発行元 :株式会社新潮社
初版発行:2003/11/20
江國 香織(エクニ カオリ)
あらすじ
すべて大人の女が主人公の短編12編。自宅で、旅先で、あるいは買物先
のデパートや行きつけのバーで繰り広げられる日常と非日常の点景をリ
アルに切り取ったオムニバス作品。
コメント
まっとうな大人の女であれば、大抵恋のひとつや二つは経験している。
そして、それはほとんど例外なくと言っていい確率で、既に失われている。
だから、どんなに甘やかな恋愛の渦中にあろうとも、女にとって号泣する
準備は常にできているのだ。
本作の12編の短編のテーマを一言で言うとこんな感じだろうか。
大人になるということは子どもや青春期の自分から見ると成長するという
ことであり、生きていくために必要なありとあらゆるものを獲得するとい
うことなのだが、それは同時にかつて自分が当たり前にもっていた何かを
喪失することと同義である。
本作では12人の様々なタイプの女性が、それぞれ実に多種多様なシチュエー
ションの中で自分の中にある「既に失われてしまったもの」と直面する。
その瞬間、ひとつのシーンを実に鋭く丁寧に切り取ったクロッキー画のよ
うな短編集だと思う。
そして、どちらかというと本作は「感じる」タイプの小説で、「考える」
方が好きな私にとってはちょっと苦手分野かな、という感じだった。
簡潔でさらりとした文体なので読みやすいが、本質的にはセンスが合うか
どうかで読者を選ぶ作品だと思う。
0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。