2010年11月29日月曜日

No.377 斧田のびる「ヒデブー」→ 3.5点

斧田 のびる「ヒデブー」→ 3.5点
発行元 :株式会社小学館
初版発行:2008/2/25
斧田 のびる(オノダ ノビル)

あらすじ

ヒデブーはデブだが、ハンサムなデブだった。
焼肉の聖地大阪鶴橋の名店ホルモン屋で育ち、ほぼ毎日豚足とキムチを食べて
いるから肌はゆで卵のようにツルツルプリプリだし、目も鋭い二重だし、何し
ろ口元が品良くきゅっと締まっていて格好よいのだ。

ヒデブーは毎日美味しいホルモンを好きなだけ食べてシアワセに育っていたが、
20歳の誕生日を迎えたあたりからなんだか少し元気がなくなってきた。
相変わらずホルモンもキムチも美味いし食べればシアワセなのだが、それだけ
が人生の全てであってはいけないような気がしてきたのだ。

ヒデブーはある日通天閣に上り、そこでふと決意した。
そうだ、旅に出よう!そしてヒデブーは、長距離バスに乗って東京へと向かった。
はてさて、ヒデブーの東京生活はどうなるのか。。
第二回きらら文学賞受賞作品。

コメント

平野啓一郎とか小田雅久仁とか、難しくて気疲れする小説が続いて疲れたので
ちょっと気分転換にいかにも軽くて楽しそうな表紙の本書を手に取ってみた。

表紙のイメージどおりにすいすい読め、実に楽しい一冊だった。
ヒデブーの底抜けに明るいキャラクターと、テンポの良い関西弁が読んでいて
何とも心地よい。

明るく楽しく元気良く・・と、言うのは簡単だしこれがまっとうできればそん
なに幸せなことはないのだけれど、ヒデブーの世界では「そんなん当たり前や
ないの」という感じで元気を分けてもらえた。

良く食べ良く飲みよく笑う。
そして迷ったらとにかく行動してみる。
簡単なようで難しいことを、ヒデブーは天然のキャラクターと鶴橋のホルモン
屋で自然に培われた哲学をもって軽々とこなしていく。

そして本書は、「若者が旅に出る」話しでもある。
昔からそうだが、個人的に何がわくわくするって、若者が見ず知らずの世界に
向かって裸一貫で旅に出る話しほど心躍るストーリーはないのだ。

未来少年コナン、深夜特急、イントゥ・ザ・ワイルドなどこのジャンルには心
に残る名作が多い。
現代日本に蔓延している諦念や閉塞感を吹き飛ばすエネルギーと、地に足のつ
いた説得力のある作品。オススメ。
(蛇足:表紙で背景の通天閣が崩壊しているんだけど、本編では一切そんな
シーンはない。あれは一体なんなのでしょうか?)




斧田 のびる「ヒデブー」

了。



0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。