2011年1月27日木曜日

本のご紹介です。きことわ

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆話題の小説系


きことわ  朝吹 真理子
¥ 1,260  新潮社 (2011/1/26)


第144回芥川賞受賞作。

貴子(きこ)と永遠子(とわこ)、七つ違いの幼馴染が、別荘の
後片付けをしましたよ〜、おしまい。


って感じだったけど、それだけで終わるのもさみしいよな。ぼち
ぼち筋らしいところを、がんばって書いてみようかな。

葉山のお話。永遠子の母は別荘の管理人をしている。その縁で、
永遠子は貴子と仲良くなった。

別荘は貴子の両親の所有である。貴子の父は外科医で、忙しくて
別荘にはあまり来られない。訪れるのは母の春子と義理の弟の和
雄、貴子の三人だけだ。

永遠子は幼くて知らなかったが、彼女が別荘を訪れるとき、春子
は交通費を支払っていた。七つ年少の貴子が、永遠子になつき、
そばにいたがったからだ。

だがその交流も、春子の死とともに途絶える。春子は心臓が弱
かった。

現在永遠子は40歳、結婚して子供がある。貴子は33歳、不倫の恋
に破れて父と二人暮らしである。その二人が、手放すことになっ
た別荘の片づけをする場面が描かれている。

過去と現在が行き交う。子供の頃遊んだ海の話、食事をした蕎麦
屋の話。歩いた道に道路反射鏡があったかしら、なかったかしら
と、二人は過去の思い出を語り合う。

永遠子はあるとき、母が父のほかに恋人を持っていたことを知ら
された。別荘の仕事は、外に出てゆくための理由だったのだと思
い至る。

貴子にも母の思い出がある。母春子は、心臓病を患っていたのに
タバコをやめられなかった。父は黙認していたようだ。

和雄は貴子の父を責めた。医者なのになぜ。別荘の片付けをしな
がら、封を切っていないタバコがワンカートン出てきて、和雄の
前では吸えなかったのだなと、貴子は母を思いやる。

片付けは一日では終わらず、貴子は別荘に泊まることにした。そ
の夜、かつての若い姿で別荘を歩く春子の姿を、貴子は目にした。

母は病に冒されていた。幼い貴子はいつも死におびやかされてい
た。母が亡くなったとき、ようやくその恐怖から解放された気に
なった。死者を縛り付けるものは生者なのかもしれない。

永遠子は一人家に戻った。帰り道、晩御飯の材料を買って踏み切
りにさしかかる。ぼんやり、電車が来たことに気づかなかった永
遠子だが、誰かに髪の毛を引っ張られて難を逃れる。

不思議だ。永遠子は子供を産んでから、ずっとショートカットな
のに。

翌朝業者の手を借りて片付けを終え、二人は弁当を広げた。永遠
子が作ってきたものだ。野菜の甘酢漬けがうまい。

そう言えば、父が蓮根を大量に買ってきていたなと貴子は思う。
甘酢漬けのレシピを聞いて、父のいる家に戻ってゆく。


文章は流れるようにきれい、冗長ではない。美しい環境ビデオを
見てるみたいだった。

それだけっつー感じもするけど、まああれや、偉い人にはきっと
わかるんやろな、そのよさが。こういう本は偉い人向き。

私にはちょっとよう、わからんかった。アホやもん、しょうがな
いな。

きことわ  朝吹 真理子

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

迷ったら、

よりかっこいいと思える方を選ぶ。

そしてかっこいいと思える心構えで臨む。


今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月26日水曜日

本のご紹介です。日本人でも知らない!?外国人の大疑問

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介


本日は ◆世間話、時事ネタ系


日本人でも知らない!?外国人の大疑問  高橋 陽子
¥ 1,000  アルク (2010/8/31)


