本日は ◆たまには教養系
戦う!和風武器イラストポーズ集 両角 潤香、みずな ともみ
¥ 1,575 マール社 (2010/12)
時代小説を書く人はエライと、心から感心して、自分も学びたい
と思った。そして手に取った本がこれだ。
アホ、アホ、アホの三乗!(意味不明)豆腐の角に全速力で頭ぶ
つけに行きたい、恥ずかしさがてんこ盛りだ。
刀を頭上に構えた女の子の絵が表紙。紫の髪にピンクの着物。短
いその裾からは、制服のスカートが透けて見えている。ライトノ
ベルの挿絵になりそうな絵柄だ。漫画やイラストを描く人のため
の技法書、指南書である。
しかし、マール社だ。この会社は「中世ヨーロッパの服装」や
「ポーズカタログ」、「やさしい人物画」などの、美術関連のベ
ストセラーを出版しているすごい出版社なんだ。
作りはしっかりとしている。人の体の動き、和の衣装のしくみ、
武器の持ち方扱い方、絵を描くときに必要なポイントが、実に真
面目に解説されていた。
たとえば日本刀。一口に言っても、時代ごとに使われる刀は異
なっている。室町前期の頃までは、太刀と呼ばれる長めの刀が一
般的だった。そりが大きいため、下緒という紐で腰にくくりつけ
て持ち運びがされる。
室町後期から幕末にかけては打刀が使われた。全長約95センチ。
まっすぐなので抜刀がしやすい。江戸時代にはこれにあわせて脇
指が持たれた。
大小二本の刀を下げる。このとき、袴の紐に通すと考える人が多
ようだ。だが実際には着物と角帯の間。袴の脇の切れ目から、鞘
が出るように描こう。
参考になるポーズ集がある。鞘つきのポーズ、抜刀の場面、静止、
動きのある構え。多様なので、参考になるポーズも見つけやすい
はず。
また、弓も忘れてはいけない。歩兵が使う武器であり、奇襲戦法
などに用いられた。飛距離は50から150メートル。銃にとって代わ
られるまで、主要な武器として活躍した。
和弓は大きい。矢は口の高さで構える。このとき、肘と弓が一直
線になるように。よく、矢を指ではさむように描く人がいるが、
これは間違い。弓を握った親指の上に矢を乗せるように構える。
矢は背中の矢筒に背負う。体の前に紐を通して、矢筒を背中にく
くりつけるわけだが、このとき、紐と矢筒の方向は同一。右手で
上から取り出すので、矢羽根が右肩から見えるように描くこと。
ポーズ、下向きの構えがあるのが面白かった。地面の敵にとどめ
をさすときにも、矢が使われていたからだ。構え、射る瞬間、そ
の軌跡を眺める姿勢、ポーズもいろいろ。
槍、なぎなた、手裏剣、クナイ(くさびのような武器。小刀とし
て、投擲用に、用いられ方は様々)鎖鎌、トンファ、鉄扇など。
銃と刀の二刀流が格好よかった。地面に立てた刀のつばに、銃を
乗せて安定させ、発砲するという使い方もあるそうだ。
両手で武器を扱うという華やかさがうけて、フィクションなどで
よく用いられる。銃口で相手を狙い、背後を刀で守るなど、隙の
ない構えが可能。
新旧が入り乱れた、幕末の混乱期にふさわしい派手なアクション
と言えるだろう。
時代劇ファンの方、和風ファンタジーに興味のある方向け。