死んだ男』『人格転移の殺人』『瞬間移動死体』etc…
大好きなんですよ!
本書のあとがきでも、米澤自身、西澤保彦に触れています。ちょっと嬉しい。
ファンタジー風味の本格ロジック。
おいしいとこどり。
ところで、今週のメルマガは、どっちを紹介しようかとかなり迷ったのです。
この本と、木内一裕の『キッド』と。
『キッド』は、二十歳のあんちゃんがついつい首を突っ込んでしまった事件に
振り回されるジェットコースターノベル。すっごくテンポがよくて、面白くっ
て、軽快で、とにかく爽快! すかっとしたぁ!
よろしかったらこちらも是非!
お正月のような長期休暇は、少し分厚い本を読む事にしている。
電車の中で単行本を片手にして読むのは手が疲れ、薄めの文庫本がありが
たい。
しかし長期休暇は家でゆっくり読め、特に長風呂の大好きな私は本や簡単
な料理を持ち込んで一時間以上風呂に浸かるのが楽しい。
大好きな南條範夫を半年以上御無沙汰にしていたのに気付き、単行本と新
書判の中間くらいのサイズの本書を手に取った。
南條氏が日本史の数々の謎を採り上げ、更に真説を披露する。
考えただけでもワクワクする構成の題名。
大和朝廷から明治維新まで全39章と、書名に偽りはなかったが、期待した
ほどの真説は無かった。
そう、真説。
新説では無いのだ。
日本史の数々の謎を提示した本は多い。
そして俗説や一般に流布された話をした後、実際はこうだったと説明が入
る。
しかしあくまでそれは「真実の」説=真説であり、「新しい」説=新説で
はないのだ。
歴史初心者や中級者には勉強になろうが、歴史本を何十年と愛読してきた
人にとっては、謎も知ってりゃ真説も大体聴いた事がある。
ときどき南條氏ならではの視点と考察が面白いが、大体はフンフンなるほ
どと読む内容が多かった。
そうは言っても敬愛する作家南條範夫。
彼がこれまで書いてきた得意分野では滅法筆が走ってるのが判った。
源鎮西八郎為朝、真田幸村、没落した武将のその後、西郷隆盛と伊藤博文。
上記については特に著者独自の知り抜いた情報が開陳され、内容も深かっ
た。
少しディープな人物として、光厳帝のその後を追った内容は初めて読んだ。
福山城の「淀殿の湯殿」事件も私にとっては初ネタで面白かった。
他にも宮本武蔵・二刀流の真相や、坂本竜馬暗殺犯の考察など、他の作家
とはちょっと違う内容も多々あった。
もっとも意気込んで展開した真説は、西郷隆盛についてだろう。
これはなかなかの真説だと思った。
本日は ◆話題の小説系
ミステリーの書き方 日本推理作家協会
¥ 1,890 幻冬舎 (2010/12)
なぜこんな本を読んだのか、自分でもわからないんです。だって
あたし、普段からミステリーなんて、そう読まないんですもの。
もちろん書く予定なんかもぜんぜんないわ。刑事さん、私の中の
虫が騒いだんです。たるんだ腹の中にいる、活字中毒の、虫。
手にとって、面白かったから読んでしまった。まるで光におびき
寄せられる虫のように。ハッ、わかったわ。私、虫なのね、虫並
みの脳みそしかないということなのねサヨウナラ刑事さん…。
と、まあ、崖から身投げしてもいいくらい、不思議なチョイスだ
と自分でも思う。でも面白かった。だからいい。
現代日本を代表するミステリー作家137人が、創作に対する思い
を語っている。
テーマはそれぞれにある。プロットの立て方だとか、キャラク
ターの描き方だとか。文体についての意見もある。しかし私の印
象としては「好き勝手しゃべってるなあ」という思いが強い。
皆書くことが好きで、こだわりを持っていらっしゃる。そのこだ
わりを、余すところなく語りつくしたのが本書と言っても過言で
はないだろう。二段組、480ページ。圧巻。
例のごとく独断と偏見で、コメントを取り上げてみる。
・冒険小説の取材の仕方 船戸与一
ストーリィもプロットも決めずに現場へ行く。写真も撮らない。
メモも不要。書くときも、完全に物語を決めて書き始めるわけで
はない。
取材の旅で出会った人たちをデフォルメした登場人物が、こうし
てくれと語りかけてくる。
・ブスの視点と気持ちから 岩井志麻子
世の中には四種類の人間がいる。1、人から好意を向けられてい