語学学習の、アルクのホームページなどに掲載されていたもの。
コミックエッセイ。外国人留学生が、日本について、疑問に思っ
ていることをまとめた。

著者の高橋さんがよく利用される喫茶店に、留学生の方が多いの
だそうだ。ものすごい、日本人でも難しい質問をぶつけられて、
高橋さんもたじたじ。

「アルバイト先の店長がもうすぐフルマラソンに挑戦します。
励ましたいので『がんばって』の尊敬語を教えてください」

これには、友人の編集者が答える。

「頑張るとは、我意を張り通すのことで、尊敬語はありません。
お励みください、というのが妥当でしょう。

ですが、目上の人にはちょっと失礼なので『よい結果をお祈りし
ております』とするといいのでは」

また、文化の違いを感じさせられることもある。

「日本には、どうして『今、もっと会いたい』という気持ちを表
す言葉がないのですか?」

韓国では、恋人と会っているその瞬間にも、もっともっと会いた
い(意味がわからんな)という熱烈な愛情表現があるのだそうだ。
見つめ合って、もっともっと!!という強い意味の言葉。

これには他国の人も賛同し、不思議がる。

「香港には、ものすごくものすごく会いたくて、会えたらすぐハ
グしたい!という言葉がありますが、日本にはありませんね。
すぐ会いたい、だけでは少し寂しいです」

「日本語には、恋愛に使う言葉が少ないですね。中国では『僕た
ちの出会いは運命で決まっていたのだね』というようなことを、
日常的に言っていますよ」

ちなみに韓国の男性は、おやすみの代わりに「俺の夢を見ろよ」
と言うのだそうです。皆さん、熱いのね。

面白かったのは漢字に関するエピソード。

留学生の皆さんにとって、漢字の勉強は大変難しいものであるら
しい。いろいろな工夫をしておいでだ。

「案」という字。女の人が木の上に立って道を示してくれる、と
覚える。「殴」という字の右側は、手が悪いことをする、という
意味があるのだそうだ。

だから「殺」にも使われている。ちなみに左側は木に縛るという
意味合い。何気なく読んでる漢字でも、こうやって見るといろい
ろと成り立ちがわかるものだね。

ある女の子は、看板に書かれている明朝体の文字が読めなくて
困っているそうだ。活字は読める。だが看板などの文字は飾り文
字に見えるらしい。私たちが、アルファベットの花文字を見づら
いと思う感覚みたいだ。


日本の居酒屋ではなぜお通しが出てくるのか。日本人はなぜ本に
カバーをするのか。お花見はなぜ大騒ぎなのか。お茶会のマナー
は?

改めて問われてみると、どう答えていいか迷っちゃうことが多い
よね。

漫画だからさらっと読める。そして楽しい。視点を変えて見るこ
とで、普段の暮らしが新鮮なものに感じられる、ような気がする。

タイから来たトライポップさんは、漢字の冬という字がお気に入
りなのだそうだ。理由はその形が、軽やかに踊る女の子に見える
から。すげえな。

だけどそう考えると、この寒い「冬」も素敵だと思えるよね。

本日ご紹介の本はこちらから↓
日本人でも知らない!?外国人の大疑問―日本語・異文化のギャップで笑えるコミックエッセイ

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

努力は愉しむもんだ。

苦しむもんじゃないと思う。

今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月25日火曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

豊かな家庭と人生を作るのは、

仕事やお金よりも、

安定した上機嫌。

今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。宝くじ(超)当せんデータ

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆世間話、時事ネタ系


宝くじ(超)当せんデータ「当たる人のルール」がわかった  
女性セブン編集部  ¥ 1,155  小学館 (2010/11/2)


