これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介
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本日は ◆話題の小説系
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KAGEROU 水嶋ヒロ
¥ 1,470 ポプラ社 (2010/12/15)
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ああ、面白かった。本を読みながら、声を出して笑うなんて本当
に久しぶりだ。評判どおり約一時間で読了。わけのわかんない箇
所の戻し読みなんかしなかったら、きっと40分くらいで読めてた。
主人公はヤスオ。41歳の誕生日を明日に控える中年男。リストラ
勧告「らしき話」を受けたので自ら会社を辞め(やむを得ぬリス
トラではない、かっとして自ら辞表を提出している)、借金まみ
れになって自殺を思いついた。
行き着いたのは閉店したデパートの屋上。死のうとフェンスに足
をかけたとき、「ビリー・ジーンのときのマイケル・ジャクソン
のような」黒服の男に止められる。彼はキョウヤ。全日本ドナー・
レシピエント協会の者だと名乗った。
臓器が金になるという。借金を返して、父母に残す資産があると
わかり、ヤスオは逡巡する。ちなみにヤスオ、独身である。結婚
を考えていた女性はいたが、リストラ(?)後、別れを告げられ
てしまった。(40歳という設定にしては、どうなのって感じ)
しかし、どうせ死ぬのだしと、ヤスオはキョウヤの申し出を受け
た。組織の病院へ行き、検査を受け、よくわからんけどデパート
で心臓発作の芝居を打って(その症状が出る不思議な薬がある)、
無事ヤスオは死人となった。
そのとき、組織は精巧な人形を作って両親に見せた。ヤスオの死
を納得させるため。ヤスオは嘆く両親の姿を見て、死ぬべきでは
なかったかと悔やむ。
臓器の提供者が決まった。手術場所への移動の途中でヤスオはそ
の相手と偶然出会う。二十歳になる美しい女性だった。茜という。
彼女の助けになるとわかり、ヤスオはやや安堵する。
ヤスオが再び目を覚ましたとき、彼の体からは心臓が失われてい
た。無事茜に渡ったようだ。だが他の臓器を提供するはずのド
ナーに不慮の事故があり、心臓以外の臓器はまだ彼の体にある。
心臓のないヤスオに生があったのは、人工心臓が埋め込まれてい
たからだ。……!
人工心臓はぜんまい仕掛け。電源を外しても30秒は機能するよう
作られている。ぜんまい仕掛け!
やがて他の臓器を提供する相手が決まり、ヤスオは脱走すること
を決意した。
ヤスオが寝ているベッドには、上体を起き上がらせるためのハン
ドルがついている。リモコン操作ではない。今どき。このハンド
ルが心臓を動かす部分にぴたりとはまることがわかった。
電源が切れる30秒の間のどきどきアクション、ベッドのハンドル
を人工心臓に取り付け、ヤスオは病室の外へ。
(ぜんまい仕掛けだから、ハンドルで回せば動くらしいの)
夜である。なのになぜか、心臓病で入院していた茜と庭で再会。
この時点で手術から(つまりヤスオの心臓が移植されてから)、
二ヶ月が経ったという設定なのだけど、いいのか? 夜中に散歩
なんかしてて。
とにかく出会ってしまったので、二人は茜の秘密の隠れ家へ行く。
防空壕であったらしいその穴の中で、二人は命のすばらしさにつ
いて語り合う。
追われている自覚があるのだろうか。喉が渇いたため地上に出た
ヤスオ、捕まってしまう。彼をここに連れてきたキョウヤは、仕
事の多忙のせいなのか倒れ、
ここから最後のネタばれ
ヤスオの脳が、キョウヤの体に移植される。キョウヤとなったヤ
スオは茜に会いに行き、彼女の心臓の音を聞いた。自分の心臓が、
彼女の中で刻む鼓動の音を……。
あかん。面白すぎやろ。人工心臓大雑把すぎやし、そもそもそん
なものがあるのに、なぜ裏社会の臓器提供事業が成り立つんだ?
逃げるときにも切迫感がなく、そもそもその間も胸の前でベッド
のハンドルを回していると想像するともうおかしくておかしくて!
また、ところどころに真面目腐った「命とは」の問答が挿入され、
その重さとのバランスをとるためなのか、いろいろダジャレがち
りばめられているのもすごい。
「イギリスならジンだな。イギリスジン、なんちゃって」
なんちゃってじゃねえよなあ。
感じで言えば、以前取り上げた「王様ゲーム」みたいな感じ。山
田悠介さんが好きな人なら楽しめそうな物語だった。
しかし、いろいろ予想通りだなあ。ある意味安堵。
ファンの方はぜひ!
(としか言いようがないよ……)
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●年末を見据えて、そろそろプリンターの季節ですなあ。
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