て、気づく人。2、気づかない人。3、人から好意を向けられて
いないことを、気づく人。4、気づかない人。
小説家に向いているのは3のタイプの人ではないか。
・書き出しで読者をつかめ 伊坂幸太郎
アマチュア時代に書いた文を例として。冒頭で読者を驚かせるこ
とに腐心した。本屋にずらりと並ぶ本の中で、自分の本を手に
とってもらえる工夫がしたかった。誰かに届けたいという思いが
ある。
・手がかりの埋め方 赤川次郎
ミステリーを書いて一番苦労するのは、トリックや、どんでん返
しを考えることではなく、手がかりをいかにして、読者の目につ
かないように、かつ記憶の隅にとどまっているように書き入れる
のか、ということ。
本当に、どの作家さんもプロットにも、トリックにも、文章にも
思い入れを持っていらっしゃる。「!」や「?」、「…」の使い
方にも、それぞれの個性があった。ミステリーファンなら読んで
損なし、の一冊。
トリックについての解説、綾辻行人さんのは、私にはよくわから
んかったけど、マニアックで面白い雰囲気はビシバシ伝わってき
たよ。
では最後に、帯に書かれている、東野圭吾さんの名言を。
「どうやって作品を生み出しているのか。一言で言えば、苦労し
て、です」
だよなあ! みなさま、楽しい作品をありがとうございます!
本日は ◆世間話、時事ネタ系
日本映画空振り大三振 柳下 毅一郎 江戸木純 クマちゃん
¥ 1,575 洋泉社 (2010/6/2)
毒舌映画評論。昨年末に公開された「ゴースト」が入っていない
のが惜しい。(同年6月の発行だから、仕方ないんだけど)
柳下氏、江戸木氏はともに映画評論家。クマちゃんとは、謎の着
ぐるみ人物(?)なのだそうだけど、映画をよくご存知の方のよ
うだ。
お三方とも知識豊富な語りなので、面白いだけでなく、勉強にな
ることも多かった。
・釣りキチ三平
田舎で釣りばかりしている三平くんを、香椎由宇演じる姉が連れ
戻しにやってくる。しかし姉は釣りの面白さに目覚め……。
と、言ってみれば「釣りキチ由宇」というべき映画だった。自然
の光景も魚もすべてCG。原作の生き生きとした様子が伝わって
こない。
魚紳さんはトラウマを抱えた変態みたいだし、三平くんはやたら
と「キャッチ&リリース」を強調するし、エコやら何やら小細工
が多かった。
釣りの楽しみを描ききった原作の楽しさを、素直に表現するだけ
ではいけなかったのか?
・アマルフィ 女神の報酬
日本人の少女が誘拐されるサスペンス映画、のはず。
だが基本的には観光地ばかりをめぐる旅になっている。誘拐犯が
なぜか、なぜなのか、取引場所に観光地を指定してくるせいだ。
世界遺産の土地もあるので、当然アクションシーンは撮れず。
アマルフィの土地自体も、最後に空撮でちょろっと流されるだけ。
誘拐犯の目的もよくわからなくて、主演の織田裕二さんに諭され
てあっさりと犯行を中止してしまう。七年かけた計画なのに、
「殺して何になる?」と言われて「わかったよ」と納得。そんな
素直な犯罪者、いるか!
しかしよくわからんな。原作を読んだけれど、それなりに面白い
話だったと思う。原作者が脚本も書いたはずだったけど……。
と、思っているとこんなことが書かれていた。
「この映画には脚本家のクレジットがない。原作者が脚本も書い
たのだが、現地の撮影状況から原作どおりにいかなかったことも
あり、原作者が(名前を載せるのを)辞退した」
ぐだぐだですやん。
・剣岳 点の記
明治のお話だ。陸軍測量部と、山岳会の人間が競い合いながら剣
岳初登頂を目指すという物語。
映像がすごい。「CGを使わない」というのが監督の信念であっ
たので、雪山の迫力ある映像が楽しめる。また、物語も実に真面
目で、人が死んだり、滑落があったり、わざとらしい見せ場は作
られていない。
しかしそれがもったいないとも言える。映像ありき、物語の筋が
弱く感じられてしまう。
実はこの映画、高山が撮影現場であったため、誰も脚本を持って
来ていなかったのだそうだ。荷物を極限まで軽く。役者さんも、
監督さんも、誰一人脚本を見ずに撮影が進んだ。ドキュメンタ
リーと言うのがいっそ正しいかもしれない。
ただクライマックスの、登頂の場面がなかったのが残念。寒すぎ
て機材も凍ったか?