とはいえ、私自身は宝くじはあまり買わないのよ。買うとしても、
お付き合いで十枚程度がせいぜいかな。なんせ、当たる自信がど
こを探しても見つからないのよ。

この本は、女性セブンが取材した、高額当選者に共通する点を集
め、まとめたもの。自己啓発の本に書かれているような事柄が多
い。

しかし高額当選となると、読みすすめる目も変わっちゃうよね。
少しご紹介してみます。いいことばかり、まねしてみても損はな
いことばかり。

・お金持ちのまねをする。

生活、意識から変える。しかし派手な暮らしをすればよいという
ものではない。本当のお金持ちは質素で、上手なお金の使い方を
している。

お金持ちの家はシンプルだ。実は、お金に困っている人のほうが、
ごちゃごちゃした家に住んでいるのだそうだ。安さだけで買い物
をしない。必要なものを見極めよう。

・近所の神社にお参りに行く。

氏神さまを決めたら、折に触れてお参りを。このとき「当選させ
てください」だとか、「出世をひとつ、お願いします」なんて祈
り方はしないように。

近況報告をして、これまで無事に生きてきたことを神様に感謝し
よう。そのほうが、結果的にうまくいくものだ。

・トイレ掃除。

お金持ちの家はトイレがきれい。習慣づけてしまえば楽だ。朝の
歯磨き、洗顔の流れでトイレも掃除してしまおう。

気をつけたいのがトイレのふた。これは必ず閉めること。底の水
から悪い気が発生するから。

・窓、カーテン、台所はきれいに。

基本的に、家は清潔がよい。玄関も、運気の入り口なのでこまめ
に掃除をしよう。窓は外のエネルギーを取り込む場である。カー
テンはきれいに、ガラスもぴかぴかにしよう。

・朝日を浴びる

様々な占いでも、太陽は力を持つものと定義されている。医学的
にも、日光は人間によい影響を及ぼすことが証明されている。セ
ロトニンの分泌が活発化するからだ。

よく眠り、姿勢をよくし、太陽の光を浴びて日々の活動に励む。
活力のある暮らしに運が引き寄せられる。


冒頭に、実際に宝くじを当てた人のレポートがある。中から一人、
80歳になる男性の話をここでご紹介してみる。

兄が戦争で亡くなり、12歳年上の兄嫁と結婚することになった男
性。

彼には気がかりがあった。兄の遺言である。兄は一言「近所の神
社を建て直してほしい」と言って戦地に旅立って行った。

平成になって、生活が落ち着いた頃に宝くじを買い始めた。妻も
賛成してくれた。毎年十万円ずつ、金額を決めて買うことにした。

平成20年に妻が亡くなった。その年の夏、3億円当選。妻と兄が
見守ってくれたおかげだと思う。神社を修復し、7千万以上を寄付
した。次当たっても、世のため人のため、使いたいと思う。


こういう人が当選するんだなあ。ええ話や。


宝くじ(超)当せんデータ「当たる人のルール」がわかった

2011年1月24日月曜日

No.384 椎名誠「チベットのラッパ犬」→ 3.5点

椎名 誠「チベットのラッパ犬」→ 3.5点

発行元 :株式会社文藝春秋 初版発行:2010/8/30
椎名 誠(シイナ マコト)

あらすじ

最終戦争後の混沌とした世界。
工作員としてチベットに潜入したおれは幸運もあって首尾よく目当ての
品を手に入れることができた。
・・と思ったのもつかの間、ブツは生体偽装した誰かにブツをかっさら
われてしまった。
このままでは帰れないおれは、奴を探して追跡を始めることにしたのだった。

コメント

「最終戦争後」の近未来を描くシーナワールド最新作。
『武装島田倉庫」から始まった本シリーズも、気がつけば結構な冊数になった
よなあ。
一見荒唐無稽なようでよくよく考えると妙にリアリティのある世界観と、全編
に漂う「もうどうだっていいやあ。」という渺漠とした哀しみのようなものは
本編でもしっかりと健在で実によかった。

読むというよりはひとつの世界を旅するという方が相応しい一冊。
滔々と、終わることなく流れる長い長い川をゆっくりと下っていくような魅力
と安心感があった。
読み手によると思うが、個人的にはシーナ氏の描くこの世界はかなり好きだ。


チベットのラッパ犬

了。



0点→途中リタイア。読むことが苦痛。出会ったことが不幸。意味が分からない。
1点→なんとか最後まで読んだが、時間のムダだった。つまらない。
2点→可もなく不可もなし。ヒマつぶしにはなったかなというレベル。
3点→難点もあるがおおむね満足。この作者なら他の作品も読んでみたい。
4点→傑作。十分に楽しんで読めた。出会えてよかった一冊。他人にもすすめたい。
5点→最高。とにかく良かった。人生の宝物となる一冊。

※ 小数点は、上記点数の間であるとご理解下さい。

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

無駄な競争心のために、

どれだけの大切なことが

失われてきたのだろうか。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。1坪の奇跡

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆ビジネス、営業系


1坪の奇跡─40年以上行列がとぎれない 吉祥寺「小ざさ」味と
仕事  稲垣 篤子
¥ 1,500  ダイヤモンド社 (2010/12/3)


吉祥寺にある和菓子屋「小ざさ」。たった1坪の敷地に建つこの
店には、二種類の菓子しか売られていない。一本580円の羊羹と、
一個54円のもなかがそれだ。

特に羊羹は人気だ。一日150本しか作られないその羊羹を求めて、
日の出前から行列ができる。買える本数は一人5本まで。先の一
人が買い占めてしまうと、不公平が生じるからだ。

だが量産はしない。羊羹の小豆は小さな銅釜で炊かれる。一度で
羊羹50本分。一日三度が限界なのだ。

ぐらぐら煮える小豆を、大きなヘラでかき回す。最初は軽いが、
次第に水分が飛んでヘラは重くなる。コツがいる。釜の底より半
紙一枚分のところ。小ざさの小豆は職人の技で練り上げられてい
る。

小豆が紫色に輝く一瞬があるのだそうだ。その一瞬を得るために、
社長の稲垣篤子さんは三十年の年月を要した。先代である父とと
もに、命がけで作り上げてきた味だった。

稲垣さんは戦前の生まれ。戦時中は疎開するなど、苦しい経験を
した。

和菓子屋を始めたのは父親の照男さんだ。戦争ですべて失ったが、
戦後再び菓子を売る商売を始めた。

その頃菓子は自宅で作られていた。稲垣さんがそれを屋台で販売
する。屋台と言えど、店なのだからと、一枚しかない紺のスーツ
を着て店に立った。

狭い場所で立っているのは辛かった。だが父は稲垣さんに厳しく
申し渡す。「品物がなくなったからと店を閉めるのは屋台の商売
のやり方だ。ここは店なのだから、決まった時間はちゃんと商売
をしなさい」 厳しい父だった。

稲垣さんはカメラマンを志したこともある。だが、父の姿を見て
育った彼女は、いつか店を継ぐ決意をした。結婚もしていた。夫
には、自分の食事は自分でしてちょうだいねと宣言し、主婦業よ
りも仕事に打ち込んで過ごしてきた。

毎朝父と儀式をする。居間に座り、よい緑茶を用意して、昨日
練った小豆を食べる。父が納得する味ができるまで、三十年間毎
日小豆と格闘した。

お父様は糖尿病だったそうだ。医者には叱られたが、この儀式だ
けはやめようとしなかった。一番いいものを作る。この信念が、
親子を支え続けていた。

父は一族と従業員の生活を背負っていた。その責任感の強さが、
稲垣さんにも影響を与えていた。父が亡くなったとき、稲垣さん
はただ「ご苦労様、そしてありがとう」という言葉しか思いつか
なかった。苦労し通しの人生だったと思う。

今は稲垣さんが、従業員の暮らしを背負って立っている。皆が助
けあう職場にしたいと考えている。会社は家族のようなものだ。

障害者も積極的に採用している。だが、助成金をもらうことはな
い。助成金をもらってしまえば、それだけの付き合いだと思って
しまう。そうではなく、一人の人として向き合うのが当たり前と
思う。


小ざさの羊羹は人気で、午前一時から並んで待つ人もいるのだと
いう。地方から、わざわざホテルに宿泊して買いに来る人もいる。

平等に買ってもらいたいと考えるから、稲垣さんは家族、親族に
も特別扱いはしない。稲垣さんのご主人も、その行列に並んだこ
とがあるのだそうだ。徹底している。

いいものを誠実に作りたいという、職人さんの熱意が伝わってく
る一冊。稲垣さんは御年78歳だが、今でも元気に自転車で通勤し
ている。

読んで必ず元気になれる本。それから、甘いものが食べたくなる。


1坪の奇跡―40年以上行列がとぎれない 吉祥寺「小ざさ」味と仕事

第347冊 綱淵謙錠「聞いて極楽」

乱読! ドクショ突撃隊♪    第 347 冊

【1】読書感想 (第347冊)
  
綱淵謙錠  「聞いて極楽」  文春文庫

実は本書を読んだのは二度目。
私は滅多に本を二度読まないのだが、この本は数年前に読み、その感想を
書こうと思っているうちに忘れ、いざ書こうと思ってたら内容も忘れた。
パラパラと読めば思い出すだろうと読み返してみると、ほんとに忘れてい
る。
しかし面白い。結局全部読み直した。