槍玉に上がる映画は全部で46本。GOEMON、ルーキーズ、蟹工船、
真夏のオリオン、いろいろ、たくさん。
昴。超酷評だったけど、かえって観たくなった映画だ。バレエ映
画であるらしいんだけど、それがストリップ・バレエという珍妙
なものなんだそうだ。
主人公が目隠しをして町を歩き、踊りの練習とする場面もある。
一昔前の少年漫画みたいな特訓が行われるとのことだ。すごいな
あ。いい大人が真面目にそんな映像を撮っているなんて。
本も映画も、ご興味のある方はぜひ。
日本映画空振り大三振 ~くたばれ!ROOKIES (映画秘宝COLLECTION 41)
本日は ◆世間話、時事ネタ系
正しい日本語は本当に"正しい"の? みんなでニホンGO!
オフィシャルブック
¥ 1,365 祥伝社 (2010/7/27)
NHK「みんなでニホンGO!」制作班著
NHKのテレビ番組をそのまま本にしたものらしい。アマゾンのレ
ビューでは、そのことに関しての苦言が呈されているが、見てい
ない私にとってはとても面白い内容のものだった。
取り上げられていた言葉遣いが、私自身、気になっていたものば
かりだったからだ。
別に目くじら立ててどうのこうのと言うつもりはないが、なんと
なく違和感を感じる言葉遣い。そんなものが多かったので、例の
ごとくへえへえふうんとうなずきながら読み進めることができた。
言葉遣いの変化=悪という考え方はされていない。言葉は移り変
わるものという前提で、その経緯を理解し、新しいものも受け入
れましょうというスタンスだった。好感触。
面白いネタがたくさんあった。
「人」は実は、人間が横を向いた姿をかたどった象形文字である。
支え合って人というのは間違いだった。〜っしょ、というのは北
海道弁。うざったいとはもともと八王子近辺の方言であったのだ
が、大学が郊外に移転するに従って、若者に話されるようになっ
た、などなど。
では、私が選ぶ「気になる大賞」を、本書解説の中から選んでご
紹介してみたいと思います。ちなみに「大賞」は二つあるのです
が、その辺は曖昧に笑ってごまかすつもりです。ご理解ください。
・させていただく。
最近では「やらさせていただく」「名乗らさせていただく」など、
余分なところに「さ」を入れて話す人が増えた。
(本来は「やらせていただく」「名乗らせていただく」)
過剰矯正と言われるものだ。緊張のあまり、丁寧に喋ろうと力む
あまりに、文法を超えた表現になっている。
しかしこの言葉を使う政治家が増えている。国会会議録検索シス
テムという、国会議員の発言を記録したデータベースで調べると、
90年以降この「さ入れ」言葉が急増しているとわかる。
政治家の言葉は社会の変化を表す鏡。今後はこの「さ入れ」言葉
が常識になると考えられる。
ちなみにこの「させていただく」は、近江商人が使い始めた言葉
だ。他人に感謝し、おかげさまの精神を表す商人言葉だった。
・ヤバイ
江戸時代にできた「ヤバ」という言葉が語源になっている。牢屋
のこと。危ないという意味で、使う人はごく少数だった。
しかし近年、ヤバイはプラスの意味で使われている。このラーメ
ン、ヤバイ、と言えば、若者はそれがおいしい、うまいと受け取
るはずだ。
マイナスからプラスへ。「ヤバイ」は進化、成長する語である。
似たような例は各国に見られる。スペイン、モンストロとは化物
の意味であった。だが最近ではフラメンコがうまい人、ギターを
弾くのが上手な人がこう称される。
韓国ではチョギンダ。もともとは殺すという意味だったが、殺人
的においしい、楽しい、という意味に。
古くは英語のナイスもそうで、ナイスの語源はラテン語のネスキ
ウスだった。愚かという意味である。それが変化し、今ではよい
意味合いでしか使われることがない。
こう見ていくと、人の考えなんて似たり寄ったりで、面白いと思
うな。
テレビの内容を、本当にそのまま本にしたものらしい。出演者の
船越栄一郎さん、山崎弘也さん、松本あゆ美さんらのトークが楽
しく文字に起こされている。気楽に読めることうけあい。
以前読んだ「日本人の知らない日本語」でも、言葉は変化するも