見開き2ページに一話が載っており、それが全百話で二百ページ余。
戦国期から明治初期までの埋もれたエピソードが掘り出されており、時間
の合間合間に読むには打ってつけの面白さ。

大きな書店の片隅に、文庫目録と並んで「新刊のお知らせ」という小冊子
を見た事ない?
そこに一ヶ月一話のペースで百ヶ月、実に8年4ヶ月に亘って連載されて
いたものを、時代順に再構成して纏められたのが本書だそうだ。
「聞いて極楽」というのは、いろは歌(関東)の「き」=「聞いて極楽、
見て地獄」から採ったもので、表と裏では随分違うことを指す。
史実の表舞台と、その裏とではこうも違うのかと気付かせる名掌編が多い。

綱淵謙錠の文春文庫は十冊前後出ているが、古本屋でも見かけることが
少ない。
見つけたら迷わず買うが、ベストセラーになった訳でもないだけに、
出回っている量も多くない。
こういった「いい仕事」をした本が、もっと浮かばれるべきだと思う。



聞いて極楽―史談百話

2011年1月23日日曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

人は変えられない。

自分なら変えられる。

自分が変われば人だけでなく、

景色も変わる。

夢も変わる。

今日も一日味わいつくしましょう。

週刊 お奨め本 第430号『シティ・マラソンズ』

週刊 お奨め本
2011年1月23日発行 第430号

『シティ・マラソンズ』 三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵
¥1,200+税 文藝春秋 2010/10/30発行


「純白のライン」       三浦しをん
「フィニッシュ・ゲートから」 あさのあつこ
「金色の風」         近藤史恵

アシックスが2008〜10年に期間限定で実施した「マラソン三都物語 
〜42.195Km先の私に会いに行く〜」キャンペーンの一環として、書き
下ろされた作品とのこと。この三作を収録した書籍も部数限定で配布
されたらしい。

ニューヨークシティマラソン、東京マラソン、パリマラソン。
それぞれの街を舞台に、走ることを通して自分を取り戻す物語。


不動産会社に勤める安部広和は、社長にとつぜん翌日のニューヨーク行きのチケ
ットを手渡された。ニューヨークシティマラソンに出場しろ。
なんという無謀。広和は不覚にも少し涙ぐんだ。なんで俺、こんな社長のために
身を粉にして尽くしてるんだろう。
社長の娘の監視役を仰せつかってニューヨークに赴いた広和は、真結のペースで
ゆっくりと走りながら、過去を振り返る…。
                             「純白のライン」

スポーツメーカーのシューズオーダーメイド部門で働く南野悠斗。ある日、昔の
友人から電話を受ける。東京マラソンで走る、と。悠斗は「俺のシューズで走っ
てくれ」と頼んだ。
才能があると思っていた。オリンピックも夢じゃないと思っていた。限界を知っ
て、がむしゃらにトレーニングをしすぎて、疲労骨折した高校時代。それからす
べてに中途半端だった自分…。
                       「フィニッシュ・ゲートから」

バレエ一筋だった香坂夕。凡庸な才能しかない自分に比べ、妹は天賦の才に恵ま
れていた。バレエをやめて、夕はパリに留学した。
金髪の女性がゴールデン・レトリバーと共に走っていく。借りている部屋の前が、
彼女たちのランニングコースになっているらしい。金色の風が駆けて行く。彼女
たちに誘われるように、夕も走り始める。
親しくなったアンナが言う。「あなたもバレエという芸術の一部なのよ」。…
                               「金色の風」

三篇とも、短すぎてちょっと物足りないなー。
「純白のライン」はニューヨークシティマラソンガイドとしてもおもしろい。
スタートと同時に参加者が脱ぎ捨てる防寒着はボランティアが拾い集めて寄付に
まわすとか、ランナーも心得ていて寄付用に新品を着てくるとか、流しそうめん
型男性用トイレとか。きっと取材に行ったんだな。

東京マラソンはさすがに街のガイドは必要なかったようだ。

パリマラソンの「金色の風」は、マラソンコースとしてではなくパリの街のガイ
ドになっている。『タルト・タタンの夢』『ヴァン・ショーをあなたに』でフラ
ンス通らしさを披露している近藤史恵。うー、街角のパン屋さんでバゲット買っ
て食べたい。

こういうのを読むと、無性に走りたくなってしまう。
実際には、走るどころかウォーキングですら10キロも自信ないのだけど。
自信はないけど…走ってみようかな。
もしかしたら、新しい自分に出会えるかも。





えー、先週に引き続き、もう一冊紹介しちゃいます。
個人的には『シティ・マラソンズ』よりも面白かったんですけどね、いくら発行
人の趣味と偏見で選んで紹介するメルマガといっても、あまりに偏りすぎかなー
と遠慮してみました。しかしもしかしたら発行人と趣味の近い読者さんが意外に
多いかもしれないしーと、ここにちらりと紹介してみます。

『戦場のハローワーク』 加藤健二郎
¥695+税 講談社(講談社文庫) 2009/12/15発行
ISBN978-4-06-276524-4

軍事ジャーナリストの加藤健二郎氏が、戦争をメシの種にする方法を紹介。
つまんないネタでもそれが戦場である限り、売れるのだ! 戦場はネタの宝庫だ!
食いっぱぐれはない! と陽気に言ってのけます。
女の子をナンパしても記事になる、酒を飲んでも記事になる、人質になったら本だ
って出せる、と経験談を交えて気楽に面白おかしく書いてるのが、すごく痛快!
素人が軽い気持ちで行くもんじゃないと大御所がしかめ面をするのは既得権益を
守りたいだけだ、と一刀両断。
好きだー、こういうキャラ、好きだー(爆)!



シティ・マラソンズ』 三浦しをん、あさのあつこ、近藤史恵

戦場のハローワーク』 加藤健二郎

2011年1月22日土曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

もし、強靭な精神を手に入れることができたら、

きっと、「したたかさ」も「かけひき」も

いらなくなると思う。

今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月21日金曜日

本のご紹介です。月と蟹

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆話題の小説系


月と蟹  道尾 秀介
¥ 1,470  文藝春秋 (2010/9/14)


第144回直木賞受賞作。

主人公は小学生、慎一。父親をガンで失った彼は、母と二人、鎌
倉の祖父のもとへ身を寄せていた。貧しい暮らしだ。

祖父の片足は義足である。漁師だった昔、船の事故に巻き込まれ
たのだ。同じ事故で、慎一の同級生も母親を亡くしていた。

鳴海という。お金持ちで、人気のある女子児童だ。彼女のことが
あるせいか、慎一はクラスに溶け込めないでいた。慎一の友人は
ただ一人、春也という、大阪から転校してきた子供だけだ。

学校が終わると、春也と連れ立って海へ遊びに出かける。彼らの
楽しみは、ヤドカリを捕まえてあぶりだすことであった。ライ
ターの火を近づけて、熱くなったヤドカリが殻から出てくるのを
見て楽しむ。

あるとき二人は、岩の上にくぼみがあるのを見つける。ここでヤ
ドカリを飼うことにした。そこは不思議な場所だった。風が吹く
と岩がうなる。

ヤドカリをあぶって遊ぶ。残酷な楽しみがあった。金がほしいと、
何気なしに言いながらヤドカリをあぶると、ヤドカリは死んでし
まった。その日、二人は五百円玉を拾った。

ヤドカリを殺せば、願いがかなうのかもしれない。慎一はいつか、
ヤドカミさまという妙な名前でヤドカリを呼ぶようになっていた。

その頃、慎一は二つの悩みを抱えていた。親友の春也が、どうや
ら虐待を受けているらしいこと。もう一つは母が、鳴海の父と恋
愛関係にあるらしいということだ。

鳴海も気づいていたようだ。慎一に近づいてくる。やがて鳴海は、
慎一と春也と、三人で岩のくぼみに行くようになった。

鳴海が慎一の家を訪ねる。祖父も母も、普段と違う様子を見せて
いた。祖父は明らかに酒量が増えていた。祖父はあの事故のこと
を語り始める。

祖父は子供の頃、怪我をした友人を捨てて逃げたことがあった。
足をなくしたのはその報いかも知れぬ。

鳴海は逃げた。では母も、悪行の報いで死に至ったのか。祖父は
追い、転倒して頭に傷を負う。

また、鳴海が介在したことで、慎一と春也の仲にも微妙な隙間が
生まれていた。対抗心と独占欲。よどむ感情を抱えながら、二人
はヤドカリをあぶり続ける。その儀式だけが互いを結ぶもので
あった。