のだと書かれていた。
「前向きに」理解して、受け入れていきたいな。
正しい日本語は本当に“正しい”の? みんなでニホンGO!オフィシャルブック
本日は ◆生活、ほっこり系
クスリごはん─おいしく食べて体に効く! ¥ 1,155
ヘルシーライフファミリー リベラル社 (2010/08)
漫画、イラストで紹介する体によい食べ物、レシピ。おばあちゃ
んの知恵という感じ。病院に行くことももちろん、とても大切だ
けれど、こういう日々の心がけも大切にしたい。
登場人物は主婦のケロミさん、夫のヒロさん、元気なお姑さん、
小さな女の子ブーリンと、その弟ダイちゃん。にゃんこ先生とい
う猫もいて、人間の食べ物を虎視眈々と狙っています。
ごく一般的な家族が経験する体のトラブルと、その解決法を漫画
で紹介するというやり方。絵がかわいいので楽しく読める。
・ブーリンが風邪をひいた。
おばあちゃんが冷蔵庫を探す。出てきたのは大根と蜂蜜。大根を
1センチ角に切り、蜂蜜につけて咳止めシロップの代わりに。一
晩つけるとさらに効果的です。
かるい鼻づまりにはごま油を。綿棒につけて鼻腔につけてやると
よい。ねぎと豚肉の炒め物、玉ねぎ入りのスクランブルエッグな
どもいいよ。
・ヒロさん激務で疲労困憊。
肩こりにはグレープフルーツ。クエン酸がよい。その意味では梅
もとりたい食品だ。山芋にあえたり、豚肉のソテーの味付けにす
ると食べやすい。
豚肉のソテーは、フライパンで焼いた豚肉にみりんを混ぜた梅肉
を乗せ、オーブントースターで軽くあぶって作る。
ストレスにはくるみトースト。食パンの上にスライスチーズと刻
んだくるみを乗せて焼く。
不眠にはホット豆乳ミルクを。温めた豆乳に蜂蜜を混ぜるのがコ
ツ。チーズも効果的なので、茹でた人参にたらこ、チーズ、ごま
をまぜたものをあえるのもおいしい。
・ご馳走を食べて胃がもたれた。
カブおろしが口にやさしい。大根おろしとは違って辛味がないか
ら子供でも食べられる。レモンをしぼって、うどんに乗せても
さっぱりといただける。しらすを混ぜるのもあり。
お通じが悪くなったときは、小豆やごぼうをたくさん取ろう。ご
ぼうと人参の煮物、さつまいもと小豆の煮物など。
バナナラッシーはおいしく飲める。バナナ、ヨーグルト、牛乳、
蜂蜜をミキサーでかき混ぜる。おやつにもいいかも。
口内炎にはナスとトマトのラタトゥイユ、腰痛にはニラ玉、メタ
ボが気になるなら小豆ご飯、痔にはほうれん草炒め、食中毒には
シソジュース、下痢には蜂蜜緑茶、貧血には梅こぶ茶。
実家では、冬になるとオカンが必ず大根の蜂蜜漬けを作っていた。
咳をすると、汁をお湯で割ったものを飲まされていた。
これで完治というものではもちろんないよね。それはわかってる。
だけど知っていたら、気をつけて取りたいなと思うものが多かっ
た。
民間療法、先にも書いたけどおばあちゃんの知恵みたいなものな
んだよね。高価で難しい本だったら遠慮したいけど、親しみやす
く、お値段も手ごろ。これなら手元に一冊備えておいてもいいか
なあ、と思える本だった。
症状ごとに分類がされていてわかりやすい、探しやすい。凝った
レシピではないので、体が弱っているときでも作るのが楽。あり
がたい。
お正月のご馳走疲れの体には、大変優しく、役に立つ一冊。
幼児期、主人公が母から凄惨な折檻を何度も受ける描写が激しすぎて、
衝撃を持って受け留められた作品。
この作品を読んで考えるに、二つの見方がある。
著者自身の実体験を赤裸々に描いたものなのか、純粋に創作なのかだ。
相当リアルな描写が理不尽なほど続き、その細かい描写は想像力を超え
た迫真性がある。
現実にあった話って意外と「?」となる行動や展開が多く、もっと感動
作品に仕上げる事も出来ただろうに、敢えて突き放したような動きに
なっているのはこのためじゃないだろうか。
本作での結末はどちらにも受け留められるような、母と娘の関係がどう
なったか、否、どうにもならなかったような、幾通りにも想像できる
不思議な結末。
いずれにせよ、強烈な印象が残る力作だと感じた。