慎一は母を尾行する。決定的な瞬間を見た。春也は腕を骨折し、
虐待がのっぴきならぬ状態にまで進んでいた。ヤドカリを殺し、
ヤドカミさまに願いをこめる。

慎一は鳴海の父の死を願った。このとき、慎一は錯乱状態にあっ
た。春也が慎一のため、鳴海の父を殺すのではないかと錯覚する。
救うため、慎一は父が乗った車の前に飛び出した。ヤドカミと
なった春也が、父の車に潜んでいる想像をしたからだ。

慎一は一命をとりとめる。母と二人、鎌倉を去る。


まあくどい。長かった。100ページの短編くらいにしてくれたら
よかったのに、というのが正直な感想。疲れたわ。

ちなみに、表題の蟹というのは、父を奪ったガン(キャンサー)
と、ヤドカリの意味であるようだ。

月と蟹  道尾 秀介

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊


夢を持つことで

日々のなにげない出来事に
彩りを感じるようになる。


今日も一日味わいつくしましょう。

2011年1月20日木曜日

本のご紹介です。島さんぽ

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介



本日は ◆生活、ほっこり系


島さんぽ  上大岡 トメ
¥ 1,365  角川書店(2010/3/27)


「キッパリ!」の上大岡トメさんが、日本の島をめぐる。イラス
ト入りエッセイ。向かう島は屋久島、沖縄、淡路島、八丈島。

この中で、私が最も訪れてみたい屋久島を、ここでご紹介してみ
ようと思う。

屋久島までは、鹿児島から船か飛行機で行ける。トメさんは着い
てすぐに、レンタカーで島を一周されたのだそうだ。半日ほどで
まわれるようだな。

翌日、縄文杉を見に行く。タオルを首に巻き、シャツは二枚重ね、
ステッキを持って本格的な登山スタイルで。

それもそのはず、縄文杉を見るには、合計往復10時間もの登山が
必要であるらしい。けっこうハードなんだな。

トロッコ線路に伝って歩き、線路が終わると山道になる。急な斜
面であるが、珍しい杉がたくさんあって飽きることがない。

中でも「ウィルソン株」という、樹齢300年の切り株がトメさんの
印象に残っている。中が空洞で、立ったままは入ることができる。
ほかにも二つの木が絡み合うように生えているものもあり、自然
のすごさを感じさせられる道だった。

水は流れているものを好きなだけ飲める。緑がむせ返り、山の精
がいるような気になった。

樹齢1000年を超えるものが、総じて屋久杉と呼ばれるそうだね。
中で縄文杉と呼ばれているものは、樹齢なんと、7200年を数える
と推定されている。

森の中にいると、人間以外の何かがいても、おかしくないと思え
る。

トメさんはそう言う。普段はスピリチュアルなものなどに、そう
興味はないほうだが、屋久島に来て少しだけ考えが変わった。

目に見えない大切なものはいっぱいある。屋久島は、そんなこと
が自然に思えるような場所だ。

行ってみたいなあ。山の中、川のそばにいると、なんだか無性に
うおーってなるときあるよね。(え、ない?)

トメさんは、大昔、人間が森の中で暮らしていた頃の遺伝子が呼
び起こされるような気がする、とおっしゃっていた。わかるわ。

あとは観光案内なんかもある。

この本には、宿の名前とか、レジャースポットの名前とかがたく
さん記されていた。その意味で、旅行記というよりは観光ガイド
みたいな印象が強い本だった。

そこは少し残念。もっとがっつり、著者の考えや目で見たものを
書いてほしかったという思いは残る。

しかし、島巡りってのは面白そうだね。幼い頃から淡路島を見て
育ってきて、海の向こうへの憧れは私のうちにずっとある。向こ
うへ渡って行きたいという原始的な欲求がある。

日本は島がたくさんあるもんね、と、締めようと思っていたけれ
ど、よくよく考えれば本州だって島なんだよね。

島国ニッポン。島の魅力を語る本、以後続刊希望だな。

島さんぽ  上大岡 トメ

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊


イライラしてはいけないと強く思っている人ほど
なぜかイライラが増えていくという現象。

まずは
イライラしている自分を受け入れることから。


今日も一日味わいつくしましょう。

こんな発想があったとは…本を折り紙にしてしまった斬新なアート

本アート00

以前、本を削った彫刻をご紹介したことがありますが、今回ご紹介するものはページを折り込むことで文字や図形を浮かび上がらせた、本の折り紙とも言うべき作品。



その他、アーティストのIsaac Salazar氏による、文字通りクリエイティブなアートをご覧ください。


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2011年1月19日水曜日

双雲からの言霊

■今日の武田双雲からの言霊

何を選んだか。

よりも、

どういう思いで選んだか。


今日も一日味わいつくしましょう。

本のご紹介です。台湾人生

これであなたも読書通!話題の本をほぼ日刊でご紹介

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本日は ◆社会派、ドキュメンタリー系

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台湾人生  酒井 充子
¥ 1,650  文藝春秋 (2010/04)

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旅行記ではなかった。読み始めてすぐに「ありゃりゃ」と思っ
たけれど、本を閉じようとは思わなかった。

台湾はかつて日本の統治下にあった。50年という長い年月だ。
その時代を生きた人に会い、聞いた話をまとめたもの。ドキュ
メンタリー映画にもなっている。

統治時代をめったやたらに賛美するものではない。差別はあっ
た。軍国教育を受けて徴兵に応じ、死んでいった台湾人もいる。

だが50年だ。生まれたときには日本人で、そのまま成人した人
が台湾にはたくさんいる。本書に出てくる人たちは、そのよう
な時代を生きた人だった。

少年工として、日本の兵器工場で働いた男性がいる。工場の
あった町を今でも懐かしく思い、第二のふるさとであると考え
ている。当時働いていた日本人とは、今でも交流がある。

彼は貧しい育ちだった。就学を断念しかけたが、日本人の先生
が金を出してくれたおかげで学校に通えた。「先生がなかりし
かば」と、彼は口癖のように言う。今の私の人生はなかった。

恩師が病に伏せたとき、彼は日本まで来て看病をした。先生の
最期の言葉は「もういいよ」だったそうだ。

ビルマで戦った元日本兵がいる。軍国少年だったから、軍隊に
は自ら志願した。軍での差別、戦友の死を見て、やはり戦争は
いけないと思う。

なんとか帰国することができた。帰国後の暮らしは厳しいもの
だった。

台湾は中国に占拠されていた。同胞が来たと、喜ぶ声も確かに
あった。だが中国人の統治は横暴で、次第に日本のほうがまし
だと考えるようになった。

暴動が起きた。このことがきっかけで、多くの知識人が逮捕さ
れ、殺された。彼も拷問を受けた。危うく助かったが、弟が銃
殺されるという悲劇を経験した。

今彼は、観光ガイドのボランティアとして活動し、若者に本当
の歴史を伝えようと務めている。日本人が来ると、教育勅語を
印刷した紙を手渡すのだそうだ。

日本人には親しみがある。だが日本政府には納得がいかない。
戦後台湾を見捨てた。今も中国の顔色ばかり見て、台湾の国連
加盟を後押ししてくれない。


彼らの日本に対する感情は、陳腐だけれど、愛憎半ばというこ
となのだろうかと考える。

茶道も生け花も、日本人の若者よりも知っているという自負が
ある。好きな歌は日本の歌。勇ましい軍歌が好きで、日本語の
歌詞ですらすらと歌う。

しかし日本は彼らに報いなかった。捨てられた、なぜ捨てたの
だと責める気持ちが消えない。

アメリカよりも、中国よりも仲良くすべきは日本だと思うのに、
台湾人も日本人も、かつて同国であったことを忘れ去ってし
まっている。歯噛みするような思いがある。


押し付けがましい思想はないので安心して読める。知らないこ
とがたくさんあって、とても勉強になった。

台湾人生  酒井 充子